築40年マンション管理不全対策ガイド|2026年法改正と修繕積立金の鍵

マンション管理に関するより専門的な相談が必要な場合の専門家と相談内容をまとめたガイド。管理組合運営全般や規約見直しにはマンション管理士、建物の劣化診断や長期修繕計画には一級建築士、管理費滞納や住民間トラブルには弁護士と、それぞれの専門分野をアイコンと共に示し、読者が適切な相談先を選べるようにする。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

築40年マンションの管理不全を防ぐための対策ガイド

築40年を迎えたマンションの修繕、どう進めたら良いかお悩みではありませんか?建物の老朽化と居住者の高齢化という「2つの老い」が重なり、修繕積立金が不足したり、管理組合の運営が滞ったりする「管理不全」は、多くのマンションが直面する深刻な課題です。しかし、諦める必要はありません。

本記事では、宅地建物取引士の視点から、管理不全に陥る構造的な原因を解き明かし、その対策の鍵となる「修繕積立金」の正しい知識を解説します。さらに、2026年4月1日に施行予定の法改正によって可能になる新しい対策や、管理組合として今すぐ実践できる具体的なアクションプランを、公的な一次資料に基づいて分かりやすくご紹介します。この記事を読めば、あなたのマンションの未来を守るための道筋が見えてくるはずです。

目次

なぜ起こる?築40年マンションを襲う「管理不全」の構造

マンションの管理不全は、単なる建物の古さが原因ではありません。そこには、建物と人の両方が時間を経ることで生じる、構造的な問題が潜んでいます。

深刻化する「2つの老い」:建物と居住者の高齢化

築40年を超えるマンションの多くは、「建物・設備の老朽化」と「区分所有者の高齢化」という「2つの老い」に直面しています(出典:法務省「所有者不明土地・管理不全土地対策」)。

  • 建物の老い: 外壁のひび割れ、屋上防水の劣化、給排水管の腐食など、大規模な修繕が必要な箇所が増加します。これらを放置すれば、雨漏りや断水など、生活に直接的な支障をきたす事態になりかねません。
  • 居住者の老い: 新築時に30代~40代で購入した層が70代~80代となり、年金生活に入ることで、修繕積立金の値上げに同意しにくくなります。また、役員のなり手不足や、管理への関心の低下にもつながります。

この2つの老いが組み合わさることで、「修繕が必要なのに、お金が集まらない・合意形成ができない」という悪循環に陥り、管理不全が深刻化していくのです。

管理不全マンションの典型的な兆候とは

あなたのマンションは大丈夫でしょうか?以下の項目に当てはまるものが多いほど、管理不全、あるいはその一歩手前の状態にある可能性があります。

  • 共用部の劣化: 廊下の電灯が切れたまま、壁紙が剥がれている、ゴミ置き場が乱雑
  • 管理組合の機能不全: 総会が長年開かれていない、いつも同じ人が役員、議事録が作成・配布されない
  • お金の問題: 修繕積立金が長期にわたり値上げされていない、管理費の滞納者がいる
  • 計画性の欠如: 有効な長期修繕計画がない、または計画通りに修繕が実施されていない

これらの兆候は、将来の資産価値の低下や居住環境の悪化に直結します。早期に気づき、対策を講じることが重要です。

すべての鍵を握る「修繕積立金」の法的知識と現実

マンション管理の生命線ともいえるのが「修繕積立金」です。この費用について正しく理解することが、対策の第一歩となります。

混乱しやすい「管理費」と「修繕積立金」の違い

まず、毎月支払っている2つの費用、「管理費」と「修繕積立金」を区別しましょう。

  • 管理費: 日常の管理に使われるお金です。廊下の電気代、清掃委託費、エレベーターの保守点検費、管理会社への委託料などが該当します。いわば「日々の生活費」です。
  • 修繕積立金: 将来の大規模修繕に備えて積み立てるお金です。10数年ごとに行う外壁塗装や屋上防水、給排水管の更新工事などに使われます。いわば「将来のための貯金」です。

この2つは財布が別であり、管理費を修繕積立金に充当したり、その逆をしたりすることは原則としてできません。それぞれの役割を理解することで、なぜ修繕積立金の値上げが必要なのか、住民全体で議論しやすくなります。

使途は厳密に定められている!標準管理規約のルール

修繕積立金は、何にでも使えるわけではありません。※マンション標準管理規約は、国土交通省が提供するモデル規約であり、法的強制力はありません。しかし、多くのマンション管理組合が採用しており、修繕積立金の使途についてもこれに準拠した取り扱いが一般的です。ご自身のマンション管理規約がこれと異なる場合は、管理規約が優先されます。

国土交通省が示す「マンション標準管理規約」第28条では、その使い道を厳しく限定しています。

(修繕積立金の使途)
第28条 管理組合は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って、修繕積立金を取り崩すことができる。
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
三 敷地及び共用部分等の変更
四 建物の建替え及びマンション敷地売却(…)に係る合意形成に必要となる事項の調査
(出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」)

具体的には、外壁補修、屋上防水、給排水管の更新といった計画的な工事や、災害による緊急修繕などが対象です。日常の清掃や小さな補修に使うことはできず、あくまで区分所有者全体の共有財産を維持・向上させるための特別な費用と位置づけられています。

あなたのマンションはどっち?段階増額方式と均等積立方式

修繕積立金の積立方法には、大きく分けて2つの方式があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身のマンションがどちらの方式か確認してみましょう。

  • 段階増額方式: メリット – 新築時や購入当初の負担が軽い。デメリット – 築年数が進むと負担が急増し、合意形成が困難になりやすい。
  • 均等積立方式: メリット – 将来にわたって負担額が一定で、資金計画が立てやすい。デメリット – 新築時の負担が比較的高くなる。

多くの古いマンションでは「段階増額方式」が採用されていますが、築40年を迎え、まさに今、積立金の大幅な値上げが必要な時期に差し掛かっているケースが少なくありません。

築40年超で不足額は平均いくら?公的データで見る実態

では、実際に修繕積立金は足りているのでしょうか。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、長期修繕計画の金額に対して積立額が「不足している」と回答した管理組合は34.8%に上ります(平成30年度調査)。これは数年前のデータであり、マンションの老朽化が進む現在では状況がさらに深刻化している可能性があります。なお、マンション老朽化が急速に進む昨今、最新の統計数値は国土交通省の報道発表資料で定期的に確認することをお勧めします。
具体的な不足額の平均データはありませんが、同省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、専有面積あたりの月額目安が示されています。例えば、建築延床面積5,000㎡のマンションで、専有面積が70㎡の場合、月額の積立金額の目安は約15,000円~20,000円程度です。ご自身のマンションの積立金額がこの目安を大きく下回っている場合、将来的に不足する可能性が高いと考えられます。

【2026年4月1日施行予定】法改正で可能になる新・対策

これまで、管理組合の合意形成が進まなければ打つ手がありませんでしたが、法律が後押ししてくれるようになります。2026年4月1日に施行が予定されている「マンション管理適正化法」と「区分所有法」の改正は、管理不全マンション問題に対する新たな光です。

法改正により、これまで手詰まりだった状況を打開する新たな選択肢が生まれます。

対策①:行政が介入!管理不全マンションへの改善命令(改正マンション管理適正化法)

今回の法改正の大きな柱の一つが、マンション管理適正化法の改正による行政の関与強化です。共用部分の管理が著しく不適切な「管理不全」状態のマンションに対し、市町村などの行政が管理組合に直接、改善指導や勧告、さらには改善命令を出せるようになります(出典:政府広報オンライン「マンションの管理、大丈夫?」)。
例えば、廊下の天井が剥落しそうなのに放置されている、排水管の詰まりが頻発しているといった危険な状態が続く場合、行政が介入し、修繕計画の策定や実施を促すことが可能になります。これは、管理組合内部だけでは解決が難しい場合の強力な後ろ盾となります。

対策②:合意形成が進む!建替え・大規模修繕の決議要件緩和(改正区分所有法)

※ 建替え決議の要件は、マンション管理規約で別段の定めがある場合、その規約が優先されます(区分所有法第39条)。実際の決議を行う際は、必ずご自身のマンション管理規約をご確認ください。

改正区分所有法では、建替え等に係る合意形成をより柔軟にする仕組みが導入されます(詳細は法施行直前の政令・省令確認が必須)。
さらに重要なのが、所在不明者の扱いです。改正区分所有法では、所有者不明住戸への対応として、裁判所による管理人選任制度が創設されます(対策③参照)。この制度と合わせ、集会決議の成立要件が現行法よりも実現しやすくなる環境が整備される予定です(出典:法務省「所有者不明土地・管理不全土地対策」)。
これにより、連絡の取れない所有者がいるために決議が成立しない、という事態を避けることができ、再生に向けた意思決定が格段に進めやすくなります。

対策③:所有者不明問題に対応!裁判所による管理人選任制度(改正区分所有法)

空き家になって所有者が誰か分からない、相続人が管理を放棄しているといった「所有者不明」の住戸は、管理費等の滞納や部屋の荒廃を招き、マンション全体の管理不全を深刻化させます。
改正法では、このような住戸に対し、利害関係者(管理組合など)の請求により、裁判所が管理人を選任できる制度が創設されます。選任された管理人(弁護士など)は、その住戸を売却し、滞納管理費の支払いに充てるなどの対応が可能になります。これにより、問題の根源に直接アプローチできるようになります。

管理組合が今すぐ実践すべき具体的アクションプラン

法改正を待つだけでなく、管理組合として今すぐ取り組めることも多くあります。主体的な行動が、マンションの未来を左右します。

長期修繕計画の見直しと住民への丁寧な説明プロセス

まずは、マンションの「健康診断書」ともいえる長期修繕計画の有効性を確認しましょう。
1. 現状把握: 建築士などの専門家に依頼し、建物の劣化診断を実施。
2. 計画見直し: 診断結果に基づき、今後30年程度の修繕項目と概算費用を盛り込んだ、現実的な長期修繕計画を作成・更新する。
3. 住民説明会: 総会での決議の前に、複数回の説明会を開催。なぜ修繕が必要なのか、費用はいくらかかるのか、写真やデータを用いて丁寧に説明し、質疑応答の時間を十分に確保する。

急な値上げに対する反発を和らげるためにも、透明性の高い情報公開と、対話を重ねる姿勢が合意形成の鍵となります。

失敗しない管理会社の選び方と「相見積もり」の現実

現在の管理会社に不満がある場合、変更を検討するのも一つの手です。その際、複数の会社から見積もりを取る「相見積もり」は有効ですが、注意点もあります。

管理会社の見積もりは、単に「管理委託費一式」ではなく、「事務管理業務費」「管理員業務費」「清掃業務費」「設備管理業務費」といった項目別に内訳を明示してもらうことが重要です。

ただし、やみくもに多くの会社へ声をかけるのは得策ではありません。複数の管理会社から見積もりを取ることは適切な選定のために重要ですが、管理会社にとって正確な見積もり作成には複数回の現地調査や清掃・点検などの外注先との調整など、多大な労力がかかります。あまりに多くの会社に見積もりを依頼したり、非現実的な条件を提示したりすることは、かえって管理会社の応募を阻害しうる点に留意が必要です。特に戸数が少ないマンションの場合、経験上、本気で検討していることを伝え、2~3社に絞って依頼するのが、質の高い提案を引き出す現実的な方法といえるでしょう。

役員のなり手不足を解消する外部専門家の活用

「役員の高齢化で、なり手がいない」という悩みも深刻です。このような場合は、外部の専門家を頼る選択肢があります。
マンション管理士などの専門家に、理事会や総会の運営支援をアドバイザーとして依頼したり、規約で定めれば「外部管理者」として理事長などの役員に就任してもらうことも可能です。費用はかかりますが、専門的な知見で運営が安定し、役員の負担を大幅に軽減できるメリットがあります。

【補足】将来の管理不全を防ぐには購入時の確認も重要

ここまで既存マンションの対策を解説してきましたが、管理不全の根本的な予防は、マンション購入時から始まっています。マンション管理適正化法では、分譲事業者が管理計画を作成し、購入者に説明することが義務付けられています。これからマンションの購入を検討する方は、この計画内容(特に長期修繕計画や修繕積立金の設定)をしっかり確認することが、将来の自分の資産を守る上で極めて重要です。

専門家はどこにいる?頼れる公的相談窓口と専門家の見分け方

管理組合だけで問題を抱え込む必要はありません。様々な相談先が存在します。

まずは無料相談から|自治体のマンション管理相談窓口

多くの都道府県や市区町村では、マンション管理に関する無料の相談窓口を設置しています。管理組合の運営方法や、法律の基本的なことなど、最初の相談先として最適です。お住まいの自治体のホームページで「マンション管理 相談」と検索してみてください。

より専門的な診断・助言が必要な場合の相談先

より具体的な課題解決には、各分野の専門家の力が必要です。

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別具体的な法的助言ではありません。弁護士や司法書士への相談時には、非弁行為(弁護士資格がない者による法的助言)を避けるため、資格確認を行ってください。

  • 相談内容: 管理組合の運営全般、規約の見直し相談先の専門家: マンション管理士
  • 相談内容: 建物の劣化診断、長期修繕計画の作成相談先の専門家: 一級建築士(マンション改修に詳しい)
  • 相談内容: 管理費等の滞納、住民間トラブル相談先の専門家: 弁護士

また、国土交通省の監督下にある公益財団法人「マンション管理センター」でも、電話相談や専門家相談(有料)を行っており、信頼できる情報源となります。

まとめ:未来の住まいのために、今こそ行動を

築40年のマンションが直面する管理不全の問題は、決して他人事ではありません。しかし、その構造を理解し、正しい知識を持って対策を講じることで、未来は変えられます。

  • 現状認識: 「2つの老い」が管理不全の根源。修繕積立金の現状を直視する。
  • 新対策: 2026年4月1日施行予定の法改正は、行政介入や決議要件緩和など、問題解決の追い風となる。
  • 即時行動: 長期修繕計画の見直しと丁寧な住民説明、現実的な管理会社選定、外部専門家の活用など、今できることから始める。
  • 相談: 一人で悩まず、自治体や専門家の窓口を積極的に活用する。

問題の先送りは、事態を悪化させるだけです。大切な資産であり、生活の場であるマンションの価値を維持し、次の世代に引き継いでいくために、今こそ管理組合が一丸となって行動を起こす時です。

免責事項

本記事は、2025年12月20日時点の公開情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。特定のマンションにおける個別具体的な問題に対して、法的な助言や解決策を保証するものではありません。
実際の管理組合の運営や契約の解釈にあたっては、必ず最新の法令をご確認の上、弁護士やマンション管理士等の専門家にご相談ください。また、個別のマンション管理規約や総会決議の内容が、本記事の記載に優先します。


参考資料

  • 法務省「所有者不明土地・管理不全土地対策〜民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法の概要〜」
    * https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00438.html
  • 政府広報オンライン「マンションの管理、大丈夫? 高経年化や所有者の高齢化で管理不全に陥る前に」
    * https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202203/1.html
  • 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」
    * https://www.mlit.go.jp/common/001278788.pdf
  • 国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」
    * https://www.mlit.go.jp/common/001287431.pdf
  • 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
    * https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000022.html

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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