管理会社の不正を疑ったら?書類確認と監事の調査手順

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管理費の使途や、管理会社の出納に疑いを持ったとき、最初に必要なのは相手を問い詰めることではありません。組合の口座の残高と、管理会社から受けている報告書の数字を、組合の手で突き合わせることです。差が出た箇所を記録してから、監事、弁護士、行政へと順に外へ出します。

  • 記録。気づいた日、書類の名前、金額の差、説明を求めた相手と日時を、理事会の記録に残します。
  • 口座。組合名義の通帳の原本と残高証明を、管理会社を通さず組合が金融機関から直接取ります。
  • 報告書。マンション管理適正化法第77条の管理事務報告と、収支報告の数字を、通帳の入出金と同じ月で並べます。
  • 監事。単棟型標準管理規約第41条の監査権で調査し、不正があると認めるときは臨時総会を招集できます。
  • 専門家。弁護士に相談し、刑事の告訴と民事の請求のどちらを、いつ出すかを切り分けます。

この記事は2026年9月時点の説明です。※本記事は一般的な情報提供を目的としています。

不正疑い時に先に固める事実

目次

管理会社の不正疑い|財産の分別管理をまず確認する

管理会社が管理組合の金銭をどう扱うかは、法律で型が決まっています。疑いの多くは、この型からのずれとして現れます。

  • 適正化法第76条。マンション管理業者は、管理組合から委託を受けて管理する修繕積立金その他の財産を、自己の固有財産および他の管理組合の財産と分別して管理しなければなりません。具体の方法は施行規則第87条です。
  • 三つの型。管理費等を収納口座に入れてから組合の保管口座へ移す型、修繕積立金は組合の口座へ直接入れて管理費は収納口座に入れる型、組合名義の一つの口座で扱う型があります。自組合の契約書がどの型かを確認します。
  • 通帳と印鑑。管理会社が組合の口座の通帳と印鑑を両方持つことはできません。標準管理規約第62条のコメントは、印鑑の保管と鍵の保管を理事長と副理事長に分けるなど、取扱いを細則で定めるよう求めています。
  • 保証の上限。収納口座の残高に対する保証契約には上限があります。保証があるから安全、とは考えません。
  • 残高証明。決算のたびに、組合の名義で金融機関から残高証明を取ります。管理会社が作った残高の表だけで監査を終えません。

疑いを持った月だけでなく、前年度末と当年度の各月末の残高を、通帳原本で確認します。報告書の残高と一致していれば、次は個々の支出の裏付けです。

口座の名義が管理会社になっているときは、契約書の口座の型と、分別管理の方法を先に読みます。組合名義へ移す手続は、契約の条項と金融機関の手続です。名義を変える前に残高証明を取り、移した日の前後の数字を残します。移したあとも、印鑑の保管者と通帳の保管者を分けます。

管理費と修繕積立金は、標準管理規約第28条第4項で区分して経理します。令和5年度マンション総合調査では、区分経理をしている組合は90.1パーセントです。管理費の口座から積立金へ移した記録が無い、積立金から管理費の経常支出を出している、という行は、疑いの対象です。使途は第27条と第28条です。火災・地震等の損害保険料は第27条第5号の管理費の使途です。計画修繕は第28条第1項第1号の積立金です。

分別管理と帳簿突合のアイコン図

報告書と帳簿を、同じ月で突き合わせる

  • 第77条の管理事務報告。管理者等が置かれている組合には、管理業者は定期に、管理業務主任者をして管理事務に関する報告をさせなければなりません。管理者等が置かれていないときは、説明会を開いて区分所有者等に報告します。主任者は主任者証を提示します。
  • 第75条の帳簿。管理業者は、委託を受けた管理事務について帳簿を作成し、保存する義務があります。組合の会計の元になる帳簿です。
  • 第79条の書類。管理業者は、業務および財産の状況を記載した書類を事務所ごとに備え置き、業務の関係者の求めに応じて閲覧させます。
  • 標準管理規約第64条。理事長は、会計帳簿、什器備品台帳その他の帳票類を作成して保管し、組合員または利害関係人の理由を付した書面による請求があれば閲覧させます。コメントは、領収書、請求書、管理委託契約書、修繕工事請負契約書、保険証券なども保管する帳票類に挙げています。
  • 突合の単位。通帳の出金一行ごとに、請求書、領収書、契約書、理事会の承認の記録を当てます。当たらない行が疑いの対象です。

報告書は管理会社が作ります。帳簿の元になる証憑(請求書、領収書、契約書)は、組合が保管するものです。証憑が管理会社の手元にしかない組合は、疑いの前から写しを組合の保管に移しておきます。

突き合わせで見る行は、次の四つです。管理費等の入金が戸数と単価から計算した額と合うか。管理委託費の出金が契約書の額と合うか。修繕と点検の出金に見積もりと承認の記録があるか。保険料と税金の出金に証券と納付書があるか。合わない行だけを抜き出し、説明を求める対象にします。全部を一度に問い詰めません。

適正化法第73条は、契約が成立したあと、管理業者に書面の交付を義務づけています。管理者等がいるときは管理者等へ、業者が管理者であるときまたは管理者がいないときは区分所有者全員へ渡します。書面には契約期間、業務の内容と実施方法、報酬の額、支払い方法が入ります。この書面と、毎月の請求の内訳が食い違うときは、契約の範囲を超えた請求の候補です。

管理会社不正の疑いを監事の権限で調査する

監事の監査権限と臨時総会

理事会が管理会社と近い距離にあるとき、調査の主体は監事です。標準管理規約第41条は、監事に理事会とは別の立場を与えています。

  • 第1項。監事は、管理組合の業務の執行および財産の状況を監査し、その結果を総会に報告します。
  • 第2項。監事は、いつでも、理事および職員に対して業務の報告を求め、業務および財産の状況を調査できます。ここでいう職員は、規約第38条第1項第二号の組合の職員です。管理会社の従業員への調査は、管理委託契約に基づいて理事長が求めます。
  • 第3項。監事は、業務の執行および財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集できます。理事長が動かないときの出口です。
  • 第4項と第5項。監事は理事会に出席し、必要があれば意見を述べます。理事の不正、または法令・規約・総会決議に違反する事実や著しく不当な事実を認めるときは、遅滞なく理事会に報告します。第6項で、理事会の招集を理事長に請求できます。
  • 第40条第2項。理事は、管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに監事に報告する義務があります。管理会社の不正の疑いはこの事実に当たります。

監事が一人で調べきれないときは、総会か理事会の決議で外部の会計の専門家に監査を委ねる組合もあります。その費用は組合の支出です。管理会社に費用を持たせる形にすると、独立性が疑われます。

監事が欠けている組合は、標準管理規約第35条第2項で、総会の決議により組合員のうちから監事を選任します。調査の途中で監事が辞任したときは、臨時総会で後任を選びます。監事がいないまま理事長だけが調査すると、第41条の監査と第40条第2項の報告が回りません。役員の選任と解任は第48条第2号の総会決議事項です。

標準管理規約第59条は、理事長が毎会計年度の収支決算案を、監事の会計監査を経て通常総会に報告し、承認を得る、と定めています。決算の承認を急いで通す前に、監事の監査報告を総会資料に付けます。監査報告が無い決算案は、第59条の手続が欠けています。

外へ持ち出すときの相手と順番

不正調査を外へ出す順番

  • 弁護士。証拠の整理、内容証明での説明要求、告訴か損害賠償請求かの判断を頼みます。マンション管理センターや弁護士会の相談窓口は入口として使えます。
  • 警察。着服のように犯罪の疑いがあるときは、弁護士と相談のうえで相談や告訴に進みます。告訴状の記載は弁護士に依頼します。罪名や適用条文は、弁護士と所管に確認します。
  • 国土交通大臣。適正化法では、管理業者が法律に違反したときの指示(第81条)、一年以内の業務停止(第82条)、登録の取消し(第83条)を国土交通大臣が行います。第86条で、職員が事務所に立ち入り、帳簿や書類を検査できます。組合からの情報提供は、地方整備局の担当窓口が受けます。
  • 契約の解約。解約の予告期間と方法は、いま結んでいる管理委託契約書の条項です。標準管理委託契約書は少なくとも三月前の書面による申入れをモデルにしていますが、自組合の契約書が優先します。解約は標準管理規約第48条第17号の総会決議事項として扱います。
  • 次の管理会社。新しい業者と契約するときは、適正化法第72条の重要事項説明が要ります。急いで決めず、口座の型と印鑑の保管を契約前に確認します。

行政への相談と、契約の解約と、損害の回収は、別の手続きです。三つを同じ日に始める必要はありません。証拠が固まっていない段階で解約を先に出すと、帳簿や証憑の引渡しで争いになります。

解約の申入れをしたあとも、契約が終わる日までは管理事務が続きます。そのあいだの入出金と証憑の引渡しを、書面で日時を切って求めます。次の管理会社が決まる前に、組合名義の口座の届出印と通帳を組合の役員が受け取ります。通帳と印鑑を同じ役員だけが持たない運用は、解約の前後を問いません。

理事会で決めておくこと

不正対応後の管理会社変更で見る点

  • 窓口を一人に。管理会社への説明要求は理事長か監事のどちらかに集め、個々の理事が別々に問い合わせない。
  • 記録の形。やり取りは書面かメールで残し、電話の内容はその日のうちに記録に書く。
  • 閲覧の請求。組合員から第64条の閲覧請求が来たときの日時と場所の指定を、あらかじめ決めておく。
  • 総会への報告。調査の途中でも、第41条第1項の監事の報告として、事実の範囲を総会に伝える。断定はしない。
  • 引継ぎ。役員が替わっても調査が止まらないよう、資料の保管場所と経過の一覧を理事長と監事の両方が持つ。

疑いが晴れたときも、記録は残します。口座の型、印鑑の保管、証憑の保管場所は、疑いとは別に、毎年の決算で確認する項目です。

よくある質問

Q. 管理会社に通帳を見せてほしいと言えば足りますか。
A. 組合名義の口座なら、組合が金融機関から直接、通帳の記帳や残高証明を取れます。管理会社が作った表ではなく、原本で確認します。

Q. 監事が管理会社の従業員を直接調べられますか。
A. 標準管理規約第41条第2項の相手は、理事と組合の職員です。管理会社への説明要求は管理委託契約に基づき、理事長が行います。監事は理事長にその要求を促し、結果を監査します。

Q. 被害額はどのくらいから警察に行くべきですか。
A. 金額の基準はありません。犯罪の疑いがあるかで判断し、弁護士と相談して進めます。金額の目安は、見積書で確認します。

Q. 管理計画認定を受けている管理会社なら安心ですか。
A. 管理計画認定は、管理者等が、適正化推進計画を持つ都道府県等の長に申請する制度です。認定の対象は管理組合の管理の状態であり、管理会社を評価するものではありません。認定は5年ごとに更新します。

Q. 理事会が動かないとき、区分所有者はどうしますか。
A. 監事がいるときは、第41条第3項の臨時総会の招集を監事に求めます。監事も動かないときは、区分所有法第34条第3項です。議決権を有しない人を除いた区分所有者の5分の1以上で、議決権の5分の1以上を有する人は、管理者に集会の招集を請求できます。請求から2週間以内に、請求の日から4週間以内の日を会日とする招集通知が発せられないときは、請求した区分所有者が集会を招集できます。通知は法律では少なくとも1週間前、標準管理規約第43条では2週間前です。

まとめ

  • 最初にやるのは記録と、組合の手で取る通帳原本と残高証明です。
  • 適正化法第76条の分別管理と施行規則第87条の口座の型、通帳と印鑑の保管を確認します。
  • 第77条の管理事務報告、第75条の帳簿、標準管理規約第64条の帳票類を、同じ月で突き合わせます。
  • 調査の主体は第41条の監事です。不正があると認めるときは臨時総会を招集できます。
  • 弁護士、警察、国土交通大臣への相談と、契約の解約は別の手続きです。証拠を固めてから順に出します。

免責事項本記事は2026年9月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。調査の手順、契約の解約、法的措置は、その管理規約、管理委託契約書、弁護士の助言で確認してください。

島 洋祐

株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

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この記事を書いた人

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