マンション野良猫餌やり禁止!法的根拠付き張り紙の効果的な文面5つのテンプレート

張り紙で解決しない場合の4つのステップを示したプロセスチャート。規約確認から住民周知、証拠収集を経て最終手段としての法的措置にいたるまでの流れを可視化しています。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

目次

マンションの共用部で野良猫に餌をやる人がいて困っていませんか?

糞尿被害や鳴き声、住民同士のトラブルなど、この問題は放置すると深刻化しかねません。しかし、感情的に注意しても対立が深まるばかりです。重要なのは、法的根拠に基づいた冷静な対応です。

この記事では、宅地建物取引士として数々のマンション管理問題に携わった経験から、マンションでの餌やりを禁止するための効果的な張り紙の文面と、その法的根拠を徹底解説します。単なる注意喚起で終わらせない、具体的な文面テンプレートや、張り紙だけでは解決しない場合の段階的な対応策もご紹介します。この記事を読めば、トラブルを避けつつ、住みよい環境を取り戻すための正しい知識と手順が身につきます。

導入:マンションの野良猫餌やり問題、なぜ放置できないのか?

マンション敷地内での無責任な餌やりは、単に「かわいそうだから」という善意だけでは済まされない、深刻な問題を引き起こす可能性があります。管理組合や他の居住者がこの問題を放置できない理由は、主に2つあります。

糞尿・鳴き声…生活環境の悪化

野良猫が居着くことで、まず懸念されるのが衛生環境の悪化です。 エントランスや廊下、駐車場、植え込みなどが糞尿で汚され、強い悪臭が発生します。また、繁殖期や縄張り争いによる猫の鳴き声は、特に夜間において騒音問題となり、住民の安眠を妨げます。これらの問題は、快適なマンションライフを著しく阻害する要因です。

住民間のトラブルと対立

餌やり問題をめぐっては、住民間の意見が対立しがちです。「動物がかわいそう」という意見と、「迷惑行為で困っている」という意見がぶつかり、深刻な人間関係のトラブルに発展することが少なくありません。感情的な言い争いはコミュニティの和を乱し、マンション全体の雰囲気を悪化させてしまいます。

背景知識:マンションでの餌やり禁止、法的根拠は?動物愛護法との正しい関係

「餌やりを注意したいが、どんな法律を根拠にすれば良いのかわからない」という声は多く聞かれます。ここで重要になるのが、「マンション内のルール」と「社会全体のルール」を区別して理解することです。

禁止の直接的な根拠は「管理規約」と「区分所有法」

マンション敷地内での餌やりを禁止する最も直接的な法的根拠は、マンションの「管理規約」と、その上位法である「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」です。

* 管理規約とは:区分所有法に基づき、そのマンションの建物や敷地の管理・使用に関するルールを定めた「マンションの憲法」ともいえる自主規範です。

* 区分所有法とは:マンションのような建物で、独立した各部分を所有する場合の権利関係を定めた法律です。

多くのマンションの管理規約には、「他の居住者に迷惑を及ぼす行為の禁止」といった趣旨の条項(迷惑行為禁止条項)が含まれています。野良猫への餌やりが原因で糞尿被害や騒音が発生している場合、この迷惑行為に該当すると解釈できます。屋外での餌やり行為も、管理規約の動物飼育禁止条項に違反し得る可能性があります。

区分所有者は、この管理規約を遵守する義務を負っています(区分所有法第6条、第30条)。したがって、管理組合は規約を根拠に餌やり行為の中止を求めることができるのです。

マンションにおける餌やり禁止の根拠は、動物愛護法ではなく、あくまでマンション共同生活の秩序を維持するための「管理規約」にあります。

動物愛護法で餌やりは保護される?自治体の指導・勧告とは

一方で、「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」は、餌やりをどう捉えているのでしょうか。

* 動物愛護法とは:動物の虐待防止や適正な飼養を目的とした国の法律です。

この法律は、動物をみだりに殺したり傷つけたりすることを禁じており、餌を与えず衰弱させることも「虐待」にあたる可能性があります。しかし、これは「餌やり行為そのもの」を保護・推奨するものではありません

重要なのは、同法第25条の規定です。餌やりによって悪臭や騒音など「周辺の生活環境が損なわれている」と認められる場合、都道府県知事などが原因者に対して、事態を改善するための指導や勧告、命令を行うことができると定められています(出典:動物の愛護及び管理に関する法律 第25条)。違反時には過料が科される可能性もあります。一部の自治体では、飼い猫以外への給餌を禁止する条例があり、過料5万円以下が設定されている例もあります。また、京都市では「動物との共生に向けたマナー等に関する条例」(2015年7月施行)に基づく指導も行われています。

つまり、動物愛護法は、無責任な餌やりによって生活環境が悪化した場合には、行政が介入する根拠となりうる法律なのです。

【判例で学ぶ】餌やりが「違法」と判断された実際のケース

実際に、野良猫への餌やりが原因で裁判に発展し、餌やり行為が「違法」と判断されたケースがあります。

有名なのが、東京地裁平成22年5月13日の判決です。この裁判では、集合住宅の住民が野良猫に餌やりを続けた結果、糞尿被害などが生じました。裁判所は、この行為が管理規約の迷惑行為禁止条項に違反し、かつ被害が社会生活上の「受忍限度(お互い様として我慢すべき範囲)」を超えているとして、餌やりの中止と損害賠償204万円を命じました(出典:公益財団法人マンション管理センター「季刊誌マンション管理センター」ほか)。この判例は、継続的な餌やり行為が生活環境を著しく悪化させた場合、法的な責任を問われる可能性があることを示す重要な事例となっています。

手続・対応ステップ①:効果的な張り紙(警告文)の作り方

問題解決の第一歩として有効なのが「張り紙」による注意喚起です。ただし、単に「餌やり禁止!」と書くだけでは効果が薄いばかりか、反発を招く恐れもあります。法的観点を踏まえた、冷静かつ説得力のある文面を作成することが重要です。

張り紙に盛り込むべき5つの必須要素

効果的な張り紙には、以下の5つの要素を必ず盛り込みましょう。

1. 管理組合の正式な意思表示であること:「管理組合理事会」など、公式な主体名を明記する。

2. 法的根拠の明記:「本マンション管理規約第〇条」や「区分所有法第〇条」など、具体的な条文番号を記載する。

3. 禁止する客観的な理由:「糞尿による悪臭」「騒音被害」など、感情的にならず事実を具体的に記述する。

4. 今後の対応方針:「改善が見られない場合は、法的措置を検討する」など、毅然とした態度を示す。ただし脅迫的な表現は避ける。

5. 相談窓口の明記:「ご不明な点は管理組合事務室まで」など、対話の窓口を用意し、一方的な通知ではないことを示す。

そのまま使える文面テンプレート【法的観点を踏まえた例文】

上記の要素を盛り込んだ、そのまま使える文面のテンプレートです。ご自身のマンションの状況に合わせて修正してご活用ください。

(記載例)

マンション敷地内における野良猫等への餌やり禁止に関するお知らせ

居住者の皆様へ

日頃よりマンション管理運営にご協力いただき、誠にありがとうございます。

さて、最近、マンション敷地内において野良猫への餌やりが行われた結果、糞尿による悪臭や衛生環境の悪化といった問題が発生しております。

本マンション管理規約第〇条では、他の居住者に迷惑を及ぼす行為や、建物の通常の使用を妨げる行為を禁止しております。無責任な餌やり行為は、周辺の生活環境を損なう迷惑行為に該当します(区分所有法第6条、第30条、動物の愛護及び管理に関する法律第25条も参照)。

つきましては、良好な住環境を維持するため、マンションの共用部分および敷地内での野良猫等への餌やり行為を全面的に禁止いたします。

本通達後も改善が見られない場合、管理組合として、行為者に対し区分所有法第57条等に基づく差止請求、損害賠償請求等の法的措置の可能性を検討せざるを得ない状況となり得ますので、ご承知おきください。

皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

ご不明な点がございましたら、下記までお問い合わせください。

【お問い合わせ先】
〇〇マンション管理組合 理事会
TEL: XXX-XXX-XXXX
(管理事務室:平日9時~17時)

※本テンプレートはWeb表示時の互換性確保のためテキスト記述としています。印刷時はコピーして使用してください。

【実装時の注意】

・第〇条:各マンションの管理規約の「迷惑行為禁止条項」の条文番号を記入。参考:マンション標準管理規約第13条参照 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html

・区分所有法第6条・第30条:条文番号は国土交通省指定 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069

・空白部分を埋めた上で、弁護士の最終確認を推奨(非弁行為回避)。

これはNG!逆にトラブルを招く張り紙の表現

注意喚起のつもりが、逆に管理組合の立場を危うくすることもあります。以下の表現は、脅迫罪や名誉毀損罪に問われるリスクがあるため絶対に避けましょう。

* 個人を特定・攻撃する表現:「〇〇号室の方、餌やりをやめなさい!」

* 過度な脅迫表現:「罰金〇万円を科します」「警察に通報します」

* 事実に基づかない断定:「病原菌をばらまいている」

張り紙はあくまで冷静に、事実と規約に基づいて作成することが鉄則です。

手続・対応ステップ②:張り紙で解決しない場合の4ステップ対応フロー

張り紙を掲示しても問題が解決しない場合、より踏み込んだ対応が必要になります。感情的にならず、以下の手順に沿って段階的に進めましょう。

Step1:管理規約の確認と理事会での方針決定

まずは、自マンションの管理規約に迷惑行為に関する条項が明記されているかを再確認します。その上で、理事会を開催し、「餌やり行為は規約違反にあたる」という公式な見解を統一し、今後の対応方針を決議します。この議事録は後の法的手続きで重要な証拠となります。

Step2:張り紙の掲示と住民への周知徹底

決定した方針に基づき、前述のポイントを押さえた張り紙を作成し、エントランスやエレベーター内など、全住民の目に触れる場所に掲示します。同時に、広報誌や総会資料などで改めて周知を図り、管理組合としての明確な意思を全体に伝えます。並行して、お住まいの自治体の福祉事務所・保健所に相談し、動物愛護法第25条に基づく行政指導の可能性も確認することが効果的です。自治体によっては関連条例(例:京都市「動物との共生に向けたマナー等に関する条例」など)に基づく指導も行われています。

Step3:被害状況の客観的な記録と個別対応

張り紙後も行為が続く場合は、証拠収集が重要になります。
「いつ」「どこで」「誰が」「何をしたか」を客観的に記録しましょう
糞尿の状況を日付入りで写真撮影する、複数の住民で被害状況を確認するなど、客観性を担保することがポイントです。行為者が特定できている場合は、理事会の決議に基づき、書面で直接中止を勧告します。

Step4:最終手段としての法的措置

再三の勧告にも応じない場合は、弁護士に相談の上、法的措置を検討します。具体的には、区分所有法第57条に基づき、行為の差し止めや、被害の清掃費用などを損害として賠償を求める訴訟(差止請求・損害賠償請求)を起こすことになります。この段階では、Step3で記録した客観的な証拠が極めて重要になります。管理組合は、区分所有者の共同の利益に反する行為に対し、停止、結果除去又は予防に必要な措置を請求できます(例: 東京高裁平成6年8月4日判決の類似事案)。

FAQ:マンションの餌やり問題に関するよくある質問

ここでは、餌やり問題に関してよく寄せられる質問にお答えします。

一度きりの餌やりも禁止の対象になりますか?

管理規約で禁止されている以上、一度きりの行為であっても規約違反となります。ただし、裁判などで違法性が問われるのは、多くの場合「継続的・反復的」な行為によって「受忍限度」を超える被害が発生しているケースです。まずは張り紙などでルールを周知し、行為が繰り返されないように働きかけることが大切です。

餌やりをしているのが賃貸人(入居者)の場合、誰に請求できますか?

その部屋の賃借人(入居者)が餌やりをしている場合、管理組合は行為者本人に注意し、改善されない場合は部屋の所有者である区分所有者に対しても規約遵守を求めることができます。通常は、まず行為者に注意し、改善されない場合は区分所有者に連絡して協力を要請します。

地域猫活動(TNR活動)との両立はできませんか?

TNR活動(Trap/捕獲・Neuter/不妊去勢手術・Return/元の場所に戻す)は、不幸な猫を増やさないための有効な手段の一つです。しかし、マンション敷地内で行うには、管理組合の総会でルールを定めて合意形成を図ることが大前提となります。餌やりの時間や場所、清掃当番などを明確にルール化し、活動に反対する住民にも配慮した運営ができるかどうかが鍵となります。無断での活動は、単なる餌やり行為と同様にトラブルの原因となります。

まとめ:法的根拠に基づく段階的な対応で、住みよい環境を取り戻す

マンションの野良猫への餌やり問題は、感情的な対立を生みやすい難しい課題です。しかし、正しい知識を持って段階的に対応すれば、解決の道筋は見えてきます。

本記事のポイントを振り返ります。

* P(Point): 餌やり禁止の根拠は「動物愛護法」ではなく、「管理規約」と「区分所有法」にある。

* R(Reason): 共同生活の秩序を乱す迷惑行為は、規約によって禁止できるため。

* E(Example): まずは法的根拠を明記した効果的な「張り紙」で周知徹底を図る。改善しない場合は、被害状況の記録を取り、最終的には差止請求などの法的措置も視野に入れる。

* P(Point): 感情的にならず、管理組合として毅然と、しかし冷静に対応することが、すべての区分所有者の利益と資産価値を守ることにつながる。

もし対応に迷う場合は、一人で抱え込まず、弁護士やマンション管理士などの専門家や、お住まいの自治体の窓口に相談することも検討しましょう。

免責事項

本記事は、マンションにおける野良猫への餌やり問題に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的助言ではありません。個別の事案については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。また、記載されている法令や制度は、記事作成時点(2025年12月25日)の情報です。法改正や各マンションの管理規約の具体的な条項が最優先される点にご留意ください。

参考資料

  • e-Gov法令検索. (n.d.). 建物の区分所有等に関する法律. Retrieved from https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
  • e-Gov法令検索. (n.d.). 動物の愛護及び管理に関する法律. Retrieved from https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=348AC0000000105
  • 国土交通省. (n.d.). マンション標準管理規約. Retrieved from https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
  • ベリーベスト法律事務所 北千住オフィス. (2024, May 15). 野良猫への餌やりを止めさせたい! 違法ではない? 具体的な対処法を解説. Retrieved from https://kitasenju.vbest.jp/columns/general_civil/g_civil_disputes/6658/

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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