マンション理事役員拒否の正当な理由と4ステップ手続きガイド

マンション理事役員を円満に辞退するための具体的な4つのステップを示したフロー図。ステップ1は「管理規約の確認」、ステップ2は「客観的証拠の準備」、ステップ3は「理事会への早期相談」、ステップ4は「総会での説明と承認プロセス」。この手順に従うことで、読者はスムーズな辞退手続きを進め、トラブルを回避できる。

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マンションの理事役員を拒否するための正当な理由と手続き

マンションの理事役員の順番が回ってきたものの、「親の介護」「自身の病気」「仕事の多忙」といった事情で、とても引き受けられそうにない。そう悩んでいませんか。輪番制が一般的なマンションにおいて、役員の辞退は他の住民との関係性を考えると、非常にデリケートな問題です。

しかし、やむを得ない事情がある場合にまで、役員就任を強制されるわけではありません。重要なのは、何が「正当な理由」として認められやすく、どのような手続きを踏めば円満に辞退できるかを知ることです。

この記事では、区分所有法やマンション標準管理規約といった公的な情報に基づき、理事役員を拒否できる「正当な理由」の具体例、認められやすい断り方の4ステップ、そして知っておくべき注意点まで、不動産の専門家として分かりやすく解説します。トラブルを避け、ご自身の状況を理解してもらうための知識を身につけましょう。

目次

背景知識:そもそも理事役員は強制?法的な位置づけを解説

理事役員の就任を検討する前に、その法的な位置づけを正しく理解しておくことが重要です。「断ったら法律違反になるのでは?」と不安に思う方もいますが、実態は少し異なります。ここでは「管理組合」「理事会」「管理規約」「区分所有法」という4つのキーワードの関係性を整理し、役員就任の義務について解説します。

用語の整理:法律・規約・組織の関係

まず、マンション管理に関わる重要な用語の定義と関係性を理解しましょう。この関係性を知ることで、なぜ「管理規約の確認」が最も重要なのかが分かります。

  • 区分所有法:マンションに関する基本的なルールを定めた日本の法律。すべてのマンションに適用されます。
  • 管理規約:区分所有法に基づき、各マンションの実情に合わせて定められた独自のルールブック。「マンションの憲法」とも言われます。
  • 管理組合:マンションの建物や敷地を維持管理するため、区分所有者全員で構成される団体。法律に基づき、必ず設立されます。
  • 理事会:管理組合の具体的な業務を行う執行機関。総会で選ばれた理事(役員)で構成され、いわばマンションの「内閣」のような存在です。

役員就任は「委任契約」- 本人の承諾が必要

結論から言うと、理事役員の就任に法的な強制力はありません。役員の選任は、総会の決議によって行われますが(出典:建物の区分所有等に関する法律 第25条第1項、標準管理規約第35条2項・3項)、管理組合と役員の関係は民法上の「委任契約」にあたると解されています。

委任契約は、当事者双方の合意があって初めて成立します。つまり、総会で一方的に選任されても、本人が承諾しなければ役員就任の効力は生じないのが原則です。安易に「引き受けます」と返事をする前に、自身の状況をよく考える時間を持つことが大切です。

管理規約での定めは組合員としての”責務”

一方で、ほとんどのマンションでは「管理規約」において、役員の選任方法や責務が定められています。例えば、輪番制で役員を選出する旨が規定されている場合、それはそのマンションの公式なルールです。

法的な強制力はありませんが、管理規約の定めは、区分所有者全員で構成する「管理組合」の一員としての協力義務、つまり組合員としての責務と捉えられます。正当な理由なくこの責務を放棄することは、共同生活の秩序を乱す行為と見なされかねません。ただし、管理規約に定めがある場合、組合員としての責務として対応が求められる点に留意し、ご自身のマンションの規約を確認してください。

なぜ輪番制だと安易に拒否できないのか?

輪番制は、役員の負担を全組合員で公平に分担することを目的とした合理的な制度です。そのため、「仕事が忙しい」といった多くの人に当てはまる理由で安易な辞退が続出すると、制度そのものが成り立たなくなってしまいます。

特定の人が何度も役員を務めることになり、不公平感から住民間のトラブルに発展するケースも少なくありません。だからこそ、輪番制のもとで役員を辞退する際には、他の組合員が納得できるだけの客観的でやむを得ない「正当な理由」の説明が求められるのです。

手続・対応ステップ:理事役員を断るための正当な理由と具体的な手続き

役員就任を辞退するには、「正当な理由」を提示し、「適切な手続き」を踏むことが不可欠です。ここでは、どのような理由が認められやすいのか、そして実際に辞退を申し出る際の具体的なステップを解説します。最終的な判断は、各マンションの管理規約や理事会・総会に委ねられますので、常にご自身の規約を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。

【理由別】理事就任を拒否できる「正当な理由」とは?

何が「正当な理由」にあたるかは、法律で明確に定義されているわけではありません。最終的には、各マンションの管理規約や、理事会・総会での判断に委ねられます。ここでは一般的な傾向として認められやすい理由と、その伝え方のポイントをまとめました。* 本表は実務上の一般的な傾向を示すものであり、法的確定事項ではなく、最終的な判断は個別マンションの総会・理事会に委ねられます。

理由の種類認められやすさ必要な証拠・ポイント
病気・健康上の問題高い医師の診断書が極めて有効。理事会への出席や業務遂行が困難であることを客観的に示す。
高齢による心身の制約高い規約で「75歳以上は免除」など年齢基準が定められている場合が多い。該当する場合は申し出やすい。
継続的な親の介護高い~中程度介護の頻度や深刻度を具体的に説明。「週に数回の通院介助」「常時の見守りが必要」など。
長期の海外赴任・出張高い物理的に理事会へ出席できないため。赴任期間や場所を証明する書類(辞令など)があると説得力が増す。
仕事が多忙低い単独の理由としては弱い。「他の人も同じ」と見なされがち。代替案の提示や、業務遂行が不可能な具体的状況(例:月の半分以上が長期出張)の説明が必要。
子どもが小さい低い~中程度「未就学児がいる」だけでは認められにくい傾向。ただし、子どもに医療的ケアが必要などの特別な事情があれば考慮される可能性あり。

* 上記の認められやすさは、実務上の一般的な傾向に基づきます。法的確定事項ではなく、各マンションの管理規約や総会・理事会の判断が優先されます。詳細はご自身の規約を確認し、専門家にご相談ください。

認められやすい理由

  • 病気や健康上の問題:ご自身の病気療養や、家族の看病などで、理事会の定例会への出席や日々の管理業務が困難な場合です。医師の診断書を提出することで、客観的な事実として理解を得やすくなります。
  • 高齢による心身の制約:多くの管理規約では、一定の年齢(例:75歳や80歳以上)に達した組合員は、申し出により役員を免除される規定が設けられています。
  • 継続的な親の介護:単に「親の介護」というだけでなく、その負担が重く、役員業務との両立が現実的に不可能であることを具体的に説明することが重要です。
  • 長期の海外赴任・出張:物理的に日本国内にいない期間が理事の任期の大半を占める場合、業務の遂行が不可能なため、正当な理由として認められます。

認められにくい理由とその対処法

「仕事が多忙」「子どもが小さい」といった理由は、他の多くの住民にも当てはまる可能性があるため、それだけを理由に辞退を認めることは難しいのが実情です。

もしこれらの理由で辞退を考える場合は、「なぜ自分の状況が他の多忙な人と比較しても、特に役員業務の遂行を困難にさせるのか」を具体的に説明する必要があります。例えば、「仕事の性質上、月の半分以上が海外出張で物理的に不在である」といった説明ができれば、単なる「多忙」とは区別して考慮される可能性があります。管理規約の定めにより、判断が異なる場合もありますので、確認をおすすめします。

【4ステップ】役員就任を拒否するための具体的な手続き

正当な理由があっても、伝え方やタイミングを間違えるとトラブルの原因になります。以下の4つのステップに沿って、慎重に進めましょう。各ステップは管理規約の規定に基づきますので、ご自身の規約を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。

Step1:自マンションの「管理規約」を確認する(最重要)

何よりも先に、ご自身のマンションの管理規約を隅々まで確認してください。特に以下の項目は重要です。管理規約の定めが優先されます。

  • 役員の選任・資格・任期に関する条項:輪番制のルール、役員になれる人の条件(例:居住者に限るか)など。
  • 役員の辞退・免除に関する条項:辞退手続き、免除が認められる年齢や条件、必要な書類(辞退届、診断書など)の有無。
  • 役員を辞退した場合の協力金に関する条項:後述する「協力金」の定めがあるか。
(記載例)管理規約 第〇条(役員の選任)
役員が任期中に次の各号の一に該当することとなったときは、その役員は当然にその職を失う。
一 役員が組合員でなくなったとき。
二 後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたとき。

Step2:診断書など客観的な証拠を準備する

健康上の理由であれば医師の診断書、海外赴任であれば会社からの辞令など、第三者が見ても納得できる客観的な証拠を準備します。口頭での説明に加えて証拠を提示することで、話の信憑性が格段に高まります。管理規約で必要な書類が指定されている場合がありますので、確認してください。

Step3:理事会へできるだけ早期に相談・申し出を行う

役員の選任時期が迫ってから、あるいは選任された後に突然「できません」と申し出るのは、最も避けるべき対応です。輪番の順番が近づいてきた段階で、できるだけ早く現在の理事会に相談しましょう。

「来期、役員の順番が回ってくるのですが、実は〇〇という事情があり、業務の遂行が難しいと考えております」と丁寧に相談することで、理事会側も代替案を検討する時間を確保できます。相談の際は、管理規約に基づく手続きを意識してください。

Step4:総会での説明と承認プロセス

最終的に役員の選任や免除を決定するのは、管理組合の最高意思決定機関である「総会」です。理事会に事前相談した上で、総会の場で正式に辞退の承認を得るのが一般的なプロセスです。ただし、管理規約の定めにより、理事会の判断で免除が認められるケースもあります(例:理事会決議で足りる場合)。Step1で確認した規約の定めに従って、適切な手続きを踏んでください。辞任が認められた場合、多くのマンションではその旨を総会で報告することが定められています(出典:マンション標準管理規約 第52条2項)。

FAQ:理事役員を拒否する際のよくある質問

ここでは、役員拒否に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で解説します。


役員就任を拒否した場合、罰金などのペナルティはありますか?

法律上の罰金(罰則)はありません。区分所有法には役員就任を義務付ける規定がないためです。ただし、これは「何の不利益もない」という意味ではありません。

第一に、管理規約で「役員を辞退した者は、役員会活動協力金として〇万円を支払う」といった定め(いわゆる協力金)がある場合があります。これは罰金ではなく、役員業務を他の人に負担してもらうことに対する協力金という位置づけです。ただし、協力金制度が有効とされるには、その旨が管理規約に明記され、総会で承認されている必要があります。本制度の法的有効性は個別の規約・総会決議に依存します。

第二に、最も避けたいのが住民間の人間関係の悪化です。正当な理由なく拒否したと見なされた場合、他の住民から不公平感を抱かれ、マンション内での居心地が悪くなる可能性があります。

なぜ「仕事が忙しい」だけでは理由として弱いのですか?

「仕事が忙しい」という状況は、現役世代のほとんどの住民に共通するからです。これを安易に認めてしまうと、役員のなり手がいなくなり、管理組合の運営が立ち行かなくなってしまいます。

そのため、単に「忙しい」と主張するのではなく、「月に半分以上が長期出張で物理的に会議に出られない」など、役員業務の遂行が客観的に不可能であることを具体的に説明する必要があります。他の住民との公平性を保つ観点から、厳しい判断がなされることが多いと認識しておきましょう。

代理人(家族など)を立てることは可能ですか?

これも管理規約の定めによります

多くの標準的な管理規約では、役員は「組合員(=区分所有者)」本人であることを要件としています。この場合、所有者ではない家族(配偶者や子など)は原則として役員になれません。

しかし、役員のなり手不足に対応するため、規約を改正し、「組合員の配偶者や一親等の親族であれば役員になれる」と定めているマンションも増えています。また、2025年改正のマンション標準管理規약では、役員の職務代行者に関する規定が定められており、理事本人に代わって理事会に出席させることは可能です(標準管理規約第53条)。ただし、役員自体の代理就任は規約依存です。ご自身のマンションの規約を確認し、代理人が可能かどうかをチェックしてみてください。導入には総会決議(議決権総数の過半数の賛成)が必要で、各マンションの実情に依存します。

実務ヒント:どうしても役員ができない場合の代替案

辞退の申し出をしたものの、理解を得るのが難しい場合や、そもそも役員のなり手が著しく不足している場合には、拒否以外の代替案を検討することも重要です。管理規約の定めや総会決議によることを念頭に置いてください。

「役員会活動協力金」の有無を確認する

前述の通り、管理規約によっては、役員を免除される代わりに「協力金」を支払う制度が設けられていることがあります。これは、役員業務を他の人に代わってもらうことへの対価であり、不公平感を緩和するための一つの手段です。

もし規約に定めがあれば、協力金を支払うことで円満に辞退できる可能性があります。ただし、この制度がない場合に「お金を払うから免除してほしい」と個人が提案することは、反感を買う恐れがあるため慎重になるべきです。協力金制度の有効性は個別の規約・総会決議に依存します。

理事代行サービス(管理会社への委託)を提案する

役員のなり手不足がマンション全体の問題となっている場合、解決策として管理会社への理事代行業務委託を提案するのも一つの手です。これは、管理組合がお金を払って管理会社に一部業務を委託する制度で、組合主体性を保ちつつ負担を軽減します。なり手不足時の管理会社代行として有効ですが、組合主体性低下の懸念もあります。

もちろん、管理会社への新たな費用が発生するため、導入には総会での合意形成が不可欠です(議決権総数の過半数の賛成)。しかし、「自分は役員ができないが、代わりに理事代行サービスの費用負担には協力する」という姿勢を示すことで、建設的な解決策として受け入れられる可能性があります。管理規約の定めや総会決議によることを確認してください。

まとめ:役員拒否は慎重に。まずは規約確認と早期相談から

今回は、マンションの理事役員を拒否するための「正当な理由」と、その手続きについて解説しました。


この記事のまとめ

  • 役員就任は本人の承諾が必要な「委任契約」であり、法的な強制力はない。
  • しかし、管理規約で定められた輪番制は組合員としての重要な責務である。
  • 病気、高齢、重い介護、長期の海外赴任などは「正当な理由」として認められやすい。
  • 辞退の際は、①管理規約の確認、②客観的証拠の準備、③理事会への早期相談、④正規の手続き、という4ステップが不可欠。
  • 安易な拒否は住民間のトラブルに繋がりかねないため、慎重な対応が求められる。

輪番制で役員の順番が回ってきた際に、やむを得ない事情で引き受けられないと感じたら、まずはご自身のマンションの管理規約を熟読することから始めてください。そして、一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で現在の理事会に相談することが、円満な解決への第一歩です。

あなたの状況を誠実に、そして客観的な事実をもって説明することで、きっと道は開けるはずです。

免責事項

本記事は、マンションの管理組合運営に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の個人や特定の管理組合に対する法的な助言ではありません。本記事は一般的情報であり、具体的な辞退判断は個別マンションの管理規約・総会決議に完全に依存します。法的判断は弁護士等にご相談ください。

役員の選任や辞退に関する最終的な判断は、個々のマンションの管理規約の定めや、総会での決議によって行われます。具体的な対応については、ご自身のマンションの管理規約を必ずご確認の上、必要に応じて管理組合の理事会や、弁護士、マンション管理士などの専門家にご相談ください。法令やマンション標準管理規約は改正される可能性があるため、常に最新の情報をご参照ください。本文は区分所有法(令和3年改正)やマンション標準管理規約の改正(2025年施行予定)などを踏まえ、2025年12月時点の情報に基づいています。

参考資料

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この記事を書いた人

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