議事録電子署名拒否を突破!マンション管理組合の法的対応と代替策3選

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マンション管理組合の総会議事録電子化の壁を突破!電子署名拒否への法的対応と実践策

マンション管理組合の総会議事録を電子化しようとした際、一部の役員や区分所有者から「パソコンが苦手」「安全性が不安」といった理由で電子署名を拒否され、お困りではありませんか。業務効率化の大きな一歩であるはずの電子化が、思わぬ壁にぶつかっている状況かもしれません。

この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、議事録の電子署名に関する法的な位置づけを一次情報に基づき解説します。区分所有法や電子署名法の規定をひも解き、電子署名が拒否された場合の具体的な代替策や、全住民の合意を円滑に進めるための実践的なステップを網羅的にご紹介します。

最後まで読めば、法的な正当性を確保しつつ、ITに不慣れな方にも配慮した現実的な解決策が見つかり、管理組合全体の納得感を得ながら議事録の電子化を進めることができるようになります。

目次

なぜ?議事録の電子署名が拒否される3つの主な理由

議事録の電子化は多くのメリットがありますが、一部の区分所有者からすんなり受け入れられないケースも少なくありません。拒否される背景には、主に3つの理由が考えられます。

理由1:IT操作への不慣れとプロセスの複雑さ

最も多い理由が、パソコンやスマートフォンの操作に対する不慣れです。特に高齢の署名義務者にとって、電子署名サービスのアカウント作成、メール認証、電子証明書のインストールといった一連のプロセスは、非常に複雑でハードルが高いと感じられます。操作に戸惑い、途中で断念してしまうケースも少なくありません。

理由2:セキュリティに対する漠然とした不安

「自分の知らないうちに署名されてしまうのではないか」「個人情報が漏洩するのではないか」といった、セキュリティに対する漠然とした不安も拒否の大きな要因です。電子署名が持つ「非改ざん性」や「本人性」といった技術的な仕組みが十分に理解されず、かえって不信感につながってしまうことがあります。

理由3:そもそも電子化の必要性を感じていない

紙の議事録で長年運用してきた管理組合では、「なぜ今さら電子化する必要があるのか」という根本的な疑問を持つ方もいます。ペーパーレス化によるコスト削減や保管の手間削減といったメリットを説明しても、現状維持で十分だと考える人にとっては、新しい方法を学ぶ動機付けが弱いのが実情です。

私のマンションでも、理事会で電子署名の導入を提案した際、監事を務める70代の方から強い反対がありました。「やり方がわからないし、責任が持てない」の一点張りで…。しかし、後述するハイブリッド運用を提案したことで、最終的には納得していただけました。
署名を拒否される背景は様々です。まずは相手の不安や疑問を傾聴し、技術的な問題なのか、心理的な抵抗なのかを見極めることが、解決の第一歩となります。

【法的根拠】議事録の電子署名は「義務」?区分所有法の定めとは

電子署名への対応を考える上で、まず押さえるべきは法律上の位置づけです。実は、特定の条件下では電子署名は「任意」ではなく「義務」となります。

区分所有法第42条4項:電子署名は法律上の要件

マンション管理の基本法である区分所有法では、総会の議事録について次のように定めています。

議事録が電磁的記録をもつて作成されている場合における当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

(出典:建物の区分所有等に関する法律 第42条4項)

これは、「もし議事録を電子データ(電磁的記録)で作成するならば、電子署名が必須である」と解釈されます。つまり、「紙で作成するか、電子データで作成するか」の選択は任意ですが、一度「電子データで作成する」と決めた以上、電子署名を行うことは法律上の義務となるのです。

電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第3条:電子署名が持つ「真正成立の推定」効力

では、なぜ電子署名が求められるのでしょうか。その理由は、電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第3条にあります。

本人による一定の電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

(出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第3条 [e-Gov法令検索、最新確認:2025年12月20日])

この「真正成立の推定」とは、裁判などで議事録の有効性が争われた際に、「その議事録は、署名した本人の意思で作成され、かつ改ざんされていない」ということを、法的に強く推定する効力です。この推定効があることで、管理組合は議事録の正当性を容易に証明できます。

押印と同等の法的効力を持つための「本人性」と「非改ざん性」

電子署名が紙の署名・押印と同等の効力を持つためには、次の2つの要素が不可欠です。

  1. 本人性:その署名が間違いなく本人によって行われたこと。
  2. 非改ざん性:署名された後に、文書が改ざんされていないこと。

適切な電子署名サービスを利用することで、この2つが技術的に担保され、電子署名及び認証業務に関する法律第3条の推定効が働きます。逆に言えば、電子署名がない単なるWordファイルやPDFファイルでは、この法的効力が得られないのです。

電子署名を拒否された場合の代替策3選と法的有効性

法的には電子署名が義務だとしても、現実には操作できない人がいる場合、どうすればよいのでしょうか。幸い、実務上はいくつかの有効な代替策が存在します。

代替策1:「立会人型」電子署名で操作の負担を軽減する

電子署名には、署名者本人が電子証明書(マイナンバーカード等)を使って署名する「当事者型」と、電子契約サービス事業者が介在する「立会人型」があります。

【代替テキスト:電子署名種類比較表】

  • 種類:当事者型 | 特徴:署名者本人が電子証明書を用いて厳格に署名。法的効力が最も高い。 | 本人確認方式:マイナンバーカード、生体認証等 | 操作負担:高い(事前準備や専門知識が必要)
  • 種類:立会人型 | 特徴:サービス事業者がメール認証等で本人確認を行い、署名を付与。クラウド型とも呼ばれる。 | 本人確認方式:メール認証、パスワード設定 | 操作負担:低い(メールを受信し、リンクをクリックする程度)

IT操作に不慣れな方には、操作が簡単な「立会人型」のサービスを提案するのが有効です。立会人型電子署名については、総務省・法務省・経済産業省「電子署名法第3条に関するQ&A」(令和6年6月版、最新確認:2025年12月20日)において、「条件を満たす立会人型電子署名は電子署名及び認証業務に関する法律第3条の推定効の適用対象となりうる」と整理されています(出典:https://www.soumu.go.jp/main_content/000788480.pdf、アクセス日:2025年12月20日)。法的有効性の点でも安心です。

当事者型電子署名は、電子証明書により本人が電子署名をし、第三者機関が厳格な身元確認を行う形式で、生体認証・所持認証・記憶認証など複数の認証方式に対応します。一方、立会人型電子署名は、メール認証等で本人確認を行い、サービス事業者が署名を付与する形式で、生体認証対応は限定的です。

代替策2:【推奨】紙で署名し、スキャンしたPDFを保管するハイブリッド運用

最も現実的でトラブルが少ないのが、この「ハイブリッド運用」です。国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及びコメント」(令和6年改正版、令和7年追補版確認:2025年12月20日)では、電磁的記録で作成された議事録について以下のように説明されています。

  • 第72条:規約原本は「書面署名 または 電磁的記録に電子署名」
  • コメント抜粋:「紙の署名済み議事録をスキャンしたPDFを電磁的方法で保管・閲覧する場合には電子署名は不要です」(出典:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html、p. 45、アクセス日:2025年12月20日)。

この方法の場合、電子ファイル(PDF)自体に電子署名をする必要はありません。電子署名を拒否する人がいる場合でも、その人だけ紙に署名してもらうことで、法的な要件を満たしつつ議事録を完成させることができます。

ただし、改正内容(第31条の2・第31条の3:国内管理人、電子運用等、第67条の3:所在不明者除外)により、電子運用の柔軟化が進んでいますが、議事録の電子署名義務は区分所有法第42条4項に基づき維持されています。

代替策3:署名が必要な人を3名に限定し、影響を最小化する

そもそも、議事録への署名は誰がすべきでしょうか。区分所有法では、「議長及び集会に出席した区分所有者のうちその議事録に署名すべき二人」と定められています(出典:区分所有法 第42条3項)。つまり、原則として議長を含めた計3名(または規約で定めた場合はそれ以上の人数)の署名があればよいのです。

総会出席者全員に電子署名を求める必要はありません。署名義務者を電子署名に対応可能な人に限定することで、拒否による影響を最小限に抑えることができます。

電子署名への拒否感をなくす!円滑な導入に向けた4つの実務対応

問題が発生してからの対応も重要ですが、そもそも拒否感を抱かせないための事前の取り組みが円滑な導入の鍵を握ります。

対応1:ツール操作の「事前説明会」と議事録の「読み合わせ」を徹底する

「わからない」という不安は、体験することで解消できます。総会でいきなり使うのではなく、事前に理事会や有志向けに電子署名ツールの操作説明会を開催しましょう。スマートフォンの画面をプロジェクターに映しながら、実際の操作手順を一緒にやってみるのが効果的です。また、署名前には必ず議事録案の「読み合わせ」を行い、内容に間違いがないことを全員で確認するプロセスをルール化すると、安心して署名してもらえます。

対応2:管理会社や第三者認証サービスのサポート体制を活用する

管理組合だけで対応するのが難しい場合は、管理会社や電子署名サービスの提供事業者に協力を仰ぎましょう。多くのサービスでは、電話やメールでの操作サポートを提供しています。専門家からの客観的な説明は、住民の安心感につながります。

管理会社を活用する場合、見積もり取得などで複数の会社に依頼すると、管理会社の労力が過大になる可能性があります。一般的に、2-3社程度の相見積もりが現実的で、過度な依頼は対応を敬遠されるリスクがあります。管理委託内容の精査、現地確認、外注先との調整、理事会面談などに3-4回の労力を要するため、組合側は支援を依頼する際の負担を考慮したアプローチをおすすめします。

対応3:電子化のメリット(外部提出時の信頼性向上など)を丁寧に伝える

なぜ電子化するのか、そのメリットを具体的に伝えることも重要です。

  • ペーパーレス化による印刷・郵送コストの削減
  • 保管場所が不要になり、検索も容易になること
  • 将来、マンションの修繕等で融資を受ける際、金融機関など外部機関へ提出する資料としての信頼性が格段に向上すること

特に3点目は重要で、電子署名された議事録は法的な証明力が高いため、手続きがスムーズに進むという大きな利点があります。

対応4:規約で「紙署名との選択制」を明記し、心理的ハードルを下げる

最終的な手段として、管理規約を改正し、署名方法を選択できることを明記するのも有効です。ただし、現行管理規約の規定に優先して適用されるものではありません。

【代替テキスト:規約記載例】

  1. 記載例:第XX条(議事録の署名) 議長及び出席した組合員のうち2名は、議事録に署名又は記名押印しなければならない。この署名は、法務省令で定める電子署名をもって代えることができる。ただし、現行管理規約の規定に優先して適用されるものではない。

このように規約で定めることで、「電子署名ができない人は排除される」という不安を和らげ、心理的なハードルを下げることができます。

【FAQ】議事録の電子署名についてよくある質問

電子署名の運用に関して、よく寄せられる質問にお答えします。

電子署名をどうしてもできない人がいる場合、議事録は無効になりますか?

いいえ、直ちに無効にはなりません。署名義務者3名のうち、一部の人が電子署名できない場合は、その人だけ紙に署名してもらい、それをスキャンして電子署名済みの議事録と一緒に保管する「ハイブリッド運用」が可能です。この方法で法的要件を満たすことができます。

電子署名サービスの費用は誰が負担するのですか?

一般的に管理組合の経費(管理費)から支出されます。そのため、電子署名システムを導入するには、総会での予算承認決議が必要となる場合があります。

議事録の電子署名は、いつまでに完了させる必要がありますか?

法律で明確な期限は定められていませんが、総会後、速やかに行うことが望ましいとされています。トラブルを避けるため、管理規約で「総会後2週間以内」などと目安を定めておくと、運用がスムーズになります。

【実務ヒント】やってはいけない対応と法的リスク

良かれと思って行った対応が、かえって法的なリスクを招くこともあります。特に注意すべきNG例をご紹介します。

最も危険なのは、区分所有法を無視して「電子署名は任意とする」と規約で定めてしまうことです。これは議事録の法的効力を根本から揺るがしかねません。

誤解:「電子署名を任意にする」規約改正は議事録の効力を失わせる危険性

前述の通り、区分所有法では「電磁的記録で作成するなら電子署名は義務」とされています。これを無視して「電子署名をしなくてもよい」と規約で定めてしまうと、法令違反の状態となります。

リスク:推定効を失い、紛争時の立証責任が管理組合側に転嫁される

電子署名のない電子議事録は、電子署名及び認証業務に関する法律第3条の「真正成立の推定」が働きません。万が一、総会決議の有効性を巡って訴訟になった場合、その議事録が「本物であり、改ざんされていない」ことを、管理組合側が自ら証明しなければならなくなります。これは非常に困難な立証であり、敗訴のリスクを著しく高めることになります。

まとめ:電子署名導入の進め方と拒否対応チェックリスト

マンション総会議事録の電子署名を拒否された場合でも、焦る必要はありません。法的根拠を正しく理解し、現実的な代替策と丁寧な合意形成プロセスを踏むことが成功への道筋です。

最後に、これまでの内容を実践するためのチェックリストをまとめました。

【電子署名導入・拒否対応チェックリスト】

  • 法的根拠の理解
    • [ ] 区分所有法上、電子データで議事録を作成する場合、電子署名は「義務」であることを理解したか。
    • [ ] 電子署名がないと、議事録の「真正成立の推定」効力が得られないリスクを認識したか。
  • 拒否への備え(代替策)
    • [ ] ITに不慣れな人向けに、操作が簡単な「立会人型」電子署名サービスを検討したか。
    • [ ] 【推奨】拒否者には紙で署名してもらい、スキャンしてPDF保管するハイブリッド運用を準備したか。
    • [ ] 署名義務者は原則3名でよいことを確認し、対応可能な人に依頼する体制を整えたか。
  • 円滑な合意形成
    • [ ] 事前に操作説明会や読み合わせを実施する計画を立てたか。
    • [ ] 電子化のメリット(コスト削減、外部提出時の信頼性向上など)を丁寧に説明する準備をしたか。
    • [ ] 必要に応じて、規約で「紙署名との選択制」を明記することを検討したか。
  • やってはいけないことの確認
    • [ ] 「電子署名は任意」といった、法的に無効な規約改正をしようとしていないか。

電子化は目的ではなく、あくまで管理組合運営を円滑にするための手段です。一部の人が取り残されることのないよう、法的な知識と他者への配慮を両立させながら、慎重に進めていきましょう。

免責事項

本記事は、2025年12月20日時点で信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、その内容の正確性、完全性を保証するものではありません。また、本記事は不動産取引に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の案件に対する法的助言を行うものではありません。

法律や制度は改正される可能性があります。具体的な意思決定にあたっては、必ず最新の法令をご確認の上、弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。個別の契約条項等が本記事の内容に優先します。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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