自主管理マンションのリスクと対策|理事会が先に確認する書類

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管理会社に業務を出していない自主管理でも、区分所有者の団体はなくなりません。区分所有法第3条で、区分所有者は全員で建物と敷地、附属施設の管理を行う団体を構成します。合意で解散できる団体ではありません。自主管理は、その団体の実務を組合の役員が担っている状態です。

  • 団体は残る。委託を解いたあとも、集会、規約、管理者の枠組みは区分所有法のままです。
  • 役員の仕事は増える。会計、出納、総会資料、法定点検の手配、修繕の見積もりを、理事会が直接抱えます。
  • 監督は残る。のちに管理会社へ委託しても、管理会社を選ぶ決議と、報告を読む責任は理事会に残ります。
  • 費用の見え方。管理委託費が減っても、管理費そのものが不要になるわけではありません。管理費は区分所有者が組合へ納める費用です。

この記事は2026年9月時点の説明です。※本記事は一般的な情報提供を目的としています。

自主管理でも管理組合はなくならない図

目次

自主管理で理事会が先に開く書類

リスクの話を総会に出す前に、手元の書類をそろえます。パンフレットより、いまの規約と帳簿が先です。

  • 管理規約。総会の決議、管理費と修繕積立金、役員の選任、委託契約の扱いを確認します。単棟型標準管理規約では、管理委託契約の締結は第48条第17号の総会決議事項です。
  • 長期修繕計画。計画期間、次回の大規模修繕の年、積立金の予定額を見ます。計画がない、または最終の見直しから長いときは、その事実を議事に残します。
  • 会計。管理費と修繕積立金の口座、通帳と印鑑の所在、月次の残高を理事長と監事が確認します。
  • 滞納の一覧。何戸が、何期分、いくら滞っているかを表にします。合計だけだと、次の総会で説明できません。
  • 名簿。非法人の組合では、標準管理規約第31条の2の区分所有者名簿と居住者名簿を別々に整えます。連絡が取れない住戸は、登記と届出住所を並べます。

書類が揃わないこと自体が、次の総会資料になります。揃わない理由を口頭だけで済ませず、何が欠けているかを一行ずつ書きます。

総会通知は、単棟型標準管理規約第43条では2週間前です。再生等の議案は2か月前です。届出住所と、国内管理人の届出があるときはその人へ送ります。掲示による代替の定めがあるときでも、届いたことが残る方法を優先します。区分所有法第35条は、少なくとも1週間前の通知です。規約で短くすることはできません。伸長だけができます。

議事録は、標準管理規約第49条で議長と、議長が指名した出席組合員2人が署名します。自主管理で書記がいない年でも、署名する二人は総会の場で決めます。紙を残さないと、翌年の理事会が前年の決定を追えません。

自主管理で理事会が先に開く書類

会計、滞納、通帳と印鑑

自主管理の会計と通帳印鑑のアイコン図

自主管理で先に崩れるのは、会計の線です。管理費と修繕積立金を一つの財布のように扱うと、計画修繕の資金が見えなくなります。

  • 区分経理。標準管理規約第28条第4項は、修繕積立金を管理費と区分して経理することを置いています。令和5年度マンション総合調査では、区分経理をしている組合は90.1%です。
  • 使途。管理費の使途は標準管理規約第27条、修繕積立金の取崩しは第28条第1項の事由です。日常の不足を積立金から補う形は、総会の決議と規約の確認が先です。
  • 滞納。管理費等の請求は、標準管理規約第26条で特定承継人にもできます。売却のあとに「前の所有者が払う」だけでは終わりません。
  • 通帳と印鑑。理事長が通帳と印鑑を両方持つ形は避けます。監事が残高を照合できる置き方にします。

管理費の全国平均は、令和5年度マンション総合調査で、駐車場使用料等を含む1戸月額17,103円です。これは管理委託費の相場ではありません。自主管理だからこの額が不要になる、という読み方はしません。

滞納が続く住戸は、督促の日付、内容証明の有無、理事会議事録への記載を時系列で残します。金額の見込みを口頭で共有するだけでは、次期理事会へ渡せません。

管理費の負担は、標準管理規約第25条第2項で共有持分が原則です。規約に別段があれば、その定めです。駐車場使用料などの専用使用料は、管理費に含めて集計している調査と、含めていない調査があります。令和5年度マンション総合調査の17,103円は含む数字、11,503円は含まない数字です。どちらも委託費の相場ではありません。

修繕積立金の全国平均は、駐車場等を除く1戸月額13,054円、含む13,378円です。自主管理の組合がこの額に合わせなければならない、という義務ではありません。自組合の長期修繕計画の支出と、いまの残高から見直します。

委託へ移るときの決議と説明

自主管理から委託へ移る決議と説明

自主管理のまま続けるか、管理会社へ業務を出すかは、理事会の内定だけでは決まりません。標準管理規約を使う組合では、管理委託契約の締結は総会の決議事項です。

  • 決議。第48条第17号の議案を、第47条の普通決議で決めます。第1項は議決権総数の過半数の出席、第2項は出席組合員の議決権の過半数です。規約に別段があれば、その定めです。
  • 仕様。事務管理、管理員、清掃、建物・設備管理の四つに分けて仕様書を作り、同じ条件で2〜3社へ依頼します。一式の行は空欄のままにします。金額が無い行をゼロ円として合計しません。
  • 第72条。新しい業者との契約では、マンション管理適正化法の重要事項説明が要ります。説明会を開き、書面を1週間前までに区分所有者等と管理者等へ渡し、主任者証を提示し、書面に主任者が記名します。
  • 第73条と第76条。契約後の書面は管理者等へ渡します。修繕積立金などの財産は、業者の固有財産や他の組合の財産と分別して管理します。
  • 第77条。管理者がいる組合では、主任者が定期に管理事務を報告します。報告の時期を仕様書の行に書きます。

自主管理から委託へ移ること自体への全国共通の補助金はありません。自治体の制度は、その年度の要綱で確認します。

相見積もりを5〜6社へ同時に出すと、20〜40戸程度では辞退が増えます。これは実務上の傾向であり、公的な統計ではありません。現地調査の回数を組合が決める性質のものではありません。

口座の型は、収納後に組合保管口座へ移す、積立金は組合口座へ直接・管理費は収納口座、組合名義の一口座、の三つがモデルです。管理会社が通帳と印鑑を両方持たない置き方にします。保証には上限があります。上限の円は、結ぶ契約書の記載で確認します。

解約をいまの業者へ出すときは、結んでいる契約書の申入れ期間が先です。標準管理委託契約書では「少なくとも三月前の書面による申入れ」がモデルです。条番号は契約書ごとに違うことがあるため、手元の契約書で確認します。短い通知は争いになり得ます。当然に無効かどうかは、契約書と弁護士に確認します。

新会社の開始まで契約が切れる空白ができるときは、現会社と短期の延長を書面で合意できるかを確認します。空白のあいだに会計と法定点検の手配が止まる形は避けます。

点検と長期修繕計画を止めない

自主管理で点検と計画を止めない点

役員のなり手が少ない年でも、法定の点検と長期修繕計画の見直しは止まりません。止まること自体が、次の総会で説明する事実になります。

  • 計画期間。長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)では、計画期間は30年以上で、大規模修繕を2回以上含みます。見直しは5年程度です。
  • 記載例の周期。外壁塗装・屋上防水などの大規模修繕は12〜15年目安、鉄部塗装は5〜7年です。義務ではなく、記載例です。
  • 段階増額。初期額は均等額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内が目安です。節約額は、証券と見積もりの差額で確認します。
  • 総会。長期修繕計画の作成または変更は、標準管理規約第48条第5号の決議事項です。計画を机の中に置いたままにはしません。

消防用設備、昇降機、簡易専用水道などの点検は、それぞれの法令の対象になる建物で行います。自主管理だから対象外、という読み方はしません。誰が業者を手配し、報告書をどこに保管するかを、理事会の役割表に書きます。

管理計画認定は、管理者等が、適正化推進計画を持つ都道府県等の長に申請する制度です。認定は5年ごとに更新します。管理適正評価はマンション管理業協会の評価です。いずれも管理会社の順位表ではありません。自主管理の組合でも、認定の申請自体は規約上の総会事項になり得ます。

東京都のマンション管理状況届出は、条例が平成31年3月制定、令和2年4月開始です。対象は昭和58年(1983年)12月31日以前新築で、居住用独立部分が6以上のマンションです。届出者は管理組合です。自主管理だから届出が要らない、という読み方はしません。対象かどうかは、建築年と戸数で確認します。

住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理計画認定で年0.2%の引下げがあります。すまい・る債、耐震・浸水・省エネもそれぞれ0.2%、下限は0.1%です。節約額は、証券と見積もりの差額で確認します。融資を受けること自体が、自主管理を続ける理由にも、委託へ移る理由にも、自動ではなりません。

役員の任期と選任は、自組合の規約です。標準管理規約第35条第2項では役員は組合員から選任し、第38条第2項では理事長が区分所有法の管理者です。管理者の選任・解任は、区分所有法第25条で集会の決議(規約で別段)です。なり手がいない年は、業務の一部委託と、役員の人数を同じ総会で議題にします。

よくある質問

Q. 管理会社に出せば、理事の責任はなくなりますか。
A. なくなりません。実務は委託できますが、契約を総会で決め、報告を読むのは理事会です。善管注意の言葉だけを総会資料の見出しにはしません。何を、いつ、誰が確認するかを書きます。

Q. 自主管理のままでも管理計画認定は申請できますか。
A. 申請者は管理者等です。管理会社の有無が要件の見出しではありません。標準管理規約では、認定の申請は第48条第16号の総会決議事項です。

Q. 委託へ移る議案は特別決議ですか。
A. 標準管理規約では普通決議です。規約変更や共用部分の著しい変更とは別の議案です。自組合の規約に引上げがあれば、その定数です。

Q. 滞納が多い年は、積立金を管理費に回してよいですか。
A. 区分経理が原則です。取崩しは第28条第1項の事由と総会の決議を確認します。日常の不足を積立金で埋める前提にはしません。

Q. 役員が足りないときは、どうしますか。
A. 標準管理規約第35条第2項では、役員は組合員から選任します。人数が足りない事実を総会資料に書き、業務の一部を委託する議案と、役員の分担を同時に検討します。

Q. 見積もりの「一式」はどう扱いますか。
A. 金額が書けない行は空欄のままにします。金額が無い行をゼロ円として合計しません。任意の提案は合計の外に置き、必須の四業務と混ぜません。

Q. 管理費の平均を、委託費の目安にしてよいですか。
A. なりません。17,103円は区分所有者が組合へ納める管理費の全国平均です。管理会社へ払う委託費の相場ではありません。

同じ規模の他組合の委託費を口頭で聞いて、仕様の違う金額を並べることも避けます。比べるのは、四つの業務に分けた自組合の仕様書です。差がある行の理由を、各社に書面で聞きます。

まとめ

  • 自主管理でも、区分所有法第3条の団体は残ります。委託費が減ることと、管理費が不要になることは別です。
  • 先に開くのは、管理規約、長期修繕計画、会計、滞納一覧、名簿です。
  • 管理費と修繕積立金は区分して経理します。通帳と印鑑は一人が両方持ちません。
  • 委託へ移るときは、第48条第17号を第47条の普通決議で決め、新しい業者は第72条の説明と第73条の書面、第76条の分別管理を行います。
  • 長期修繕計画は30年以上、見直しは5年程度です。自主管理から委託への全国共通の補助金はありません。

免責事項本記事は2026年9月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。決議の要件、会計の区分、委託の範囲はその管理規約、契約書、見積もりで確認してください。

島 洋祐

株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

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この記事を書いた人

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