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管理会社の倒産や撤退が分かったとき、最初に守るのは居住者の生活と管理組合の金銭です。管理費と修繕積立金は、区分所有者が管理組合へ納めた財産です。
マンション管理適正化法第76条は、委託を受けて管理する修繕積立金その他の財産を、管理業者の固有財産および他の管理組合の財産と分別して管理するよう定めています。具体的な方法は、施行規則第87条です。
この記事では、2026年9月時点の法令に沿って、次の四つを整理します。金額や保証で戻る割合は、契約と保証の上限で確認します。
- 口座の置き方
- 判明した日に集める書類
- 次の管理会社を総会で決めるときの決議
- 見積もりの揃え方
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の破産手続と契約の終了は、管財人・弁護士と、いまの管理委託契約書で確認してください。
管理会社倒産・撤退|金銭がどの口座に入っているか
分別管理の義務は、会社が倒れても自動的に全額が戻る、という意味ではありません。戻る範囲は、次の二つで変わります。
- 名義。金銭が、管理組合名義の口座にあるか、管理会社名義の口座にあるか。
- 保管。通帳と印鑑を、誰が持っているか。
標準管理委託契約書の説明では、口座の置き方は次の三つです。
- 集めてから移す。収納口座にいったん入れ、余った金銭を管理組合名義の保管口座へ移します。管理会社名義の口座に残っているあいだの金銭は、会社の倒産手続に巻き込まれる余地があります。
- 積立金は直接、管理費は収納口座。修繕積立金を管理組合名義の口座へ直接入れ、管理費は収納口座を通します。積立金が管理会社を経由しない分、積立金側の混同は減ります。管理費の側は、収納口座に残る期間があります。
- 組合名義の一つの口座。収納と保管を、管理組合名義の一つの口座で行います。この方式でも、通帳と印鑑の両方を管理会社が持つことは、原則として認められません。両方を一社が持つと、組合の確認なしに引き出せます。
管理会社名義の口座に金銭が滞留する方式では、滞留を短くし、その期間の金銭について保証契約を求めるルールが施行規則にあります。
- 保証が必要か、対象が何か月分かは、採用している方式と施行規則第87条の該当する号、そして保証契約の本文で確認します。
- 保証契約には上限があります。上限を超えた額や、分別されずに会社の口座へ混ざった額まで、保証が埋めるわけではありません。
日常の確認先は、管理事務報告書です。適正化法第77条は、管理者等がいる組合では、管理業務主任者による定期の報告を求めています。
- 報告書で見るのは、口座名義、残高、通帳と印鑑の保管者です。
- 契約書の方式と違っていないかを、倒産の前から見ておきます。
- 違っていた月は、その月の報告書を残します。
判明した日に集めるもの
理事会は、新しい会社を探す前に、組合の物がどこにあるかをリストにします。口頭の「あとで送ります」は、リストの該当欄を空欄のままにします。
探す相手は、次の三人です。
- まだ連絡が取れる担当者
- 本社の管理部門
- 破産手続が始まっていれば、破産管財人
リストに載せる物は、次の三つに分けます。
- 金銭。管理組合名義の通帳、届出印、キャッシュカード、インターネットバンキングの権限者。
- 議事と契約。管理規約の原本、総会の議事録、会計帳簿、管理委託契約書、重要事項説明書。
- 建物と居住者。設計図書、長期修繕計画、法定点検の報告書、鍵と暗証番号の台帳、居住者名簿。
通帳が見つかったら、金融機関に取引の動きを直接問い合わせます。問い合わせるのは、理事長など口座の権限がある人です。
- 担当者個人の説明と、金融機関の入出金が違えば、違った行をメモします。
- 憶測で「使い込み」と総会資料に書かず、照会の写しを添付します。
清掃、設備点検、エレベーターなどの契約は、相手を分けて見ます。
- 管理組合と直接の契約か
- 管理会社とその業者の契約か
管理会社との契約が止まると、業者への支払いの経路も止まります。点検の期限が近い設備は、管理組合が誰に発注しているかを、その契約書で確認します。
会計の出納と、修繕の調整は、点検の契約とは別に確認します。適正化法第74条は、基幹事務をまとめて他人に委託することを管理業者に禁じています。基幹事務は、次の二つです。
- 管理組合の会計の収入と支出の調定と出納
- 専有部分を除く維持または修繕の企画や実施の調整
この記録が組合になければ、引き渡しリストの先頭に入れます。
管理委託契約はいつ終わるか
民法第653条は、委任が、委任者または受任者の破産手続開始の決定によって終了すると定めています。
- 管理委託契約が委任または準委任に当たるときは、標準モデルにある「少なくとも三月前の書面」を待たずに終わることがあります。
- 三月前の予告は、通常の解約のモデルです。破産の終了事由とは、読む条項が違います。
終わることと、書類が自動的に届くことは別です。終了したあとの帳簿と金銭の引き渡しは、次の両方で進めます。
- いまの管理委託契約書の、終了・引き渡しの条項
- 破産管財人への申し出
標準管理委託契約書のモデルは、契約が終わるときに管理事務の帳簿書類を遅滞なく引き渡す、という構成です。モデルの条番号は改定でずれるので、条番号ではなく、手元の契約書の見出しで探します。
撤退の打診で、破産手続が始まっていない場合は、契約書の解約の予告期間が使われます。
- 予告が三月のモデルも、六月と書かれた契約もあります。適用されるのは、手元の契約書です。
- 予告期間の満了前でも、通帳と印鑑の保管状況の確認は始められます。確認は解約そのものではありません。
次の管理会社は、総会で決める
担当者が「新しい会社が決まるまで、独断で別の業者と結んだ」と説明しても、その契約を組合の決定にはできません。
- 標準管理規約では、管理委託契約の締結は総会の決議事項です(第48条第十七号)。
- 理事会は候補を比較して議案にします。締結の決定は総会です。
区分所有法第39条の原則は、この法律または規約に別段の定めがなければ、次のとおりです。
- 出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く)およびその議決権の各過半数で決する。
標準管理規約を基にしている組合では、規約の定めに従います。
- 第47条第1項。定足数は、議決権総数の過半数の出席です。
- 第47条第2項。普通の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決します。
規約を見ずに、第39条の頭数と議決権の両方だけを案内すると、定足数の数え方が規約とずれます。
招集は区分所有法第34条、通知は第35条です。第35条は、会日の少なくとも一週間前に、会議の目的と議案の要領を示して、各区分所有者に通知を発すると定めています。
- この一週間は、規約で長くできます。標準管理規約第43条を使っている組合は、少なくとも二週間前です。
- 一週間を切った通知は、この原則と合いません。
- 緊急の支出が必要でも、通知期間を飛ばした集会の決議は、あとから効力が争われます。
見積もりは、同じ仕様で2〜3社
次の会社を選ぶとき、比較は2〜3社です。5社、6社へ同じ建物を同時に見せると、現地の確認と外注の見積もりが重なり、20戸から40戸程度のマンションでは辞退が増えます。各社には同じ依頼書を渡します。
依頼書に書く項目は、次のとおりです。
- 委託する業務
- 管理員の勤務
- 清掃の回数
- 点検の範囲
- 会計の範囲
- 総会の回数
標準管理委託契約書(令和5年9月11日改定)の別表は、委託料を四つの業務に分けて書く構成です。
- 事務管理業務
- 管理員業務
- 清掃業務
- 建物・設備管理業務
「一式」の一行は、どの業務が欠けているかが見えません。
- 欠けた行は、空欄のまま比較表に残します。空欄を金額が無い欄をゼロ円として合計しません。
- 内訳を出さない会社は、その旨を表の注記にします。
依頼書の末尾には、引き渡しを受ける書類の一覧を付けます。
- 通帳、印鑑
- 規約原本、議事録、会計帳簿
- 設計図書、点検報告書
- 鍵、名簿
一覧にない物は、見積もりの「引継ぎ対応」に含まれているかが分かりません。含まれていない物は、別行で見積もらせます。
前の会社の協力業者が、そのまま新会社の下で続くかは、業者との契約の相手が誰かによります。続くことを議案の前提にすると、総会のあとで単価が変わります。見積もりの項目は、二つに分けます。
- いまの協力業者が続く場合
- 新会社が手配し直す場合
助成は、交代そのものとは別です
管理会社の交代に、全国共通の助成メニューはありません。助成の対象になりやすいのは、交代のあとで行う共用部分の工事や、管理計画認定の手続きです。
- 例として、東京都のマンション改良工事助成は、共用部分の改良工事を対象にする事業です。
- 金額、期限、窓口は年度で変わります。申請の前に、当該年度の公式要領を確認してください。
- 工事と無関係な「交代の助成」として案内されている名前は、要領にその事業があるかを公式サイトで照合します。
契約の終了を打診されたときに先に見る条項
管理会社から契約の終了を打診されたときは、先に次の二つを確認してください。
- いまの管理委託契約書にある、解約の予告期間
- 総会で決議するときの、管理規約の条項
破産手続開始の通知が同時に来ているときは、予告期間と別に、民法第653条の終了と、引き渡しの条項を見ます。
居住者に伝えることと、伝えないこと
口座の照会が終わる前に、「積立金が消えた」と掲示すると、事実と違う情報が残ります。掲示に書くのは、分かっていることだけです。
- 管理会社の連絡先が止まったこと
- 理事会が通帳と印鑑の所在を確認していること
- 清掃と点検の次の予定
- 緊急時の理事の連絡先
残高の評価と、次の会社の名前は、照会と見積もりが揃ってから総会資料に書きます。
管理員が管理会社の雇用であれば、その人の勤務は管理会社との関係で止まります。
- 組合が個人を直接雇う話と、新しい管理会社が管理員を手配する話は、別の契約です。
- 総会の前に、個人へ「組合が雇用を続ける」と口約束すると、その約束の相手と金額が資料に残りません。
- 勤務の空白が何日あるかは、清掃と受付の依頼書に「空白の期間の扱い」として書きます。
管理事務報告書の残高と、金融機関が答えた残高が違うときは、差額の理由が分かるまで、見積もり比較の結論を止めます。
- 止めるのは比較の結論です。書類の所在確認と、同じ仕様の依頼書の作成は並行できます。
- 差額の行を空欄にしたまま、委託費の安さで会社を決めると、欠けた金銭の回収と、新しい委託が一つの議案に混ざります。
- 回収は管財人と保証の議題、委託は第48条第十七号の議題、と資料を分けます。
倒産・撤退時の総会資料の並び
議案は、三枚に分けます。三枚を一枚にまとめると、金銭の不明分を、委託費の値引きで埋めたように見えます。
- 一枚目。通帳・印鑑・図面・名簿の所在と、未回収の一覧。
- 二枚目。報告書の残高と金融機関の回答の差、保証契約の対象と上限。
- 三枚目。同じ仕様で取った2〜3社の内訳比較と、解約と新規契約の議案。
比較表の列は、次の四列に固定します。
- 事務管理
- 管理員
- 清掃
- 建物・設備
各社が勧める追加業務は、別紙の任意提案にします。
- 任意提案を本提案の合計に足すと、範囲が広い社が高く見えます。
- 範囲を足したあとの合計で、もう一度並べます。
- 足すことを断った社は、その行を空欄にします。
決議のあと、議事録に次の四つを残します。次の理事会が、口頭の記憶で引き渡し漏れを追わないためです。
- 採用した社の見積もりの範囲
- 契約の開始日
- 引き渡しを受ける書類の一覧
- 保証と残高差の扱い
議事録のひな形に空欄がある項目は、空欄のまま製本せず、当日の結論を書き入れてから保管します。
よくある質問
Q. 担当者が、新しい会社とすでに契約したと言っています。有効ですか。
A. 標準管理規約では、管理委託契約の締結は総会の決議事項です。理事会の比較と、総会の決議を経ていない契約を、組合の決定としては扱えません。相手方へは、総会前である旨を書面で残します。
Q. 保証に入っているので、積立金は全額戻りますか。
A. 保証契約には上限があります。どの口座の、どの期間の金銭が対象かは、施行規則第87条と保証契約の本文によります。報告書の残高と、保証の対象額を並べてから、差額を議案に書きます。
Q. 手続きの前に、最初にどの書類を見ますか。
A. いまの管理委託契約書、直近の管理事務報告書、管理規約の決議の条項です。規約に別段の定めがあるときは、その定めに従ってください。
まとめ
倒産や撤退の日に先へ出すのは、次の四つです。
- 口座名義
- 通帳と印鑑
- 契約書
- 直近の報告書
- 分別管理は適正化法第76条の義務で、保証は方式と上限を確認します。
- 委任に当たる契約は、破産手続開始で民法第653条により終わることがあります。
- 次の委託契約は、規約の定めに従い総会で決め、見積もりは同じ仕様の2〜3社で内訳を揃えます。
免責事項本記事は2026年9月時点の法令に基づく一般的な説明であり、個別の破産手続の助言ではありません。金銭の回収は管財人と保証契約、決議は管理規約、助成は当該年度の要領で確認してください。
島 洋祐
株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

