※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。
マンションの解体・改修では、着工前のアスベスト(石綿)事前調査が求められます。管理組合が押さえる線は次の三つです。
- 2023年10月1日から、事前調査は有資格者が行うことが必須です。
- 発注の主体は、共用部分の調査や対策工事では管理組合になることが多いです。管理会社が勝手に調査会社と契約する形にはしません。
- 助成の円は、年度の要綱で確認します。全国共通の補助金額の有無は、公式要領で確認します。
この記事は2026年9月時点の説明です。※本記事は一般的な情報提供を目的としています。

アスベスト|事前調査と報告は別の手続
石綿の有無にかかわらず、解体・改修の着工前に事前調査が求められます。報告が要る規模と、調査そのものの要否は同じではありません。
- 有資格者。特定建築物石綿含有建材調査者、一般建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等調査者(住戸内部のみ)、所定の講習修了者等の経過措置登録です。
- 報告の目安。解体は解体部分の延べ床面積80㎡以上、改修・補修は請負代金の合計が税込100万円以上のとき、事前調査結果の行政報告が求められます。
- 閾値未満。報告が無くても、有資格者による事前調査自体は免除されません。
- 専有部。専有部のリフォームでも、改修の請負が税込100万円以上なら報告の対象になり得ます。組合が発注しない工事でも、区分所有者側の手続として残ります。
吹付け材や保温材だけでなく、ビニル床タイル等の成形板等も調査対象に含まれます。届出の要否と、事前調査の要否は分けて見ます。目視に加え、設計図書との照合と、必要に応じた分析調査が求められます。
調査の結果、石綿含有が無いと判定された場合でも、調査を行った事実と報告書の保管は残します。含有ありと判定された場合は、工事の隔離・養生・廃棄物の扱いが別の手続になります。この記事では、除去工事の工法の詳細や、罰則の金額は見積書で確認します。元請事業者側の義務と、発注者である管理組合の総会手続を混同しません。
- 図面が無いとき。竣工図や仕上表が残っていない組合は、現地の目視と分析の比重が大きくなります。図面探し自体を、理事会の宿題として議事録に残します。
- 過去の調査。以前の報告書があっても、今回の工事範囲をカバーしているかを調査者に確認します。範囲外の部位を、古い報告書だけで済ませません。
- 専有と共用の境。標準管理規約の別表第2は、給排水の共用と専有の境の例です。石綿含有建材の位置は、別表だけでは決まらないことがあります。調査範囲の文に、共用廊下・パイプスペース・住戸内のどこまでかを書きます。

総会で調査費と工事費を決める

共用部分の石綿調査や対策工事の費用は、総会の議案です。標準管理規約を使う組合の普通決議は規約第47条です。議決権総数の過半数の出席と、出席した組合員の議決権の過半数です。これは区分所有法第47条(管理組合法人の設立)ではありません。
- 規約に普通決議の定めが無いとき。区分所有法第39条です。出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)およびその議決権の各過半数です。書面と代理人は第2項で出席に数えます。
- 著しい変更。共用部分の形状または効用の著しい変更を伴うときは、区分所有法第17条です。区分所有者及び議決権の各4分の3です。規約で区分所有者の定数のみ過半数まで減らせます。議決権の4分の3までを、規約で過半数へは落とせません。
- 通知。第37条は、通知した事項のみ決議できます。調査の承認と対策工事の発注を同じ総会で決めるときは、両方を通知に書きます。
- 招集。法律の第35条は少なくとも1週間前です。標準管理規約第43条は2週間前です。
標準管理規約第28条は、修繕積立金の取崩し事由です。計画修繕、不測の修繕、改良・変更、再生等の調査、積立金の管理運用、その他特別に必要な管理が並びます。調査を調査の行に載せるか、対策工事を計画修繕や改良の行に載せるかを、議案の文に分けます。管理費と修繕積立金は区分経理です。
総会の通知には、少なくとも次を書きます。調査または工事の対象部位、予定の費用の上限または見積もりの合計、取崩しなら第28条のどの事由か、契約の相手方の候補、報告が要る規模に当たるかの確認結果です。通知に「アスベスト対応一式」とだけ書き、内訳を当日配る形は、第37条の原則からずれやすいです。
- 監事。標準管理規約の監事は、業務執行と財産の状況を監査し総会に報告します。調査費の支出が議案どおりかを、監査の視点で見ます。
- 議事録。法律の第42条は、紙の議事録に議長と出席した区分所有者二人が署名します。標準管理規約第49条は、議長と、議長が指名した出席組合員の二人です。
- 否決のあと。調査議案が否決されたときは、工事の着工を急ぎません。次の総会の通知を改めて出し、そのあいだに仕様と見積もりを整えます。
管理組合が発注主体になる実務

共用部分の事前調査と対策工事は、管理組合が契約の相手方になることが多いです。管理会社は、仕様の整理や見積依頼の支援を担う立場です。調査会社との契約名義を、管理会社個人や担当者の名前にはしません。
- 見積もりの仕様。調査範囲(共用か専有か)、図面照合の有無、分析の件数、報告書の書式を同じ文面で渡します。一式の欄は空欄です。金額が無い欄を0円として合計しません。
- 社数。同じ仕様で2〜3社です。5社、6社へ同時に出すと、20戸から40戸程度では辞退が増える傾向があります。これは実務上の傾向であり、公的な統計ではありません。現地確認の回数は、各社の見積条件で確認します。
- 立入り。専有部の調査が要るときは、標準管理規約第23条の立入り請求と、区分所有法第6条第2項の使用請求を分けて見ます。実力で入る権利ではありません。
- 理事長。規約第38条第2項で理事長が管理者なら、契約の署名者は議案で管理者と書きます。
区分所有法第18条は、共用部分の管理を集会の決議とします。保存行為は各共有者ができます。事前調査のための図面確認や、小規模な試料採取が保存・管理の範囲になり得るかは、個別の工事内容です。著しい変更に当たるかは、工法の説明を見て総会の定数を選びます。
見積依頼のときに組合が渡す書類の例は、次です。管理規約と別表、長期修繕計画の該当ページ、竣工図や仕上表、過去の石綿調査報告書、今回の工事範囲の平面図、総会の定数が分かる規約のページです。台数や単価は、設備台帳と見積書で確認し、未確定の相場は依頼書に入れません。
- 分析の件数。何検体取るかは、調査者の提案と理事会の予算の両方です。件数を先に固定しすぎると、現地で足りなくなることがあります。上限の扱いを見積条件に書きます。
- 工程。調査結果が出る前に、対策工事の請負だけを総会で可決する形は避けます。結果の分岐(含有なし/含有あり)を、議案か条件に残します。
- 専有部の協力。住戸内の調査が要るときは、日程の案内と、拒否があったときの規約第23条の扱いを、理事会で先に決めます。損害賠償の第3項があることも、案内に一言添えます。
助成と、管理会社の役割

アスベスト対策への助成は、国や自治体の年度要綱が先です。申請者は管理組合です。上限や補助率は、当該年度の要領で確認します。管理会社変更や日常の委託費への全国共通の補助金もありません。
- 管理委託。日常の四つの業務(事務管理・管理員・清掃・建物設備管理)と、石綿調査の発注は別の契約です。委託契約の「一式」に調査を混ぜません。
- 重要事項説明。マンション管理適正化法第72条は、管理受託契約の説明です。石綿調査会社の説明会ではありません。
- 基幹事務。第74条の一括再委託禁止は、管理事務の基幹事務の話です。調査会社への発注そのものを、この条の違反だとは決めません。
- 記録。調査報告書、総会議事録、契約書、報告の控えを、組合の帳簿と一緒に残します。保管年数の法定の数字は、この記事では置きません。
管理計画認定は、石綿調査の合格証ではありません。認定の申請は組合の管理の状態の話です。調査会社の順位表にも使いません。
大規模修繕の周期の目安(外壁塗装・屋上防水など12〜15年)のときに、外壁や共用部の改修が石綿調査の対象になり得ます。長期修繕計画の見直し(5年程度)のタイミングで、調査の要否を議案の候補に載せます。計画期間は30年以上で大規模修繕2回以上を含む、がガイドラインの型です。
標準管理規約第21条第1項は、共用部分の管理を管理組合の責任と負担とします。第2項の専有配管の一体工事は、石綿調査そのものではありません。専有部の内装に成形板があるときは、区分所有者の工事か、組合の共用工事かを、図面と別表で分けます。
理事会の議事録には、次を残します。有資格者の資格の種類、見積を取った社名、選んだ理由、総会に載せる費用の上限、報告が要るかの確認、助成を申請するか否かです。口頭の「問題なし」だけでは、次の理事への引継ぎになりません。
- 売買時の説明。重要事項説明で石綿の調査結果を聞かれることがあります。宅地建物取引士の説明と、管理受託の第72条は別です。組合が保管する報告書の有無を、理事長が答えられるようにします。
- 保険。共用部分の損害保険は、標準管理規約第24条で組合が締結することを区分所有者が承認する型です。石綿調査の費用が保険金で出るかは、約款です。この記事では約款の金額は見積書で確認します。
- 国内管理人。所在が国内にない区分所有者には、区分所有法第6条の2の国内管理人があります。総会通知の受領権限があります。標準管理規約第31条の3はその届出の規約です。第31条の3は標準管理規約上の条文として扱い、法律の条番号だとは扱いません。
よくある質問
Q. 小規模な共用部の補修でも事前調査は要りますか。
A. 報告の閾値未満でも、有資格者による事前調査自体は免除されない、というのが実務の出発点です。個別の工事内容は所管と調査者に確認します。
Q. 理事会だけで調査会社を契約できますか。
A. 費用の支出と契約の締結は、規約の総会決議事項を見ます。標準管理規約では、特別の管理や委託契約とは別に、調査費をどの号に載せるかを議案で明示します。理事会の候補整理と、総会の決議は分けます。
Q. 助成の円はいくらですか。
A. 金額や手続の細部は、規約・契約書・当該年度の要領で確認します。申請者は管理組合で、年度の要綱が先です。
Q. 管理会社変更の相見積もりと同じ要領ですか。
A. 調査は石綿の有資格者の仕様です。管理委託の四つの業務の相見積もりとは別です。社数の目安は同じ仕様で2〜3社です。
Q. 大規模修繕の設計業務に、事前調査を含められますか。
A. 含められるかは設計の契約書です。含めるときは、有資格者の名前と調査範囲を設計の仕様に書きます。設計料の一式に溶かして、調査の有無が分からない形にはしません。
Q. 区分所有法第17条の4分の3は、規約で変えられますか。
A. 区分所有者および議決権の各過半数の出席を満たしたうえで、出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上です。規約で定足数を引き上げることはできる。4分の3を下げることはできない。調査だけの議案が著しい変更に当たるかは、工事の内容次第です。
まとめ
- 2023年10月1日から、事前調査は有資格者が行います。
- 報告が要る規模と、調査そのものの要否は別です。閾値未満でも調査は免除されません。
- 共用部の発注主体は管理組合です。総会の定数は規約第47条、無いとき法第39条、著しい変更は法第17条です。
- 見積もりは同じ仕様で2〜3社です。助成の円は要綱です。全国共通の補助金額の有無は、公式要領で確認します。
- 第72条は管理受託契約の説明であり、石綿調査の説明会ではありません。
免責事項本記事は2026年9月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。事前調査の要否、報告の規模、総会の定数、助成の可否は、その管理規約、契約書、見積もり、所管の案内で確認してください。
島 洋祐
株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

