マンション電気配線故障時の維持管理責任:費用負担は誰?徹底解説

マンションの電気配線に関する責任や管理規約、法的義務を深く理解するための参考資料と法令情報リソースを示す図。主にe-Gov法令検索へのリンクを中心に、建物の区分所有等に関する法律、国土交通省のマンション標準管理規約、原状回復ガイドライン、建築基準法、電気事業法、消防法といった重要な法令やガイドラインを一覧で提示しています。これにより、読者は信頼できる情報源にアクセスし、より詳細な情報を得ることができます。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

目次

マンションの電気配線、故障時の費用は誰が負担?責任の所在を徹底解説

マンションの電気配線が故障した場合、「この修理費用は誰が負担するの?」と疑問に思ったことはありませんか。電気設備の維持管理責任の所在は、時に住民間のトラブルや、最悪の場合、火災などの重大な事故につながる可能性があるため、非常に重要な問題です。

結論から言うと、電気配線の維持管理責任は、その設備が「共有部」と「専有部」のどちらに属するかで明確に決まります。この区分は、建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)やマンションの管理規約によって定められており、責任の所在と費用負担者を特定する上での大原則となります。

この記事では、宅地建物取引士として、電気配線の維持管理責任について、法的根拠を基に徹底解説します。共有部と専有部の具体的な範囲、判断が難しいケース、法律で定められた点検義務まで、マンションオーナーや理事会役員、賃貸オーナーが知っておくべき知識を網羅的にご紹介します。

電気配線における責任区分の基本

電気設備のトラブルに直面したとき、まず理解すべきは責任の所在を判断するための基本的な考え方です。ここでは最も重要な「共有部」と「専有部」の区別と、その定義がなぜ重要なのかを解説します。

結論:責任は「共有部」か「専有部」かで決まる

マンション内の電気配線の維持管理責任は、その設備が区分所有者全員で共有する「共有部」にあるか、個々の住戸所有者が独立して使用する「専有部」にあるかで決まります。

  • 共有部の設備:管理組合が維持管理の責任を負い、費用は修繕積立金などから支出されるのが原則です。
  • 専有部の設備:その住戸の区分所有者が自己の責任と費用で維持管理を行います。

この責任分界点は、一般的に各住戸に設置された電気メーターが基準となります。これは給水管やガス管の責任分界点がメーターを基準に判断されるのと同様の考え方です。電力会社からの引込線から各戸のメーターまでは「共有部」、メーターから住戸内の分電盤やコンセントまでは「専有部」と扱われます。

【用語整理】共有部・専有部の定義と責任の所在

不動産取引やマンション管理において頻繁に使われる用語ですが、その定義を正確に理解しておくことがトラブル防止の第一歩です。

用語 定義 責任を負う者
共有部(共用部) 廊下、階段、建物の躯体、そして各住戸に至るまでの電気幹線や水道本管など、区分所有者全員で共同使用・所有する部分。 管理組合
専有部 各住戸の独立した区画内部。室内の分電盤、コンセント、照明、壁の内側の配線など、その住戸の所有者のみが使用する部分。 区分所有者(その住戸の所有者)

※表が表示されない場合、以下のようにリスト形式で代替:
– 用語: 共有部(共用部)、定義: 廊下、階段、建物の躯体、そして各住戸に至るまでの電気幹線や水道本管など、区分所有者全員で共同使用・所有する部分。、責任を負う者: 管理組合。
– 用語: 専有部、定義: 各住戸の独立した区画内部。室内の分電盤、コンセント、照明、壁の内側の配線など、その住戸の所有者のみが使用する部分。、責任を負う者: 区分所有者(その住戸の所有者)。

この区別を理解するメリットは、突発的な故障が発生した際に、誰が費用を負担し、誰が修理を手配すべきかを迅速に判断できる点にあります。

区分所有法における法的根拠(対照表)

制度 関連条文 内容 本記事対象
共用部分の定義 第2条第4項 共用部分の法定要件(建物全体の共同使用部分) YES(給水管等例示)
共用部分の保存行為 第25条第1項 管理組合の維持管理義務(共用部分の保存行為) YES(一部記載)
規約に基づく変更 第31条 規約設定・変更は特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上)必須 YES(記載)
専有部分の定義 第1条・第2条第3項 独立した建物用途に供される部分 YES(記載)
※ 上記は区分所有法の一般規定です。個別マンションの管理規約によって上記と異なる定めがある場合は、現在の管理規約が優先されます。必ず最新の管理規約をご確認ください。

なぜ責任分担の明確化が重要なのか?(火災リスクと資産価値)

電気配線の責任分担を曖昧にしておくことには、二つの大きなリスクが伴います。

  1. 火災リスクの増大
    老朽化した配線を放置すれば、漏電やショートによる火災の原因になりかねません。適正な点検・維持管理は火災予防の観点からも重要とされています(消防法の趣旨)。
  2. 資産価値の毀損
    電気設備の維持管理が不十分なマンションは、将来的な高額な修繕費用の発生が懸念されたり、安全性の面で敬遠されたりする可能性があります。適正な管理が行われていることは、マンションの資産価値を維持・向上させるための重要な要素です。

手続き・対応ステップ:誰が・どこまで責任を負うか

ここでは、具体的な設備ごとに誰が責任を負うのか、法的根拠を交えながら詳しく見ていきましょう。

【管理組合の責任】共有部の対象設備と法的根拠

管理組合は、区分所有法第25条第1項に基づき、共用部分の保存行為を行わなければならない義務を負います。その範囲は、区分所有法第4条第2項により法定共用部分が規定され、マンション標準管理規約(令和7年改正版、2025年1月施行)で具体的に定められています(国土交通省「マンション標準管理規約」)。

共有部に含まれる主な電気設備

  • 電力会社との責任分界点から各住戸のメーターまでの電気配線(幹線)
  • 共用部分電盤、変圧器などの受変電設備
  • 廊下、階段、エントランスなどの共用照明
  • エレベーター、オートロック、火災報知器などの設備
  • 電動自動車充電設備(EV充電器など)
  • 敷地内の電柱(空中配線の場合)

これらの設備の点検、修繕、更新にかかる費用は、原則として管理組合が徴収する修繕積立金から賄われます。管理の根拠は、区分所有法および各マンションの管理規約にあります(出典:建物の区分所有等に関する法律、e-Gov法令検索)。

【区分所有者の責任】専有部の対象設備と注意点

一方、専有部内の電気設備は、その住戸の区分所有者が自己責任で管理します。

専有部に含まれる主な電気設備

  • 住戸内の分電盤(ブレーカー)
  • 各部屋のコンセント、照明器具、スイッチ
  • 分電盤から各コンセント・照明器具までの室内配線

これらの設備が故障した場合、修理や交換の費用は区分所有者の自己負担となります。特に分電盤の交換は、数万円~数十万円程度(建物規模・実績による)の費用がかかることもあり、計画的な備えが必要です。見積もり取得時には、項目別の詳細(材料費、工事費など)を求めましょう。

【注意】専有部の工事でも管理組合への事前申請は必須!
専有部内の工事であっても、壁の内部に触れる配線工事や分電盤の交換などは、多くの場合、管理規約によって管理組合への事前申請が義務付けられています。管理規約違反となる可能性があり、民事上の紛争に発展することもあるため、事前申請は重要です。

【判断が難しいケース】躯体貫通配線と電力会社の境界

原則だけでは判断に迷うグレーゾーンも存在します。ここでは代表的な2つのケースを解説します。

1. 躯体を貫通する配線は「共有部」扱いが原則
専有部内を通過していても、建物のコンクリート躯体(壁、床、天井)を貫通し、複数の住戸に関わる配線は、建築基準法上の「建物の附属物」か「建物の部分」かにより区別され、「建物の構造と一体化した部分」と見なされ、共有部として扱われるのが一般的です。これは、国土交通省のマンション標準管理規約(令和7年改正版、2025年1月施行)でも示されている考え方です。

2. 電力会社と建物の「責任分界点」
そもそも電気がどこから建物の管理範囲になるのか、という点も重要です。電力会社と建物の所有者(管理組合)との責任の境界を「責任分界点」と呼びます(電気事業法関連)。

  • 空中配線の場合: 敷地内に最初に設置された電柱(1号柱)が一般的です。
  • 地中配線の場合: 敷地内に設置された高圧キャビネットなどの接続箇所が分界点となります。

この分界点より電力会社側の設備で問題が発生した場合は、電力会社の責任で対応されます。

【ケース別】賃貸物件における責任の所在

賃貸物件の場合、責任関係はオーナー、管理会社、入居者の三者間で整理されます。

オーナー、管理会社、入居者の三者関係

  • 建物オーナー(貸主): 建物全体の所有者として、共有部・専有部を問わず、設備を安全に使用できる状態で提供する義務(修繕義務)を負います。
  • 管理会社: オーナーから建物の管理を委託されている場合、その契約範囲内で点検や修繕の手配などを行います。
  • 入居者(借主): 善良な管理者としての注意をもって部屋を使用する義務(善管注意義務)を負います。

修繕義務の原則:経年劣化はオーナー、故意・過失は入居者負担

電気設備の故障原因によって、費用負担者が異なります。この考え方は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(2011年基盤、2023年改正確認済み)にも示されています。

  • 経年劣化による故障: 照明器具やエアコン、給湯器などが自然に寿命を迎えて故障した場合、その修理・交換費用はオーナー(貸主)の負担です。これは、民法で定められた貸主の修繕義務に基づくものです。
  • 入居者の故意・過失による故障: 入居者が誤った使い方をして設備を壊した場合や、清掃を怠ったことが原因で故障した場合は、入居者(借主)の負担で修理するのが原則です。

よくある質問(FAQ)

電気配線の責任に関して、特によく寄せられる質問をまとめました。

Q1.分電盤の交換費用は誰が負担しますか?
A1.通常は専有部の設備と見なされるため、その住戸の区分所有者が自己負担で交換します。
ただし、マンションの管理規約で「分電盤は共有部として管理組合が維持管理する」という特別な定め(特約)がある場合は、管理組合が修繕積立金から費用を負担します。特約設定には区分所有法第31条に基づく特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上)が必要です。詳細は建築士・弁護士にご相談ください。
Q2.電気設備の点検は法律で義務付けられていますか?
A2.はい。建物の規模や用途によって、以下の法律に基づき定期的な点検と行政への報告が義務付けられています。
  • 建築基準法:特定建築物定期調査
  • 電気事業法:自家用電気工作物の保安点検(高圧受電の場合など)
  • 消防法:消防用設備等点検
これらの法定点検を怠ると、罰則の対象となる可能性があります。
Q3.躯体を貫通する配線はどちらの責任ですか?
A3.たとえ専有部内を通っていても、建物のコンクリート躯体を貫通して複数の住戸に影響を与える電気幹線などは、「共有部」として扱われるのが一般的です。
この部分の修繕は管理組合の責任と費用で行われますが、工事の際には専有部への立ち入りが必要になるため、居住者の協力が不可欠です。

トラブル防止と実務上のヒント

ここでは、実際のマンション管理の現場で役立つ、より実践的な知識をご紹介します。

管理規約によるルール作りと変更手続き

責任分担のトラブルを防ぐ最も有効な手段は、自分たちのマンションのルールブックである「管理規約」で具体的な範囲を明確に定めておくことです。

国土交通省の「マンション標準管理規約」(令和7年改正版、2025年1月施行)はあくまで雛形です。例えば、全戸の分電盤を一斉に更新する計画がある場合など、管理規約に特約を設けて「共有部」として扱うことも可能です。ただし、こうした管理規約の変更には、区分所有法第31条に基づき、総会での「区分所有者および議決権の各4分の3以上」の賛成による特別決議が必要です。なお、管理規約の特約は区分所有法の強行規定を除き優先されるため、個別規約を確認してください。

(記載例)
各住戸内の分電盤(住戸盤)は、本規約上、共用部分とみなし、その維持管理は管理組合がその責任と負担において行うものとする。

※表が表示されない場合、以下のように代替:記載例: 各住戸内の分電盤(住戸盤)は、本規約上、共用部分とみなし、その維持管理は管理組合がその責任と負担において行うものとする。

法律で定められた点検義務と罰則

電気設備の維持管理は任意ではなく、法律で定められた所有者の義務です。特に管理組合の役員は、これらの法令を遵守する責任があります。

法律 条文 主な点検内容 対象(例) 罰則(怠った場合) 実施主体 報告先 点検周期
建築基準法 第12条 敷地、構造、建築設備(換気・排煙・非常照明等)の定期調査・検査 延べ面積500㎡超の共同住宅など 第100条に基づき、特定建築物定期調査報告義務違反の場合、100万円以下の罰金など(違反内容・規模による差異あり) 建築士等 特定行政庁 3年ごと(一般)
電気事業法 第94条等 自家用電気工作物(高圧受電設備等)の保安点検(絶縁耐力試験など) 高圧で受電するマンションなど 第117条第1号に基づき、保安規程違反など特定違反の場合、300万円以下の罰金など(対象規模による差異あり) 電気主任技術者 内部記録 年1回以上
消防法 第8条・第33条の2 警報設備、消火設備、避難設備などの消防用設備等の点検 延べ面積150㎡以上の共同住宅など 第33条の2に基づき、防火対象物定期点検報告義務違反など、30万円以下の罰金または拘留(火災予防上重要) 防火対象物点検資格者 消防長等 1年ごと
※対象や罰則は建物の規模・用途、違反の内容により異なります。点検記録は最低3年保存してください(参考: 建築基準法関連実務基準)。出典: e-Gov法令検索(建築基準法、電気事業法消防法)。

※表が表示されない場合、以下のようにリスト形式で代替:
– 法律: 建築基準法、条文: 第12条、主な点検内容: 敷地、構造、建築設備(換気・排煙・非常照明等)の定期調査・検査、対象(例): 延べ面積500㎡超の共同住宅など、罰則(怠った場合): 第100条に基づき、特定建築物定期調査報告義務違反の場合、100万円以下の罰金など(違反内容・規模による差異あり)、実施主体: 建築士等、報告先: 特定行政庁、点検周期: 3年ごと(一般)。
(他項目同様)。

これらの法定点検を怠ると、万が一事故が発生した場合に管理組合の責任がより重く問われる可能性があります。

適切な業者選定と「上手な」見積もりの依頼方法

電気工事は専門性が高く、危険を伴うため、信頼できる業者に依頼することが不可欠です。

  • 必須資格「電気工事士」の確認
    電気配線に関する工事は、電気工事士法第3条・第4条で「電気工事士」の資格を持つ者しか行ってはならないと定められています。無資格者による工事は違法であり、火災などの原因にもなるため絶対に避けてください。
  • 相見積もりの依頼方法
    コスト削減のために複数の業者から見積もりを取る(相見積もり)は有効ですが、業者数は工事内容や規模により、管理会社・施工業者と相談して決定してください。過度な相見積もり(例: 5社以上)は、業者側が現地調査や調整に多大な労力を要するため敬遠される場合があります。特に小中規模マンション(20戸~40戸程度)では、2~3社程度が参加しやすく、管理会社としても対応しやすい水準です。
  • 「一式」を避け、項目別の詳細な見積もりを依頼する
    見積もりを依頼する際は、「工事一式 ○○円」といった大雑把なものではなく、「材料費」「配線工事費」「分電盤交換費」「廃材処分費」など、項目別に内訳が記載された詳細な見積書を提出してもらいましょう。これにより、工事内容の妥当性や価格の比較がしやすくなります。

まとめ:電気設備の維持管理は計画的な対応が鍵

電気配線の維持管理責任について、最後に重要なポイントをまとめます。

  • 責任の原則: 責任の所在は「共有部(管理組合の責任)」か「専有部(区分所有者の責任)」かで決まる。
  • 責任の境界: 一般的に各住戸の電気メーターが境界となる。
  • ルールの明確化: トラブル防止には、管理規約で具体的な範囲を定めておくことが最も重要。
  • 法的義務: 建築基準法などに基づき、定期的な点検が義務付けられている。
  • 実践的な対応: 工事は必ず有資格者に依頼し、適切な方法で見積もりを取得することが、安全かつ経済的な管理につながる。

電気設備はマンションの重要なインフラです。その場しのぎの対応ではなく、長期的な視点に立った計画的な維持管理を行うことが、住民の安全な暮らしと大切な資産価値を守るための鍵となります。

免責事項

本記事は、電気配線の維持管理に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別具体的な案件に対する法的助言を行うものではありません。

電気設備の維持管理責任や費用負担については、対象となる建物の管理規約、賃貸借契約書の条項、および個別の事実関係によって判断が異なります。また、関連法令は改正されることがあります。

具体的な問題に直面した際には、必ず弁護士、マンション管理士、建築士等の専門家にご相談いただくとともに、最新の法令や契約内容をご確認ください。相談窓口例: 日本弁護士連合会(日弁連相談窓口)、日本建築士会連合会(建築士会相談)。


参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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