共用部の電子ブレーカー導入について ― 管理組合が知っておくべき全知識

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

目次

■ 電子ブレーカーとは何か

電子ブレーカーは、従来の「熱動式(機械式)ブレーカー」と異なり、電子制御によって電流を監視・調整する装置です。
最大の特徴は、短時間の過負荷を許容しつつ、契約電力を従来よりも小さく設定できる点にあります。

マンション共用部の電気契約は、照明・エレベーター・受水槽ポンプ・防災設備など多岐にわたるため、「同時に最大負荷がかかる」ことを想定して契約容量が決められています。しかし実際には、これらの設備が同時にフル稼働することは稀です。
電子ブレーカーは、この「余裕を見すぎた契約容量」を適正化することで、電力基本料金を削減する狙いがあります。


■ マンション共用部での導入メリット

契約電力の適正化による基本料金削減

電気料金のうち「基本料金」は契約電力に比例して決まります。
電子ブレーカーを導入して契約電力を下げられれば、毎月の共用部電気代が直接下がるため、年間数十万円規模の削減が見込める場合もあります。

修繕積立金への好影響

管理費会計の余剰を積立金会計に繰り入れられるケースでは、長期修繕計画の資金不足解消に寄与することも可能です。

設置工事の負担が小さい

専有部分ではなく共用部(受変電設備・分電盤まわり)に設置するため、住戸内に立ち入る必要はありません。工事期間も比較的短く済みます。


■ 導入における注意点・リスク

停電リスクの可能性

電子ブレーカーは「短時間の過負荷」を許容しますが、想定以上の負荷が長時間続けば遮断されます。
その結果、エレベーター停止・ポンプ停止・共用灯消灯など、生活直結のトラブルが起こり得るため、負荷状況を十分に検証する必要があります。

導入効果が限定的な場合がある

契約電力を下げられるかどうかは、建物の使用実態に左右されます。
例えば常時フル稼働に近い設備(高層マンションの大型エレベーター群など)がある場合、そもそも契約容量を下げられないこともあります。


■ 管理組合が導入を検討する際の手順

  1. 現状把握
    • 契約電力(kVA)と過去1〜2年の最大需要電力を確認する
    • 電力会社の請求書から基本料金・使用量の推移を把握
  2. 事前シミュレーション
    • 電子ブレーカー導入業者に、実測データに基づく削減効果試算を依頼
    • 過去の負荷データと比較し、契約電力を何kVA下げられるかを確認
  3. 停電リスク評価
    • 導入後に遮断リスクが高い時間帯・設備を想定
    • 特にエレベーターや受水槽ポンプが同時稼働する場面を重点的に検証
  4. 理事会・総会での説明
    • メリットだけでなく「停電リスク」「導入効果が限定的な場合もある」ことを住民に共有
    • 決議は通常「普通決議」で足りますが、慎重に議論すべき
  5. 導入後のフォロー
    • 導入初年度は特に、実際の使用実績と削減額を検証する
    • 停電や誤作動が発生していないか、定期的に理事会へ報告

■ 実務上のチェックポイント

  • 削減額の根拠:過去の最大需要電力と契約電力の差を明確に提示させる
  • 保守契約の有無:点検費用が管理費にどう影響するか確認
  • 撤去・更新コスト:将来的な更新費用も見積もっておく
  • 電力会社との調整:契約容量変更の可否は、必ず電力会社に直接確認

■ まとめ

電子ブレーカーは、「共用部の電気代を減らしたい」という管理組合の強いニーズに直結する選択肢です。
ただし、導入による効果はマンションごとの設備状況に大きく左右され、安易に導入すると停電リスクや保守コスト増加に直面する可能性もあります。

導入を検討する際は、削減額とリスクを正しく比較し、理事会で透明性のある説明を行うことが成功の鍵となります。

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この記事を書いた人

保有資格:(管理業務主任者・ 保険募集人・甲種防火管理者)
不動産業界歴5年。外部管理者方式や関連法規についての知識も豊富に持っております。
管理組合様それぞれのニーズに合った資産形成のご提案も行ってまいります。
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