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管理会社の変更は、書類と決議の順番で進める
管理会社を変えるとき、先に決めるのは「どの会社が安いか」ではありません。先に揃えるのは、次の三つです。この三つが揃う前の金額比較は、範囲の違う見積もりを一列に並べることになります。
- いまの契約を、いつ終わらせられるか
- 総会が、どの割合で決めるか
- 見積もりを、同じ仕様で並べられるか
この記事では、変更に使う書類と、五つの手順を、2026年9月時点の区分所有法とマンション管理適正化法に沿って整理します。委託費の円の相場は、公的な単価表がないので書きません。金額は、同じ依頼書で取った見積もりで比べます。
※本記事は株式会社MIJによる情報提供であり、自社サービスの紹介を含みます。解約の予告と決議は、手元の契約書と管理規約に従ってください。
先に開くのは、契約書と規約の二つ
管理費は、区分所有者が管理組合へ納める費用です。共用部分の光熱、保険料、点検、そして管理会社へ払う委託費が、この中から出ます。管理委託費は、管理組合が管理会社へ払う業務の対価です。
- 値上げを見るときは、いまの委託費の内訳です。
- 会社を変えるときは、解約と新規の二つです。
解約の予告は、標準管理委託契約書(令和5年9月11日改定)のモデルでは、少なくとも三月前の書面による申入れです。
- モデルの条番号は改定でずれるので、第何条とは書かずに、手元の契約書の「解約」「終了」の見出しを見ます。
- 六月前と書いてある契約は、六月です。モデルの三月を、その契約に書き換えることはできません。
決議は、区分所有法第39条が原則です。この法律または規約に別段の定めがなければ、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く)およびその議決権の各過半数で決します。
標準管理規約を基にしている組合では、規約の定めに従います。標準管理規約の第47条は、普通決議の定足数と数え方です。
- 第47条第1項。定足数は、議決権総数の過半数の出席です。
- 第47条第2項。普通の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決します。
標準管理規約第48条第十七号は、管理委託契約の締結を総会の決議事項にしています。
- 理事会は候補を比べて議案にします。
- 締結と、いまの契約の解約の意思決定は、総会の議案にします。
- 解約の申入れを誰が書面で出すかは、決議のあと、理事長の職務として議事録に残します。
見積もりを頼む前の書類
候補の会社は、建物と会計を見ないと内訳を出せません。渡す書類は、次の四つに束ねます。束ねる前に、個人の電話番号や口座番号が載った頁は、見積もりに不要なら伏せます。名簿の全件を、見積もりの段階で渡す必要はありません。
- 契約。いまの管理委託契約書と、重要事項説明書。業務範囲と委託料の列が、次の依頼書の元になります。
- 規約。管理規約と使用細則。駐車場、駐輪、ペット、専有部分の工事の手続が、委託業務に含まれるかを見ます。
- 会計。直近の決算と、その一期前の総会議案書。滞納、積立金の残高、委託費の実績が載っています。何期分を渡すかは依頼書に書きます。
- 建物。竣工図書、長期修繕計画、法定点検の報告書。図面がないことは、ない、と依頼書に書きます。ある前提の金額と、ない物件の金額は比べません。
この四つが欠けたまま「一式で見積もりを」と頼むと、各社が想像で範囲を埋めます。埋めた範囲は、あとから総会で説明できません。欠けた書類の名前を、依頼書の未提出欄に残します。
同じ仕様で、2〜3社に頼む
依頼書には、次を書きます。この紙を、2〜3社に同じ文面で渡します。5社、6社へ同時に見せると、現地の確認と外注の見積もりが重なり、20戸から40戸程度では辞退が増えます。
- 管理員の勤務日と時間
- 清掃の回数
- 点検の対象
- 会計と総会の回数
- 緊急時の連絡
辞退は、管理が不要だという意味ではありません。依頼先を絞り、書類を揃えて頼み直します。
標準管理委託契約書の別表は、委託料を四つの業務に分けます。比較表の列も、この四つに固定します。
- 事務管理業務
- 管理員業務
- 清掃業務
- 建物・設備管理業務
- 「管理委託費一式」の一行は、どの業務が抜けているかが見えません。
- 抜けた行は空欄のまま残し、ゼロ円とは書きません。
- 各社が勧める追加の業務は、別紙の任意提案にします。任意提案を合計へ足すと、範囲が広い社だけが高くなります。
勤務や回数を変えた案は、元の見積もりと混ぜません。
- 管理員が日勤か、巡回かで、管理員の列は大きく動きます。巡回に変えて安くなった見積もりを、日勤の見積もりと並べません。勤務を変える案は、変更案として別行です。
- 清掃の回数を減らす案も同じです。回数を減らした合計を、回数を維持した合計の隣に置きます。
重要事項の説明と、総会
会社の変更は、従前と同一条件の更新ではありません。適正化法第72条第1項は、管理事務の委託を受ける契約を締結しようとするとき、説明会を開き、管理業務主任者に重要事項を説明させる、と定めています。
- 説明会の日の一週間前までに、区分所有者等と管理者等の全員へ、重要事項と日時と場所を書いた書面を渡します。
- 説明のとき、管理業務主任者は主任者証を提示します。
- 書面には、管理業務主任者の記名が必要です。押印の有無で、記名の要否は判断しません。
同一条件の更新だけが、第72条第2項の、説明会ではなく書面交付を中心にする扱いです。条件を変える変更や、会社を変える契約に、この更新の扱いを使いません。
総会の通知は、区分所有法第35条により、会日の少なくとも一週間前です。標準管理規約第43条を使っている組合は、少なくとも二週間前です。規約でさらに長くしているときは、その期間です。一週間前の重説の書面と、総会の招集通知は、別の書面です。一方を出したから他方が不要、にはなりません。
通知に付けるものは、次のとおりです。
- いまの契約の解約
- 新しい契約の締結
- 比較表
- 契約書案
- 重要事項の書面
契約を結んだあとは、適正化法第73条の書面を遅滞なく渡します。
- 渡す相手は、原則として管理者等です。
- 管理会社自身が管理者であるとき、または管理者等がいないときは、区分所有者等の全員です。
- 書面には、管理事務の対象、内容と実施方法、財産の管理の方法、費用と支払時期、再委託、契約期間、更新、解除を含みます。
- ここにも管理業務主任者の記名が必要です。解除の条項は、次に終了を打診されたときの起点になるので、空欄のまま綴じません。
決議のあと、引き渡す物
契約が終わるとき、管理業者は管理事務の帳簿書類を、管理組合または組合が指定する者へ遅滞なく引き渡します。この引渡しは、標準契約のモデルでも、手元の契約の終了条項でも、確認する項目です。これらは管理組合の財産であり、管理会社の営業資料ではありません。
- 管理規約の原本
- 総会の議事録
- 会計帳簿
- 設計図書
- 点検報告書
- 鍵
- 居住者名簿
通帳と印鑑の保管者が、契約書の方式と違っていないかも、引継ぎの日に照合します。適正化法第76条は、修繕積立金その他の財産を、管理業者の固有財産および他の管理組合の財産と分別して管理する義務です。
- 引継ぎの残高は、直近の管理事務報告書と、金融機関の残高で二列にします。
- 差がある行は、空欄にせず、差額の理由が分かるまで次の議題へ進めません。
- 協力業者の契約相手が管理会社なのか、管理組合なのかで、点検がそのまま続くかが決まります。
- 続くことを議案の前提に書かず、続く場合と、新しい会社が手配し直す場合を見積もりの行で分けます。
助成は、変更の手続きとは別です
管理会社を変えること自体に、全国共通の助成はありません。
- 例として、東京都のマンション改良工事助成は、共用部分の改良工事です。
- 一部の自治体には、管理計画認定の手続を支援する事業があります。新宿区のように、認定の手続支援を案内している自治体もあります。
- 対象、金額、期限は年度で変わります。申請の前に、当該年度の公式要領を確認してください。
- 要領にない事業名で、変更の費用が補助される前提の比較表は作りません。
議事録に残す五行
総会の議事録には、次の五行を残します。どれかが空欄の議事録は、あとから「清掃は含まれていた」という争いの材料になります。空欄の項目は、当日の結論を書き入れてから製本します。
- 解約する契約の相手と、予告の期限
- 新しい契約の相手
- 委託の範囲(四つの列のどれを含むか)
- 開始日
- 引継ぎで受け取る書類の一覧
重要事項説明の書面と、契約書の解除の条項が違っているときは、総会の前にどちらかへ揃えます。説明会で聞いた期間と、契約書の期間が違うまま締結すると、次に終了を打診されたときに、どちらを読むかで理事会が割れます。
- 第73条の書面は、締結した内容を記載する書面です。説明会の案のまま、締結後の書面にしません。
- 管理者等がいない組合は、第73条の書面の相手が区分所有者等の全員になります。
- 標準管理規約第38条第2項は、理事長を管理者とする、と定めています。この定めがある組合では、書面の相手は理事長です。
- 定めがなく、管理者もいないときは、全員への交付です。相手を間違えると、交付したことになりません。
日程の置き方
予告期間、説明会、総会は、別の日付です。
- モデルの三月前で解約するなら、終了日の三月前までに書面が相手に届く日を先に置きます。
- その終了日に新しい契約を始めたいなら、終了日の前に総会を終えます。
- 総会の通知は、第35条なら少なくとも一週間前、標準管理規約第43条を使う組合は少なくとも二週間前です。説明会の書面は、説明会の一週間前です。
- 総会の日の一週間前に説明会を開くなら、説明会の書面は総会の二週間以上前に届いている必要があります。
理事会で会社を内定した日を、解約の申入れの日とは別にしてください。申入れは、総会が解約を決議したあとに出します。
- 決議の前に申入れの書面を出すと、総会が否決したときに、予告だけが先に走ります。
- 否決したときの書面の撤回は、契約書が認めていない限り、相手の同意が要ります。
引継ぎの日は、終了日の当日か、その直前に置きます。通帳、印鑑、鍵、図面を、終了の翌週に送る、という口約束は日程表に書きません。
- 日程表に書くのは、その場で受け取る物の名前です。
- 受け取れなかった物は、終了日の残件一覧にして、新しい契約の開始後の最初の理事会で照合します。
- 残件が金銭の差額であるときは、委託費の比較表には足さず、分別管理の確認の頁に残します。
候補が辞退したときは、辞退の理由を依頼書の条件と照らします。次のどれに当たるかをメモします。
- 書類が足りない
- 仕様が一行のまま
- 同時に頼んだ社数が多い
書類が理由なら、未提出の欄を埋めてから、同じ2〜3社の範囲でもう一度頼みます。社を増やして穴を埋めようとすると、残った社から見た受注の見込みはさらに薄くなります。辞退のメールは、比較表の注記に日付つきで残します。
適正化法第74条は、基幹事務をまとめて他人に委託することを管理業者に禁じています。基幹事務は、次の二つです。清掃会社へ作業を頼むことと、基幹事務をまとめて他人に渡すことは別です。
- 管理組合の会計の収入と支出の調定と出納
- 専有部分を除くマンションの維持または修繕に関する企画や実施の調整
見積もりで、会計の出納と修繕の調整を誰が行うかが空欄のときは、総会の前にその欄を埋めてもらいます。
よくある質問
Q. 見積もりは何社に頼むのがよいか。
A. 同じ依頼書で2〜3社です。社数を増やす前に、渡す書類と仕様を揃えます。
Q. 見積書のどこを見るか。
A. 事務管理、管理員、清掃、建物・設備の四列です。一式の行は、この四列に分けてもらいます。勤務日数と清掃回数を落とした案は、別行にします。
Q. 最初にどの書類を見るか。
A. いまの管理委託契約書の解約の条項と、管理規約の決議の条項です。規約に別段の定めがあるときは、その定めに従ってください。
まとめ
変更は、次の順です。
- 手元の契約の予告期間
- 規約の決議
- 同じ仕様の見積もり
- 第72条の説明会
- 第73条の書面
- 引継ぎ
- 標準モデルの解約は三月前の書面ですが、適用されるのは手元の契約です。
- 決議は、別段の定めがなければ第39条、標準管理規約第47条第2項の定めがあるときは出席組合員の議決権の過半数です。
- 委託契約の締結は、第48条第十七号の総会事項です。
免責事項本記事は2026年9月時点の法令と標準契約のモデルに基づく一般的な説明です。予告期間は個別の契約、決議は管理規約、助成は当該年度の要領で確認してください。
島 洋祐
株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

