総会資料ペーパーレス化代行完全ガイド:2025改正対応のハイブリッド5ステップ

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンション管理組合の総会資料ペーパーレス化:法令遵守のハイブリッド運用ガイド

マンション管理組合の運営で、理事の頭を悩ませるのが総会資料の準備です。資料の印刷、封入、配布にかかる膨大な手間とコストは、毎年の大きな負担ではないでしょうか。この課題は、総会資料の「ペーパーレス化」で解決できる可能性があります。

しかし、安易なデジタル化は区分所有法に抵触するリスクを伴います。完全に紙をなくすことは、現行法の原則では認められていませんが、2025年改正により電磁的方法の活用が拡大しています。この記事では、宅地建物取引士の視点から、マンション管理組合の理事が知っておくべき法令要件を徹底解説します。法令を遵守しつつコストを削減する「ハイブリッド運用」の具体的な進め方、失敗しない代行サービスの選び方、現実的な導入ステップまでを網羅的にガイドします。

目次

背景知識:総会資料のペーパーレス化と法令の壁

マンション総会資料のペーパーレス化を検討する上で、まず理解すべきなのは「何ができて、何ができないのか」という法的な境界線です。誤った認識で進めると、総会決議が無効になるリスクさえあります。

2025年10月改正による最新ルール

2025年10月の標準管理規約改正により、総会実施のIT活用がさらに推進されています。主要な変更点は以下の通りです(出典:国土交通省, マンション標準管理規約)。

  • 総会招集時通知事項の見直し:全議案の「議案の要領」を招集通知に明示する義務が強化され、情報提供の透明性が向上。
  • 緊急総会招集の最短期間変更:従来の5日間から1週間に延長され、組合員への周知時間を確保。
  • 組合員名簿・居住者名簿の電子化:標準管理規約第31条の2で、名簿の電磁的記録保管が正式に認められ、検索性と更新効率が向上。
  • 国内管理人制度の創設:標準管理規約第31条の3で、海外在住組合員の代理管理を国内管理人に委託可能となり、非対面運用を支援。

これらの改正は、電磁的方法の柔軟性を高めつつ、法令遵守を前提としたペーパーレス化を後押しします。ただし、各管理組合の規約で最終的な運用が決まる点に留意してください。

なぜ「紙」を原則として必要とするのか?区分所有法のルール

結論から言うと、総会資料の「完全なペーパーレス化」は区分所有法上の原則では不可能です。その最大の理由は、区分所有法に定められた「招集通知」と「議案の要領」の扱いにあります。

特に、規約の変更や建物の建替えといった、組合員の権利に大きな影響を与える「特別決議」が議案に含まれる場合、区分所有法第39条第1項では招集通知の書面送付を原則とし、第3項で「規約又は集会の決議により電磁的方法を用いることができる」と柔軟性が認められています(出典:区分所有法第39条)。これは、ITに不慣れな組合員が不利益を被らないように保護するための規定です。したがって、標準管理規約の原則に基づき、紙を活用した「ハイブリッド運用」が推奨されますが、組合規約で電磁的方法を導入する余地があります。

電磁的方法の導入には「組合員全員の承諾」が標準管理規約の原則

資料の提供だけでなく、議決権の行使自体を電子メールや専用システムで行う「電磁的方法による決議」を導入することも考えられます。しかし、これには高いハードルがあります。

国土交通省が示すマンション標準管理規約では、この方法を導入する場合、あらかじめ組合員「全員」の承諾を得る必要があると定めています(出典:国土交通省, マンション標準管理規約(単棟型)第47条(総会決議の電磁的方法利用に関する条項)、第50条)。ただし、管理組合の規約で別段の定めを設けることで、決議要件を柔軟に変更できる場合があります。一人でも反対者がいれば、標準管理規約の原則では導入できませんが、規約改正により対応可能です。

【用語の整理】
電磁的方法:法令で定められた、電子メールやウェブサイト掲載など、紙以外の情報提供・議決権行使の手段。ファイル出力可能性と改ざん防止が要件(区分所有法施行規則第3条)。
ペーパーレス化:上記「電磁的方法」を用いて、紙媒体の利用を減らす取り組み全般。法的な要件を満たすことが重要です。

ペーパーレス化の可否を分ける法令要件まとめ

ペーパーレス化できる範囲は、その総会で審議される議案の種類によって変わります。以下の表は、法令要件をまとめたものです。

決議の種類招集通知議案の要領(※1)議案書詳細(※2)
普通決議のみ紙(原則必須)不要電磁的方法OK
特別決議あり紙(原則必須)紙(原則必須)電磁的方法OK
(※1)議案の要領:規約変更など特別決議の議案概要を説明する資料。
(※2)議案書詳細:予算案や事業報告など、議案の要領以外の詳細資料。
出典:区分所有法第39条、マンション標準管理規約第43条~50条を基に作成。
管理規約で電磁的方法を導入可能な場合あり(区分所有法第39条第3項準用)。

表が表示されない場合の代替:
– 普通決議のみ:招集通知は紙(原則必須)、議案の要領は不要、議案書詳細は電磁的方法OK。
– 特別決議あり:招集通知は紙(原則必須)、議案の要領は紙(原則必須)、議案書詳細は電磁的方法OK。
(注:管理規約で電磁的方法を導入可能な場合あり)。

このように、法律で「紙」が原則付けられている部分と、規約でルールを定めれば「電子化」できる部分を正確に区別することが、合法的なペーパーレス化の第一歩です。

手続・対応ステップ:ペーパーレス化の具体的な方法と導入手順

法令のルールを理解した上で、実際にペーパーレス化を進めるための具体的な方法と手順を見ていきましょう。コスト削減と利便性を両立させる現実的なモデルが存在します。

方法1:QRコード活用ハイブリッドモデル(一つの選択肢)

現実的で導入しやすい方法の一つが、紙の招集通知にQRコードを印刷し、詳細な議案書はスマートフォンやパソコンで閲覧してもらう方法です。

大手デベロッパー系の管理会社でも採用実績があり、例えば、全戸に「紙の招集通知」と「出欠票」を配布しつつ、詳細な議案書はQRコード経由で閲覧する形式が導入されています。この方法により、議案書などの印刷・配布コストの大幅な削減が期待できます。

このモデルの利点は、法令(紙の招集通知)を遵守しながら、印刷・配布の手間とコストが最もかかる「議案書詳細」の部分を効率化できる点です。希望者には別途、紙の資料を配布するオプションを用意すれば、ITが苦手な組合員にも配慮できます。

方法2:クラウドストレージ統合モデル

より本格的にデジタル化を進めたい大規模なマンションでは、管理組合専用のクラウドストレージを導入する方法があります。

総会資料だけでなく、毎月の管理費の収支報告書や理事会の議事録なども一元的に保管・共有できます。これにより、組合員はいつでも必要な情報にアクセスでき、理事会運営の透明性が向上します。大手管理会社が提供する専用アプリなどがこのタイプのサービスにあたり、資料のアップロードから組合員への通知、電子投票までを一元的に行える機能を備えています。詳細は各サービス提供事業者への確認が必要です。

ただし、システムの導入・維持にコストがかかるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。

導入完全ガイド:明日から始めるペーパーレス化5つのステップ

実際にペーパーレス化を導入するための手順を、5つのステップに分けて解説します。

  1. Step1: 法令要件の確認と方針決定
    今回の総会に「特別決議」があるかを確認します。これにより、どこまでを紙で配布する必要があるかが決まります。その上で、「QRコードモデル」か「クラウドモデル」かなど、組合の状況に合った方針を理事会で決定します。
  2. Step2: 組合員への説明と承諾の取得
    ペーパーレス化の目的(コスト削減、環境配慮など)、具体的な方法、ITが苦手な方への配慮(希望者への紙配布など)を説明会や広報誌で丁寧に伝えます。特に、電子的な議決権行使まで導入する場合は、前述の通り標準管理規約第50条の原則として「全員の承諾」を書面で得る必要があります。管理規約で別段の定めがある場合は、それに従います。
(記載例)承諾書の文例
私は、〇〇マンション管理組合の総会における議決権行使について、マンション標準管理規約第50条に定める電磁的方法(電子メールによる議決権行使書の提出)を用いることに同意します。

表が表示されない場合の代替:
(記載例)承諾書の文例:私は、〇〇マンション管理組合の総会における議決権行使について、マンション標準管理規約第50条に定める電磁的方法(電子メールによる議決権行使書の提出)を用いることに同意します。

  1. Step3: 代行サービスの選定と比較検討
    自組合の方針に合った代行サービスを提供している会社を複数探し、見積もりを取得します。サービス内容、費用、セキュリティ対策を比較検討します。(詳しくは次の章で解説)
  2. Step4: 段階的な試行導入
    いきなり全ての総会で導入するのではなく、まずは議案が比較的少ない「通常総会」から試してみるのが安全です。試行導入で出た意見や課題を基に、運用方法を改善します。
  3. Step5: 効果測定と本格運用への移行
    試行導入の結果、どれくらいのコストが削減できたか、組合員からの反応はどうだったかを検証します。問題がなければ、本格的な運用へと移行します。

実務ヒント:失敗しない代行サービスの選び方と注意点

ペーパーレス化をスムーズに進めるには、信頼できるパートナー(代行サービス会社)選びが重要です。ここでは、業者選びの実務的なヒントと、小規模組合が陥りがちな課題について解説します。

どこまで任せる?代行サービスの3つのタイプ

ペーパーレス化の代行サービスは、主に3つのタイプに分かれます。組合の課題に合わせて選びましょう。

タイプ主なサービス内容こんな組合におすすめ
①印刷・配布アウトソース型・資料の印刷、製本、封入、発送
・希望者への紙配布対応
「とにかく印刷・封入の手間をなくしたい」
「まずは今の手作業を外注したい」
②資料電子化(スキャン)支援型・過去の紙資料のスキャニング、データ化
・データの整理、インデックス作成
「過去の議事録などをデータで保管・検索したい」
「書庫の省スペース化を図りたい」
③クラウドシステム統合運用型・専用システムの提供
・資料のアップロード、組合員への通知
・電子投票機能、セキュリティ管理
「情報共有を根本から効率化・透明化したい」
「大規模組合で一元管理が必要」

表が表示されない場合の代替:
– ①印刷・配布アウトソース型:主なサービス内容は資料の印刷、製本、封入、発送、希望者への紙配布対応。おすすめは「とにかく印刷・封入の手間をなくしたい」「まずは今の手作業を外注したい」組合。
– ②資料電子化(スキャン)支援型:主なサービス内容は過去の紙資料のスキャニング、データ化、データの整理、インデックス作成。おすすめは「過去の議事録などをデータで保管・検索したい」「書庫の省スペース化を図りたい」組合。
– ③クラウドシステム統合運用型:主なサービス内容は専用システムの提供、資料のアップロード、組合員への通知、電子投票機能、セキュリティ管理。おすすめは「情報共有を根本から効率化・透明化したい」「大規模組合で一元管理が必要」組合。

見積もりは2〜3社が目安!多すぎる相見積もりが敬遠される理由

コストを比較するために複数の会社から見積もりを取る「相見積もり」は重要です。しかし、むやみに多くの会社(例えば5社以上)に声をかけるのは避けるべきです。通常2〜3社程度が目安とされます(業界実務慣行に基づく)。

なぜなら、管理会社が正確な見積もりを作成するには、現地調査、清掃や点検などの外注先との調整、理事会との面談など、多大な時間と労力がかかるためです。特に20〜40戸程度の小規模な組合の場合、過度な相見積もりを要求すると「手間がかかる割に利益が少ない案件」と判断され、敬遠されてしまう可能性があります。組合側の要望が強すぎると、管理会社から敬遠される恐れがあり、例えば5社以上の見積もり依頼は対応が難しくなる場合があります。タワーマンションなどの大規模物件とは異なり、小規模自主管理組合では管理会社が積極的に参加しにくいのが実情です。

信頼できる数社(2〜3社程度)に絞って、じっくりと相談するのが、良いパートナーを見つけるための実務上のコツです。

セキュリティ要件の確認は必須!

組合員の個人情報を含む総会資料を外部のシステムで扱う以上、セキュリティ対策の確認は最も重要なチェックポイントです。

  • データは暗号化されているか? 不正アクセスへの対策は十分か?(改ざん防止とアクセス制御を講じる:標準管理規約第49条第4項準用)。
  • SLA(サービス品質保証):障害時の対応時間やデータの復旧目標などが契約書に明記されているか?
  • 万が一の情報漏洩時に備えた損害賠償保険に加入しているか?

これらの点を書面で確認し、安易に「大丈夫だろう」と過信しないことが大切です。代行契約時には、管理委託契約で電磁的方法の費用負担を明記することを検討してください(標準管理委託契約書ガイドラインに基づく)。

【要注意】小規模・自主管理組合が直面する壁

ペーパーレス化は多くのメリットがありますが、特に小規模な組合や、管理会社に委託していない自主管理組合では、いくつかの壁に直面することがあります。

課題1:初期コストと専門知識の不足
クラウドシステムの導入には初期費用がかかります。また、法令要件の確認やセキュリティ設定など、ある程度の専門知識が求められます。小規模自主管理組合ではセキュリティ構築に外部相談が必要で、相談単価は5,000〜10,000円/時程度です。

課題2:管理会社の非積極的な姿勢
管理会社によっては、ペーパーレス化のノウハウがなかったり、既存の業務フローを変えたがらなかったりする場合があります。

これらの課題は、組合だけで解決するのが難しい場合もあります。本記事では深掘りしない課題として、必要に応じてマンション管理士などの専門家への相談を検討してください。

FAQ:総会資料のペーパーレス化に関するよくある質問

Q1. マンション総会の資料は、すべてペーパーレスにできますか?

A1. 標準管理規約の原則では、できません。規約の変更や建替えなどの「特別決議」がある総会では、区分所有法により「招集通知」と「議案の要領(議案の概要)」は紙での配布が原則義務付けられています。ただし、規約で電磁的方法を導入可能です。したがって、紙とデジタルを組み合わせたハイブリッド運用が現実的です。

Q2. ペーパーレス化の導入に、いくら費用がかかりますか?

A2. サービスの内容や管理組合の規模により様々です。QRコードを活用した簡易な方法であれば初期費用は比較的抑えられます。まずは複数社から見積もりを取り、費用対効果を比較検討することをお勧めします。

Q3. 組合員の同意はどのように取れば良いですか?

A3. 資料を電子的に「閲覧」するだけであれば、理事会決議と組合員への十分な周知で進められる場合が多いです。しかし、議決権の行使自体を電子化する場合、標準管理規約第50条の原則では「組合員全員の事前承諾」が必要です。管理規約で別段の定めがある場合はそれに従います。説明会を開催し、メリットだけでなくセキュリティ対策やITが苦手な方への配慮も丁寧に説明し、書面で承諾を得るのが一般的です。

まとめ:法令遵守を最優先に、段階的なペーパーレス化を目指そう

マンション総会資料のペーパーレス化は、印刷・配布の手間とコストを削減し、管理組合の運営を効率化する有効な手段です。しかし、その導入には正しい知識と手順が不可欠です。

この記事のポイントを再確認しましょう。

  • 完全ペーパーレスは原則NG:区分所有法上、招集通知や特別決議の議案の要領は「紙」での配布が原則義務。ただし、規約で電磁的方法可能。
  • ハイブリッド運用が現実解:法令で定められた紙媒体と、QRコードやクラウドを利用したデジタルを組み合わせる。
  • 導入は段階的に:組合員への丁寧な説明と合意形成を前提に、通常総会からの試行導入が安全。
  • 業者選びは慎重に:相見積もりは2〜3社に絞り、セキュリティ対策を書面で必ず確認する。

いきなり完璧を目指すのではなく、まずは法令要件を確実にクリアし、自分たちの組合に合った方法で、できるところから段階的に始めてみましょう。それが、法令違反のリスクを避け、着実に運営を効率化する最も確実な道筋です。

マンション管理適正評価制度との関係:ペーパーレス化は直接的な評価対象ではありませんが、情報管理の透明性向上として間接的に寄与する可能性があります(管理適正化法に基づく)。詳細は管理計画認定制度(自治体認定)と区別して確認してください。

免責事項

本記事は、マンション管理組合の運営に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別の案件に対する法的な助言ではありません。記事の内容は、記事作成時点の法令や情報に基づいています。

総会資料のペーパーレス化を具体的に検討・実行する際には、必ず最新の法令、貴管理組合の管理規約の条項を確認し、必要に応じて弁護士、マンション管理士等の専門家にご相談ください。法律相談、契約交渉、紛争対応は、本記事の範囲外です。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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