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管理委託契約は、読む順を先に決める
分譲マンションの管理組合が管理会社と結ぶ契約が、管理委託契約(管理受託契約)です。資産価値の話に聞こえても、実務で守るのは契約書の条文と、マンション管理適正化法の手続です。本記事では、第72条・第73条の書面、業務の内訳、解約の申入れ、総会決議の順で整理します。読み終えたあとに契約書の現物を開き、差分だけを書き込む使い方を想定しています。総会の直前に初めて開くのではなく、更新期の2か月前には一度通読してください。通読の記録を理事会メモに残すと、翌年の引継ぎが楽になります。不明点はその場で付箋を貼り、次回理事会で消し込み、契約書の余白にも同じ印を付け、スキャンを共有フォルダへ保存します。
- 第72条。新規契約の前に、説明会と1週間前の書面交付、管理業務主任者の説明・記名が要ります。
- 第73条。契約成立後は、遅滞なく管理者等へ契約内容の書面を交付します。
- 内訳。事務管理・管理員・清掃・建物設備の四業務に分け、一式表記を残しません。
- 解約。標準のモデルは少なくとも三月前の書面です。条番号は契約書ごとに違うため示しません。結んでいる契約書が優先です。
この記事は2026年10月時点の説明です。※本記事は株式会社MIJによる情報提供であり、自社サービスの紹介を含みます。
第72条と第73条の違い
宅地建物取引業法の重要事項説明と混同されやすいですが、管理受託契約の説明義務はマンション管理適正化法に置かれています。タイミングが違う二つの書面を区別します。
- 第72条第1項(新規)。管理組合から管理事務の委託を受ける契約を締結しようとするとき、あらかじめ説明会を開催し、管理業務主任者に重要事項を説明させます。説明会の日の1週間前までに、区分所有者等及び管理者等の全員へ、重要事項と説明会の日時・場所を記載した書面を交付します。
- 主任者の義務。説明の際は管理業務主任者証を提示し、交付書面には主任者が記名します。
- 同一条件の更新。従前と同一条件で更新しようとするときは、区分所有者等全員への重要事項書面の交付が中心です。管理者等が置かれている場合の説明の扱いも条文に定めがあります。条件が実質的に変わるなら、新規に近い説明が必要です。
- 第73条(成立後)。契約を締結したときは、遅滞なく管理者等(管理者がいない場合などは区分所有者等全員)へ書面を交付します。記載事項には、対象部分、業務内容と実施方法、費用と支払方法、再委託の定め、契約の更新・解除に関する定めなどが含まれます。書面作成時も主任者の記名が要ります。
理事会は、説明会の日程と総会の招集期間を同じカレンダーに載せてください。説明会を省略したまま議案だけ進めると、手続不備の指摘を受けます。
契約書で確認する実務ポイント
国土交通省のマンション標準管理委託契約書をたたき台に、結んでいる契約書を突合します。モデルと文言が違う条項は、結んでいる方が優先です。
- 基幹事務の一括再委託禁止。適正化法第74条は、基幹事務(会計の収入支出の調定及び出納、専有部分を除く維持又は修繕に関する企画又は実施の調整)を一括して他人へ委託することを禁じます。清掃や設備点検など基幹事務以外の個別再委託まで禁止する条文ではありませんが、再委託の可否と承諾手続は契約書で確認します。
- 委託費の内訳。事務管理、管理員、清掃、建物・設備管理の各行に金額があるか見ます。「一式」だけの見積もりは、後から仕様を削られても反論しにくいです。
- 契約期間と更新。期間、自動更新の有無、更新時の条件変更の手続を読みます。
- 解約の申入れ。標準のモデルは少なくとも三月前の書面です。六月前と書いてある契約もあります。条番号は契約書ごとに異なるため、本文では条番号を付けず、解約の条を開いて確認してください。
- 分別管理と報告。第76条は修繕積立金等の分別管理、第77条は管理者等への定期報告を定めます。月次の会計報告が届くか、組合財産と会社財産が分かれているかを実務で確認します。
- 善管注意義務。管理会社は委託の受任者として注意義務を負います。損害賠償や免責の条項が組合に一方的に不利でないかも読みます。
管理計画認定を将来取る場合も、認定の条番号を暗記するより、会計の区分経理・長期修繕計画・総会運営が契約実務とつながっているかを見る方が先です。
見積もりは同じ仕様で2〜3社
契約を見直すとき、社数を増やしすぎると提案精度が落ちることがあります。実務の目安は2〜3社です。
- 同じ依頼文。管理員の勤務、清掃回数、設備点検の周期、現行の再委託先を書いて渡します。
- 管理費と委託費。区分所有者が組合へ払う管理費(全国平均の徴収額など)を、委託費の相場だと思い込まないでください。委託費は四業務の見積もりで比べます。
- 抜けの確認。緊急出動、管理員欠勤時、鍵と帳票の保管、電子報告の範囲も表にします。
- 助成金の円額は書かない。自治体の支援は年度要綱で変わるため、本記事では制度の円額を示しません。契約比較表に助成見込を埋め込まないでください。
安い一行より、仕様が現行以上で内訳が読める一行を選びます。株式会社MIJでは、仕様の言語化と比較表の作成も支援しています。
総会決議と引継ぎのカレンダー
新しい契約を結ぶには総会決議が必要です。解約の予告期間と説明会を逆算しないと、空白期間が生まれます。
- 決議事項。標準管理規約第48条第17号は、組合管理部分に関する管理委託契約の締結を総会の決議事項とします。普通決議が原則で、第47条(別段がなければ区分所有法第39条)を確認します。
- 日程。いまの契約の解約申入れ期限、第72条の説明会、総会招集、議決、第73条の書面、業務開始日を一本の表にします。
- 引継ぎ。組合口座、印鑑、帳票、鍵、点検記録、保険証券、未完了工事を一覧にし、新旧会社と理事長で日付を入れます。
- 終了の打診。管理会社から契約終了を打診されたときも、見る順は同じです。予告期間、規約の決議、次の業者の第72条です。
理事会だけで契約を終えてしまう運用は、規約の決議事項と食い違いやすいです。議案と議事録に残すことを優先してください。
契約書を開くときのチェックリスト
改訂やリプレイスの前に、次を印刷して余白へ書き込みます。
- 当事者と対象。管理組合名、マンション名、委託の対象部分。
- 業務別表。管理員の管球交換や高所除外など、現場で争いになりやすい行。
- 料金表。四業務の月額・年額、追加料金の条件。
- 再委託。承諾の要否、報告のタイミング。
- 解約・更新。予告期間、違約金の有無、更新拒絶の手続。
- 報告。月次会計、管理員業務日報、設備点検の提出先。
チェックが終わったら、不明点だけを管理会社へ文書照会します。口頭の「大丈夫です」は総会資料になりません。
照会の文例は短くて足ります。「別表の管理員業務に管球交換は含まれますか」「高所除外の定義は何メートル以上ですか」「解約の申入れは何日前の書面ですか」「再委託先を変更する場合の承諾は事前ですか事後ですか」——この四点が返ってくれば、現場の争点の半分は消えます。回答期限を日付で切り、総会資料の注記に貼ります。
それでも曖昧な行が残るなら、契約締結前に別表へ追記するか、覚書で範囲を固定します。曖昧なまま調印すると、翌年の予算審議でまた同じ議論が始まります。株式会社MIJでは、この照会文と差分表の作成も支援しています。
更新と新規を取り違えない
毎年同じ会社と契約していると、「例年どおり」で説明会を飛ばしがちです。法令上は、同一条件の更新か、条件変更を伴う新規に近いかで手続が分かれます。
- 同一条件の更新。第72条は、従前と同一条件での更新について、書面交付を中心とした手続を定めます。主任者の説明の要否は、管理者等の置かれ方など条文の分岐に従います。
- 委託費改定・仕様変更。金額や業務範囲が変わるなら、実質は新しい条件の契約です。説明会と1週間前書面を想定して日程を組み直します。
- 会社変更。相手方が変われば新規です。いまの契約の解約と、新しい契約の第72条・第73条を並べます。
- 記録。どの条項が前年と同じかを差分表にし、総会資料の添付にします。口頭の「ほぼ同じ」は監査や次期理事会で再現できません。
更新期の2か月前には、契約書と見積もりを机に載せ、同一条件かどうかを理事会で確認する運用が安全です。
条文を総会資料の言葉に落とす
法律の条番号だけを総会で読み上げても、区分所有者には伝わりません。次のように短い文へ言い換えて資料へ載せます。
- 第72条。「新しい管理会社と契約する前に、説明会を開き、1週間前までに書面を配ります。説明は管理業務主任者が行います。」
- 第73条。「契約が成立したら、すぐに契約内容の書面を組合へ交付します。」
- 第74条。「会計・出納・修繕の企画調整という基幹事務を、まとめて別会社へ丸投げできません。」
- 解約。「いまの契約を終えるには、契約書に書いてある予告期間前までに書面で申し入れます。モデルは三月前です。」
- 総会。「新しい契約を結ぶことは、管理規約で総会の決議事項です。普通決議が原則です。」
言い換えたあとに条番号を括弧で添えると、後から検証できます。逆に、条番号だけが先行して中身がない資料は避けます。
撤退・終了を言われたときの初動
管理会社から「更新しない」と通知された場合も、焦って次の口コミを検索する前に契約書を開きます。
- 予告期間の充足。通知日と契約終了日の間隔が、契約書の定めを満たすか。
- 業務の継続。終了日までの管理員・清掃・設備点検が誰の責任か。
- 次の選定。仕様を固定した依頼を2〜3社へ出し、第72条の日程から逆算。
- 総会。新契約の締結議案と、必要なら一時的な応急委託の扱いを分けて議題化。
- 帳票。会計データ、未収管理費、修繕履歴の引継ぎ期限を文書で合意。
終了通知が突然でも、組合側が仕様書とカレンダーを持っていれば、空白を短くできます。日頃の月次報告の保管が、そのまま緊急時の資料になります。
よくある質問
Q. 第72条の説明会はオンラインでもよいですか。
A. 法令と省令の範囲で実施方法が整っている必要があります。開催自体を省略できるわけではありません。日時・場所(または接続方法)と1週間前の書面交付を満たすかが焦点です。
Q. 解約は三月前なら必ず足りますか。
A. モデルはその趣旨です。結んでいる契約書がより長い期間を書いていれば、その期間です。条番号は契約書で確認します。
Q. 理事会決議だけで新会社と契約できますか。
A. 標準管理規約では、管理委託契約の締結は総会の決議事項です。規約に別段があればそれに従います。
Q. 基幹事務以外の清掃再委託は違法ですか。
A. 第74条が禁じるのは基幹事務の一括再委託です。清掃などの個別再委託は、契約書の条件と報告義務の問題として整理します。
Q. 管理費の平均額を委託費の目安に使えますか。
A. 使えません。平均は徴収側の管理費であり、委託費の相場ではありません。
まとめ
- 新規契約は第72条(説明会・1週間前書面・主任者記名)、成立後は第73条の書面です。
- 基幹事務の一括再委託は第74条で禁止。委託費は四業務に分け、一式を残しません。
- 解約の申入れは三月前書面がモデルで、結んでいる契約書が優先。条番号は契約書で確認します。
- 新契約の締結は規約第48条第17号の総会。普通決議が原則です。
- 見積もりは2〜3社・同じ仕様。引継ぎで空白期間を作らず、助成の円額は要綱確認とします。
- 更新か新規かの切り分けを毎年行い、条件変更時は説明会日程から逆算します。
- 終了通知を受けたときも、予告期間・継続業務・次期選定・帳票引継ぎの順で初動します。
免責事項本記事は2026年10月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。説明会の要否、解約の予告期間、決議の定数、再委託の条件は、マンション管理適正化法、管理規約、結んでいる管理委託契約書で確認してください。助成金の円額は記載していません。
島 洋祐
株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

