マンション機械式駐車場の撤去・平面化|管理組合の決議と費用の考え方

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機械式駐車場の空き区画が増え、保守点検費と部品交換費だけが続く管理組合は少なくありません。撤去して平面の区画に直す判断は、金額の話から入るより、いま結んでいる契約と、どの決議で決めるかを先に整理したほうが進みます。

  • 契約が先。保守点検契約、リース契約、駐車場使用契約の解約条項と原状回復の定めを、見積もりを取る前に読みます。
  • 決議は二種類。形状または効用の著しい変更なら、単棟型標準管理規約第47条第3項の各4分の3以上。そうでなければ第47条第2項の普通決議です。
  • 費用は積立金か借入れ。修繕積立金の取崩しは第28条第1項第3号、総会決議は第48条第10号、借入れは第63条です。
  • 利用者の扱い。第15条の駐車場使用契約と使用細則を、区画数の変更に合わせて改めます。
  • 金額は自組合の数字で。撤去費や保守費の全国相場と呼べる公的な統計はありません。金額の目安は、見積書で確認します。

この記事は2026年9月時点の説明です。※本記事は一般的な情報提供を目的としています。

機械式駐車場撤去で確認する四つ

目次

機械式駐車場|撤去・平面化が検討されるきっかけ

検討の入口はほとんどの組合で同じです。装置の維持に出ていく費用と、駐車場から入る使用料の差が開いたときです。

  • 保守点検費。装置の方式が複雑で、収容台数が多いほど、毎年の点検費は重くなります。契約書の点検回数と単価を、決算書の支出と突き合わせます。
  • 部品交換費。チェーン、ワイヤー、モーター、制御盤の交換は、点検契約の外で見積もりが来ることが多く、年度によって支出が跳ねます。
  • 空き区画。使用者が減ると使用料収入が減ります。標準管理規約第29条では、駐車場使用料はその管理に要する費用に充て、残りを修繕積立金として積み立てる建付けです。空き区画は、積立金へ回る額が減ることを意味します。
  • 装置の更新時期。装置全体の入替えは、長期修繕計画に載っていないことがあります。載っていない工事は、積立金の見込みにも入っていません。

標準管理規約のコメントは、機械式駐車場を持つ組合では、その維持と修繕に多額の費用を要することから、管理費および修繕積立金と区分して経理することもできる、としています。駐車場会計を分けている組合は、その会計の残高と装置の残りの寿命を並べると、判断の材料になります。

機械式駐車場検討のきっかけ

見積もりの前に読む、契約と規約

駐車場見積前に読む契約と規約

撤去の可否を左右するのは工事費より契約です。次の書類を理事会で先に集めます。

  • 保守点検契約。解約の予告期間、途中解約の扱い、点検業者が保管している図面や部品の返還を確認します。
  • リース契約。装置がリースのときは、残期間、解約時の清算、原状回復の範囲が撤去費の外に乗ります。リース会社の承諾なしに装置を撤去できない契約が一般的です。
  • 駐車場使用契約と使用細則。標準管理規約第15条は、管理組合が別添の図に示す駐車場について、特定の区分所有者に駐車場使用契約により使用させることができる、と置いています。区画の位置や数が変わるなら、契約書のひな型と細則の改定が必要です。
  • 管理規約の別表と図。駐車場が敷地上の附属施設か、建物内の共用部分かで、決議の条文の読み方が変わります。自組合の規約の別表を先に見ます。
  • 長期修繕計画。装置の更新がいつ、どの額で載っているかを確認します。載っていなければ、撤去か更新かの比較表を作る出発点は空欄です。

いまの管理会社に見積もりの取りまとめを頼むときも、上の書類は組合が自分で確認します。管理委託契約の業務の範囲は、駐車場の撤去工事の設計や監理まで含んでいないことが多いためです。

普通決議か、各4分の3か

駐車場撤去の決議定数の場合分け

撤去と平面化は、敷地及び共用部分等の変更です。決議の種類は、形状または効用の著しい変更を伴うかで分かれます。

  • 区分所有法第17条第1項。共用部分の変更のうち、形状または効用の著しい変更を伴うものは、区分所有者の過半数かつ議決権の過半数を有する者が出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上で決します。この4分の3は、規約で2分の1を超える範囲まで下げることができます。定足数の過半数は、規約で上げることができます。
  • 標準管理規約第47条第3項第二号。敷地及び共用部分等の変更で、著しい変更を伴うものは、組合員総数の過半数であって議決権総数の過半数を有する組合員の出席を要し、出席組合員及びその議決権の各4分の3以上で決します。
  • 著しい変更でないとき。第47条第2項の普通決議です。出席組合員の議決権の過半数で決まります。総会自体の成立は第1項の、議決権総数の過半数の出席です。
  • どちらに当たるか。標準管理規約のコメントは、駐車場の増改築工事などで大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議、既に不要となった設備の撤去工事は普通決議で実施可能と考えられる、と例示しています。機械式装置を撤去してピットを埋め、平面の区画に直す工事は、工事の規模と加工の程度で判断が分かれます。判断は個別で、最終的にはその組合が決めます。
  • 特別の影響。第47条第10項は、変更が専有部分または専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その組合員の承諾を要する、と置いています。撤去で区画を失う使用者がこれに当たるかは、使用契約の期間と細則の定めで見ます。
  • 通知。第43条第1項で、総会の招集通知は少なくとも2週間前です。第47条第12項により、通知した事項についてのみ決議できます。撤去か更新かの二案を出すなら、両方を議案に書きます。

迷うときは、各4分の3の決議として招集する組合もあります。普通決議で足りる工事を特別多数決議で決めても、決議が無効になるわけではありません。逆は争いになります。

費用の出し方と、見積もりの分け方

駐車場撤去費用と見積の分け方

  • 修繕積立金の取崩し。標準管理規約第28条第1項は、積立金を取り崩せる事由を限定しています。撤去と平面化は第三号の、敷地及び共用部分等の改良又は変更に当たります。
  • 総会決議。第48条第10号で、第28条第1項の特別の管理の実施と、それに充てる資金の借入れと積立金の取崩しは、総会の決議事項です。工事の決議とは別に、取崩しの額を議案に書きます。
  • 借入れ。第63条で、管理組合は第28条第1項の業務を行うため必要な範囲で借入れができます。第28条第3項で、その償還に積立金を充てることができます。
  • 駐車場会計から。駐車場会計を区分している組合は、その残高を先に充てるかを議案で明らかにします。管理費会計から支出しないのが第28条第4項の区分経理の趣旨です。
  • 見積もりの行。装置の解体撤去、ピットの処理(埋戻しか鋼製床か)、舗装とライン、電気設備と制御盤の撤去、産業廃棄物の処分、を別の行にします。一式の行は空欄のまま比較します。
  • 社数。同じ仕様書で2〜3社です。5社、6社へ同時に出すと、規模の小さい組合では辞退が増えます。これは実務上の傾向であり、統計ではありません。

解体だけの見積もりは安く見えます。平面化まで含めた合計で比べないと、あとから舗装と排水の工事が別枝で出てきます。埋戻しの土の量、ピットの排水ポンプの撤去、雨水の流れ先も、行に書かせます。

全国共通の補助金はありません。自治体の助成は年度の要綱で変わり、申請者は管理組合です。要綱を読んでから見積もりの時期を決めます。

撤去と更新を、同じ表で並べる

撤去だけを議案にすると、装置を残したい人との議論が金額の言い合いになります。撤去、更新、部分撤去(一部の装置だけ残す)の三案を、同じ項目で並べた表を総会資料に付けます。

  • 初期の支出。撤去と平面化の見積もり合計、更新の見積もり合計、部分撤去の合計。いずれも行を分けた見積もりの数字です。
  • 毎年の支出。保守点検費、部品交換の見込み、電気料金、保険料。平面化のあとは舗装と区画線の補修だけが残ります。
  • 毎年の収入。区画数と使用料の積です。平面化で区画が減るなら、その分の減収を書きます。
  • 積立金への影響。第29条で使用料の残りが積立金へ回る額と、取崩しの額を、長期修繕計画の残高の推移に載せます。
  • 決議の種類。三案それぞれに、普通決議か各4分の3かを書きます。更新は既存の装置の入替えで、著しい変更に当たらないと整理する組合が多い一方、撤去と平面化は個別の判断です。

表の数字はすべて自組合の見積もりと決算書から取ります。他のマンションの事例の金額を、そのまま自組合の欄に入れません。

利用者への説明と、使用契約の終わらせ方

装置を撤去すると、区画の数と位置が変わります。使っている人への説明を工事の後に回すと、総会の前に反対が固まります。

  • 第15条の使用契約。管理組合と区分所有者の契約です。契約期間、更新の有無、区画の変更の条項を読み、区画がなくなる人への通知の時期を決めます。
  • 使用細則。区画の数、使用者の選定方法、使用料の額を細則で定めている組合は、細則の改定を同じ総会に載せます。細則の変更は第48条第1号で総会決議です。
  • 使用料の行き先。第29条で、使用料は駐車場の管理に要する費用に充て、残りを修繕積立金へ積み立てます。区画が減れば積立金へ回る額も減ります。撤去後の収支を、装置を残したときの収支と並べて説明します。
  • 代替の区画。平面化のあとの区画割と、待機者の順を先に決めます。標準管理規約のコメントは、使用者の選定は最初は抽選、その後は空きが出た順など、公平な方法を求めています。
  • 外部貸し。空き区画を組合員以外に貸す案は、税務上の収益事業の扱いが関わります。コメントは国税庁の照会回答を参照するよう求めています。撤去の代替案として検討するなら、税理士に確認します。

撤去・平面化の結果を長期修繕計画に戻す

  • 撤去か更新かを決めたあとは、その内容を長期修繕計画に反映します。計画の作成または変更は第48条第5号で総会決議です。
  • 長期修繕計画作成ガイドラインでは、計画期間は30年以上で、大規模修繕を2回以上含みます。見直しは5年程度が目安です。
  • 平面化した駐車場の舗装や区画線も、その後は計画修繕の対象です。周期の欄が空欄のまま残らないようにします。
  • 装置を残す判断をした組合も、装置の更新費を計画に載せ、積立金の額の見直しへつなげます。積立金の額の変更は第48条第6号の総会決議です。

よくある質問

Q. 撤去は必ず特別多数決議ですか。
A. 一律ではありません。形状または効用の著しい変更を伴うかで分かれます。標準管理規約のコメントは、駐車場の増改築で大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議、不要となった設備の撤去は普通決議の例としています。迷うときは各4分の3で招集する組合もあります。

Q. 費用はどこから出しますか。
A. 修繕積立金の取崩し(第28条第1項第3号)か、借入れ(第63条)です。いずれも第48条第10号の総会決議です。駐車場会計を分けている組合は、その残高の扱いも議案に書きます。

Q. 使っている人の承諾は要りますか。
A. 変更が専有部分または専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、第47条第10項でその組合員の承諾が要ります。駐車場使用契約の期間と細則の定めで判断します。

Q. 相場はいくらですか。
A. 撤去費の公的な相場はありません。装置の方式、台数、ピットの有無、搬出経路で変わります。自組合の見積もりを、行を分けて2〜3社で比べます。

まとめ

  • 見積もりより先に、保守点検契約、リース契約、駐車場使用契約、規約の別表を読みます。
  • 決議は、著しい変更なら標準管理規約第47条第3項の各4分の3以上、そうでなければ第2項の普通決議です。判断は工事の規模と加工の程度です。
  • 費用は第28条第1項第3号の取崩しか第63条の借入れで、第48条第10号の総会決議です。
  • 使用料は第29条で管理費用と積立金へ回ります。区画が減ったあとの収支を、装置を残す案と並べて説明します。
  • 金額の相場と補助金の有無は、見積書と当該年度の要領で確認します。自組合の数字と、その年度の要綱で確認します。

免責事項本記事は2026年9月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。決議の種類、費用の負担、契約の終了は、その管理規約、契約書、見積もりで確認してください。

島 洋祐

株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

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この記事を書いた人

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