マンション管理の業務内容とは?宅建士が教える委託費内訳と選び方の3ステップ

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マンション管理の業務は、清掃や点検だけではありません。会計、出納、修繕の企画といった法律上の「基幹事務」から、管理員の受付や設備の点検まで幅があります。役員になった人が最初に押さえるのは、誰が決めて、誰が実行するか、という役割の線です。

  • 管理組合が決める。区分所有者全員で構成される団体が、総会で方針と予算を決めます。
  • 管理会社が実行する。管理委託契約に基づき、会計や点検などの実務を代行します。
  • 委託費は四つの業務で読む。事務管理、管理員、清掃、建物設備管理に分けて内訳を見ます。
  • 選び方は3ステップ。仕様の整理、同じ仕様で2〜3社の見積もり、総会の決議です。

この記事は2026年9月時点の説明です。※本記事は一般的な情報提供を目的としています。

管理組合と管理会社の役割のアイコン図

目次

管理組合と管理会社、自治会の違い

三つの団体は目的も根拠も別です。混同すると、管理費の使途や総会の議案がずれます。

  • 管理組合。区分所有法第3条により、区分所有者が2人以上いれば当然に存在する団体です。加入も脱退も選べず、合意で解散することもできません。建物、敷地、附属施設の管理のために、集会(総会)を開き、規約を定め、管理者を置くことができます。
  • 総会の決議。区分所有法第39条では、規約に別段の定めがなければ、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数で決します。標準管理規約第47条では、第1項で議決権総数の過半数の出席、第2項で出席組合員の議決権の過半数です。規約の変更は区分所有法第31条の特別決議で、区分所有者および議決権の各過半数の出席を満たしたうえで、出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上です。規約で定足数を引き上げることはできる。4分の3を下げることはできない。標準管理規約第47条第3項にも対応する定めがあります。
  • 管理会社。マンション管理適正化法の登録を受けたマンション管理業者です。標準管理規約第33条は、管理組合の業務の全部または一部を管理業者等の第三者に委託できると定めます。委託しても、決めるのは管理組合です。
  • 自治会。居住者が任意に加入する地縁団体です。標準管理規約のコメントは、自治会費を管理費と一体で徴収する場合でも、加入を強制せず、加入を希望しない人から徴収せず、管理費とは区分経理することを求めています。自治会費は管理費の使途ではありません。

賃貸物件の収益を目的とするプロパティマネジメント(PM)は、分譲マンションの管理とは目的と根拠が違います。管理会社の見積もりを読むときに、PMの言葉を持ち込まないほうが混乱しません。

法律で決まっている「基幹事務」

基幹事務とその他業務の違い

マンション管理適正化法第2条は、管理事務の中核を「基幹事務」と定義しています。委託費の中で、この三つはどこに入っているかを確認します。

  • 会計の調定。管理組合の収入と支出を調べて定める事務です。
  • 出納。管理費や修繕積立金の収納と、支払の事務です。
  • 維持・修繕の企画または実施の調整。専有部分を除くマンションの維持や修繕について、企画し、実施を調整する事務です。工事そのものではありません。
  • 第74条。管理業者は、基幹事務を一括して他人に委託できません。清掃、消防設備点検、エレベーター点検は基幹事務そのものではないので、専門業者への再委託は禁止の対象ではありません。

基幹事務に付随して、適正化法は管理会社に次の義務も置いています。委託先を比べるとき、どの会社にも共通の下限です。

  • 第72条。管理受託契約を新たに結ぶときの重要事項説明です。説明会を開き、説明会の1週間前までに重要事項と日時場所を書いた書面を区分所有者等と管理者等の全員に交付し、管理業務主任者が説明します。同一条件の更新は書面交付で足り、管理者がいれば管理者へ説明します。
  • 第73条。契約成立後、遅滞なく管理者等へ契約内容の書面を交付します。管理者がいないとき、または業者自身が管理者のときは、区分所有者全員へ交付します。
  • 第76条。修繕積立金などの財産を、自己の財産や他の組合の財産と分別して管理します。
  • 第77条。管理者がいるとき、定期に管理業務主任者が管理事務の報告をします。

標準管理委託契約書の四つの業務

管理委託の四業務の内訳図

国土交通省のマンション標準管理委託契約書(令和5年9月11日改定)は、管理事務を四つに分けています。見積書と契約書は、この四つの行があるかを見ます。

  • 事務管理業務。基幹事務(会計、出納、修繕の企画調整)と、理事会・総会の支援、議事録案の作成、管理費等の督促の補助などです。
  • 管理員業務。受付、鍵の保管、工事や点検の立会い、館内の巡回です。通勤か住込みか、勤務日と時間で費用が動きます。
  • 清掃業務。掃き拭きの日常清掃と、床洗浄などの定期清掃です。回数と範囲を仕様に書きます。
  • 建物・設備管理業務。エレベーター、消防用設備、給排水設備などの点検です。法定点検の頻度は法令で決まり、それ以外は仕様です。

四つの業務のほかに、管理会社が任意で提案する事項(コールセンター、駐車場の運営支援など)がある場合は、合計の外に置いて比べます。基本の四業務が同じ仕様でそろっていなければ、金額の差は比べられません。

委託費の内訳は「一式」を空欄で読む

委託費の相場を円で示す全国の統計はありません。令和5年度マンション総合調査の管理費(駐車場使用料等を含む1戸月額17,103円)は、区分所有者が組合に払う管理費であり、管理会社へ払う委託費ではありません。この数字を委託費の相場として使わないでください。

  • 行を分ける。事務管理、管理員、清掃、建物設備管理の四行に分け、それぞれの回数、人数、時間を仕様書と突き合わせます。
  • 「一式」は空欄。内訳が無い行は、金額の根拠を聞きます。0円と書き換えたり、勝手に他の行へ振り分けたりしません。
  • 再委託先。清掃や点検を外注する場合、どの業者に、どの頻度で出すかを確認します。基幹事務の一括再委託は第74条で禁止です。
  • 口座の型。管理費等の収納方法は三つの型があります(収納後に組合保管口座へ移す、積立金は組合口座へ直接入れ管理費は収納口座、組合名義の一口座)。管理会社が通帳と印鑑を両方持たない形にします。保証には上限があります。
  • 安さだけで決めない。清掃回数や管理員の時間を削れば金額は下がります。減った仕様を理事会が把握しているかが先です。

解約や更新の条件は、いま結んでいる契約書が優先です。標準管理委託契約書は、少なくとも三月前の書面による申入れを解約のモデルとしています。自組合の契約書の予告期間を先に確認してください。

失敗しない選び方の3ステップ

管理会社選びの3ステップ

管理会社の見直しは、仕様の整理、見積もり、総会の三段階で進めます。順番を飛ばすと、比べられない見積もりが集まります。

  • ステップ1 仕様を整理する。現契約の四業務を表にして、いまの回数と人数を書き出します。不満(対応の遅さ、清掃の不足、報告の薄さ)を業務の行に対応させます。理事会で方針を固めます。
  • ステップ2 同じ仕様で2〜3社。同じ仕様書で2〜3社に見積もりを依頼し、面談で担当者と報告の仕方を確認します。5〜6社へ同時に出すと、20〜40戸程度の規模では辞退が増えます。これは実務上の傾向であり、統計ではありません。
  • ステップ3 総会で決議する。管理委託契約の締結は、標準管理規約第48条第17号の総会決議事項です。決議の要件は第47条の普通決議(出席組合員の議決権の過半数)です。規約に別段の定めがあれば、その定めです。

新しい管理会社と契約するときは、契約前に適正化法第72条の重要事項説明会があります。説明会の1週間前までに書面が届いているか、管理業務主任者が説明するかを確認します。現管理会社への解約の申入れは、契約書の予告期間に合わせて書面で行います。

管理組合の業務の範囲を先に知る

管理会社に何を委託するかは、管理組合の業務が何かを知ってから決まります。標準管理規約第32条は、管理組合の業務を列挙しています。委託の仕様書は、この一覧のどれを外に出すかの表です。

  • 保安・保全・清掃。敷地と共用部分等の保安、保全、保守、清掃、消毒、ごみ処理です。管理員業務と清掃業務に対応します。
  • 修繕と長期修繕計画。共用部分等の修繕、長期修繕計画の作成または変更、修繕等の履歴情報の整理です。事務管理業務の中の修繕の企画調整に対応します。
  • 損害保険。共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務です。保険の募集は保険会社側の資格の話で、管理会社の重要事項説明とは別です。
  • 渉外と広報。官公署や町内会等との渉外、広報、連絡です。町内会との渉外は組合の業務ですが、自治会費の徴収を組合の義務にするものではありません。
  • 専門家の活用。第34条は、マンション管理士などの専門家に相談や助言を求めることができると定めます。管理会社と別の視点が要るときの入口です。

更新のとき、理事会で見る三つ

管理委託更新で理事会が見る三点

  • 同一条件かどうか。金額と仕様が同じ更新は、第72条第2項により書面の交付で足ります。管理者がいれば管理者へ説明します。金額や仕様が変わる更新は、新規と同じ説明会の手続です。書面が届いた日と、契約満了日の間隔を記録します。
  • 報告の中身。第77条の管理事務報告は、管理者がいるとき、定期に管理業務主任者が行います。報告書に四業務ごとの実施回数、未収金、修繕の実施状況があるかを見ます。数字が無い報告は、次回の仕様の材料になりません。
  • 分別管理の確認。第76条の分別管理は、口座の型を決めるだけでは終わりません。通帳と印鑑をどちらが持つか、残高の証明をいつ受け取るかを、理事会の記録に残します。

小規模マンションで起きやすいこと

  • 担い手が少ない。役員の交代が難しく、管理会社の報告を読む人が固定しがちです。第77条の管理事務報告を、理事会の議事録に残す運用が助けになります。
  • 見積もりの辞退。規模が小さいと、管理会社側の採算から辞退が出ます。依頼先を絞り、仕様を明確にするほうが提案を受けやすい、というのが実務上の傾向です。
  • 管理費と委託費の混同。総合調査の管理費は組合の収入側の数字です。委託費の見直しは、見積もりの四行で行います。

よくある質問

Q. 管理計画認定を受けた管理会社を選べばよいですか。
A. 管理計画認定は、管理組合の管理計画を都道府県等の長が認定する制度で、認定は5年ごとに更新します。管理会社を格付けする制度ではありません。マンション管理業協会の管理適正評価も、管理会社の順位表ではありません。申請の手続を支援できるかは、面談で聞く項目です。

Q. 管理会社に全部任せてよいですか。
A. 業務の委託はできますが、管理費等の額、予算、決算、委託契約の締結は総会の決議事項です(標準管理規約第48条)。決める役割は組合に残ります。

Q. 補助金はありますか。
A. 管理会社の選定や変更そのものに使える全国共通の補助金はありません。自治体の助成は年度の要綱が優先です。金額を前提に計画を組まないでください。

Q. 管理業務主任者とマンション管理士はどう違いますか。
A. 管理業務主任者は、管理会社側で第72条の重要事項説明や第77条の管理事務報告を行う資格です。マンション管理士は名称独占の資格で、管理組合側の相談や助言を行います。宅地建物取引士は売買や賃貸の重要事項説明の資格で、管理委託契約の説明資格ではありません。

Q. 最初にどの書類を見ますか。
A. いまの管理委託契約書(業務の仕様と解約条項)、管理規約の総会決議の条項、直近の管理事務報告書です。

まとめ

  • 管理組合は区分所有法第3条で当然に存在する団体で、決めるのは総会です。管理会社は委託契約で実務を代行します。
  • 基幹事務は会計の調定、出納、修繕の企画調整の三つで、第74条により一括再委託はできません。
  • 委託費は事務管理、管理員、清掃、建物設備管理の四行で読み、「一式」は空欄のまま根拠を聞きます。
  • 総合調査の管理費(17,103円)は委託費の相場ではありません。
  • 選び方は、仕様の整理、同じ仕様で2〜3社、第48条第17号の総会決議の3ステップです。新規契約には第72条の重要事項説明があります。

免責事項本記事は2026年9月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。委託の業務範囲、費用、解約条件はその管理規約、管理委託契約書、見積もりで確認してください。

島 洋祐

株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

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この記事を書いた人

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