修繕積立金の不足|見直しの時期と値上げ・一時金・借入

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

修繕積立金が足りるかどうかは、残高の数字だけでは決まりません。長期修繕計画の収支が、計画期間のどこかでマイナスになるか。次の工事の見積もりが、その時点の残高を超えるか。この二つを分けて見ます。全国一律の不足率や、2026年の新制度はありません。

  • わかる時:見直しは5年程度が目安です。大規模修繕の記載例は12〜15年です。見積もりを取った年に、現預金の不足が表面化することがあります。
  • 区分経理:修繕積立金は管理費と分けて経理します(標準管理規約第28条第4項)。令和5年度マンション総合調査では、区分経理している組合は90.1%です。
  • 段階増額:初期額は均等額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内、というのが修繕積立金ガイドライン(令和6年6月改定)の目安です。
  • 決議:額の変更は総会です。標準管理規約を使う組合では第48条第6号です。

この記事は2026年9月時点の説明です。※本記事は一般的な情報提供を目的としています。

積立金不足は計画と見積でわかる図

目次

修繕積立金の不足|管理費と積立金は使途が違う

標準管理規約(単棟型、令和7年10月17日改正)では、日常の費用と、将来の特別の管理の費用を分けています。自組合の規約が違えば、その規約が先です。

  • 管理費(第27条):使途は11項目です。清掃、点検、保険料(第5号の火災・地震等)、管理委託費などが入ります。自治会費は含みません。
  • 修繕積立金(第28条第1項):取崩しは6事由に限ります。計画的な修繕、不測の修繕、改良・変更、再生等の調査、積立金の管理運用、その他特別に必要な管理です。
  • 区分経理(第28条第4項):管理費と分けて経理します。調査の90.1%はこの分け方をしている、という数字です。足りないから管理費を積立へ回す、という処理は、この条に合いません。
  • 使用料(第29条):駐車場使用料などは、管理に要する費用に充て、残りを修繕積立金へ積みます。
  • 負担の割合(第25条第2項):管理費等の額は、共用部分の共有持分に応じて定めます。規約で別段があれば、その定めです。

令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)の1戸あたり月額は、修繕積立金(駐車場等を除く)13,054円、駐車場等を含むと13,378円です。管理費(駐車場使用料等を含む)17,103円は、管理委託費ではありません。自組合の額を、この平均だけで高い安いとは決めません。

管理費と修繕積立金の使途のアイコン図

不足が表面化する三つの時

国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)では、計画期間は30年以上で大規模修繕を2回以上含めます。見直しは5年程度です。計画は、将来の工事の内容・時期・費用を確定するものではありません。

  • 計画上の不足:収支計画で、推定修繕工事費の累計を、積立金(基金、一時金、使用料からの繰入れ、運用益を含む)の累計が下回る年です。大規模修繕の予定年度に一時的に下回るときは、その年度に一時金または借入を置く、というのがガイドラインの標準的な考え方です。
  • 現預金の不足:工事の見積もりを取ったときに、残高が足りない、という表面化です。外壁塗装・屋上防水などの大規模修繕の記載例は12〜15年です。令和3年度の調査では、この周期が約7割です。屋上の寿命そのものではありません。
  • 段階増額の歪み:初期を低く置きすぎると、見直しのたびに上げ幅が大きくなります。目安は、初期が均等の0.6倍以上、最終が1.1倍以内です。円/㎡のベンチマークだけで判断しません。確認するのは自組合の計画と見積もりです。

理事会で先に開く表は、計画期間の推定工事費累計、残高、使用料からの繰入れ、次の大規模修繕の年、月額のいまの額、均等に直した額、です。一式の行は空欄です。金額が無い行をゼロ円として合計しません。

修繕積立金が不足したときの対応

積立金不足への三つの対応

対応は一つに限りません。値上げ、一時金、借入、工事仕様の見直しを、同じ総会の資料で並べます。全国共通の補助金はありません。

  • 値上げ:額と賦課徴収方法は第48条第6号です。均等方式へ寄せるか、段階増額の幅を0.6/1.1に収めるかを、計画の変更(第48条第5号)とセットで議案にします。
  • 一時金:当該年度の不足を、持分で割って徴収します。売買契約や規約に修繕積立基金の定めがあるときと、後から徴収する一時金は別です。返還は、規約に定めがある場合だけです。
  • 借入:第28条第1項の業務に必要な範囲で借りられます(第63条)。償還には第28条第3項で修繕積立金を充てられます。実施と取崩し、借入は第48条第10号です。
  • 仕様の見直し:同じ仕様で2〜3社です。5社、6社へ同時に出すと、20戸から40戸程度では辞退が増えます。これは実務上の傾向であり、公的な統計ではありません。現地確認の回数は、各社の見積条件で確認します。「大規模修繕 一式」だけの見積もりは、内訳を出してから比べます。

住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資は、管理計画認定で年0.2%引き下げがあります。すまい・る債、耐震・浸水・省エネでも各0.2%、下限は0.1%です。節約額は、証券と見積もりの差額で確認します。金利そのものの数字は、申込時点の機構の案内が先です。

東京都のマンション改良工事助成は、工事の例として名前だけ挙げます。申請者は管理組合です。円と利子補給の率は、年度の要綱です。新宿区は、管理計画認定の手続支援の例として名前だけです。

総会の定数と、認定の位置づけ

積立見直しの総会定数と認定の位置

標準管理規約を使う組合の普通決議は、規約第47条です。議決権総数の過半数の出席と、出席した組合員の議決権の過半数です。これは区分所有法第47条ではありません。法第47条は、管理組合法人の設立です。

  • 規約が無いとき:区分所有法第39条です。出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)およびその議決権の各過半数です。書面と委任状は第2項で出席に数えます。
  • 招集:法律の第35条は少なくとも1週間前です。規約は延ばせても縮められません。標準管理規約第43条は2週間前です。額の変更を、通知に無い議案で足すことは、第37条の原則に合いません。
  • 特定承継人:管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の特定承継人にも行えます(第26条)。売却後の未納は、買主へ請求できる、という条です。不足の値上げそのものを、前の所有者へ遡って課す条ではありません。

管理計画認定は、管理者等が、適正化推進計画を持つ都道府県等の長に申請します。認定は5年ごとに更新します。条番号は手元の契約書で確認します。マンション管理業協会の管理適正評価は、管理会社の順位表ではありません。評価の段階の数は、協会の要領で確認します。二つの制度を、積立金不足の解消そのものだとは扱いません。

マンション長寿命化促進税制は、令和5年4月1日から令和9年3月31日までに完了した工事が対象です。外壁塗装等に加え、床防水と屋根防水、築20年以上、10戸以上、翌年度の建物の固定資産税のみ1/6〜1/2(参酌1/3、東京23区は1/2)、100㎡上限です。都市計画税は減額なし。完了後3か月以内に申告します。税の減額を、積立金の不足額の穴埋めだとは扱いません。

積立金不足の検討で理事会がそろえる書類

積立不足検討で先にそろえる書類

値上げや借入の議案を作る前に、次を一式にします。

  • いまの長期修繕計画と、直近の見直し日
  • 修繕積立金会計の残高と、管理費会計との区分の有無
  • 月額のいまの額と、均等に直した額、段階増額の将来の段
  • 次の大規模修繕の見積もり、または概算の出どころ
  • 管理規約の第25条・第28条・第47条・第48条に当たるページ
  • 借入を検討するなら、融資の対象工事、認定の有無、償還を積立金から出す旨の記載

監事は、業務執行と財産の状況を監査し、総会に報告します(標準管理規約第41条)。不足の説明資料は、監事の監査の対象にもなります。理事長が管理者なら、区分所有法第38条第2項です。

収支の表で確認する4つの数字

ガイドラインの収支計画は、推定修繕工事費の累計が、積立金の累計を下回らないように置く、という考え方です。理事会が総会資料で示すときは、次の四行を同じ期間で並べます。

  • 支出の累計:計画期間の推定修繕工事費。借入があるときは償還金を含めます。
  • 収入の累計:修繕積立金、修繕積立基金、一時金、専用使用料と駐車場等の使用料からの繰入れ、運用益。
  • 残高:見直し時点の修繕積立金会計の残高。管理費会計の残高は足しません。
  • 月額の置き方:必要な総額を計画期間の月数で割り、規約の負担割合を掛けます。段階増額なら、初期と最終が0.6/1.1に収まるかを別行で示します。

大規模修繕の予定年度だけが赤字で、期間全体では足りる、という形もあります。そのときは、その年度の一時金または借入を議案にし、期間全体の月額まで一気に上げるかは、別の判断です。工事費の作成費用に、国の単価はありません。

第32条の業務に、長期修繕計画の作成または変更と、計画書の管理、修繕等の履歴情報の整理があります。見積もりと工事写真、使った仕様を一式で残すと、次の5年の見直しが早くなります。売買のとき、購入予定者が見る資料にもなります。

管理会社に計画の見直しを頼むときは、四つの業務のうち事務管理の範囲か、別契約かを契約書で確認します。基幹事務の一括再委託は、マンション管理適正化法第74条でできません。計画作成そのものは基幹事務の一括再委託とは限りません。成果物の説明は、組合が受け取り、総会の議案は理事会が作ります。第77条の定期報告と、計画見直しの成果物は別の書面です。報告の回数は、各社の見積条件と仕様書で確認します。主任者から管理者へ出す報告です。管理者がいるときに定期に出す条です。

よくある質問

Q. 不足はいつわかりますか。
A. 計画の見直しで将来の累計が下回る年が見えたときと、工事の見積もりが残高を超えたときです。残高がプラスでも、次の大規模修繕の年に足りないことがあります。

Q. 値上げは特別決議ですか。
A. 標準管理規約では普通決議です(第47条第1項・第2項、第48条第6号)。規約で別段があれば、その定めです。建替え決議の各5分の4は、積立金の値上げの決議の定数としては用いません。

Q. 管理費を積立金に回してよいですか。
A. 第28条第4項の区分経理が先です。使途も第27条と第28条で分かれています。一時的な繰入れが規約で認められているかは、自組合の規約を見ます。

Q. 補助金で不足は埋まりますか。
A. 積立金不足そのものへの全国共通の制度はありません。東京都のマンション改良工事助成は工事の例で、申請者は管理組合です。額は年度の要綱です。支援を前提にした計画は作りません。

Q. 値上げを可決したあと、いつから新額になりますか。
A. 総会で決めた賦課徴収の開始月です。第48条第6号は額と方法の両方です。開始月を議案に書かないと、収納の実務がずれます。口座振替の変更に要する期間も、議案の注記に残します。

Q. 段階増額の将来の段は、今の総会で全部決める必要がありますか。
A. 計画に将来の段を書いておき、実際の額の変更は、その都度第48条第6号で決議する、という進め方が多いです。将来の段だけを資料に載せても、額の変更決議が無ければ新額にはなりません。規約に自動改定の定めがあれば、その定めが先です。

まとめ

  • わかる時:5年程度の見直しと、工事の見積もり。計画上の不足と現預金の不足は別です。
  • 会計:第28条の6事由と区分経理。調査では90.1%。積立金の平均は1戸月額13,054円(駐車場除く)。
  • 段階増額:初期0.6倍以上、最終1.1倍以内。円/㎡は使いません。
  • 対応:値上げ(第48条第6号)、一時金、借入(第63条)。見積もりは同じ仕様で2〜3社。
  • 認定:管理計画認定は5年更新。機構融資は認定で年0.2%引き下げ。補助の額は、当該年度の要領で確認します。

免責事項本記事は2026年9月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。修繕積立金の不足、値上げ、一時金、借入はその管理規約、長期修繕計画、見積もり、融資の案内で確認してください。

島 洋祐

株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

建物管理に関するお悩みはお気軽にご相談下さい!
大手建物管理会社では対応が難しい自主管理物件や小規模マンションにも、当社は的確なサポートを提供します。
規模に関わらず、管理組合様のニーズに寄り添い、資産価値の維持・向上に貢献する最適な管理プランをご提案。
長期的な安定と快適な居住環境づくりを全力でサポートいたします。

マンション管理のこと、 どんな小さな疑問でも
大丈夫です!

どんな些細なことでも構いません。管理費の最適化や修繕計画、住民トラブルの対応まで、
少しでも気になることはMIJまでお気軽にご相談ください!

相談は無料です!マンション管理のことは
何でもご相談ください!

03-5333-0703 電話で相談する

営業時間:10:00~18:00
平日、土日も営業(年末年始・お盆を除く)