※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。
光回線の工事は、部屋の中に機器を置く作業と、外壁・MDF室・パイプスペースに触れる作業が重なることが多いです。分譲マンションでは、後者は管理組合の手続が先です。独断で穴を開ける条項はありません。
- 影響がある修繕等。標準管理規約第17条第1項は、専有部分の修繕、模様替え、定着する物件の取付けまたは取替えで、共用部分または他の専有部分に影響を与えるおそれがあるものを行うとき、あらかじめ理事長に申請し、書面による承認を受けると定めています。
- 理事会が決める。承認か不承認は、第3項で理事会の決議です。理事長個人の口頭了解では足りません。
- 著しい変更。外壁の新規貫通など、共用部分の形状または効用の著しい変更に当たるときは、区分所有法第17条の集会決議が別に要ります。
- 自組合の細則。使用細則や別表が標準と違えば、その定めが先です。
この記事は2026年9月時点の説明です。※本記事は一般的な情報提供を目的としています。

光回線工事|規約第17条の申請・添付・負担の確認
標準管理規約(単棟型、令和7年10月17日改正)の第17条は、専有部分の工事のうち、共用や他戸に影響し得るものを対象にしています。コメントは、配管や配線の枝管・枝線の取付け・取替えを、承認が要る例に挙げています。光回線の引込みは、この枝線の取付けに当たることが多いです。
- 第1項。あらかじめ理事長へ申請し、書面による承認を受けます。電磁的方法が使える規約では、書面または電磁的方法です。
- 第2項。設計図、仕様書、工程表を付けた申請書を出します。業者のチラシだけでは、経路と穴あけの有無が分かりません。
- 第3項。理事長は、理事会の決議で承認または不承認を決めます。第54条第1項第五号の理事会の職務です。
- 第4項。承認があったときは、その範囲内で、専有部分の修繕等に係る共用部分の工事もできます。MDF室やパイプスペースへの立入りは、この範囲に書きます。
- 第5項。理事長または指定を受けた者は、必要な範囲で修繕等の箇所に立ち入り、調査できます。区分所有者は正当な理由がなければ拒否できません。
- 第6項。工事後に共用部分または他の専有部分へ影響が出たときは、発注した区分所有者の責任と負担で必要な措置を取ります。
- 第7項。第1項の承認が要らない修繕等でも、工事業者の立入り、資機材の搬入、騒音、振動、臭気など、実施中の影響を組合が把握する必要があるものは、あらかじめ理事長へ届け出ます。
コメントは、この条を区分所有法第18条第1項の共用部分の管理について、同条第2項により規約で別の方法を定めたものと説明しています。枝線の取付けは、まず第17条の承認で処理します。ただし、同コメントは、区分所有法第17条第1項の共用部分の変更に当たり、集会の決議が要る場合もある、と留保しています。

配線の通る場所で、申請の要否が変わる

「自分の部屋だから自由」とは分けません。通る場所ごとに、誰の管理かを見ます。別表第2は給水管と排水管の共用の範囲を示しています。通信の配線は、この別表に行が無いことが多いです。そのときは、規約の共用部分の定義、設計図書、使用細則で当たります。
- 住戸の内側。室内のコンセントや端末の取付けで、躯体や他戸に影響しない作業は、第17条第1項の対象外であることが多いです。第7項の届出の対象になるかは、細則です。
- MDF室とEPS。主配線盤や電気・通信のシャフトは、建物の共用部分として扱うのが通常です。鍵の貸与、作業時間、立会いは、承認の条件に書きます。
- 外壁とスラブ。新規の穴あけ、スリーブの新設は共用部分の工事です。既存のスリーブを使うか、新規に貫通するかで、第17条の承認だけで足りるか、法17条の決議が要るかが分かれます。
- バルコニー。標準管理規約第14条は、バルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラスに専用使用権を認めています。専用使用でも共用部分です。手すりや床への穴あけ、室外機置場への機器増設は、申請の対象になります。
区分所有法第6条第2項は、専有部分または共用部分を保存し、または改良するため必要な範囲で、他の区分所有者の専有部分の使用や保存の実施を請求できます。損害があれば償金です。隣戸の天井裏やパイプスペースへ入る必要があるときも、請求であり、承諾のない実力での入室ではありません。
総会が要るのは、著しい変更に当たるとき

規約第17条の理事会承認と、区分所有法第17条の集会決議は、別の手続です。混ぜて「理事会か総会か」と一つにはしません。
- 区分所有法第17条。共用部分の形状または効用の著しい変更は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議です。規約で、区分所有者の定数のみ過半数まで減らせます。議決権の4分の3は、この減額の対象ではありません。
- 第18条。共用部分の管理に関する事項は集会の決議です。保存行為は各共有者ができます。規約で別段を定められます。枝線の取付けを規約第17条の承認に委ねているのは、この別段です。
- 第39条。著しくない変更や管理の事項で、規約に別段がなければ、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数です。
- 標準管理規約第47条第3項。規約変更と共用部分の著しい変更などは、組合員総数と議決権総数の各4分の3です。出席要件は、組合員総数と議決権総数の各過半数の出席です。
「外壁の穴は必ず特別決議」「室内の工事は必ず自由」とは切りません。既存の貫通部を使い、外観と効用を変えない引込みは、規約第17条の承認で足りることが多いです。新規に外壁を貫き、外観を変える工事は、法17条の検討に入ります。判断は、申請書の図面と、自組合の規約です。
建物の主要構造部に影響を及ぼす行為は、区分所有法第6条第1項との関係で、区分所有者が実施できない、と標準管理規約のコメントは書いています。耐力壁への開口は、光回線の申請では承認しません。
申請書に載せる経路、期間、原状、保険

理事会が判断できる材料は、業者の「無料工事」の一文では足りません。第2項の三つの添付に、次の欄を足します。
- 経路。敷地内の引込み、MDF、階のシャフト、住戸までのルートです。新規の穴あけ箇所を図に落とします。既存スリーブの利用なら、その位置を示します。
- 期間と立入り。作業日、共用廊下の占有、搬入経路、管理員の立会いの要否です。他の専有部分へ入るときは、第6条第2項の請求の相手も書きます。
- 原状と残置。工事後に戻す範囲、ケーブルを残すか撤去するかです。売却や賃貸のときに残置物の扱いで争いやすいので、承認の条件に残します。
- 隣戸への説明。上下左右へ騒音や振動が出るとき、コメントは当該区分所有者の同意を必要とすることも考えられる、としています。細則に同意書があれば、その書式です。
- 保険。施工業者の賠償責任保険と、組合の共用部分の損害保険は別の証券です。区分所有法第18条第6項は、共用部分の損害保険契約を管理とみなします。工事中の事故が組合の保険で必ず出るとは限りません。約款で確認します。
承認の判断に専門的な知見が要るとき、コメントは建築士や建築設備の専門家の意見を聴くことを挙げています。調査に特別な費用がかかるときは、申請者に負担させることが適当、としています。円の額は、見積もりで決まります。全国共通の単価はありません。
賃借人が工事を希望するときは、標準管理規約第19条で、区分所有者が規約と使用細則を守らせます。申請の名義は区分所有者です。賃貸借契約の原状回復は、組合の承認とは別の契約です。組合の承認が出ても、貸主の承諾の代わりにはなりません。
建物全体の引込みと、一戸だけの工事
一戸だけの引込みと、全戸が使える幹線の新設は、議案の種類が違います。
- 一戸の枝線。規約第17条の申請です。費用は、発注した区分所有者が業者へ払うのが通常です。管理費の使途(標準管理規約第27条)には、個人の通信契約の工事費は入っていません。
- 建物の幹線。共用部分に新たな設備を置くときは、第21条第1項の組合の管理、第48条の総会決議、予算の科目が要ります。修繕積立金の取崩しは第28条の事由に当たるかを見ます。通信設備の新設は、計画修繕の行に無いことが多いです。
- 既存設備の利用。すでに光回線の幹線がある建物で、一戸が分岐するだけのときは、設備の管理者(通信事業者または組合)の利用条件と、第17条の申請を重ねます。
見積もりを取るのは、工事を発注する区分所有者です。管理会社の相見積もり(2〜3社)の話とは別です。組合が幹線を発注するときだけ、同じ仕様で2〜3社です。5〜6社へ同時に出すと、20〜40戸程度では辞退が増えます。これは実務上の傾向であり、公的な統計ではありません。
光回線工事への全国共通の補助金はありません。条件不利地域の光ファイバ整備など、国や自治体の事業は対象と年度要綱が限られます。通常の都心の分譲マンションの一戸引込みが、その事業の対象かは要領で確認します。
理事会が承認のときに見る点
申請が届いた理事会は、業者の営業文ではなく、規約第17条の各項に沿って見ます。コメントは、躯体への影響、防火、防音、他の住戸への影響を挙げています。過度な規制にならないようにする、とも書いています。
- 図面の欠落。穴あけ位置、スリーブの径、防火区画の貫通処理が図に無い申請は、第2項の添付が足りません。不足を返してから決議します。
- 防火。パイプスペースや床の貫通は、防火区画の処理が要ることがあります。処理の方法が仕様書に無いときは、専門家の意見を聴く、とコメントは置いています。
- 条件付きの承認。作業時間、養生、管理員の立会い、完了後の写真提出を、承認の範囲(第4項)に書けます。範囲に書いていない作業は、着工できません。
- 履歴。標準管理規約第32条第六号は、修繕等の履歴情報の整理及び管理を組合の業務にしています。承認した工事の図面は、次の大規模修繕の調査の材料になります。
不承認にするときは、第3項の理事会決議とその理由を申請者へ返します。口頭だけで終わらせると、同じ図面が再提出されたときに判断の跡が追えません。
よくある質問
Q. 室内に機器を置くだけでも申請が要りますか。
A. 躯体や他戸に影響しなければ、第17条第1項の対象外であることが多いです。搬入や騒音を組合が把握する必要があるときは、第7項の届出を見ます。
Q. 理事会の承認があれば、外壁に新しい穴を開けられますか。
A. 承認の範囲にその穴が書いてあるときです。形状または効用の著しい変更に当たるときは、区分所有法第17条の集会決議が別に要ります。
Q. 4分の3は規約で下げられますか。
A. 区分所有法第17条では、区分所有者の定数のみ過半数まで減らせます。議決権の4分の3は、この減額の対象ではありません。
Q. 管理会社の担当者が「問題ない」と言えば着工できますか。
A. 規約第17条の承認は理事会の決議です。管理会社は申請の受付を手伝います。口頭の見解は承認の代わりになりません。
Q. 工事のあと、隣の天井から水や粉が出ました。誰の負担ですか。
A. 第17条第6項では、発注した区分所有者の責任と負担です。原因の確認と、業者の保険、組合の共用部保険は分けて開きます。
まとめ
- 共用や他戸に影響する光回線工事は、標準管理規約第17条で理事長への申請と、理事会の書面による承認が要ります。
- 申請書には設計図、仕様書、工程表に加え、経路、穴あけ、原状、残置を書きます。
- MDF室、外壁、バルコニーは共用部分です。専用使用権があっても、穴あけは申請の対象です。
- 形状または効用の著しい変更は区分所有法第17条です。区分所有者及び議決権の各4分の3、定数のみ過半数まで減らせます。
- 一戸の枝線の費用は発注者、建物の幹線は総会と予算です。全国共通の補助金はありません。
免責事項本記事は2026年9月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。申請の要否、総会の要否、原状回復はその管理規約、使用細則、工事の見積もりで確認してください。
島 洋祐
株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

