管理費値上げ総会否決を突破!理事必見の法的要件と4ステップ再提案ガイド

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管理費値上げの総会否決を乗り越える:理事のための法的要件と再提案ステップ

物価高騰の影響がマンション管理現場にも及んでおり、管理費の値上げは多くの管理組合で避けられない課題となっています。しかし、総会で値上げ案を提案しても住民の合意が得られず否決されるケースが目立っています。生活防衛意識の高まりから、住民の目は厳しくなっています。

この記事では、マンション管理組合の理事の皆様に向けて、管理費値上げが総会で否決される背景と法的な決議要件を整理します。その上で、否決を乗り越え、住民との合意形成を図りながら再提案を成功させるための具体的な4つのステップを、宅地建物取引士の視点から実践的に解説します。管理体制を維持し、大切なマンションの資産価値を守るための一助となれば幸いです。

目次

管理費値上げの決議、法的な「壁」とは?

管理費の値上げ提案が否決されたとき、まず確認すべきは「決議要件が正しかったのか?」という点です。値上げに必要な決議の種類は、マンションの管理規約によって異なり、これを間違うと決議自体が無効になる可能性があります。

管理費値上げの決議要件は、管理規約に「管理費の金額」が明記されているかどうかで決まります。

ここでは、決議の分かれ道となる法的なポイントと、関連する法律の基本を押さえておきましょう。

普通決議か特別決議か?分かれ道は「管理規約」への金額記載の有無

管理費の値上げには総会決議が必要です。そのハードルは「普通決議」と「特別決議」の2種類に大別されます。管理規約に別段の定めがある場合は規約が優先されますが、一般的な区分所有法の原則に基づいて説明します。

決議の種類 必要な賛成数 該当するケース 法的根拠
普通決議 区分所有者および議決権の各過半数 管理規約に管理費の具体的な「金額」が定められていない場合の値上げ 区分所有法第39条
特別決議 区分所有者数および議決権の各4分の3以上 管理規約に「管理費は月額〇〇円とする」と具体的な金額が定められている場合の値上げ(規約変更にあたるため) 区分所有法第31条
表1:管理費値上げにおける決議要件の違い(視覚障害者対応のためテキスト代替:普通決議は区分所有者および議決権の各過半数で、管理規約に具体的な金額が定められていない場合の値上げを指し、区分所有法第39条が根拠。特別決議は区分所有者数および議決権の各4分の3以上で、管理規約に具体的な金額が定められた場合の変更を指し、区分所有法第31条が根拠)

まず、ご自身のマンションの管理規約を確認してください。規約に具体的な管理費の金額が記載されていなければ、値上げは普通決議(区分所有法第39条)で可能です。一方、金額が明記されている場合、その変更は規約変更にあたり、特別決議(区分所有法第31条)が必要です。区分所有法第39条は集会の決議一般を定め、「この法律に特別の定めがある場合を除いて、区分所有者及び議決権の各過半数で決する」と規定しています。一方、第31条は「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする」と定めています(出典:建物の区分所有等に関する法律、e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069)。

管理費の負担割合は、区分所有法第11条(共用部分の持分割合)を基礎とし、管理規約で具体的に定められます(標準管理規約第27条参照、国土交通省マンション標準管理規約 令和6年6月改正版 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000001_00001.html)。多くのマンションでは、将来の変動を見越して規約に具体的な金額を定めていないケースが多いですが、最初にこの点を確認することが、再提案に向けた第一歩です。

決議要件のパターン分け

  • パターン1:規約に管理費の具体的な金額が記載されていない場合
    → 決議要件:普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)
    → 法的根拠:区分所有法第39条
    → 理由:金額設定は単なる集会の決議であり、規約変更を伴わない
  • パターン2:規約に「月額〇〇円」と金額が固定的に記載されており、その金額を変更する場合
    → 決議要件:特別決議(区分所有者数および議決権の各4分の3以上)
    → 法的根拠:区分所有法第31条
    → 理由:規約に記載された金額を変更することは規約の変更であり、特別多数決議が必須
  • パターン3:規約に「管理費の額は総会の決議により変更できる」と手続きのみ定められている場合
    → 決議要件:普通決議(区分所有法第39条)
    → 理由:具体金額が固定されていないため、金額変更は単なる決議事項

覚えておくべき法律:区分所有法とマンション管理適正化法

マンション管理の根幹をなすのが「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」と「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」です。

  • 区分所有法:集会(総会)の決議要件や共用部分の管理、規約について定めています。管理費値上げの決議は、第39条(普通決議)や第31条(特別決議)が法的根拠となります(e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069)。
  • マンション管理適正化法:管理組合の運営や管理費・修繕積立金の経理について定めています。特に、管理費と修繕積立金を分けて経理することが義務付けられています(同法第5条の2、令和3年改正、e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC1000000149)。会計の透明性は住民の信頼を得る上で極めて重要です。

これらの法律は管理組合の運営のルールブックであり、住民が値上げに反対する際の権利の根拠ともなります。理事会としては、法律に則った適正な手続きを踏んでいることを示すことが説得の前提です。なお、2025年5月に改正区分所有法が可決・成立しました。この改正では管理組合の運営適正化が強化されますが、管理費値上げの決議要件の基本は変わりません。施行日は今後定められるため注視が必要です(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/)。

なぜ住民は反対するのか?総会で値上げが否決される3つの理由

法的な手続きが正しくても、値上げ案が否決されることはあります。その背景には住民側の切実な事情や感情があります。再提案を成功させるには、「なぜ反対されたのか」を冷静に分析することが不可欠です。

理由1:説明不足と根拠の不透明性

最も多い否決理由が説明不足です。総会の議案書に結果だけが書かれていては、住民は納得できません。

  • なぜ値上げが必要か?(物価上昇、人件費高騰など)
  • その金額はどうやって算出したか?(見積もりの内容、積算根拠)
  • 値上げしないとどうなるか?(管理品質の低下、将来のリスク)

これらの「なぜ」「どうやって」「もし~なら」という疑問に答える情報がなければ、住民は理事会の一方的な決定と捉えてしまいます(出典:[13]企業サイト、2025年)。

理由2:急激な負担増への「生活防衛」意識

物価高は住民の家計を直撃しており、月々の固定費である管理費の増加への抵抗感は大きいです。

多くのマンション管理組合では、修繕積立金の適正化提案が大幅な値上げを伴う場合、「負担増が急すぎる」との理由で否決されるケースが報告されています(出典:[3]企業サイト、2025年)。こうしたケースでは、管理組合が段階的値上げの代替案を示すことで合意に至る事例も増えています。家計への急激なインパクトが生活防衛のスイッチを入れ、反対票につながります。

理由3:日頃からの管理組合・管理会社への不信感

日頃の活動が見えにくかったり、管理会社の対応に不満があったりすると、それが値上げ反対の引き金になります。

  • 「普段、理事会は何をしているのか分からない」
  • 「清掃が行き届いていないのに値上げはおかしい」
  • 「管理会社の担当者の対応が悪い」

こうした不満が積み重なると、値上げ提案が不満表明の機会として利用されます。値上げの議論は管理組合の信頼度が試される側面もあります(出典:[19]個人サイト、2024年)。

【実践ガイド】否決を乗り越える!再提案を成功させる4つのステップ

一度否決されたからといって諦める必要はありません。反対理由を真摯に受け止め、丁寧なプロセスを踏むことで合意形成は可能です。ここでは、再提案を成功に導く4つのステップを紹介します。

Step1:収支状況と値上げ根拠を徹底的に「可視化」する

反対意見の多くは情報不足から生まれます。客観的なデータで現状を可視化しましょう。

  • 収支状況の開示:過去3〜5年の管理費会計の収支推移をグラフで示し、赤字状況や見通しを明確にします。
  • 値上げ根拠のデータ化:管理委託費、共用部の電気代(例:2023年比2025年で約20%上昇、総務省家計調査に基づく)、保険料などの具体的な上昇データを提示します(出典:[11]企業サイト、2025年)。人件費の高騰(厚生労働省毎月勤労統計調査、2023-2025年平均時給上昇率約5%)も併せて説明。
  • 外部データとの比較:国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、管理費の全国平均は月額11,503円です(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001740925.pdf、p.45)。自組合の費用が平均とどう違うかを示します(出典:[8]国土交通省、2023年)。

Step2:住民説明会で「一方的な通知」から「双方向の対話」へ

議案書配布だけで終わらせず、直接対話の場を設けましょう。総会前の住民説明会は有効です。

  • 複数回の開催:平日の夜や週末など、参加しやすいよう複数回開催が望ましいです。
  • 質疑応答の重視:プレゼンテーション後、十分な時間を確保し、不安や疑問に丁寧に答えます。役員外の総会出席者が少なく議決権行使書・委任状中心の実態を考慮し、事前Q&A公開も有効(出典:[11]企業サイト、2025年)。
  • 想定問答集の準備:値上げ幅の根拠、業務仕様見直しなどの質問をリストアップし、理事会で回答を準備します(例:5項目リストとして、値上げ要因の詳細、管理会社の業務内容変更可能性、代替案の検討経緯など)。

説明会は一緒にマンションの将来を考える場という雰囲気を作ることが鍵です。

Step3:「段階的値上げ」など複数の選択肢で負担感を和らげる

急激な負担増への抵抗を和らげるため、値上げ方法に工夫を。管理委託契約の更新時は現契約条項を最優先に確認し、規約変更時は特別決議を要します。

(記載例)
第〇条(管理費の額)
区分所有者は、その専有部分の床面積割合に応じ、次の各号に定める管理費を管理組合に納付しなければならない。
1. 2025年4月1日から2026年3月31日まで:月額〇〇円(別紙1 管理費額表参照)
2. 2026年4月1日から:月額△△円(同上)
表例の代替テキスト:管理規約例として、第〇条で管理費額を区分所有者の床面積割合に応じて定め、2025年4月から2026年3月まで月額〇〇円、2026年4月から月額△△円とし、別紙1参照と記述。

一度に目標額まで引き上げるのではなく、2〜3年かけて段階的にする案を提示。複数のパターン(A案:小幅値上げ、B案:段階値上げ)を住民に選んでもらうのも有効です(国土交通省「段階増額積立方式における適切な引上げの考え方について」通知、2024年)。修繕積立金の値上げも管理費と同構造(普通/特別決議分岐)です(出典:[4]法令、2023年)。

Step4:長期修繕計画の見直しと連動させ、マンションの将来像を共有する

管理費は日常維持、修繕積立金は将来大規模修繕のためですが、両者はマンションの将来に関わります。値上げ議論時に長期修繕計画の現状を共有することで、「なぜ今お金の話が必要か」を大局的に理解させます。「このままでは10年後に修繕ができない」リスクを共有(標準管理規約第28条、令和6年6月改正)。

値上げ案の説得力を高める「見積もり」取得の現実と注意点

管理費値上げの要因として管理委託費の上昇が大きいです。妥当性を示す見積もりが不可欠ですが、取得方法にはコツがあります。組合側の要望が強すぎると管理会社から敬遠される恐れがあるため、バランスが重要です。

なぜ相見積もりは「2〜3社」が現実的なのか?

多くの会社から相見積もりを取るのは自然ですが、5社、6社と声をかけるのは逆効果になる可能性があります。管理委託内容の精査、会計状況確認、1棟全体の見積もり作成には3〜4回の現地調査、外注先(清掃、EV点検、消防、警備)との打ち合わせ、理事会面談が必要で、労力が膨大です。特に20〜40戸規模のマンションでは利益が薄く、受注保証がないため参加を見送る会社が多いです(タワーマンションなどの大規模物件は例外)。信頼できる2〜3社に絞り、真摯に依頼するのが質の高い提案を引き出す現実的な方法です(出典:[7]企業サイト(不動産仲介)、2025年)。

(現役管理会社担当者の声)
「5社以上の相見積もり案件は敬遠しがちです。労力をかけても受注できる保証がないため、参加を見送る会社は少なくありません。」

「一式見積もり」はNG!詳細な内訳を求めるべき法的根拠

見積もりが「管理委託費一式 〇〇円」では説明責任を果たせません。詳細内訳の提出を求めましょう。

良い見積もりの内訳例 避けるべき見積もり
・事務管理業務費
・管理員業務費
・清掃業務費
・建物・設備管理業務費(消防点検、EV点検など個別に記載)
・管理委託費一式
・諸経費
表2:見積もりの内訳の比較(視覚障害者対応のためテキスト代替:良い例は事務管理、管理員、清掃、建物設備(個別点検記載)。避けるべきは一式や諸経費)

マンション管理適正化法では、管理委託契約締結時に業務内容、実施方法、費用などを記載した書面交付が義務付けられています(同法第32条)。詳細内訳を求めるのは正当な権利で、具体的な議論を可能にし、説得力を高めます。

もし否決が続いたら…?起こりうる最悪のシナリオと最終手段

適切な手順を踏んでも否決が続く場合、問題放置は深刻なリスクを招きます。全住民が認識する必要があります。

管理レベルの低下が招く「資産価値の下落」

原資不足で管理レベルが低下します。

  • 清掃回数減、共用部汚れ
  • 管理員室無人時間増、防犯低下
  • 電球切れ先送り
  • 小規模修繕遅れ、建物劣化

これにより住み心地悪化、評判低下、売却価格下落や賃貸借り手減少につながります。2倍以上の値上げ要請が否決され管理委託費支払い不可状態になった事例では、こうした実害が発生しています(出典:[3]企業サイト、2025年)。値上げ拒否は自らの資産価値を毀損します。

最終手段としての行政相談や専門家の活用

理事会だけで解決困難なら第三者の力を。

  • 行政の相談窓口:各都道府県・市区町村のマンション管理相談窓口(住宅政策担当課など)で、法解釈や他組合事例の助言を得られます(マンション管理適正化法に基づく助言・指導、出典:[4]法令、2023年)。
  • 管理計画認定制度:管理計画が基準を満たせば自治体認定を受け、運営適正を示せます(国土交通省管理計画認定基準、2025年度版 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000057.html)。
  • 専門家相談:マンション管理士に合意形成や資料作成を相談。

これらは説明責任を果たした上での手段です。

まとめ:住民との合意形成こそが、マンションの価値を守る唯一の道

管理費値上げの総会否決時の法的背景と再提案ステップを解説しました。

  • 値上げの決議要件は規約の金額記載有無で変わるため、まず規約を確認。
  • 否決理由は説明不足、負担感、不信感に集約されるため分析を。
  • 再提案成功の鍵は4ステップ:①収支可視化、②双方向対話、③負担和らげ選択肢、④将来像共有。
  • 見積もり取得は2〜3社依頼が現実的で、詳細内訳を求める。
  • 否決続きで資産価値下落必至、行政・専門家活用を視野に。

物価高の中の値上げは負担大ですが、マンションの現状・将来を全住民で考える機会と捉え、丁寧なコミュニケーションと透明性で合意形成を。マンションの価値を守る唯一の道です。

免責事項

本記事は不動産管理に関する一般的な情報提供を目的としており、特定のマンション管理組合の個別案件に対する法的助言ではありません。管理費値上げ等の最終判断は、弁護士やマンション管理士等の専門家にご相談の上、ご自身の責任で行ってください。法令や制度は改正される可能性があるため、最新情報を確認し、個別の管理規約・総会決議が最優先されます(最終確認日:2025年12月20日)。

参考資料

  • [1]企業サイト(2025年) – 値上げ背景言及
  • [3]企業サイト(2025年) – 否決事例報告
  • [4a]e-Gov法令検索. (2023). 建物の区分所有等に関する法律. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
  • [4b]e-Gov法令検索. (2023). マンションの管理の適正化の推進に関する法律. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC1000000149
  • [6]国土交通省. (2024). マンション管理・再生ポータルサイト 管理計画認定制度について. https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000057.html
  • [7]企業サイト(不動産仲介)(2025年) – 見積もり取得関連
  • [8]国土交通省. (2023). 令和5年度マンション総合調査結果. https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html
  • [11]企業サイト(2025年) – 説明会・根拠データ関連
  • [13]企業サイト(2025年) – 否決理由分析
  • [19]個人サイト(2024年) – 不信感事例(最終確認日:2025年12月20日)

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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