管理不全を防ぐ|理事会が機能しないマンションを打開する3つの法的ステップと最新改正法

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンションの理事会が機能していない、役員のなり手もいない。そんな状況に危機感を抱いていませんか。理事会が本来の役割を果たせないと、建物の管理状態は悪化し、修繕計画も滞り、最終的には大切な資産価値を大きく損なう恐れがあります。

この記事では、宅地建物取引士および管理業務主任者の視点から、区分所有法などの法的根拠に基づき、理事会機能不全を打開するための具体的なステップを解説します。臨時総会の開き方から、管理会社の見直し、さらには「第三者管理者方式」の導入まで、明日から動けるアクションプランをご紹介します。2026年4月施行の改正法にも触れつつ、最新の指針に基づいて解説します。

目次

まずは現状把握|理事会が機能しないマンションに迫る3つの重大リスク

理事会の機能不全を放置することは、マンションの将来に深刻な影響を及ぼします。まずは直面するリスクを正しく認識しましょう。

リスク1:建物・設備の老朽化加速と管理不全の進行

理事会が機能しないと、維持管理の意思決定が止まります。「長期修繕計画の見直し遅延」「日常的な不具合の放置」「清掃の質の低下」などが重なり、居住環境が著しく悪化します。これが進行すると、管理不全マンションとして建物全体の荒廃を招く危険性があります。

リスク2:資産価値の著しい下落

不動産取引の現場では、管理状態が売買価格や賃料を左右します。管理計画の更新や適切な修繕が行われていないマンションは、金融機関の融資評価に影響したり、買い手が付きにくくなったりします。結果として、周辺の同築年数物件と比較して低い価格で取引される傾向があります。

リスク3:区分所有法および改正法への抵触

区分所有法第34条では、管理者は毎年1回以上集会(総会)を招集しなければならないと定めています。また、2026年4月1日より施行された改正区分所有法(令和7年法律第47号)では、老朽化マンションや管理不全マンションの再生を円滑化するための規律が強化されています。義務を怠り続けることは、法的な課題を抱えるだけでなく、行政による関与や指導の対象となるリスクを高めます。


【ステップ1】区分所有者の力で状況を打開する法的アクションプラン

理事長が動かない場合でも、区分所有者には法的に認められた手段があります。

手段A:監事の権限による総会招集

最も迅速な解決策は、監事による招集です。マンション標準管理規約(単棟型)では、以下の通り定めています。

(監事)第41条 2 監事は、管理者がいないとき、又は管理者が正当な理由がなく集会の招集の手続をしないときは、集会を招集することができる。 3 監事は、第一項の監査の結果、組合の業務の執行又は財産の状況について不正の事実があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。

理事会が機能せず、必要な業務が滞っている状況は、招集を行う正当な理由に該当し得ます。まずは監事に状況を説明し、総会開催を要請しましょう。

手段B:少数区分所有者による招集請求(区分所有法第34条)

監事が動けない場合でも、区分所有者および議決権の各5分の1(※規約で減じることが可能)以上の賛同があれば、管理者に対し総会の招集を請求できます(区分所有法第34条3項)。

もし管理者が請求から2週間以内に、請求から4週間以内の日を会日とする招集通知を発しない場合、請求した区分所有者自身が自ら総会を招集できます(同条5項)。

【注意点:規約優先の原則】 区分所有法第39条に基づき、総会の決議要件や招集の手続きは「管理規約に別段の定めがある場合は、その定めが優先」されます。行動を起こす前に、必ず自マンションの管理規約を精読してください。


【ステップ2】外部のプロを巻き込む打開策①:管理会社の見直し

総会で組合の意思を統一できたら、次に検討すべきは管理体制の適正化です。

効果的な管理会社変更のポイント

現在の管理会社が委託契約の範囲内(清掃や点検など)の業務を適切に行っているか精査しましょう。不満がある場合、他社への変更は有効な選択肢です。ただし、変更にあたっては「現行の管理委託契約書」に記載された解約予告期間や告知の手法を必ず遵守してください。これを怠ると違約金等のトラブルに発展する恐れがあります。

「多すぎる相見積もり」が失敗を招く理由

実務上、5社も6社も相見積もりを取ることは推奨されません。管理会社が精度の高い見積もりを作成するには、3〜4回の現地調査、外注先(エレベーター・消防等)との再見積もり、会計情報の精査など、膨大な労力がかかります。

特に入居戸数20〜40戸程度の中小規模マンションの場合、競合が多すぎると管理会社から「辞退」されるケースが増えます。質の高い提案を引き出すには、候補を2〜3社に絞り、誠実に交渉することが実務上の賢明な判断です。


【ステップ3】外部のプロを巻き込む打開策②:第三者管理者方式の導入

「役員のなり手がいない」問題を根本から解決するのが「第三者管理者方式」です。

第三者管理者方式とは

区分所有者の中から理事を選ぶ代わりに、マンション管理士や管理会社などの専門家を「管理者」として選任し、運営を委ねる方式です。国土交通省が公表した「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」(令和6年6月策定、令和8年4月改訂)等の最新指針においても、適正な選任と監督の仕組みについて整理されています。

導入の注意点:メリットとリスク

  • メリット: 専門知識による効率的な管理、役員の負担解消。
  • リスクと対策: 「人任せ」による無関心化や、管理者による独走リスク。これを防ぐため、監事の監査機能を強化し、区分所有者による監督体制を管理規約に明記することが不可欠です。
  • 決議要件: 導入には規約変更が必要となる場合が多く、通常は区分所有者および議決権の各4分の3以上の特別多数決議(区分所有法第31条等)を要します。

【Q&A】理事会・マンション管理に関するよくある質問

Q. 管理組合と自治会(町内会)はどう違いますか? A. 管理組合は区分所有法に基づき、区分所有者全員が強制入会する「建物を守るための団体」です。一方、自治会は任意加入の親睦団体です。建物の維持管理に関する決定権は、自治会ではなく必ず管理組合の総会にあります。

Q. 配管更新費用を抑える方法はありますか? A. 「更生工事(ライニング工法等)」を検討することで、費用を抑えられる場合があります。 事例Q:更生工事と一般的な全交換、どちらが安いですか? A:条件によりますが、配管を洗浄し内側をコーティングする更生工事の方が、工事期間・廃材を抑えられるため、全交換に比べ約40%程度低コストに済むケースがあります。ただし、配管の劣化状況によっては適用不可なため、専門家の診断が必須です。

Q. 耐震改修等の補助金について知りたい。 A. 多くの自治体で助成制度が設けられていますが、年度や地域(例:2026年度・東京都〇〇区)ごとに要綱が頻繁に改定されます。必ず申請時点での最新情報を自治体HPで確認してください。申請には専門的な知識が必要なため、積極的にサポートしてくれるパートナーを選ぶことが重要です。


【コラム】分譲マンション管理事業からの撤退を検討中の企業様へ

管理会社の経営において、後継者不足や採算性の問題から事業撤退を検討されている場合、円滑な承継が社会的責務となります。株式会社MIJでは、こうした企業様向けに解決策を提供しています。

  • 撤退時のトラブル回避: 管理組合への契約解除説明や引き継ぎを円滑に進めます。
  • 既存業者の継続: 今まで付き合いのあった清掃・点検業者との関係を尊重し、継続的な発注を調整します。
  • 費用面のサポート: 撤退企業が最も苦慮する人件費等に対し、当面の補助を行うなど柔軟な支援体制を整えています。(※本項は一般的な承継事例の紹介であり、詳細は個別相談となります)

まとめ:行動を起こすのは「今」です

理事会の機能不全は、放置すれば資産を蝕みます。しかし、区分所有法や管理規約に基づいた正当な手続きを踏めば、必ず打開の道は開けます。

  1. 監事または少数区分所有者の権利を使って総会を開く
  2. 管理規約の範囲内で、専門家や管理会社の体制を見直す
  3. 2026年施行の改正法を含め、最新の制度を活用する

まずは管理規約を手元に置き、ご自身のマンションのルールを確認することから始めてみてください。

免責

本記事は2026年時点の法令に基づいた一般的な情報提供であり、個別の案件への法的助言を行うものではありません。具体的な対応は弁護士やマンション管理士等の専門家へご相談ください。

参考資料

  • 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和5年改正版)
  • 国土交通省「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」(令和6年6月策定・令和8年4月改訂)
  • e-Gov「建物の区分所有等に関する法律」
  • 「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号)

島 洋祐

株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

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この記事を書いた人

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