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管理会社を替えたい理由が「安い」「返事が遅い」だけでは、総会で反対の意見に答えられません。失敗の多くは、解約の時期、仕様のそろわない見積もり、決議の定数の取り違えから始まります。最初に開くのは、候補会社のパンフレットではなく、いまの管理委託契約書と管理規約です。
- 契約書。解約の申入れをいつまでに、どの方法で行うかは、結んでいる契約書が先です。標準管理委託契約書では「少なくとも三月前の書面による申入れ」がモデルです。条番号は契約書ごとに違うことがあるため、手元の契約書で確認します。
- 規約。単棟型標準管理規約では、管理委託契約の締結は第48条第17号の総会決議事項です。理事会の内定だけでは契約しません。
- 仕様。いまの業務の回数と時間を書き出したものが、相見積もりの仕様書になります。仕様がそろわない金額は比べられません。
- 費用の言葉。管理費は区分所有者が組合へ納める費用、管理委託費は組合が管理会社へ払う対価です。管理費の平均を委託費の相場には使いません。
この記事は2026年9月時点の説明です。※本記事は一般的な情報提供を目的としています。

管理会社変更でよくある四つの失敗
トラブルは、品質、合意、引継ぎの三つに分かれます。総会資料では、どれが自組合の話かを先に書き分けます。
- 合計だけを見る。「一式」の見積もりで安い会社を選ぶと、清掃の回数、管理員の時間、点検の範囲が落ちることがあります。金額が書けない行は空欄のままにします。金額が無い行をゼロ円として合計しません。
- 理事会だけで進める。区分所有者への説明が総会当日だけだと、反対の理由に答えられません。通知した事項以外は、区分所有法第37条で決議できないのが原則です(規約で別段。法律が特別の定数を定める事項は除く)。
- 引継ぎの日付がない。滞納一覧、修繕の履歴、鍵、図面、口座の残高証明が、終了日に渡らないと、翌月から会計が止まります。何を、誰が、いつ渡すかを表にします。
- 空白期間。解約の効力発生と新会社の開始がずれると、点検の手配と出納の窓口がなくなります。短期の延長を書面で合意できるかを、現会社に確認します。
管理計画認定や管理適正評価を受けている会社を選べば失敗しない、という読み方はしません。認定は管理組合の管理計画を都道府県等の長が認定する制度、管理適正評価はマンションの管理状態の評価です。いずれも管理会社の順位表ではありません。

管理会社変更を成功させる4つの手順

手順を飛ばすと、総会で「なぜ替えるのか」に戻れます。理事会の議事録に、いまの段階を残します。
- 1. 現状を言葉にする。清掃、管理員、報告、見積もりの内訳、緊急時の連絡について、契約書の行と実際の日付を並べます。マンション管理適正化法第77条は、管理者がいる組合への定期の管理事務報告を置いています。報告が届いた日を確認します。
- 2. 同じ仕様で2〜3社へ依頼する。業務は事務管理、管理員、清掃、建物・設備管理の四つです。任意の提案は合計の外に置きます。5〜6社へ同時に出すと、20〜40戸程度では辞退が増えます。これは実務上の傾向であり、公的な統計ではありません。
- 3. 総会で決める。標準管理規約では第47条の普通決議です。第1項は議決権総数の過半数の出席、第2項は出席組合員の議決権の過半数です。区分所有法第39条は、法律または規約に別段がなければ出席した区分所有者及びその議決権の各過半数です。自組合の規約が先です。
- 4. 書面で申し入れ、引き継ぐ。総会のあと、理事長名の書面で解約を申し入れます。受け取った日が残る方法で送り、議事録の写しを添えます。口座、帳簿、鍵、図面、未収金の一覧を、終了日に渡す表を作ります。
現地調査は、候補会社が必要と判断した範囲で行われます。回数を組合が決める性質のものではありません。
見積もりの比較では、合計のほかに、担当者が何棟を見ているか、夜間休日の連絡先、同じ規模の実績を聞きます。差がある行の理由を、各社に書面で聞きます。
候補会社を理事会に呼ぶときは、同じ質問を紙にして先に渡します。担当予定者の名前と交代の頻度、漏水や停電のときに誰が動くか、月次の収支報告がいつ理事長に届くか、修繕工事の見積もりを他社にも依頼できるかを順に聞きます。答えを口頭のままにせず、議事録の別紙に残します。
合図が一つだけのときは、まず現会社に改善を求める文書を出し、期限を切って返事を待つ方法もあります。改善の記録は、替えると決めたときの総会資料にも使えます。替える理由が「担当者が変わった」だけだと、新会社でも同じことが起きたときに説明が続きません。
決議の定数を取り違えない

委託契約の締結と、規約の変更は、別の議案です。一つにまとめると、必要な定数が分かりにくくなります。
- 委託契約。標準管理規約第48条第17号を、第47条の普通決議で決めます。規約で定数を引き上げているときは、その定めです。
- 規約の変更。区分所有法第31条第1項は、区分所有者(議決権を有しない者を除く)の過半数であって議決権の過半数を有する者の出席と、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上です。出席の過半数は、規約で引き上げられます。4分の3を規約で下げる定めはありません。
- 標準管理規約での規約変更。第47条第3項は、組合員総数の過半数かつ議決権総数の過半数の出席と、出席組合員及びその議決権の各4分の3以上です。
- 共用部分の著しい変更。委託会社を替えること自体は、区分所有法第17条の著しい変更ではありません。工事を同じ総会に載せるときは、議案を分けます。
新しい業者との契約では、適正化法第72条の説明会が要ります。書面を1週間前までに区分所有者等と管理者等へ渡し、主任者証を提示し、書面に主任者が記名します。同一条件の更新は、書面交付で足り、管理者がいれば管理者への説明です。契約後の書面は第73条、財産の分別管理は第76条です。基幹事務の一括再委託は第74条で禁止されています。
総会通知は、標準管理規約第43条では2週間前です。区分所有法第35条は少なくとも1週間前で、規約による伸長だけができます。短くすることはできません。
引継ぎで渡すものと、渡さないもの

終了日に何が手元に残るかを、解約の申入れと同時に表へします。口頭の「あとで送ります」では、翌月の出納が止まります。
- 会計。収納口座と保管口座の型、通帳と印鑑の所在、残高証明の日付。管理会社が通帳と印鑑を両方持たない置き方にします。保証には上限があります。上限の円は契約書で確認します。
- 帳簿。適正化法第75条は、業者が管理事務の帳簿を作成し保存することを置いています。組合が受け取る写しの範囲を、終了日の表に書きます。
- 未収金。滞納の戸、期、金額、督促の日付を一覧にします。特定承継人への請求は、標準管理規約第26条です。
- 設備と鍵。消防、昇降機、給水の報告書、共用の鍵、図面、長期修繕計画の電子データ。
- 個人の情報。居住者名簿の渡し方は、自組合の規約と、個人情報の取扱いの定めです。該当する管理組合の取扱いを、理事会で確認します。
口座の型は、収納後に組合保管口座へ移す、積立金は組合口座へ直接・管理費は収納口座、組合名義の一口座、の三つがモデルです。型が変わるときは、開始日の前に金融機関の手続を終えます。
管理会社の変更そのものへの全国共通の補助金はありません。大規模修繕の助成は、工事の年度要綱です。標準の委託業務に、補助金申請の代行は入っていません。入れるときは仕様書の任意提案の行に分け、必須の四業務と混ぜません。
予告期間のあいだに、仕様書と2〜3社への依頼を進めます。理事会で候補を絞り、通常総会に間に合わないときは臨時総会を招集します。総会の招集は、区分所有法第34条で管理者が少なくとも毎年1回行います。臨時の招集も、規約の定めに従います。
議事録は、標準管理規約第49条で議長と、議長が指名した出席組合員2人が署名します。区分所有法第42条は、紙の議事録に議長と出席した区分所有者2人の署名を置いています。自組合の規約が先です。決議の翌日に解約通知を出すとき、署名のない紙を添付しません。
管理費の全国平均は、令和5年度マンション総合調査で駐車場使用料等を含む1戸月額17,103円、含まない11,503円です。修繕積立金は駐車場等を除く13,054円です。いずれも委託費の相場ではありません。変更後に管理費の額を変える議案は、標準管理規約第48条第6号の別議案です。委託契約の議案と混ぜません。
よくある質問
Q. 理事会だけで契約を替えられますか。
A. 標準管理規約では、管理委託契約の締結は総会の決議事項です。理事会は議案を作る段階です。
Q. 解約通知はどのように出しますか。
A. 契約書に定めた期限までに、理事長名の書面で出します。受け取った日が残る方法で送り、総会議事録の写しを添えます。短い通知は争いになり得ます。当然に無効かどうかは、契約書と弁護士に確認します。
Q. 安い見積もりを選べば失敗しませんか。
A. 合計だけでは分かりません。四つの業務の回数と時間、緊急時の体制、担当棟数を同じ表で比べます。
Q. 管理費の平均は委託費の目安になりますか。
A. なりません。令和5年度マンション総合調査の管理費(駐車場使用料等を含む)全国1戸月額17,103円は、区分所有者が組合へ納める費用の平均です。委託費の相場ではありません。
Q. 変更に使える補助金はありますか。
A. 管理会社を替えること自体への全国共通の補助金はありません。自治体の制度は年度の要綱で確認します。
Q. 同一条件の更新でも説明会は要りますか。
A. 適正化法第72条第2項では、従前と同一条件の更新は重要事項の書面交付で足ります。管理者がいれば第3項で管理者へ説明します。新しい業者との新規契約は、第1項の説明会です。
Q. 建替えの5分の4を、委託契約の解約に使いますか。
A. 使いません。区分所有法第62条の各5分の4は建替え決議です。委託契約の解約や新規締結の定数ではありません。
書面または代理人による議決権の行使は、区分所有法第39条第2項と標準管理規約第47条第7項で出席に算入します。委任状の様式と、提出の締切を総会通知に書きます。電磁的方法を使うときは、規約の定めがあるかを先に確認します。
新会社の開始日は、解約の効力発生日と揃えます。揃わないときは、現会社との短期延長か、開始をずらす合意を書面に残します。開始日の前に、第72条の説明会の開催日と、第73条の書面の交付先を日程表に書きます。主任者証の提示と記名が、その日の記録に残っているかを確認します。管理者がいない組合では、第73条の書面は区分所有者全員へ渡します。
まとめ
- 失敗の多くは、契約書と規約を開く前に、合計金額だけで進めたときに起きます。
- 手順は、現状の記録、同じ仕様の2〜3社、総会の普通決議、書面の申入れと引継ぎの四つです。
- 委託契約は標準管理規約第48条第17号、第47条の普通決議です。規約変更は区分所有法第31条の別議案です。
- 新会社は第72条の説明、第73条の書面、第76条の分別管理、第77条の定期報告を行います。
- 引継ぎは口座、帳簿、未収金、鍵、図面を日付で渡します。変更そのものへの全国共通の補助金はありません。
- 管理者がいないときの第73条の書面は、区分所有者全員へ渡します。開始日と解約日は同じ表に書き、点検と出納が止まる空白の週を作りません。
自組合の規約が標準と違うときは、標準の条文番号ではなく、自組合の条文を総会資料に書きます。
免責事項本記事は2026年9月時点の一般的な説明であり、個別の助言ではありません。解約の時期、決議の要件、委託費はその管理規約、契約書、見積もりで確認してください。
島 洋祐
株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

