自主管理マンションから管理委託への移行|手続きと見積もりの見方【2026年】

都市のマンション外観

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

目次

自主管理の次は、委託の範囲を先に決める

自主管理から管理会社へ移るとき、最初の問いは「いくらで引き受けてもらえるか」ではありません。いま理事が自分たちでやっている仕事の、どこを渡すかです。

  • 全部委託。事務管理、管理員、清掃、建物・設備の四つをまとめて頼む形です。
  • 一部委託。会計だけ、点検だけ、のように必要な列だけを頼む形です。
  • 範囲が違う見積もりを、同じ表の合計で順位付けしません。

委託へ移ることは、管理組合を法人にすることではありません。管理組合は区分所有法第3条の団体で、法人の登記がなくても成立します。管理組合法人の設立は第47条です。管理会社は、その団体から事務を受ける業者です。

この記事では、渡す範囲の決め方、見積もりの揃え方、重要事項の説明、総会の決議を、2026年9月時点の区分所有法とマンション管理適正化法に沿って整理します。委託費の円の相場は、公的な単価表がないので書きません。金額は、同じ範囲の見積もりで比べます。

※本記事は株式会社MIJによる情報提供であり、自社サービスの紹介を含みます。決議は自組合の管理規約に従ってください。

いま、誰が何をしているかを一覧にする

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、完成年次が古いマンションほど世帯主の高齢化が進み、70歳以上の割合が高い傾向が示されています。なり手の不足は、その調査が示す傾向の一つです。不足を理由に委託へ移っても、どの仕事が空いているかが一覧にないと、見積もりは「一式」になります。

自主管理の次は、委託の範囲を先に決める
  • 会計。管理費と修繕積立金の区分、通帳と印鑑の保管者、未収の件数。区分を混ぜた帳簿は、委託の前に科目を分けます。
  • 集会。総会と理事会の招集、議事録の保管場所。
  • 点検。消防設備、エレベーターなど、期限と、契約の相手が組合か業者か。
  • 清掃。日常の見回りを含め、回数と、担当が理事か外注か。

点検を怠ったときの罰則の額は、設備と法令で違うので、この記事では書きません。一覧に書くのは、次の点検の期限と、契約書の所在です。契約書がない点検は、ない、と書きます。

全部委託と一部委託は、別の見積もり

標準管理委託契約書(令和5年9月11日改定)の別表は、委託料を四つの業務に分けます。会計だけの見積もりと、四列全部の見積もりは、合計を並べません。

いま、誰が何をしているかを一覧にする
  • 全部。事務管理、管理員、清掃、建物・設備の四列です。
  • 一部。必要な列だけです。会計だけの額と、四列の額は比べません。

いま組合が直接払っている清掃費や点検費は、全部委託にすると委託費の中へ入ります。支出の総額が増えたように見えても、支払先が業者から管理会社へ移っただけの行があります。比較は、いまの直接支払いと、委託費の中の同じ作業を、行で対応させます。対応しない行は、新しく増える仕事として注記します。

適正化法第74条は、基幹事務をまとめて他人に委託することを管理業者に禁じています。基幹事務は、会計の収入と支出の調定と出納、および専有部分を除く維持または修繕の企画や実施の調整です。一部委託で会計だけを頼むときも、その会計の担当が誰かを見積もりの行に書いてもらいます。清掃の外注と、基幹事務を丸ごと渡すことは別です。

同じ範囲で、2〜3社に頼む

依頼書には、全部か一部か、管理員の勤務、清掃の回数、点検の対象、図面の有無を書きます。図面がないことは、ない、と書きます。この紙を2〜3社に同じ文面で渡します。

同じ範囲で、2〜3社に頼む
  • 5社、6社へ同時に頼むと、20戸前後では現地と外注の手間に対して受注の見込みが薄く、辞退が増えます。
  • 辞退はゼロ円の見積もりにせず、不参加と日付を残します。
  • 業務を減らして委託費を下げる提案は、別行です。清掃の回数を落とした合計を、回数を維持した合計の隣に置きません。
  • 下げた行には、誰がその作業を続けるのかを書きます。理事が続けるなら、委託で楽になる範囲からその作業を外したことを、総会資料に書きます。

渡す書類は、管理規約、直近の決算、点検の契約、長期修繕計画、図面です。名簿の全件は、見積もりの段階では渡しません。個人の口座番号が載った頁は伏せます。

説明会と、総会の決議

管理会社と初めて契約するときは、同一条件の更新ではありません。適正化法第72条第1項の説明会が必要です。管理業務主任者が重要事項を説明し、主任者証を提示します。

  • 説明会の一週間前までに、区分所有者等と管理者等の全員へ、重要事項と日時と場所を書いた書面を渡します。書面には管理業務主任者の記名が必要です。
  • 総会の通知は、区分所有法第35条では少なくとも一週間前です。規約で短くはできません。
  • 標準管理規約第43条を使っている組合は、少なくとも二週間前です。規約でさらに長くしているときは、その期間です。
  • 説明会の書面と、招集通知は別です。説明会を総会の一週間前に開くなら、説明会の書面はさらにその一週間前です。

議案は、管理委託契約の締結です。標準管理規約第48条第十七号が、この締結を総会の決議事項にしています。理事会の内定は、締結ではありません。

  • 決議は、別段の定めがなければ区分所有法第39条の、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)およびその議決権の各過半数です。
  • 標準管理規約第47条第1項の定足数は、議決権総数の過半数の出席です。
  • 第47条第2項の普通の議事は、出席組合員の議決権の過半数です。この定めがある組合は、その定めに従います。

契約のあと、第73条の書面を遅滞なく渡します。書面には、管理事務の対象と方法、財産の管理方法、費用、再委託、期間、更新、解除と、管理業務主任者の記名が必要です。

  • 標準管理規約第38条第2項で理事長が管理者の組合では、相手は理事長です。
  • 管理会社自身が管理者であるとき、または管理者等がいないときは、相手は区分所有者等の全員です。

理事が持っている物を、開始の日に渡す

自主管理では、通帳、印鑑、規約の原本、議事録、図面、鍵が理事の自宅にあることがあります。開始の日に、保管者の名前つきで一覧を渡し、受け取った側の署名か受領の記録を残します。口頭の「あとで取りに行く」は、一覧の空欄のままにします。

  • いまの点検業者や清掃業者との契約は、管理委託契約とは別です。終了の予告は、その業者との契約書に書かれた期間です。
  • 管理会社の標準モデルにある三月前を、業者の契約へ流用しません。
  • 業者が新しい管理会社の下で続くかは、契約の相手を変える手続が要ります。続くことを、安い見積もりの前提に書きません。

助成は、委託へ移ること自体に全国共通のメニューがありません。管理計画認定の手続に、自治体の当該年度の要領があるかは公式サイトで確認します。要領にない補助額を、委託費の比較から引かないでください。

契約の終了を打診されたときに先に見る条項

委託を始めたあと、管理会社から契約の終了を打診されたときは、先に次を確認してください。自主管理のころの業者契約の予告と、管理委託の予告は別の書面です。

  • その管理委託契約書の、解約の予告期間
  • 総会で決議するときの、管理規約の条項

最初の一年で、理事に残る仕事

全部委託にしても、総会は残ります。区分所有法第34条第2項は、管理者が少なくとも毎年一回、集会を招集する、と定めています。委託は、招集の義務を消す契約ではありません。

  • 議事の承認、決算の承認、役員の選任は、規約の決議事項のままです。
  • 見積もりが「総会は管理会社が開催します」と書いていても、決議をするのは区分所有者です。

監事を置く規約では、監事は理事の業務を見ます。管理会社の報告を、監事がそのまま総会へ読み上げるだけでは、出納の確認になりません。

  • 報告に、通帳の名義、印鑑の保管者、未収の件数を行で入れてもらうことを、契約の行に書きます。
  • 行がない見積もりは、事務管理の列を出し直してもらいます。
  • 督促の書面を出すことと、訴訟を提起することは別です。訴訟は、規約と区分所有法の決議を経てからにします。
  • 督促の範囲が空欄の見積もりは、空欄のまま合計に入れません。

日程は、業者の終了と総会を重ねない

管理会社がいない自主管理では、三月前の管理委託の予告は、まだ存在しません。先に終わるのは、清掃や点検のいまの契約です。

  • その契約の予告期間を読み、終了日を一覧にします。新しい委託の開始日は、その終了日以降に置きます。
  • 前の業者の終了より前に、同じ作業を新しい委託へ二重に書くと、同じ月に二回払います。
  • 総会は、開始日の前に終えます。理事の家にある通帳を、開始の当日に渡す予定なら、その日の受領者の名前を議案に書きます。
  • 否決されたときは、いまの業者契約を終了させないでください。申入れは、委託の締結が可決されたあとに出します。

口座は、委託のあと誰の名義のままか

自主管理の通帳は、管理組合の名義であることがほとんどです。委託を始めても、修繕積立金を管理会社の名義の口座へ移す必要はありません。適正化法第76条は、管理組合から預かった財産を、管理業者の固有財産および他の管理組合の財産と分別して管理する義務です。

  • 見積もりと契約には、収納の口座と保管の口座を、どちらの名義にするかを書きます。
  • 管理会社の口座にいったん入る方式では、滞留の期間と、保証契約の有無を行で確認します。保証には上限があります。上限の額を、積立金の残高と比べて、足りない分を議案の注記に書きます。
  • 通帳と印鑑を、同じ会社が両方持たないことも、契約の行にします。両方を預ける案は、分別の説明が終わるまで採決しません。
  • 理事長が管理者である規約では、印鑑の保管者を理事長のままにし、管理会社は記帳と報告だけを行う、という分け方も書けます。保管者の行が違う見積もりは、委託費が同じでも別の列で示します。

開始後の最初の総会では、第73条の書面と、採決した四列が一致しているかを確認します。一致しない行は、その総会の議案にするか、次回へ回すかをその場で決めます。口頭で「含まれている」と補った業務は、次回の契約変更まで、実施の対象にしません。変更は、もう一度、規約の決議と説明の手続を踏みます。

一部委託のまま残す仕事は、理事の担当表に名前を書きます。

  • 名前がない仕事は、委託の範囲から漏れたまま期限を迎えます。担当表は、委託の比較表の隣に綴じ、総会で両方を配布します。
  • 担当表に名前が載った仕事は、委託費の外です。その行を委託へ移すときは、別の議案にします。
  • 移すたびに、説明会と総会の決議をやり直します。範囲を増やす覚書を、理事会だけで足しません。

よくある質問

Q. 20戸でも引き受けてもらえますか。
A. 戸数だけでは決まりません。図面、点検記録、会計の区分が依頼書にあるほど、見積もりの範囲が固まります。辞退されたときは、社を増やす前に、足りない書類を足します。

Q. 委託費は値引きできますか。
A. 回数や対象を減らせば、金額は下がります。減らした作業を誰が続けるかを、別行に書いてから合計を比べます。減らしたことを書かない値引きは、範囲の違う見積もりです。

Q. 管理会社へ渡すことと、管理組合法人は同じですか。
A. 別です。委託は、管理組合が業者へ事務を頼む契約です。管理組合法人は、第3条の団体が第47条の決議と登記で法人格を持ったものです。

Q. 最初にどの書類を見ますか。
A. 管理規約の決議の条項と、いま理事が持っている決算、点検の契約です。規約に別段の定めがあるときは、その定めに従ってください。

まとめ

  • 自主管理からの移行は、全部委託か一部委託かを先に決め、同じ範囲で2〜3社の見積もりを取ります。
  • 管理会社へ渡すことは、管理組合法人を設立することではありません。
  • いま直接払っている清掃や点検は、委託費の中の同じ行と対応させます。清掃の外注は、第74条の基幹事務そのものではありません。
  • 初回の契約は第72条の説明会と、規約に従った総会の決議、第73条の書面です。通知は第35条の一週間、標準管理規約第43条を使う組合は二週間です。
  • 通帳と図面は、開始の日に保管者の名前つきで渡します。委託費の円の単価表はないので、一式の合計では決めません。

免責事項本記事は2026年9月時点の法令と標準契約のモデルに基づく一般的な説明です。決議は管理規約、業者との契約終了はその契約書、助成は当該年度の要領で確認してください。令和5年度マンション総合調査の傾向は、個別のマンションの委託の要否を決めるものではありません。

島 洋祐

株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

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この記事を書いた人

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