マンションインターホン修繕費用は誰が負担? 共用部・専有部の判断基準と5ステップ手続き

インターホンを既に個人負担で交換してしまった場合の、修繕積立金からの返金が困難であるという現状を示す図。公平性の観点や組合の財政規律保持のため返金が実務上認められないケースが多いことを明確にし、故障時はまず管理組合に相談する重要性を強調します。

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マンションのインターホン修繕費用は誰が負担する? 共用部・専有部の判断基準と手続きを解説

マンションのインターホンが鳴らない、通話できないといったトラブルは、ある日突然やってきます。その際、「修理費用は自分が払うの?それとも管理組合?」と悩む方は少なくありません。高額な出費になる可能性もあり、費用負担のルールは明確にしておきたいものです。

結論から言うと、インターホンの修繕・交換費用を誰が負担するかは、その設備が「共用部」と「専有部」のどちらに該当するかで決まります。そして、その区分を最終的に定めているのが、マンションの管理規約です。この記事では、区分所有法や国土交通省のガイドラインといった公的な資料に基づき、インターホン修繕の費用負担のルールと、実際に修繕を進めるための具体的なステップを、宅地建物取引士の視点からわかりやすく解説します。

【免責・利害開示】
本記事は不動産取引に関する一般情報提供を目的とし、特定の業者・製品を推奨するものではありません。費用・施工方法など具体的な判断は、管理組合、管理会社、または弁護士・マンション管理士にご相談ください。

目次

【結論】インターホン修繕の費用負担は「共用部」か「専有部」かで決まる

マンションのインターホンが故障した際の費用負担者は、その設備が区分所有法上の「共用部」にあたるか、「専有部」にあたるかによって明確に区別されます。

  • 共用部の故障: 区分所有者全員の財産であるため、管理組合が「修繕積立金」を使って修繕します。
  • 専有部の故障: 居住者個人の財産であるため、その住戸の区分所有者が自己負担で修繕します。

インターホンの修繕で最も重要なのは、故障箇所が「共用部」と「専有部」のどちらに該当するかを正しく判断することです。

根拠は「区分所有法」と「マンション管理規約」

この負担区分の根拠となるのが、「建物の区分所有等に関する法律(通称:区分所有法)」と、各マンションが独自に定めている「管理規約」です。

建物の区分所有等に関する法律(通称:区分所有法)では、区分所有者全員または一部の者の共用に供されるべき建物の部分を「共用部分」と定めています(第2条第4項)。しかし、どの設備が具体的に共用部にあたるかまでは法律で細かく定められていません。

そこで重要になるのが、マンションごとのルールブックである「管理規約」です。多くのマンションでは、国土交通省が公表する「マンション標準管理規約」を参考に、インターホン設備などの共用部・専有部の範囲を具体的に定めています。

まずはあなたのマンションの「管理規約」を確認しよう

インターホンの故障を発見したら、自己判断で業者を手配する前に、必ず管理規約の「専有部分及び共用部分等の範囲」に関する条項を確認しましょう。通常、規約には「別表」として、どの設備が共用部で、どこからが専有部なのかがリストアップされています。この確認作業が、費用負担をめぐるトラブルを防ぐ第一歩となります。

どこまでが共用部?専有部の範囲と具体的な判断基準

【重要】本セクションでは一般的な分類を示しますが、最終的な判定は「あなたのマンションの管理規約」が最優先です。規約に特別の定めがある場合、以下の分類より規約の定めが優先されます。

一般的に、インターホン設備における共用部と専有部の範囲は以下のように分類されます。これは、公益財団法人マンション管理センターの見解でも示されている標準的な考え方です(出典:公益財団法人マンション管理センター)。

<共用部> エントランスの集合玄関機や共用配線

以下の設備は、マンション全体の機能を維持するために不可欠であり、区分所有者全員で利用するため「共用部」として扱われるのが一般的です。

  • 集合玄関機: エントランスに設置された、オートロック操作や各住戸を呼び出すための操作盤。
  • 制御装置・電源装置: 管理室などに設置されているシステム全体をコントロールする機器。
  • 共用配線: 各住戸のインターホン親機までをつなぐ、壁の中や共用廊下の配管内を通っているケーブル類。

これらの設備が経年劣化などで故障した場合、その修繕費用は管理組合が負担します。

<専有部> 住戸内の親機や玄関子機

一方で、各住戸の独立性を保つための設備は「専有部」と見なされます。

  • 住戸内親機: リビングなどに設置されている、モニターや通話機能を持つ室内機。
  • 玄関子機: 各住戸の玄関ドア横に設置されている、来訪者が押すチャイムボタンとカメラ・スピーカー。

これらの設備が、居住者の使用による経年劣化や過失によって故障した場合は、原則としてその住戸の区分所有者が自己負担で修理・交換を行います。

例外:火災報知器と一体型の場合は「共用部」扱いになることも

注意点として、住戸内のインターホン親機が、火災報知器やガス漏れ警報器といった防災設備と一体化しているケースがあります。

この場合、親機が防災システムというマンション全体の安全に関わる共用設備の一部と見なされ、管理規約で「共用部分」と定められていることがあります。この場合、住戸内の親機の故障であっても、管理組合の費用で修繕される可能性があります。これも含め、最終的な判断は管理規約の定めによります。

管理組合が費用を負担する「共用部」の修繕プロセス

集合玄関機や共用配線など、共用部のインターホン設備を修繕・交換する場合、その費用は管理組合が負担します。ここでは、その際の資金源と意思決定のプロセスを解説します。

費用はどこから?原則「修繕積立金」から支出される

共用部の計画的な修繕費用は、区分所有者が毎月支払っている「修繕積立金」から支出されるのが原則です。修繕積立金は、長期修繕計画に基づいて、将来の大規模修繕や設備更新に備えるために積み立てられている重要なお金です。

国交省ガイドラインが示す更新周期の目安は15年

国土交通省が公表する「長期修繕計画作成ガイドライン」では、インターホン設備の更新周期の目安を15年としています(出典:国土交通省、2023年版)。また、一般社団法人インターホン工業会も、集合住宅用インターホンの更新目安を設置後15年としています。

多くのマンションでは、この目安に基づいて長期修繕計画が作成されており、計画期間内にインターホンの一斉更新が予定されていれば、修繕積立金から費用を支出することができます。

修繕積立金で賄えない場合は管理規約に基づく「総会の普通決議」で特別徴収が必要

長期修繕計画にインターホン更新が含まれていない場合や、想定外の故障で修繕積立金が不足する場合には、別途資金を調達する必要があります。その方法が「特別徴収金」です。

これは、管理規約に基づいて総会で修繕の必要性と予算について説明し、区分所有者の合意を得た上で、一時的に修繕費用を徴収するものです。区分所有法上、インターホンのような設備の更新は、形状又は効用の著しい変更を伴わない「共用部分の変更」にあたるため、原則として総会の「普通決議」で決定されます。ただし、具体的な手続きや条件は管理規約の定めが優先されます。

(参考)区分所有法における普通決議の要件

  • 建物の区分所有等に関する法律 第17条(共用部分の変更)
    共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定수는、規約でその過半数まで減ずることができる。
    2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
  • ※インターホンの更新は、通常「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」に該当するため、規約に特別な定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数による普通決議で決定されます(建物の区分所有等に関する法律 第39条第1項)。

個人が費用を負担する「専有部」の修繕と注意点

住戸内の親機や玄関子機など、専有部分のインターホンが故障した場合は、原則として区分所有者の個人負担で対応することになります。

どんな時に個人負担になる?経年劣化や自己の過失

個人負担となるのは、主に以下のようなケースです。

  • 経年劣化: 長年の使用によるモニターの不具合やボタンの反応不良など。
  • 自己の過失: 掃除中に水をかけてショートさせた、物をぶつけて破損させたなど。
  • ペットによる損傷: ペットがケーブルをかじって断線させたなど。

落雷による故障など、一見不可抗力に見えるケースでも、専有部分の設備であれば個人負担となるのが一般的です(火災保険が適用できる可能性はあります)。

【重要】自己判断で業者に依頼する前に必ず管理組合へ報告を

専有部分の故障だと思っても、自己判断で修理業者に依頼するのは禁物です。なぜなら、故障の原因が共用部の配線にある可能性も捨てきれないからです。

インターホンの不具合に気づいたら、まず最初にやるべきことは、管理組合(または管理会社)へ状況を報告し、指示を仰ぐことです。

先に個人で業者を手配して修理した場合、もし原因が共用部だったとしても、管理組合に費用を請求できない可能性があります。必ず管理組合を通して原因を特定し、費用負担の区分を明確にしてから対応を進めましょう。

個人で修理した場合に起こりうる「公平性の問題」

マンション全体でインターホンの一斉更新を計画している際に、一部の居住者がすでに個人負担で最新機種に交換しているケースがあります。

この場合、管理組合の費用(=全員の修繕積立金)で更新する他の居住者との間で「不公平だ」という意見が出ることがあります。区分所有法では修繕積立金の充当基準を管理規約に委ねており(第30条)、規約に返金規定がない限り、後から費用を返金することは実務上認められないケースが多いためです。このようなトラブルを避けるためにも、インターホンの修繕・交換は、個人的な判断で進めず、管理組合の方針を確認することが重要です。

【実務ヒント】インターホン修繕を進める具体的な5ステップ

管理組合の理事や、修繕に関心のある組合員向けに、インターホンの一斉更新(共用部)を進める際の具体的な手順を5つのステップで解説します。

Step1: 故障状況の確認と管理規約の照合

まずは、故障の報告があった場合、その状況(どの住戸か、どんな不具合か)を正確に把握します。同時に、管理規約を再確認し、対象のインターホン設備が共用部・専有部のどちらに定められているかを明確にします。

Step2: 理事会での審議と修繕方針の決定

理事会で、長期修繕計画と照らし合わせながら、修繕(部分的な修理)で対応するのか、それとも全戸一斉に更新(交換)するのかを審議します。設置から15年以上経過している場合は、一斉更新を視野に入れるのが一般的です。

Step3: 業者選定と相見積もりの取得(3社程度が推奨)

修繕方針が決まったら、複数の施工業者から見積もりを取得します(相見積もり)。相見積もりは、適正価格把握と競争原理により、管理組合の利益を最大化する必須プロセスです。目安として複数業者(3社程度)から見積もりを取得し、総会提案時に比較検討資料を提示することが推奨されます。マンション規模やニーズに応じた対応が可能な業者を選定することが重要です。

Step4: 総会での議案提出と承認決議(普通決議)

理事会で業者と工事内容を内定したら、総会の議案として提出します。議案には、以下の内容を盛り込み、区分所有者に分かりやすく説明することが重要です。

  • 修繕・更新の必要性
  • 工事の具体的な内容と範囲
  • 工事費用と見積もりの比較結果
  • 費用負担の方法(修繕積立金 or 特別徴収)
  • おおよその工事スケジュール

前述の通り、インターホンの更新は通常「普通決議」で承認されます。

Step5: 住民への工事日程の周知と実施

総会で承認されたら、施工業者と正式に契約を結びます。特に各住戸内での作業が必要な場合は、全居住者への工事日程の周知が不可欠です。複数の候補日を提示し、できるだけ多くの住民が立ち会えるよう調整することで、工事をスムーズに進めることができます。

インターホン修繕費用に関するよくある質問(FAQ)

最後に、インターホンの修繕・交換に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 費用相場はどれくらい?

A. インターホン交換の費用は、マンションの戸数、選択する機種の機能(モニター付き、録画機能付きなど)、配線の状況によって大きく変動するため、一概に「いくら」とは言えません。費用は主に「機器本体代」と「工事費」で構成されます。正確な費用を知るためには、必ず複数の専門業者から見積もりを取得してください。

Q. 工事期間の目安は?

A. 50戸程度のマンションで全戸一斉更新を行う場合、共用部の工事に約2日、各住戸に立ち入って行う専有部の工事に約5日、合計で1週間程度が目安とされています(出典:株式会社スマート修繕)。もちろん、これは戸数や工事の難易度によって変動します。

Q. 大規模修繕工事と同時に行うべき?

A. はい、可能な限り同時に行うことを強く推奨します。外壁の修繕などで足場を組む際にインターホン工事も行えば、足場の設置・解体費用が一度で済み、コストを削減できます。また、工事車両の駐車や騒音など、居住者への負担もまとめて済ませられるというメリットがあります。長期修繕計画を立てる際は、インターホンの更新周期を考慮し、大規模修繕と時期を合わせるのが賢明です。

Q. 既に個人負担で交換してしまった場合はどうなりますか?

A. 上述の通り、修繕積立金の使途は管理規約で厳密に定められているため、規約に事前の規定がない限り、個人で支払った費用を後から組合財産で補填することは、公平性の観点や組合の財政規律を保つ上で困難なのが実情です。返金に応じると、他の様々なケースでも返金を求める声が上がり、組合の財政規律が乱れる恐れがあるためです。このような事態を避けるためにも、故障時はまず管理組合に相談するという原則を守ることが重要になります。

まとめ:インターホンの故障で困ったら、まずは管理規約の確認と管理組合への相談から

マンションのインターホン修繕における費用負担の問題は、一見複雑に思えますが、ルールは明確です。

  1. 負担区分: 費用負担は「共用部」か「専有部」かで決まる。
  2. 判断基準: どちらに該当するかの最終的な判断は「管理規約」の定めによる。
  3. アクション: 故障を発見したら、自己判断で動かず、まず「管理組合(管理会社)へ報告・相談」する。

この3つのポイントを押さえておけば、突然のトラブルにも冷静に対応でき、余計な出費や住民間のトラブルを防ぐことができます。インターホンの不具合は、お住まいのマンションの管理体制を見直す良い機会にもなります。この記事が、あなたの快適なマンションライフの一助となれば幸いです。

免責事項

本記事は、不動産取引に関する一般的な情報提供を目的として作成されており、特定の個人または法人に対する法的助言を構成するものではありません。インターホンの修繕に関する具体的な判断や対応については、必ずご自身のマンションの管理規約をご確認の上、管理組合、管理会社、または弁護士、マンション管理士などの専門家にご相談ください。法令や各種ガイドラインは改正される可能性があるため、最新の情報をご確認いただくようお願いいたします。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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