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管理費の値上げは、個人では断れない
管理会社から委託費の改定案が届き、「管理費が上がる」と不安になる区分所有者は少なくありません。結論から言うと、区分所有者個人の意思だけで値上げを拒否することはできません。額を決めるのは管理組合の総会です。本記事では、管理費と委託費の違い、規約第48条第6号と第47条、根拠の確認と2〜3社比較の進め方を整理します。読み終わったら、改定案と規約と契約書を同じ机に置き、議案の主語がどれかを書き込んでください。主語が曖昧なままでは、総会資料が作れません。委託費なのか管理費議案なのかを先に一行で固定します。固定できない議論は、総会の議案名にもできません。先に主語、次に金額、最後に日程です。この三つが揃ってから文言を磨き、議案名を付けます。
- 個人では断れない。総会で可決されれば、反対した人もその額に拘束されます。
- 決める場所は総会。標準管理規約第48条第6号は、管理費等の額及び賦課徴収方法を総会の決議事項とします。
- 普通決議が原則。第47条(別段がなければ区分所有法第39条)を確認します。
- 用語を分ける。管理費(組合への支払い)と委託費(会社への支払い)を混同しないことが交渉の出発点です。
この記事は2026年10月時点の説明です。※本記事は株式会社MIJによる情報提供であり、自社サービスの紹介を含みます。
管理費と委託費を分けて読む
「管理費の値上げ」という言葉の中に、実は二つの話が混ざっています。混ぜたまま議論すると、誰に何を求めるかがずれます。
- 管理費。区分所有者が管理組合へ納める、日常の管理のための費用です。標準管理規約第27条は、管理員人件費、共用設備の保守維持費、清掃費、委託業務費などへ充当すると定めます。
- 修繕積立金。第28条の特別の管理(計画修繕など)のための積立です。管理費の値上げ議論と議案を分けます。
- 管理委託費。管理組合が管理会社へ払う、事務・管理員・清掃・建物設備などの対価です。多くの場合、管理費会計から支出されます。
- 統計の使い方。管理費の全国平均(駐車場使用料等を含む徴収額)を、委託費の相場だと思い込まないでください。平均は徴収側の数字です。
会社から届く改定案の本体は、しばしば委託費の値上げです。その結果として、組合が区分所有者から集める管理費の額を総会で改定する、という二段構えになります。
総会で決まる仕組み(第48条第6号・第47条)
個人の手紙や口頭の拒否では、賦課額は変わりません。規約の決議事項を開きます。
- 第48条第6号。管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法は、総会の決議を経なければなりません。
- 第47条。総会は議決権総数の過半数を有する組合員の出席が必要で、議事は出席組合員の議決権の過半数で決するのが原則です(第1項・第2項)。規約に別段の定めがあれば、その定めが優先します。
- 区分所有法第39条。規約に別段がなければ、集会の議事は区分所有者及び議決権の各過半数で決します。
- 規約に金額が書いてある場合。規約本文や別表に具体額があり、その変更が規約変更にあたるときは、第47条第3項の特別多数(出席組合員及びその議決権の各4分の3以上など)が必要になることがあります。自マンションの規約を必ず確認してください。
- 可決後の拘束。反対しても、適法に可決された賦課を無視して旧額のまま払い続けると、滞納として扱われます。抗議は議決の場と、議案の中身(根拠と代替案)で行います。
管理委託契約の締結そのものは第48条第17号です。委託費改定に伴い会社を変えるなら、管理費等の額(第6号)と委託契約(第17号)を議案として分けて載せるのが分かりやすいです。
根拠開示と2〜3社比較
値上げ幅を感情で受け止める前に、理事会が取る手順は三つに絞れます。根拠を見る、同じ仕様で比べる、総会の選択肢を作る、です。
- 内訳の開示。「委託費一式で月いくら増」だけでは判断できません。事務管理、管理員、清掃、建物設備のどこが増えるのか、人件費・外注費の別を書面で求めます。
- 2〜3社の見積もり。同じ勤務日数・清掃回数・点検周期で依頼します。社数を増やしすぎると提案精度が落ちることがあります。
- 現行会社との詰め。比較表を見せたうえで、仕様を落とさず金額を抑える余地があるかを確認します。
- 会社変更。条件が折り合わなければ、新契約案を第72条の日程と合わせて検討します。解約の予告期間は、結んでいる契約書が優先です(モデルは少なくとも三月前の書面)。
- 助成の円額は使わない。自治体支援は年度要綱で変わるため、値上げ議論の前提額に助成見込を埋め込みません。
見積もりに何回の現地確認が要るかは、物件と会社次第です。一般論の回数で社数を決めつけないでください。大切なのは、同じ仕様で比較できることと、総会資料に貼れる数字があることです。
総会資料に載せる最小セット
区分所有者への説明は、長い苦情の列挙より、短い表の方が議決に届きます。
- なぜ今か。人件費、最低賃金、外注点検、光熱費など、改定提案の理由を箇条書きにします。未確認の全国一律円額は書きません。
- 世帯あたりの影響。月額・年額の前後、専有面積割合がある場合はその計算方法。
- 比較表。現行と候補(最大2〜3社)の四業務。
- 選択肢。現行会社で改定する/仕様を見直して抑える/会社を変える、の三つを併記。
- 規約根拠。第48条第6号と、普通決議であることの一文(別段があればその条文)。
- 日程。契約更新日、解約予告の期限、説明会、総会日。
否決された場合、委託契約の更新拒否や業務品質の低下リスクが残ることがあります。否決を目指すなら、代替の仕様と見積もりを同じ議案セットに入れるのが実務的です。
個人が取ってよい行動、避ける行動
不安なときほど、個人の行動が組合全体のリスクになります。
- よい行動。理事会へ根拠資料の開示を求める。総会で質問し、反対討論する。委任状や議決権行使書を期限内に出す。代替案(仕様見直し・他社見積もり)を提案する。
- 避ける行動。可決後に旧額だけで振り込む。管理室で個人的に「払わない」と宣言する。根拠のない口コミ金額をビラにする。
- 理事会へ伝える要点。「委託費の内訳」「同じ仕様の他社見積もり」「世帯あたり影響額」の三点がそろっているか、です。
株式会社MIJでは、内訳の読み方と比較表の作り方、総会資料の骨子作成を支援しています。値上げそのものを煽るのではなく、決める材料を揃えることが目的です。
人件費・最賃の話を、議案の言葉にする
2026年時点で有効な東京都の最低賃金は1,226円(2026年9月時点で有効)です。管理員や清掃の委託単価が上がる背景説明には使えますが、それだけで世帯あたりの値上げ幅は決まりません。
- 最賃は下限。実際の単価は勤務形態、巡回か常駐か、深夜対応の有無で変わります。
- 委託費への転嫁。どこまで管理費へ転嫁するかは、仕様を落とすか、積立と管理費のバランスをどうするかの組合判断です。
- 資料の書き方。「最賃が上がったから月○円」と未確認の円額を置かず、「人件費項目が改定案の主因」「内訳は別紙」と書きます。
- 長期修繕との混線防止。修繕積立金の不足議論と、日常の管理費改定を同じスライドに載せすぎないでください。議案番号を分けます。
数字の根拠が弱いと、反対意見は感情論になり、可決しても不信が残ります。最賃は背景、見積もりの内訳が本体、と役割を分けるのが総会運営では有効です。
委託費が上がるときに、管理費を据え置く選択肢
会社の委託費改定を受けても、すぐに管理費を同じ幅で上げる必要は必ずしもありません。ただし、据え置きには条件があります。
- 予備費・余剰。管理費会計に余裕があり、年度内で吸収できるなら、総会で管理費額を変えず委託費増を予算の中で処理できる場合があります。
- 仕様の見直し。管理員の勤務時間、清掃回数、巡回頻度を契約の範囲で調整し、増額幅を抑えます。減サービスの合意は総会または規約・細則の手続に従います。
- 使途の整理。管理費から出ていく項目のうち、削減できるものを洗いします。ただし安全・法令点検に関わる行を削るのは最後です。
- 限界。余裕がなく、点検や清掃の品質を維持できないなら、管理費改定議案を正面から出す方が誠実です。据え置きのまま赤字運営を続けると、翌年の選択肢が狭まります。
据え置く場合も、「今年は管理費額を変更しない」ことを総会の予算審議で明示します。黙ったまま不足が膨らむのがいちばん危険です。
よくある反対意見への返し方
総会で出やすい反対と、資料側の返しをセットで準備します。
- 「物価のせいばかり言うな」。→ 内訳表のどの行が増えたかを示します。背景説明と金額根拠を分けます。
- 「他のマンションはもっと安い」。→ 戸数、勤務形態、設備数が違うと比較になりません。同じ仕様の見積もりを出します。
- 「管理会社を変えればいい」。→ 変更案があるなら第17号議案と日程をセットで出します。案がないなら宿題にして延期するかを決めます。
- 「自分は反対だから払わない」。→ 個人の拒否では額が変わらないこと、可決後は賦課が拘束することを規約第48条第6号・第47条で説明します。
返し方は論破が目的ではありません。議場を仕様と決議の話に戻すことが目的です。
理事会が最初の2週間でやること
改定案が届いてから総会までが長いと、情報が口コミだけで先に広がります。最初の2週間で次を終わらせます。
- 受領と整理。改定案・現行契約・今年度予算を一つのファイルにまとめ、増額の対象が委託費なのか管理費議案なのかを一行で定義します。
- 質問状。四業務の内訳、適用開始日、仕様変更の有無、更新を拒否した場合の扱いを文書で尋ねます。
- カレンダー。契約の自動更新日、解約予告の期限、通常総会または臨時総会の候補日を書き込みます。
- 比較の準備。現行仕様の要約を作り、必要なら2〜3社へ同じ依頼文を送る承認を理事会で取ります。
- 区分所有者への一次連絡。「検討中であること」「個人の拒否では決まらないこと」「総会で議決すること」だけを短く知らせ、金額の噂を先回りします。
この2週間を飛ばすと、総会直前に内訳が間に合わず、感情だけの採決になりがちです。速さより、同じ資料を全員が見る状態を先に作ります。
よくある質問
Q. 値上げ通知を無視すれば、上がらずに済みますか。
A. 済みません。額は総会決議で決まり、個人の無視では変わりません。
Q. 管理費と委託費、どちらを交渉しますか。
A. 会社との交渉対象は主に委託費です。区分所有者の賦課額としての管理費は、その結果を踏まえて総会で決めます。
Q. 普通決議で足りるのに、特別決議が必要なのはどんなときですか。
A. 規約に具体額が固定され、その変更が規約変更にあたるときなどです。第47条第3項や自マンション規約を確認してください。
Q. 見積もりは何社がよいですか。
A. 同じ仕様で2〜3社が実務的です。多社依頼が必ずしも有利ではありません。
Q. 値上げ案が否決されたらどうなりますか。
A. 賦課額は据え置きですが、会社側が更新を望まない、または仕様を落とす提案に切り替える可能性があります。代替案を用意したうえで否決するかを判断します。
まとめ
- 管理費の値上げは個人では断れず、総会(規約第48条第6号)で決まります。普通決議は第47条が原則です。
- 管理費(組合への支払い)と委託費(会社への支払い)を分け、一式増ではなく内訳を開示させます。
- 同じ仕様で2〜3社を比べ、現行改定・仕様見直し・会社変更の選択肢を総会へ載せます。
- 可決後の旧額払いによる抗議は滞納リスクがあります。議論は議決の場で行います。
- 助成の円額や未確認の相場は前提にせず、契約書と規約と見積もりで判断します。
免責事項本記事は2026年10月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。決議の定数、管理費等の額の定め、委託契約の更新・解約は、各マンションの管理規約と管理委託契約書で確認してください。金額の相場や助成の円額は記載していません。
島 洋祐
株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

