小規模マンションの管理会社引き受け:20戸以下でも成功する4ステップガイド

自主管理の負担が増し、専門の管理会社への委託を検討している小規模マンションの理事会役員の皆様へ。戸数が少ないことを理由に「うちのマンションは引き受けてもらえないのでは?」と不安に感じていませんか。たしかに、小規模マンションの管理会社探しは特有の難しさがありますが、正しい知識と手順を踏めば、適正な価格で良心的なパートナーを見つけることは十分に可能です。

この記事では、宅地建物取引士の知見を基に、国土交通省の公的データや法令を引用しながら、小規模マンションが管理会社から引き受けを確保するための具体的な方法を4つのステップで徹底解説します。相見積もりのコツから契約後の注意点まで、理事会が今すぐ実践できるノウハウを凝縮しました。この記事を読めば、自信を持って管理会社選定に臨めるようになるはずです。

目次

なぜ小規模マンションの管理会社探しは難しいのか?

管理会社を探し始めても、良い返事が得られなかったり、見積もりが想定以上に高額だったりすることがあります。その背景には、小規模マンション特有の経済的な構造があります。まずはその理由を、公的なデータから客観的に理解しましょう。

【国土交通省データ】戸数規模で約1.9倍違う管理委託費の現実

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」(2024年4月公表)によると、マンションの管理組合が管理会社へ支払う「管理委託費」は、マンションの戸数規模によって1戸あたりの単価が大きく異なります。

総戸数規模管理委託費(1戸あたり月額)
20戸以下17,992円
21~30戸15,487円
31~50戸13,890円
51~75戸12,491円
76~100戸10,501円
101~150戸9,263円
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」より作成

データを見ると、20戸以下のマンションと101戸以上の大規模マンションとでは、1戸あたりの負担額に約1.9倍もの開きがあることがわかります。これは、小規模マンションの管理委託費が割高にならざるを得ない構造を示しています。

固定費の割合が高く、管理会社の採算が合いにくい構造

なぜ戸数が少ないと割高になるのでしょうか。その最大の理由は「固定費」の存在です。エレベーターや消防設備、給水設備などの法定点検費用は、マンションの戸数に関わらず一定額が発生します。

これらの固定費を少ない戸数で分担するため、1戸あたりの負担はどうしても大きくなります。管理会社から見れば、得られる委託費の総額が小さいにもかかわらず、手間のかかる点検・報告業務は大規模マンションと同等に発生するため、採算が合いにくいのです。これが、管理会社が小規模マンションの引き受けに慎重になる根本的な原因です。

【STEP1】管理会社選定の準備:法令要件と組合内の合意形成

管理会社へアプローチする前に、必ず済ませておくべき法的な手続きと、組合内部での準備があります。この準備を怠ると、後々のトラブルの原因となりかねません。

管理委託は総会決議が必須(区分所有法)

管理会社との契約は、管理組合にとって重要な財産上の行為です。そのため、一部の役員だけで決定することはできず、区分所有法に基づき、管理組合の総会で決議を得る必要があります。管理者は、管理委託契約を締結する権限を有します(区分所有法第26条)が、その決定には総会決議(第39条)が必須です。

区分所有法 第三十九条(集会の決議)
1.集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
(出典:e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」)

原則として、区分所有者数および議決権の各過半数による「普通決議」で承認を得る必要があります。ただし、管理規約に別段の定めがある場合は、規約が優先されます。総会では、どの管理会社と、どのような内容・金額で契約するのかを議案として上程し、組合員全体の合意を形成することが不可欠です。

現状把握:管理組合の会計状況と課題を整理する

管理会社に的確な見積もりを依頼するためには、まず自分たちのマンションの現状を正確に把握し、整理しておく必要があります。以下の点を資料としてまとめておきましょう。

  • 会計状況: 収支報告書、貸借対照表、管理費等の滞納状況
  • 建物・設備: 竣工年、戸数、共用設備の仕様(エレベーターの有無、駐車場形式など)
  • 修繕履歴: 過去の大規模修繕工事の実施時期と内容、長期修繕計画書
  • 現在の管理体制: 自主管理で行っている業務内容(清掃、会計、理事会運営など)
  • 課題: 役員のなり手不足、会計処理の負担、専門知識の不足など、管理会社に解決を期待すること

これらの情報を事前に整理しておくことで、管理会社は実態に即した、精度の高い提案をしやすくなります。

国土交通省「標準管理委託契約書」の重要性を理解する

管理会社と締結する契約書は、国土交通省が公表する「マンション標準管理委託契約書」(マンション管理適正化法に基づく指針)に準拠しているかを確認することが極めて重要です。この標準契約書は、管理組合が不利な契約を結ばないよう、業務の範囲や責任の所在、費用の内訳などを明確に定めています。

別表業務内容
別表第1事務管理業務(会計処理、総会・理事会支援など)
別表第2管理員業務(巡回、立哨など)
別表第3清掃業務(共用部分の清掃)
別表第4建物・設備管理業務(エレベーター、消防設備の点検など)

見積もり取得の段階から、この標準契約書をベースにした提案を依頼することで、各社のサービス内容を公平に比較しやすくなります。

【STEP2】引き受けてくれる管理会社の探し方と選定基準

やみくもに大手管理会社に声をかけても、断られる可能性が高いのが小規模マンションの現実です。引き受けてくれる可能性の高い、優良な管理会社を見つけるための3つの基準を解説します。

基準1:同規模(20〜40戸)マンションの管理実績

最も重要な基準は、自分たちのマンションと同規模(20〜40戸程度)の物件を管理した実績が豊富にあるかどうかです。小規模マンション特有の課題(役員の負担が大きい、コミュニティ形成が難しいなど)を理解し、適切な対応ノウハウを持っている会社は、採算性の課題を乗り越える提案をしてくれる可能性が高まります。会社のホームページで管理実績を確認したり、問い合わせ時に直接質問したりしてみましょう。地域によっては小規模特化の管理会社が存在する点も考慮してください。

基準2:「部分委託」など柔軟なプランを提案できるか

全ての業務を丸ごと委託する「全部委託」だけでなく、会計業務だけ、あるいは清掃と設備点検だけといった「部分委託」に対応できるかも重要な選定基準です。例えば、「清掃は住民で分担するから、専門知識が必要な会計と設備管理だけお願いしたい」といったニーズに柔軟に応えてくれる会社であれば、コストを抑えつつ管理の負担を軽減できます。小規模マンションでは、このような部分委託の実務例が多く、委託費の削減に寄与します。

基準3:マンション管理適正化法に基づく登録業者であること

マンション管理業を営むには、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」に基づき、国土交通省への登録が義務付けられています(同法第3条:業務内容の定義、第72条:管理業務主任者の設置義務)。これは、宅地建物取引業の免許とは全く別の制度です。

候補となる会社が正規の登録業者であるか、必ず国土交通省の「マンション管理業者・管理業務主任者等検索システム」で確認してください。(URL: https://www.mlit.go.jp/nega-inf-search/)。無登録の業者と契約することは、絶対に避けなければなりません。

大手と中小、どちらが良い?それぞれのメリット・デメリット

管理会社は、全国展開する大手から、地域に根差した中小企業まで様々です。それぞれに一長一短があるため、組合の何を重視するかで選択肢が変わります。

大手管理会社中小管理会社
メリット・ブランド力、信頼性
・豊富な実績、研修体制
・コンプライアンス体制
小回りが利く、対応が迅速
コストが比較的安い傾向
小規模物件への理解
デメリットコストが割高になる傾向
・担当者の異動が多い
小規模物件を敬遠する可能性
・会社による品質の差が大きい
・大規模修繕のノウハウ不足の可能性
・倒産リスク(大手よりは高い)

小規模マンションの場合、コストパフォーマンスや柔軟な対応を重視するなら、地域密着型で小規模物件の実績が豊富な中小管理会社が有力な選択肢となることが多いでしょう。

【STEP3】相見積もりと交渉の実務:敬遠されない3つのコツ

候補の管理会社をいくつか見つけたら、次はいよいよ相見積もりのステップです。しかし、ここでの進め方を間違えると、かえって管理会社から敬遠されてしまいます。誠実な見積もりを引き出すための3つの実務的なコツを押さえておきましょう。

コツ1:相見積もりは2〜3社に厳選するべき理由

少しでも安い会社を見つけたい一心で、5社も6社も相見積もりを依頼するのは逆効果です。小規模マンションの場合、相見積もりは2〜3社に絞るのが実務上の鉄則です。管理会社は1件の見積もりを作成するために、複数回の現地調査、清掃や各種点検の外注先(清掃会社、エレベーター点検、消防設備、警備など)との打ち合わせ、理事会との面談など、多大な時間と労力を費やします。過度な相見積もりは「冷やかし」と見なされ、真剣に取り合ってもらえなくなるリスクがあります。また、組合側の要望が過度に強い場合も、管理会社から敬遠される可能性があります。

管理会社側は、管理委託内容の精査および会計状況、1棟全体の管理費等の見積もり作成に3〜4回ほど現地に足を運び、外注先との調整をこなします。2〜3社であれば参加しやすく、信頼関係の構築に繋がります。

事前に候補をしっかりと吟味し、「この会社なら契約したい」と思える2〜3社に絞って、誠実に見積もりを依頼することが、結果的に良いパートナーシップに繋がります。

コツ2:「一式見積もり」はNG!詳細な内訳を要求する

提出された見積書が「管理委託費一式 ◯◯円」といった大雑把なものでは、何にいくらかかっているのか分からず、価格の妥当性を判断できません。必ず、以下の項目ごとに金額が記載された詳細な見積書の提出を求めましょう。

  • 事務管理業務費: 会計処理、総会・理事会支援など
  • 管理員業務費: 管理員の勤務形態(常駐、巡回など)と人件費
  • 清掃業務費: 清掃の頻度、範囲と人件費
  • 建物・設備管理業務費: エレベーター、消防、給排水などの点検費用

内訳が詳細であれば、組合内で「この業務は自分たちでできるから削れないか」「この点検頻度は妥当か」といった建設的な議論ができ、コストの最適化に繋がります。

コツ3:組合側の要望を整理し、事前に資料として提供する

STEP1で整理したマンションの現状資料と合わせて、「どのような管理を望んでいるか」という要望リストを事前に管理会社へ提供しましょう。

例えば、「理事会の負担を減らしたい」「長期修繕計画の見直しをサポートしてほしい」「清掃の質を上げてほしい」など、具体的な要望を伝えることで、管理会社はより組合のニーズに合った提案ができます。ただし、要望が多岐にわたり過度に厳しい場合、管理会社の負担が増大し、敬遠される恐れがあるため、優先順位を明確に整理してください。これにより、見積もりの精度が上がり、後の「こんなはずではなかった」というミスマッチを防ぐことができます。

FAQ:小規模マンションの管理会社探しでよくある質問

ここでは、理事会役員の皆様からよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 20戸のマンションですが、管理委託費の目安はいくらですか?

A1. 国土交通省の令和5年度の調査データによれば、20戸以下のマンションにおける管理委託費の平均は1戸あたり月額17,992円です。ただし、これはあくまで全国平均であり、エレベーターの有無、管理員の勤務形態、委託する業務範囲によって大きく変動します。個別の見積もりを取得して判断することが重要です。

Q2. 相見積もりは何社に依頼するのが適切ですか?

A2. 前述の通り、2〜3社が実務上の上限と考えるべきです。管理会社側の負担を考慮し、事前にホームページや実績で候補を絞り込み、本命度の高い会社に誠実な姿勢で依頼することが、良い結果に繋がります。

Q3. 管理会社に断られてしまいましたが、どうすればいいですか?

A3. まず、断られた理由を確認してみましょう。採算性の問題であれば、「部分委託」を検討したり、組合側でできる業務を増やすことでコストを圧縮し、再提案を依頼できる可能性があります。また、アプローチする管理会社のタイプを変え、大手だけでなく、地域密着型の中小企業にも範囲を広げて探してみることをお勧めします。

【STEP4】契約後の管理品質を維持する実務ポイント

無事に契約できたとしても、それで終わりではありません。契約後も管理の品質を高く維持し、組合の資産価値を守っていくための仕組みづくりが重要です。更新や解約時には、現行契約条項を最優先に確認し、必要に応じて専門家に相談してください。

定期的な業務評価と改善要求の仕組みづくり

契約書に基づき、管理業務が適切に実施されているか、理事会が主体となって定期的にチェックする仕組みを作りましょう。年に1回程度、管理会社の担当者を交えて業務報告会を開き、以下の点などを評価します。

  • 清掃は行き届いているか
  • 点検報告書は期日通りに提出されているか
  • 会計報告は正確か
  • 住民からの要望への対応は迅速か

問題があれば具体的に改善を要求し、その結果を次回の評価で確認するサイクルを回すことが、管理品質の維持に繋がります。

フロントマンの資格(管理業務主任者)と対応力をチェック

日々の管理業務の窓口となるのは、管理会社から派遣される「フロントマン」や「担当者」です。この担当者の質が、管理の満足度を大きく左右します。

担当者が、マンション管理の専門家としての国家資格「管理業務主任者」を保有しているかは、一つの判断基準になります。また、理事会とのコミュニケーションが円滑か、提案力があるか、トラブル対応が迅速かなど、実際の対応力を日頃から見ておくことが大切です。

「マンション管理適正化評価」制度の正しい活用法

近年、「マンション管理適正化評価」という制度が注目されています。しかし、この制度は管理会社を評価・格付けするためのものではありません

この制度は、管理組合が「自らの管理状況(会計、防災、コミュニティなど)」を自己評価し、その結果を公表する仕組みです。評価を通じて組合内の課題を可視化し、管理会社と協力して改善していくためのツールとして活用するのが正しい使い方です。管理会社に評価を丸投げするのではなく、組合が主体的に取り組むことが求められます。

まとめ:小規模マンションでも優良な管理会社を見つけるために

戸数が少ないというだけで、管理会社への委託を諦める必要は全くありません。小規模マンション特有の難しさを理解した上で、戦略的にアプローチすれば、組合にとって最良のパートナーを見つけることは可能です。

最後に、成功のための3つの重要アクションを再確認しましょう。

  1. 相見積もりは2〜3社に厳選する: 管理会社の労力に配慮し、誠実な姿勢で依頼することが信頼関係の第一歩です。
  2. 小規模物件の実績が豊富な会社を選ぶ: 同じ悩みを解決してきた経験を持つ会社は、的確な提案をしてくれる可能性が高いです。
  3. 「詳細な内訳」のある見積もりを求める: コストの透明性を確保し、組合内で建設的な議論を行うための必須条件です。

この記事で解説した手順を参考に、まずは組合内の現状整理から始めてみてください。理事会が主体となり、法令と実務に沿った正しいプロセスを踏むことで、大切なマンションの資産価値を未来へ繋ぐことができるはずです。

免責事項

本記事は、不動産管理に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の物件や個別の事案に対する法的助言を与えるものではありません。管理会社の選定や契約締結にあたっては、必ず最新の法令や公的情報をご確認いただくとともに、個別の契約条項を十分に精査してください。法的な判断が必要な場合は、弁護士やマンション管理士等の専門家にご相談ください。

【重要な注記】
・本記事の内容は、2025年12月20日時点の法令に基づいています。最新の改正法令は、必ずe-Gov法令検索で確認してください。
・管理会社との契約締結、決議実施、紛争対応については、弁護士・マンション管理士など法律専門家の相談を強く推奨します。
・本記事は『助言』ではなく『情報提供』です。個別事案への対応責任は、管理組合にあります。


参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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