マンションバルコニー喫煙禁止:規約改正の多数決要件と4ステップガイド

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マンションのバルコニー喫煙禁止:規約改正に必要な多数決の要件と進め方

本記事は2025年12月20日現在の法律に基づいています。2026年4月1日より区分所有法が改正され、特別決議の要件が「区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上」から「集会に出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上」(ただし、出席者が区分所有者数および議決権数の過半数を有するもの)に変更される予定です。本記事作成時点では関連政令等がすべて公布されていない可能性があるため、改正内容は必ず最新の法令でご確認ください。

マンションのバルコニーから流れてくるタバコの煙や臭い。「ホタル族」とも呼ばれるこの問題に、多くの住民が悩まされています。解決策として管理規約で喫煙を禁止したいと考えるものの、「総会でどれくらいの賛成があればルールを変えられるのか?」という疑問に突き当たる方は少なくありません。

結論から言えば、バルコニーでの喫煙を全面的に禁止する規約改正には、「特別決議」が必要です。これは、単なる過半数の賛成では足りず、区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上という、非常に高いハードルを越えなければならないことを意味します。

この記事では、宅地建物取引士の視点から、バルコニー喫煙禁止の規約改正に必要な多数決の要件とその法的根拠、そして改正を成功に導くための具体的なステップを、一次資料に基づいて分かりやすく解説します。

目次

結論:バルコニー喫煙禁止の規約改正には「特別決議」が必要

マンションのバルコニーでの喫煙を禁止するためには、管理規約の改正が必要です。そして、この規約改正には、マンションの総会において「特別決議」で可決される必要があります。

バルコニー喫煙禁止の規約改正には、区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成が必要です。

これは、区分所有法という法律で定められた、重要事項を決めるための厳格な要件です。※ただし、管理規約で別段の定めが可能であり、共用部分の変更については後述の緩和可能性があります。

必要な賛成は「区分所有者数」と「議決権数」の各4分の3以上

特別決議の「4分の3以上」という要件は、2つの側面から満たす必要があります。

  1. 区分所有者数(頭数): マンションの全区分所有者のうち、4分の3以上の人が賛成すること。
  2. 議決権数: マンション全体の議決権総数のうち、4分の3以上の議決権が賛成に投じられること。

例えば、100戸のマンションで、各戸が均等に1つの議決権を持っている場合、75人以上、かつ75議決権以上の賛成が必要となります。この「区分所有者数」と「議決権数」の両方をクリアして、初めて決議が成立します。総会への「出席者」の4分の3ではない点に注意が必要です。総会を欠席した人でも、書面や代理人によって議決権を行使できます。なお、「集会に出席した区分所有者」という表現は、書面又は代理人によって議決権を行使する者も含む場合があります。

※2026年4月1日施行予定の区分所有法改正により、この要件は「集会に出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上」(出席者が過半数必要)に変更される予定です。現行法では区分所有者総数基準が適用されます。

なぜ「過半数」の普通決議ではダメなのか?

「ちょっとしたルールの変更なら、総会出席者の過半数で決められるはずでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、バルコニー喫煙の禁止は「ちょっとしたルール変更」とは見なされません。その理由を、決議方法の違いと法的根拠から解説します。

普通決議と特別決議の決定的な違い

マンションの総会決議には、主に「普通決議」と「特別決議」の2種類があります。両者の違いは、決議する内容の重要度と、それに伴う賛成要件の厳しさにあります。

決議の種類主な対象事項法的根拠必要な賛成割合
普通決議・役員の選任・解任
・予算、決算の承認
・共用部分の軽微な変更
区分所有法 第39条集会に出席した区分所有者の議決権の過半数
※規約で別段の定めが可能
特別決議管理規約の設定・変更・廃止
共用部分の重大な変更
・建替え決議 等
区分所有法 第31条、第17条区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上
※規約で別段の定めが可能
普通決議と特別決議の比較
※アクセシビリティのため、テキストベースのリスト形式でも閲覧可能(普通決議: 集会に出席した区分所有者の議決権の過半数 / 特別決議: 区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上)。

【用語の整理】

  • 普通決議: 日常的な管理運営に関する事項を決める、原則的な決議方法です。集会に出席した区分所有者の議決権の過半数で可決されます。(区分所有法第39条)
  • 特別決議: 住民の権利や財産に大きな影響を及ぼす、特に重要な事項を決めるための、より厳格な決議方法です。区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上が必要です。

バルコニー喫煙の禁止は、住民の生活様式に直接的な制限を加えるため、後者の「特別決議」が必要だと解釈されています。安易に「普通決議で可決しても有効」と判断すると、後から決議の効力を争われ、無効となるリスクがあります。

ただし、規約による緩和可能性もある

重要な例外として、区分所有法第17条第2項は、共用部分の変更に限り、「管理規約により『区分所有者数の過半数』かつ『議決権の4分の3以上』の賛成にまで緩和することができる」と定めています。

つまり、バルコニー喫煙禁止が「共用部分の使用禁止」に該当する場合、マンション独自の規約で「過半数 + 議決権4分の3」というより緩い要件に設定することも理論上は可能ですが、この緩和を検討する場合は、変更内容の重要性を鑑み、必ず弁護士やマンション管理士に相談してください。

根拠は区分所有法第17条「共用部分の変更」

バルコニーは、特定の住戸の居住者だけが日常的に使用しますが、法律上は「共用部分」に分類されます。そして、区分所有法第17条では、この共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)には、特別決議が必要であると定めています。

共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。(後略)

(出典:建物の区分所有等に関する法律 第17条1項)

バルコニーでの喫煙を禁止することは、これまで認められていた利用方法を制限することになり、これは「効用の変更」に該当する可能性が高いと判断されます。そのため、法律の規定に則り、特別決議という厳格な手続きが求められるのです。

喫煙者の権利への影響が大きいため

喫煙する自由もまた、個人の権利の一つとして尊重されるべきものです。しかし、その権利行使が、他の居住者の健康や平穏な生活を害する「受忍限度」を超える場合は、一定の制限を受けることがあります。

バルコニーでの喫煙を全面的に禁止するという規約は、喫煙者の生活スタイルに直接的な制約を課すことになります。このように、一部の区分所有者の権利に大きな影響を与える規約改正は、より慎重な合意形成が求められるため、普通決議ではなく特別決議が必要とされているのです。

規約改正を成功に導く4つのステップ

4分の3以上という高いハードルを越えるには、感情的な対立を避け、丁寧な手順を踏むことが不可欠です。ここでは、合意形成を円滑に進めるための実践的な4つのステップを紹介します。

Step1:問題提起とアンケートによる実態把握

まずは、理事会で問題を正式な議題として取り上げます。その上で、全住民を対象としたアンケートを実施し、喫煙に関する実態と意識を客観的に把握します。

【アンケート設問例】

  • バルコニーからのタバコの煙や臭いが気になったことがありますか?(頻度・時間帯など)
  • ご自身またはご家族に、ぜんそく等の呼吸器疾患をお持ちの方はいらっしゃいますか?
  • バルコニーでの喫煙について、どのようなルールが望ましいと思いますか?(全面禁止/時間制限/現状維持など)
  • 規約でバルコニー喫煙を禁止することに賛成ですか、反対ですか?

アンケート結果は、問題の深刻度を共有し、規約改正の必要性を議論するための客観的なデータとなります。

Step2:理事会での改正案作成と法的根拠の整理

アンケート結果を踏まえ、理事会で具体的な規約改正案を作成します。改正案には、喫煙を禁止する旨を明確に記載します。このとき、後述する国土交通省の「マンション標準管理規約」や裁判例などの法的背景を整理し、総会で説明できるように準備しておくことが重要です。

(記載例)
区分所有者及び占有者は、バルコニー、ルーフバルコニー及び専用庭(以下「バルコニー等」という。)において、喫煙(電子タバコ及び加熱式タバコを含む。)をしてはならない。

Step3:住民説明会の開催と意見交換

総会での議案上程に先立ち、住民向けの説明会を開催します。ここでは、アンケート結果や規約改正案の内容、そしてなぜ改正が必要なのかという背景(健康被害への配慮、近隣トラブルの未然防止など)を丁寧に説明します。

反対意見や懸念を持つ住民とも真摯に対話し、意見交換を行うことで、相互理解を深める努力が求められます。一方的な説明ではなく、対話の場とすることが成功の鍵です。

Step4:総会での議案上程と決議

十分な周知と意見交換を経た後、いよいよ総会に規約改正案を上程します。総会の招集通知には、必ず議案の内容(規約の新旧対照表など)を添付し、事前に検討する時間を確保してもらいます。

当日は、これまでの経緯と改正の必要性を改めて説明し、質疑応答を経て、採決を行います。委任状や議決権行使書も集計し、「区分所有者総数」と「議決権総数」の各4分の3以上の賛成が得られれば、規約改正は成立です。

なお、2026年4月1日以降は、「区分所有者総数の4分の3以上」ではなく、「集会に出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上」(出席者が区分所有者数および議決権数の過半数必要)になります。(区分所有法第17条改正)

規約改正の強力な追い風となる2つの背景

規約改正を提案する際、「一部の人が神経質になっているだけではないか」という反論にあうことも考えられます。しかし、バルコニー喫煙の制限は、社会的な要請と司法の判断という、強力な追い風を受けています。総会で他の住民を説得する際の客観的な論拠として活用しましょう。

2024年6月改正「マンション標準管理規約」での明文化

国土交通省が示すマンション管理の指針「マンション標準管理規約」が2024年6月に改正され、喫煙に関するルールがより明確になりました。

この改正では、規約の条文例として「バルコニー等での喫煙を禁止する」という一文が追加されたのです。さらに、その理由を説明するコメント部分では、以下のように記載されています。

バルコニー等での喫煙(電子タバコ及び加熱式タバコを含む。)が、他の居住者に著しい迷惑を及ぼす可能性があることや、火災の原因ともなり得ること、また、健康増진法(平成 14 年法律第 103 号)の趣旨も踏まえ、バルコニー等での喫煙を禁止する旨を規約に規定することも考えられる。

(出典:マンション標準管理規約(単棟型)コメント 2024年6月)

マンション標準管理規約の段階的改正

国土交通省は、喫煙に関するルール整備を複数年かけて進めています:

  • 2021年6月:第一次改正で喫煙関連の背景強化。
  • 2024年6月:最初の改正で「喫煙に関するルール定め」が示唆。
  • 2025年9月:改正案の最終意見募集終了。
  • 2026年4月:改正版の本格施行予定。

これは、国がマンションにおける受動喫煙防止ルールの整備を後押ししていることを示す、非常に強力な根拠となります。最新の改正内容については、国土交通省ウェブサイトで確認してください。

バルコニー喫煙を「不法行為」と認めた裁判例

過去の裁判では、バルコニーでの喫煙が原因で隣人とのトラブルに発展し、訴訟に至ったケースがあります。その中でも象徴的なのが、名古屋地方裁判所の判決です(平成24年12月13日)。

この判決では、喫煙者がバルコニーで喫煙を繰り返したことにより、隣室に住む原告が受動喫煙の被害を受けたと認定。喫煙行為は「社会生活上の受忍限度を超える違法な権利侵害(不法行為)」であるとして、喫煙者に対して慰謝料の支払いを命じました。

この判例は、喫煙する自由も無制限ではなく、他者の健康や快適な生活を著しく害する場合には、法的な責任を問われる可能性があることを示しています。規約でルールを定めることは、このような深刻なトラブルを未然に防ぐための有効な手段であると説明できます。

よくある疑問と注意点(Q&A)

最後に、規約改正を進める上でのよくある疑問や注意点についてお答えします。

Q. 「4分の3」の賛成が得られない場合はどうすればいい?

残念ながら特別決議が否決された場合でも、すぐに諦める必要はありません。まずは否決された理由を分析し、反対意見の多かった点(例えば「全面禁止は厳しすぎる」など)をヒアリングしましょう。

その上で、次善の策として、喫煙可能な時間帯や場所を限定するなどの譲歩案を盛り込んだ修正案を再度検討し、時間をかけて合意形成を図ることが考えられます。また、規約改正ではなく、より緩やかなルールである「使用細則」の変更(通常は普通決議で可能)で対応できないか検討する道もありますが、喫煙禁止のような権利制限を伴う内容は、細則ではなく規約本体で定めるのが望ましいとされています。ただし、理事会判断で細則運用も参考にできる場合があります。

Q. 賃貸で住んでいる人(占有者)にも効力はある?

はい、あります。区分所有法第46条では、賃借人などの「占有者」は、建物や敷地の使用方法について、区分所有者が規約や総会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う、と定められています。

したがって、規約が適法に改正されれば、そのマンションに賃貸で住んでいる人も、バルコニーでの喫煙禁止ルールに従う義務があります。ただし、契約内容によっては家主の責任追及が可能であり、個別ケースは弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。

Q. 2026年4月以降の決議要件はどう変わる?

A. 2026年4月1日施行の改正により、特別決議の要件が変更されます。

  • 改正前:区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上
  • 改正後:集会に出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上
    (ただし出席者が区分所有者数および議決権数の過半数必要)

Q. 決議が無効になってしまうケースとは?

せっかく賛成多数で可決されても、手続きに不備があると、後から決議の無効を主張されるリスクがあります。特に注意すべきは以下の点です。

  • 招集手続きの不備: 法律や規約で定められた期日までに招集通知が発送されていない、議案の要領を通知に記載していないなど。
  • 定足数の不足: 規約で定められた総会の成立要件(例:議決権総数の過半数を有する組合員の出席)を満たしていない。
  • 決議要件の誤認: 本来は特別決議が必要な議案を、普通決議で可決してしまった。

これらの瑕疵(かし)を防ぐためにも、規約改正を進める際は、ご自身のマンションの管理規約を改めて確認し、必要に応じてマンション管理の専門家(マンション管理士など)に相談することをお勧めします。

まとめ:バルコニー喫煙禁止には「特別決議」が必須。丁寧な合意形成を

今回は、マンションのバルコニーでの喫煙を禁止するための規約改正について、その多数決要件と具体的な進め方を解説しました。

  • 結論: バルコニー喫煙を禁止する規約改正には、区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成による「特別決議」が必要。
  • 根拠: 喫煙禁止は住民の権利に大きな影響を与えるため、区分所有法に基づき、普通決議よりも厳格な手続きが求められる。
  • 進め方: アンケートでの実態把握から始め、説明会での対話を経て、総会決議に至るという丁寧なステップが、合意形成の鍵となる。
  • 追い風: 国が示す「マンション標準管理規約」の改正や、喫煙を「不法行為」とした裁判例は、規約改正の正当性を補強する強力な材料になる。

バルコニー喫煙問題は、多くのマンションが抱える共通の悩みです。4分の3というハードルは決して低くありませんが、法的な根拠と社会的な背景を理解し、住民同士で粘り強く対話を重ねることで、すべての居住者が快適に暮らせる環境を実現することは可能です。

免責事項

本記事は、マンションのバルコニー喫煙に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の案件に対する法的助言を行うものではありません。管理規約の改正にあたっては、必ずご自身のマンションの管理規約をご確認の上、必要に応じて弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。また、法令や各種ガイドラインは改正される可能性があるため、常に最新の情報をご参照ください。


参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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