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新築の分譲で払う修繕積立基金は、毎月の修繕積立金とは別の名目で一括徴収されることが多いお金です。売却や転居のときに組合から個人へ戻るか、という問いへの答えは、法律が一律に決めるものではありません。先に見るのは、そのマンションの管理規約と、売買契約書です。
- 組合からの返還。標準管理規約では、納入した管理費等の返還請求はできません。規約に別段の定めがあるときだけ、その定めに従います。
- 売買での清算。売主と買主のあいだで、未経過分や承継の対価を売買代金に含める、または精算金として授受する慣習はあります。これは組合からの払い戻しではありません。
- 基金の行き先。分譲時に基金として徴収されたお金も、修繕積立金として積み立て、管理費とは区分経理するのが標準管理規約のコメントです。
- 先に開く書類。管理規約の積立金条項、直近の会計報告、長期修繕計画、売買契約書の清算条項の四つです。
この記事は2026年9月時点の説明です。※本記事は一般的な情報提供を目的としています。

修繕積立基金|毎月の積立金と同じ会計へ入る
修繕積立基金という名前は、法律の条文にある制度名ではありません。分譲会社が、将来の計画修繕に充てるため、購入時に一括で徴収している場合の呼び名です。標準管理規約(単棟型、令和7年10月17日改正)の第28条関係コメントは、基金も一時負担金も、修繕積立金として積み立て、区分経理すべきだと書いています。
- 第25条。区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費と修繕積立金(あわせて管理費等)を管理組合に納入します。額は共用部分の共有持分に応じて算出します。規約で別段があれば、その定めです。
- 第28条第4項。修繕積立金は、管理費とは区分して経理しなければなりません。基金が入ったあとも、管理費会計へ混ぜません。
- 令和5年度マンション総合調査。管理費と修繕積立金の区分経理は90.1パーセントです。この数字は、基金を管理費へ流用してよい根拠ではありません。
- 管理費は管理委託費ではない。総合調査の管理費には駐車場使用料等が入る集計があり、委託業務費の相場としては使いません。基金の返還額を、管理費の全国平均から逆算もしません。
口座の名義と印鑑の持ち方は、管理を委託しているときはマンション管理適正化法の分別管理の型に沿います。収納後に組合保管口座へ移す型、積立金は組合口座へ直接入れ管理費だけ収納口座に入れる型、組合名義の一口座の型の三つがあります。管理会社が通帳と印鑑を両方持つ形は選びません。保証には上限があります。基金が入った口座も、この分別の対象です。
標準管理規約第29条は、駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料を、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てると置いています。使用料の一部が積立金会計へ入っていても、それは基金の返還原資ではありません。第48条第7号は、修繕積立金の保管及び運用方法を総会の決議事項にしています。運用先を変える判断と、個人への払い戻しは別の議案です。

取り崩せるのは、第28条の特別の管理

積み立てた修繕積立金は、標準管理規約第28条第1項の特別の管理に充てるときに限り、取り崩せます。売却する区分所有者への払い戻しは、この6事由に入っていません。
- 第1号。一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕。
- 第2号。不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕。
- 第3号。敷地及び共用部分等の改良または変更。
- 第4号。マンション再生等に係る合意形成に必要となる事項の調査。
- 第5号。修繕積立金の管理及び運用。
- 第6号。その他、敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理。
第1号から第3号には、工事本体のほか、計画立案、工事履歴の調査、設計など準備段階の費用も含まれます。第5号の例は、残高証明書の発行手数料、共用部分リフォーム融資を使うときの保証料、工事代金の振込手数料などです。管理及び運用の費用を管理費から出す定めも、コメントは認めています。
取崩しは、標準管理規約第48条第10号で総会の決議事項です。第6号は管理費等及び使用料の額と賦課徴収方法、第5号は長期修繕計画の作成または変更です。理事会だけで基金を個人へ戻す決議は、この並びにはありません。額の変更と取崩しの決議要件は、規約に特別の定数がなければ第47条の普通決議です。第1項は議決権総数の過半数を有する組合員の出席、第2項は出席組合員の議決権の過半数です。書面、代理人、電磁的方法は第7項で出席に数えます。規約に定めがないときは、区分所有法第39条の、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く)及びその議決権の各過半数です。建替えの5分の4は使いません。
長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)では、計画期間は30年以上で大規模修繕を2回以上含み、見直しは5年程度です。段階増額積立方式では、初期額は均等額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内が目安です。工事費の高騰などで大幅な引上げが必要な見直しを、この目安が禁止するわけではありません。円毎平方メートルのベンチマークは、この記事では置きません。
売却で変わるのは組合員。清算は売買契約

区分所有権を売ると、売主は組合員ではなくなります。戻るかどうかの答えは、ここから先が二つに分かれます。
- 第30条。組合員の資格は、区分所有者となったときに取得し、区分所有者でなくなったときに喪失します。基金の持分を売主が組合へ請求する条項ではありません。
- 第26条。管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の特定承継人に対しても行うことができます。未納があるときは、買主へ請求が及び得ます。精算の対象に未納を入れるかは、売買契約です。
- 第60条第7項。組合員は、納入した管理費等及び使用料について、その返還請求または分割請求をすることができません。基金を修繕積立金として納入したあとは、この項の対象です。規約が別の定めを置いていれば、その定めが先です。
- 売買契約の清算。中古の売買では、直近に納めた管理費等の日割りや、基金相当額を売買代金に含める定めを置くことがあります。金額と対象期間は契約書に書きます。組合の口座から売主へ振り込む手続ではありません。
管理組合が消滅するときの残余財産は、別の話です。標準管理規約第32条第14号は消滅時の残余財産の清算を業務に置き、第65条は残余財産を第10条の共有持分割合に応じて各区分所有者に帰属させます。建物と区分所有関係が続くあいだの売却には、この条は当たりません。
仲介の重要事項説明で、修繕積立金の額や滞納の有無は宅地建物取引業法の説明事項です。基金の返還を約束する説明ではありません。売買契約に清算の条項が無いときは、組合へ返還を求める根拠にはなりません。
修繕積立基金の残高を見るときに開く書類

基金がいくら残っているか、これから足りるかは、返還の話とは別に、組合の会計と計画で見ます。
- 管理規約。修繕積立金の条項、返還の可否、負担割合、取崩しの手続を読みます。標準と違う条文があれば、その条文です。
- 長期修繕計画。計画期間、次の大規模修繕の時期、積立予定額と現残高の差を見ます。ガイドラインの記載例では、外壁塗装・屋上防水など大規模修繕は12〜15年目安です。義務の周期ではありません。
- 会計報告。標準管理規約第59条で、理事長は毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て通常総会に報告し、承認を得ます。基金の入金が積立金会計に残っているかを、この報告で確かめます。
- 総合調査の月額。令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)の修繕積立金は、駐車場使用料等を除き1戸月額13,054円です。基金の一括額の相場ではありません。自組合の額をこの数字に合わせる義務もありません。
一時金の徴収は、既存の積立金が工事費に足りないときに区分所有者から徴収されることがあり、第28条関係コメントはこれも積立金として区分経理すべきだと書いています。一時金を基金の返還の代わりに使う、という読み方はしません。第61条第2項は、管理費等に不足を生じたときに、第25条第2項の負担割合でその都度必要な金額の負担を求められます。不足の補填と、転居する人への払い戻しは、同じ条の話ではありません。
第61条第1項は、収支決算の結果、管理費に余剰を生じたときは翌年度の管理費に充当します。修繕積立金の余剰を個人へ返す条項ではありません。第63条は、第28条第1項の業務に必要な範囲で借入れができ、第28条第3項は、その償還に修繕積立金を充てられます。借入の返済計画があるときは、残高の数字だけを見て基金が余っているとは判断しません。
売買の清算額を決める材料は、直近に納めた管理費等の対象月、未納の有無、売買契約の引渡日です。基金の当初額を、所有年数で割って組合へ請求する計算は、標準管理規約にはありません。仲介業者が「慣例だから日割りする」と言っても、契約書に書かなければ組合の手続にはなりません。買主が承継するのは、組合員としての権利義務です。基金の持分を現金で買い取る義務を、法律が買主に課すわけでもありません。
工事の補助は、年度と自治体の要綱が先です。全国共通の補助金はありません。東京都マンション改良工事助成は、共用部分の工事の例として名前だけ挙げます。申請者は管理組合で、金額は当該年度の要領と見積書で確認します。
よくある質問
Q. 売却したら、払った基金は組合から戻りますか。
A. 標準管理規約では戻りません。第60条第7項が返還請求を止めています。規約に返還の定めがあるときだけ、その手続です。
Q. 買主との清算は、必ずしなければなりませんか。
A. 法律が強制する手続ではありません。するときは売買契約書に対象と金額を書きます。書かなければ、組合へ請求する根拠にはなりません。
Q. 基金と毎月の修繕積立金は別会計ですか。
A. 標準のコメントでは、基金も修繕積立金として積み立てます。分けるのは管理費との区分経理です。基金専用の第三会計を法律が命じるわけではありません。
Q. 理事会の判断で、転居する人へ基金を返せますか。
A. 標準管理規約の取崩し事由と第48条第10号の並びに、個人への返還はありません。規約を変えるなら、規約変更の決議が要ります。
Q. 管理組合が解散したら、残高は区分所有者へ分かれますか。
A. 管理組合が消滅するときの残余財産は、第65条で共有持分割合に応じて帰属します。建物が残り区分所有関係が続くあいだの売却には当たりません。
Q. 段階増額の0.6倍と1.1倍は、基金の返還率ですか。
A. 違います。長期修繕計画の段階増額積立方式における、月額の初期と最終の目安です。売却時の清算率ではありません。
Q. 重要事項説明に基金の額が書いてあれば、売却時にその額が戻りますか。
A. 戻りません。宅地建物取引業法の説明は、買主が知るべき管理の現状です。組合からの返還を約束する欄ではありません。戻す定めがあるかは、管理規約です。
まとめ
- 修繕積立基金は、分譲時に一括で徴収されることがあり、標準では修繕積立金として積み立て、管理費と区分経理します。
- 組合から個人への返還は、第60条第7項で請求できません。規約に定めがあるときだけです。
- 取り崩せるのは第28条第1項の特別の管理で、総会の決議が要ります。売却する人への払い戻しは入りません。
- 売却で変わるのは組合員の資格です。未納は特定承継人にも請求できます。清算するなら売買契約書に書きます。
- 残高は規約、長期修繕計画、会計報告で見ます。全国共通の補助金はありません。
免責事項本記事は2026年9月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。基金の返還、取崩し、売買時の清算はその管理規約、契約書、見積もりで確認してください。
島 洋祐
株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

