マンション駐車場外部貸し税金:3パターン判定と5ステップで収益事業を成功させる

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マンションの空き駐車場を外部に貸し出す際の税務処理について

マンションの空き駐車場を外部に貸し出すことは、管理組合にとって貴重な収入源となり得ます。しかし、収入に対する税務処理の必要性や申告要件について、適切な理解が求められます。特に管理組合の役員の方は、手続きの誤りによる追徴課税のリスクを懸念されることでしょう。

この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、マンション駐車場の外部貸しに伴う税金の仕組みを徹底解説します。国税庁の公式見解に基づき、収益事業に該当するかの判定基準から、必要な総会決議、税務申告の具体的な流れ、そして実務上の注意点までを網羅します。

本記事を読めば、駐車場の外部貸しを税務リスクを抑えながら適正に進めるための知識が身につき、管理組合の財政改善に向けた確かな一歩を踏み出せるようになります。

目次

背景知識:「収益事業」になる?ならない?国税庁が示す3つの判定パターン

マンション駐車場の外部貸しが課税対象となるか否かは、その活動が法人税法上の「収益事業」に該当するかによって決まります。管理組合は法律上「人格のない社団等」とされ、収益事業から生じた所得に対してのみ納税義務が発生します。これは、法人格を持たない団体でも、収益事業を行う場合は法人と同様に扱われるというルールです(出典:法人税法)。管理組合は「公益法人等」とみなされるため、課税対象は収益事業から生じる所得に限定されます。

収益事業とは、法人税法で定められた34の事業(駐車場業など)を、継続して事業場を設けて行うことです。管理組合の場合、外部貸しの方法によって収益事業かどうかが判断されます。

国税庁は2012年に通達を出し、マンション駐車場の外部貸しに関する収益事業の判定基準を以下の3パターンで明確化しました(出典:国税庁、2012年)。自らのマンションがどのパターンに当てはまるかを確認することが最初のステップです。

パターン1:駐車場全体が収益事業となるケース(全面課税)

区分所有者と外部の利用者を区別せず、完全に同じ条件(例:先着順)で募集する場合、その駐車場事業全体が「駐車場業」という収益事業とみなされます。この場合、区分所有者が使用している区画から得られる使用料も含め、駐車場収入の全てが課税対象となります。

パターン2:外部貸し部分のみが収益事業となるケース(部分課税)

一般的には、以下の条件を満たし、区分所有者への優先性が確保されている場合、外部に貸し出した部分から得られる収入のみが収益事業として課税対象になります。

  • 区分所有者の利用が優先されること
  • 空き区画が生じた場合にのみ、外部への貸し出しを行うこと

これにより、区分所有者間の利用という「共済的な活動」と、外部への「収益事業」が明確に区別され、課税範囲を限定できます。

パターン3:収益事業とみなされないケース(非課税)

外部への貸し出しが、特定の目的のために一時的・臨時的に行われる場合は、事業の「継続性」がないと判断され、収益事業には該当しません。

  • 例: 来客用として時間貸しする、工事期間中だけ臨時に貸し出すなど。

この場合、得られた収入は非課税となり、申告の必要もありません。ただし、「一時的」の判断は税務署によって分かれる可能性があるため、恒常的な貸し出しはこのパターンに当てはまりません。

手続・対応ステップ①:外部貸しを始める前の総会決議と規約変更

駐車場の外部貸しは、単なる空きスペースの活用ではなく、管理組合の運営方針に関わる重要な決定です。税務申告以前に、組合内部での適正な手続きが不可欠です。

なぜ総会決議が必要なのか?管理規約の位置づけ

駐車場の外部貸しは、共用部分の管理や使用方法を変更する行為にあたります。区分所有者全員の財産である共用部分の用途を変更し、収益事業を行うためには、その根拠となるルールを最高意思決定機関である「総会」で決議し、「管理規約」に明記する必要があります。これを怠ると、後から組合員との間でトラブルになったり、税務調査で事業の正当性を問われたりするリスクがあります。

管理規約の変更に必要な「特別決議」とは

管理規約の変更は、区分所有法で定められた特に重要な議案であり、原則として「特別決議」が必要です。

【区分所有法 第三十一条第一項】
規約の設定、変更及び廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。(後略)

(出典:e-Gov法令検索、区分所有法)

つまり、組合員総数の4分の3以上、かつ議決権総数の4分の3以上の賛成が必要となります。ただし、管理規約に「規約の変更は過半数でよい」などの別段の定めがある場合は、その規定が優先されます。まずはご自身のマンションの管理規約を確認することが重要です。

決議前に組合内で合意すべき4つの重要事項

合意事項具体的に決めること
① 貸し出しの優先順位区分所有者の利用をどう優先するか(例:新規申込は常に区分所有者優先、空き発生後3ヶ月は区分所有者向けに募集するなど)。これは収益事業の判定(パターン2)に直結します。
② 貸し出しの対象範囲と料金何か月以上の空きが出たら貸し出すのか、料金はいくらに設定するのか。
③ 収入の使途得られた収益を管理費に充当するのか、修繕積立金に繰り入れるのか。使途を明確にすることで、組合員の理解を得やすくなります。
④ 費用負担のルール募集広告費、契約事務手数料、将来のメンテナンス費用などを、得られた収益から支出するルールを定めます。

表形式が表示されない場合、以下のリストを参照:

  • ① 貸し出しの優先順位:区分所有者の利用をどう優先するか(例:新規申込は常に区分所有者優先、空き発生後3ヶ月は区分所有者向けに募集するなど)。これは収益事業の判定(パターン2)に直結します。
  • ② 貸し出しの対象範囲と料金:何か月以上の空きが出たら貸し出すのか、料金はいくらに設定するのか。
  • ③ 収入の使途:得られた収益を管理費に充当するのか、修繕積立金に繰り入れるのか。使途を明確にすることで、組合員の理解を得やすくなります。
  • ④ 費用負担のルール:募集広告費、契約事務手数料、将来のメンテナンス費用などを、得られた収益から支出するルールを定めます。

手続・対応ステップ②:収益事業と判断された場合の税金と申告

総会で承認され、いよいよ外部貸しを開始。収益事業と判断された場合、管理組合は納税義務者として税金の申告・納付を行う必要があります。

課税される税金①:法人税(所得に対して課税)

外部貸しから得た収入(売上)から、その事業にかかった必要経費を差し引いた「所得」に対して法人税が課税されます。

  • 課税対象所得 = 駐車場収入 − 必要経費
  • 法人税率(普通法人・中小法人等)
    • 所得のうち年800万円以下の部分: 15%
    • 所得のうち年800万円を超える部分: 23.2%
    (出典:国税庁 No.5760、2025年現在。最新情報は国税庁HPでご確認ください)

管理組合は利益の分配を目的としないため、多くの場合、税率は15%の範囲に収まるでしょう。

課税される税金②:消費税(条件による)

2事業年度前の収益事業における課税売上高が1,000万円を超える場合、消費税の納税義務が発生します。駐車場の外部貸しを始めたばかりの年は、通常、納税義務が免除されます。

また、2023年10月に開始されたインボイス制度も考慮が必要です。課税事業者となった場合、外部の借主(事業者)から適格請求書(インボイス)の発行を求められる可能性があります。インボイスを発行するためには、事前に「適格請求書発行事業者」の登録申請が必要です。この登録を行うと、免税事業者であっても課税事業者となり消費税の申告義務が生じるため、慎重な判断が求められます。

注意点:固定資産税が増加する可能性

見落としがちなのが固定資産税への影響です。マンションの敷地は通常「住宅用地」として固定資産税・都市計画税の軽減特例を受けています。しかし、居住者以外が利用する割合によっては「住宅用地」の軽減特例から一部または全部が除外され、土地の固定資産税が上昇するリスクがあります。この割合の基準は市区町村によって異なるため、外部貸しを検討する際は、事前に所轄の市区町村の税務課に確認することが極めて重要です。(参考:三井のリパーク)

【手続きフロー】収益事業開始から申告までの3ステップ

  1. 税務署への届出(最重要)
    収益事業を開始した日から2ヶ月以内に、所轄の税務署へ「収益事業開始届出書」を提出する必要があります(法人税法第150条・同施行規則第65条に基づく)。この届出を忘れると、無申告状態になるリスクがあるため、必ず行いましょう。
  2. 会計帳簿の作成
    収益事業の収入と経費を、管理費などの会計とは明確に区別して記録します。これにより、申告時の所得計算がスムーズになります。
  3. 確定申告と納税
    事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に、法人税の確定申告書を税務署に提出し、納税します。

実務ヒント:税務申告で失敗しないための経費と責任の考え方

申告実務では、どこまで経費にできるか、誰が申告責任を負うのかといった点が問題になります。

どこまで経費にできる?損金算入できる費用の範囲と按分ルール

収益事業(外部貸し)の所得を計算する上で、売上から差し引ける経費(損金)には以下のようなものがあります。

  • 直接経費: 収益事業に直接かかった費用
    • 募集広告費、仲介手数料
    • 契約書類の印紙代
    • 外部貸し区画のライン引き直し費用 など
  • 共通経費の按分: 駐車場全体にかかる費用を、合理的な基準で按分した金額
    • 駐車場全体の舗装補修費
    • 照明器具の電気代、交換費用
    • 機械式駐車場のメンテナンス費用
    • 管理会社への管理委託費のうち、駐車場管理に関する部分

按分計算は、面積比や使用頻度など、実態に即した客観的な基準で行うことが重要です。

会計処理はどうする?「収益事業会計」の分離

理想は、管理組合の会計を「非収益事業会計(管理費など)」と「収益事業会計(駐車場外部貸し)」に明確に分けて管理することです。これにより、収支が明確になり、税務申告や組合員への説明も容易になります。実務上は、普段は一体で管理し、確定申告の際に収益事業の収支だけを抜き出して計算する方法も取られますが、お金の流れを明確にするため、会計の区分は強く推奨されます。

管理会社は申告をしてくれない?管理組合が負うべき責任

税務申告は専門的な知識を要しますが、注意すべきは「管理会社は、通常、税務申告の代行業務は行わない」という点です。管理会社の業務はあくまでマンションの維持管理であり、税理士法に抵触する可能性がある税務代理は行えません。

したがって、税務申告の最終的な責任は、管理組合(理事会)自身が負うことになります。申告に不安がある場合は、無理せず税理士などの専門家に相談することが、最も確実で安全な選択肢です。

よくある疑問とトラブル回避策(Q&A)

Q. 申告を忘れるとどうなる?

A. 意図的でなくても、申告漏れが税務調査で発覚した場合、ペナルティが課されます。本来納めるべき税額に加え、「無申告加算税」や、納付が遅れた日数に応じた「延滞税」が追徴される可能性があります。最初の「収益事業開始届出書」の提出が、こうしたリスクを防ぐ第一歩です。(出典:国税庁タックスアンサー)

Q. 組合員から「不公平だ」と反対されたら?

A. 反対意見の多くは、外部貸し出しの正当性に関する疑問から生じます。対策として、総会で以下の点を丁寧に説明し、合意形成を図ることが重要です。

  • 目的の共有: 外部貸しによる収益が、修繕積立金の不足解消や管理費の値上げ抑制に繋がり、結果的に全組合員の利益になることを説明する。
  • 透明性の確保: 貸し出しのルール、収入の使途、会計報告の方法を明確に約束する。
  • 優先性の担保: 区分所有者の利用希望を最優先するルール(パターン2)を規約に明記し、組合員の不利益にならないことを示す。

これらの説明を経ても合意形成が難しい場合や、法的な論点に発展した場合は、マンション管理に詳しい弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。

Q. 収入は組合員に分配できる?

A. 収益を組合員個人に現金で分配することは、法律上不可能ではありません。しかし、分配を受けた組合員はそれぞれが「雑所得」として確定申告をする必要が生じ、手続きが非常に煩雑になります。また、管理組合の非営利性という観点からも望ましくありません。得られた収益は、管理費や修繕積立金に繰り入れることで、間接的に組合員全員に還元するのが最も現実的でトラブルの少ない方法です。

まとめ:マンション駐車場の外部貸しを成功させる5つのステップ

マンション駐車場の外部貸しは、適切な手順を踏めば、管理組合の財政を健全化する強力な手段となります。税務リスクを回避し、プロジェクトを成功に導くための5つのステップを以下にまとめます。

  1. ルールの明確化と規約案の作成
    国税庁の3つの判定パターンを理解し、自分たちの組合が目指す形(通常は区分所有者優先の「部分課税」)を決定します。貸し出しの優先順位や収益の使途などを定めた管理規約の変更案を作成します。
  2. 総会での特別決議
    作成した規約案を総会に上程し、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成(特別決議)を得ます。規約に別段の定めがないか事前に確認しましょう。
  3. 税務署への「収益事業開始届出書」の提出
    外部貸しを開始したら、2ヶ月以内に所轄の税務署へ「収益事業開始届出書」を必ず提出します。
  4. 収益事業会計の開始
    駐車場の外部貸しに関する収入と経費を、他の会計と区別して正確に記録します。経費の按分ルールもこの段階で決めておきます。
  5. 専門家(税理士)への相談と確定申告
    税務申告の責任は管理組合にあります。自力での申告に不安があれば、速やかに税理士に相談しましょう。事業年度が終了したら、2ヶ月以内に法人税の確定申告と納税を行います。

駐車場の外部貸しは、法務と税務が絡み合う専門的な領域です。この記事を参考に基本を理解しつつ、実際の運用にあたっては必ず専門家の助言を仰ぐようにしてください。

免責事項

本記事は、マンション駐車場の外部貸しに関する一般的な情報提供を目的としており、特定の案件に対する法的・税務的助言を行うものではありません。個別の税額計算や具体的な申告方法、法的な判断については、必ず所轄の税務署または税理士等の専門家にご相談ください。本記事は特定企業の商品・サービス推奨を含みません。本記事に掲載された情報については、2025年12月時点の法令等に基づいておりますが、その正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法令改正や個別の管理規約・契約条項が最優先される点にご留意ください。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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