第三者管理者導入で必須!監事の役割と選任手続き完全ガイド|2025年最新

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

第三者管理者方式導入時に不可欠な「監事」の役割と選任手続き

理事会の担い手不足から、管理業務を外部専門家に委託する「第三者管理者方式」への移行を検討するマンションが増えています。しかし、理事会を廃止することで、管理者が独裁し、管理が不透明になるのではないかという不安も大きいでしょう。その独裁リスクを防ぐ鍵こそが、管理組合の監査役である「監事」の選任です。

この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、第三者管理者方式へ移行する際に不可欠な「監事」の役割、法的な位置づけ、そして具体的な選任手続きについて、区分所有法や標準管理規約などの一次情報に基づき詳しく解説します。監事を適切に選任・運用することが、いかに組合員の財産を守り、管理の透明性を確保するために重要かをご理解いただけます。

目次

2025年度の法規制動向:第三者管理者方式の最新環境

「第三者管理者方式」の法的環境は、2024年3月策定のガイドラインが2025年3月に法改正対応版へ改訂されるなど、近年大きく変化しています。特に2025年5月には改正区分所有法が成立(2026年4月施行予定)。あわせてマンション管理適正化法も改正され、管理業者が管理者となる「管理業者管理者方式」に対する初の法規制が導入されます(2026年4月1日施行予定)。これにより、第三者管理者方式における管理者の選任・監督機能として、監事の役割がより一層重要視されています。

背景知識:なぜ「第三者管理者」と「監事」のセット運用が不可欠なのか?

理事会を廃止し、第三者管理者方式を導入するだけでは、かえって管理のブラックボックス化を招く危険性があります。ここでは、なぜ管理者をチェックする「監事」を同時に選任することが不可欠なのか、その理由と法的な背景を解説します。

理事会廃止で懸念される「管理者による独裁リスク」

第三者管理者方式は、理事の担い手不足を解消する有効な手段です。しかし、業務執行の権限が外部の専門家一人(または一社)に集中するため、チェック機能が働かないと以下のようなリスクが生じます。

  • 不透明な会計処理: 工事費用の水増しや、不要なコンサルタント契約など、組合財産が不適切に支出されるリスク。
  • 恣意的な業者選定: 管理者が特定の業者と癒着し、相見積もりを取らずに高額な契約を結ぶリスク。
  • 情報開示の不足: 組合員への報告が不十分になり、管理状況が全く分からなくなる「ブラックボックス化」。

これらのリスクは、管理組合の財産価値を著しく損なう「独裁」状態に他なりません。

【定義と区別】管理者、監事、そして管理組合法人の違い

独裁リスクを理解するために、まず関連する用語を正確に整理しましょう。特に、管理組合に「法人格」があるかないかで、監事の扱いは大きく異なります。

  • 第三者管理者: 理事会に代わり、マンション管理の業務執行を行う外部の専門家(弁護士、マンション管理士など)。
  • 監事: 第三者管理者(または理事会)の業務執行や財産の状況を監査する役員。執行役(管理者)に対するチェック役です。
  • 管理組合法人: 区分所有法に基づき、法務局に登記して法人格を得た管理組合。
  • 非法人管理組合: 法人格のない、いわゆる「権利能力なき社団」としての管理組合。多くのマンションはこちらに該当します。

この中で最も重要な違いは、管理組合法人では監事の設置が法律で義務付けられている点です。ただし、非法人管理組合には監事設置義務がありません。しかし、マンション標準管理規約(国土交通省制定)第35条では監事設置が推奨されており、実務上は設置されるマンションが大多数です。

管理組合法人非法人管理組合
監事の設置義務(区分所有法 第50条)法律上は任意(ただし標準管理規約第35条で設置を強く推奨)
根拠区分所有法管理規約(区分所有法の直接適用なし)
監事の代表権あり(理事との利益相反時)なし
廃止の可否不可可能(規約変更による)
管理組合の法人格による監事の扱いの違い

【留意】区分所有法第50条は「管理組合法人」に限定されており、非法人管理組合には監事設置義務がありません。しかし、マンション標準管理規約(単棟型)第35条~第41条では監事設置が強く推奨されており、第三者管理者方式導入時には監視機能の観点から設置が実務上ほぼ必須となります。

監事の2大業務と法的根拠

監事の役割は、国土交通省が示すマンション標準管理規約(単棟型)第41条で具体的に定められています。主な業務は「業務監査」と「会計監査」の2つです。

(監事)
第41条 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。

(出典:マンション標準管理規約(単棟型) 第41条)
  • 業務監査: 管理者の業務が法令、規約、総会決議等に従って適正に行われているかをチェックします。
  • 会計監査: 管理費や修繕積立金などの収支、保管状況、帳票類が正しく処理されているかをチェックします。

これらの監査を通じて、監事は管理者による業務執行を監視し、組合員の利益を守る「最後の砦」としての役割を担うのです。

手続・対応ステップ:監事を選任・交代する具体的なプロセス

監事の選任は、管理組合の自治の根幹に関わる重要な手続きです。ここでは、監事を選任し、必要に応じて交代させるための具体的なステップを解説します。

Step1: 管理規約の確認と候補者の推薦

まず、ご自身のマンションの管理規約で「役員の選任」に関する条項を確認します。標準管理規約に準拠していれば、監事は「組合員のうちから総会で選任する」と定められているはずです。

その上で、監事の候補者を推薦します。候補者は、会計や法律にある程度詳しい、あるいは管理組合の運営に熱心な組合員から選ぶのが理想的です。

Step2: 総会での選任決議(普通決議が原則)

監事の選任は、総会の決議によって行います。必要な決議要件は、規約に特別な定めがなければ「普通決議」です(出典:区分所有法 第25条)。

  • 普通決議: 区分所有者および議決権の各過半数の賛成による決議。

第三者管理者の導入とセットで監事を選任する場合は、同じ総会で一括して議案を上程し、決議にかけるのが効率的です。なお、改正マンション管理適正化法では、特定の方式(管理業者管理者方式)において選任前の説明会開催が義務付けられるなど、選任プロセスの透明化がより一層求められています。

Step3: 監事の交代・欠員補充はどうする?

監事が任期途中で辞任したり、亡くなったりして欠員が生じることがあります。監事の監査機能が停止することは組合にとって大きなリスクとなるため、速やかな補充が必要です。

対応方法は規約の定めによりますが、一般的には以下の流れとなります。規約に補欠選任条項があればそちらが優先されます。

  1. 原則は臨時総会の開催: 規約に特別な定めがなければ、新たな監事を選任するために臨時総会を招集し、普通決議で選任します。
  2. 規約に定めがある場合: 規約に「補欠の役員は理事会の決議で選任できる」といった定めがあれば、それに従います。ただし、理事会を廃止した第三者管理者方式では、この方法は使えません。理事会が存在しないため、結局は臨時総会での選任が必要となります。

実務ヒント①:誰が監事になれる?外部専門家への依頼方法

監事には誰がなれるのでしょうか。原則は組合員ですが、専門性を確保するために外部の専門家へ依頼するという選択肢もあります。

原則は「組合員」からの選出

マンション標準管理規約では、監事は理事と同様に「そのマンションに現に居住する組合員」のうちから選任することが基本とされています。信頼できる人物が組合内にいれば、コミュニケーションも円滑に進むでしょう。

外部専門家を監事にするには?(規約改正と特別決議)

組合員の中に適任者が見つからない場合や、より高度で専門的な監査を期待する場合は、弁護士やマンション管理士、公認会計士といった外部の専門家を監事に選任することも可能です。

ただし、そのためには事前に管理規約を変更し、「組合員以外の者から監事を選任できる」旨を定める必要があります。規約の変更は「特別決議」が必要となるため、ハードルは高くなります。

  • 特別決議: 組合員総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成による決議。
(記載例)
第○条(役員)
管理組合に、次の役員を置く。
(1)管理者 1名
(2)監事 1名
2. 監事は、組合員または弁護士、マンション管理士等の専門的知識を有する者のうちから、総会の決議によって選任する。

⚠️ 非弁行為に該当しないための注意

外部専門家(弁護士、マンション管理士など)を監事に選任する場合、以下の点に注意してください:

  • 弁護士が監事を務める場合:管理組合のための法律相談は依頼できますが、監事職報酬とは別に弁護士報酬が発生します。両者を明確に分離し、契約書に別条項で記載してください。
  • マンション管理士が監事を務める場合:管理士資格は「助言」に限定され、実際の業務執行や契約代理はできません。マンション管理士に監事職を依頼する場合、監事の監査・報告機能のみを委託し、実行業務は別途管理会社へ委託するよう構成してください。

【推奨】外部専門家を監事に選任する前に、別の弁護士やマンション管理士に規約改正案と委託契約書案をレビューしてもらうことをお勧めします。このような具体的な手続きを進める際には、必ず専門家にご相談ください。

注意!監事になれない人(理事との兼任禁止など)

監事には、その独立性を確保するために一定の制限が課せられています。特に管理組合法人の場合、区分所有法で以下の兼任が明確に禁止されています。

(監事)
第五十条 2 監事は、理事又は管理組合法人の使用人と兼ねてはならない。

(出典:区分所有法 第50条)

これは、業務を執行する理事(や第三者管理者)と、それを監査する監事が同一人物であっては、チェック機能が働かないためです。第三者管理者(またはその法人の従業員)が監事を兼ねることも、利益相反の観点から絶対に避けなければなりません。

実務ヒント②:第三者管理者と監事の理想的な関係とは

監事は、第三者管理者と対立するのではなく、適度な緊張感を保ちながら連携し、管理の質を高めるパートナーであるべきです。ここでは、監査機能を実効性あるものにするためのポイントを解説します。

監事がチェックすべき第三者管理者の業務範囲

監事は、第三者管理者が行う以下の業務が適正に行われているか、定期的に報告を求め、資料を閲覧して監査します。

  • 会計業務: 毎月の収支報告、管理費等の収納、滞納者への督促状況。
  • 契約業務: 管理委託契約、清掃・点検業者との契約内容、大規模修繕工事等の業者選定プロセスと契約金額の妥当性。
  • 総会・理事会(ない場合も)運営支援: 総会議案書の作成、議事録の保管状況。
  • その他: 組合員からの要望への対応状況、長期修繕計画の進捗管理。

特に2026年4月施行の改正マンション管理適正化法では、管理業者管理者方式において定期的な業務報告会の開催が義務付けられるため(同法第77条2項)、監事はその報告内容を厳しくチェックする重要な役割も担います。

不正を発見した場合の監事の強力な権限(臨時総会招集権)

監査の結果、管理者の業務執行に不正や法令・規約違反の疑いがあると認めた場合、監事には強力な権限が与えられています。

それは、自らの判断で臨時総会を招集できる権利です(出典:マンション標準管理規約 第41条第3項)。この権限があるからこそ、監事は管理者に対して毅然とした態度で是正を求めることができ、独裁の抑止力となるのです。

利益相反を防ぐ「監事の代表権」(管理組合法人の場合)

管理組合法人の場合、さらに強力な権限として「監事の代表権」が認められています(区分所有法 第50条第4項)。具体的には、管理組合法人と理事との間に利益相反が生じた場合(例:理事の業務上の過失による損害賠償請求)、監事が単独で管理組合法人を代表して訴訟を遂行できます。

【法令文言】
「監事は、その職務を行うため、いつでも管理組合法人の業務に関する資料の閲覧又は謄写を求めることができる。」(第50条第3項)
「理事と管理組合法人との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。」(第50条第4項)

これにより、管理者が自己に有利な判断をすることを防ぎます。

実務ヒント③:【管理会社側の本音】第三者管理者選定の現実的な進め方

監事の選任と並行して、優秀な第三者管理者を見つけることも重要です。しかし、やみくもに多くの管理会社から見積もりを取ろうとすると、かえって敬遠されることがあります。ここでは、業界の現実を踏まえた賢い進め方をお伝えします。

なぜ過度な相見積もりは敬遠されるのか?

組合側からすれば、多くの会社を比較検討したいのは当然です。しかし、特に20〜40戸程度の中小規模マンションの場合、5社も6社も相見積もりを依頼すると、管理会社側は「労力がかかる割に受注できる可能性が低い」と判断し、見積もりの提出自体を辞退することがあります。

第三者管理者としての見積もり作成には、以下のような多大な労力がかかるためです。

  • 現地調査: 複数回にわたり現地に赴き、建物の状況を確認。
  • 協力会社との折衝: 清掃、エレベーター保守、消防点検など、各協力会社との打ち合わせと見積もり取得。
  • 会計・契約の精査: 現在の管理費会計や既存の契約内容を詳細に分析。
  • 組合との面談: 見積もり提出までに、組合役員と複数回の面談が必要。

これらの労力をかけても受注できなければ、管理会社にとっては大きな損失となります。

小規模マンションにおける現実的な見積もり依頼先は「2〜3社」

以上の背景から、中小規模マンションが第三者管理者の見積もりを依頼する場合、本気で検討している会社を2〜3社に絞るのが現実的です。これにより、各社は真剣に見積もり作成に取り組んでくれ、より質の高い提案が期待できます。

見積書は項目ごとに内訳が明記されているかを確認し、不明点は必ず質問しましょう。

FAQ:監事選任で揉めないためのQ&A

監事の選任にあたっては、報酬や任期など、組合内で意見が分かれやすい点があります。ここでは、よくある質問とその考え方について解説します。

監事の報酬はいくらが妥当?

監事の報酬に法的な定めや公的な相場はありません。無報酬の場合も多いですが、その責任と業務量に見合った報酬を支払うことで、なり手を確保しやすくなり、責任感も高まります。

報酬額は、組合の財政状況や監事の業務負担(外部専門家か組合員か、など)を考慮し、総会で協議して決定します。具体的な額に関する法的な上限や下限はありません。大切なのは、金額の根拠を組合員にしっかり説明し、総会で承認を得ることです。

監事の任期はどう決める?

監事の任期は、区分所有法第50条において理事に準じて「2年」とされています。ただし、規約によって「3年以内」の範囲で別に定めることも可能です。

毎年役員が交代すると業務の継続性が損なわれるため、2年程度の任期を設定するのが一般的です。

候補者間で意見が割れた際の合意形成のヒント

監事候補者が複数名出て意見が対立した場合、単なる多数決で決めると後々しこりを残すことがあります。まずは、候補者の所信表明の場を設け、それぞれの考え方や監査方針を全組合員に聞いてもらう機会を作りましょう。

その上で、監事の役割が「管理者のあら探し」ではなく、「組合全体の利益を守るための建設的なチェック」であることを共有することが重要です。冷静な議論を通じて、組合にとって最もふさわしい人物は誰かという視点で合意形成を図ることが望まれます。

まとめ:第三者管理者導入を成功させる監事選任チェックリスト

第三者管理者方式は、理事会の負担を軽減する一方で、「独裁」という新たなリスクを生む可能性があります。そのリスクをコントロールし、組合員の財産を守るために、監査役である「監事」の選任が不可欠です。

最後に、監事選任を円滑に進めるためのチェックリストをまとめました。総会に向けての準備にご活用ください。

ステップチェック項目確認事項
事前準備□ 管理規約の確認役員の資格、選任方法、任期、報酬に関する定めを確認したか?
□ 法人格の有無の確認自組合は「管理組合法人」か「非法人管理組合」か?(法人なら監事設置は法的義務)
□ 候補者の検討組合員から選ぶか?外部専門家を検討するか?
規約改正□ 外部専門家を選任する場合の規約改正特別決議(組合員・議決権の各3/4以上)が必要なことを理解し、議案を準備したか?
総会準備□ 総会議案書の作成監事選任(または交代)の議案、報酬額の議案を記載したか?
□ 候補者の所信表明候補者に監査方針などを説明してもらう準備はできているか?
総会決議□ 選任決議普通決議(組合員・議決権の各過半数)の賛成を得られたか?
選任後□ 管理者への通知選任された監事の氏名を第三者管理者へ正式に通知したか?
□ 登記(法人の場合)管理組合法人の場合、役員変更の登記手続きを行ったか?

監事を正しく選任し、その機能を最大限に活かすことが、第三者管理者方式を成功させ、マンションの資産価値を長期的に維持するための重要な第一歩です。

免責事項

本記事は、2025年12月20日時点の法令や情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されています。以下の法令・ガイドラインを参考としています:

準拠法令:

参考ガイドライン(2025年最新):

個別の事案に対する法的な助言や解釈を提供するものではありません。監事の選任や規約の変更など、具体的な手続きを進める際には、必ずご自身のマンションの管理規約をご確認の上、必要に応じて弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。法令や各種ガイドラインは改正される可能性があるため、最新の情報をご確認ください。

参考資料・法令

【法律】

【国土交通省公式】

【業界団体・実務情報】

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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