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2025年以降のマンション管理法改正:管理組合が今すぐ知るべき変更点と対応策
2026年現在、マンション管理を取り巻く法律は2025年の改正マンション管理適正化法(正式名称:マンションの管理の適正化の推進に関する法律、一部2025年11月28日施行)と2026年4月1日施行の改正区分所有法(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)により大きく変わりました。これらの改正は、全国のマンション管理組合の運営に直接的な影響を及ぼします。建物の老朽化と居住者の高齢化という「二つの老い」を背景に進められたこの法改正は、長期修繕計画や修繕積立金のあり方を根本から見直すことを求めています。
しかし、「具体的に何が変わり、自分たちのマンションでは何をすべきなのか」と不安を感じている理事の方も多いのではないでしょうか。情報が断片的で、全体像を掴むのは容易ではありません。
この記事では、宅地建物取引士の資格を持つ不動産ライターが、国土交通省や法務省の公表資料など一次情報に基づき、2025年以降のマンション管理適正化法改正と区分所有法改正のポイント、管理組合が今すぐ取り組むべき対応策を徹底解説します。法改正を正しく理解し、マンションの資産価値を守り、向上させるための第一歩を踏み出しましょう。なお、本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別の法的助言ではありません。詳細は弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。
【2025年・2026年施行】マンション管理を揺るがす2つの法改正とは?
マンション管理の現場に大きな影響を与える2つの重要な法律、「マンション管理適正化法」と「区分所有法」が改正されました。まずは、それぞれの法律の役割と改正の背景、そして最も重要な施行日を正確に理解しましょう。
改正の背景:「建物の老朽化」と「居住者の高齢化」
今回の法改正の根底には、日本のマンションが直面する「二つの老い」という深刻な課題があります。
- 建物の老朽化: 国土交通省の調査(2022年末時点)によると、築40年超の高経年マンションは約125.7万戸にのぼり、20年後には約445万戸に増加すると推計されています。老朽化は、建物の安全性低下や資産価値の毀損に直結します(国土交通省「高経年マンションの状況等に関する調査」参照)。
- 居住者の高齢化・非居住化: 居住者の高齢化により、管理組合の役員のなり手不足や、修繕積立金の値上げに対する合意形成の困難化が進んでいます。また、相続などで所有者が不明になったり、遠隔地に住んでいたりするケースも増え、総会での意思決定が停滞しがちです。
これらの課題を解決し、マンションの適切な維持管理と円滑な再生を促進することが、今回の法改正の主な目的です(改正区分所有法第1条、マンション管理適正化法第1条参照)。
ポイント①:マンション管理適正化法の改正内容
通称「マンション管理適正化法」は、マンションの管理運営に関するルールを定めた法律です。今回の改正(令和6年法律第31号、一部2025年11月28日施行)では、特に管理の「計画性」と「透明性」を高めるための仕組みが強化されました。
- 管理計画認定制度の導入(同法第80条の2):自治体が管理組合の管理計画(長期修繕計画や資金計画など)を審査し、一定基準を満たしている場合に認定を与える制度です。これにより、管理状態の公的証明が可能となり、透明性向上と計画性の強化を促進します。
- 管理不全マンションへの行政指導強化(同法第81条改正):管理状態が著しく悪いマンションに対し、行政(都道府県知事等)が助言・指導、さらには勧告を行う権限が強化されます。対象は積立金不足を含む管理不全状態で、周辺地域への悪影響を及ぼす恐れがある場合に適用され、強制的な修繕費徴収ではなく、計画策定と改善指導が中心です。
ポイント②:区分所有法の改正内容
通称「区分所有法」は、マンションの建物や敷地の所有権など、権利関係のルールを定めた法律です。今回の改正(令和7年5月23日成立、2026年4月1日施行)では、意思決定の迅速化に主眼が置かれています。
- 集会(総会)の決議要件の緩和(同法第17条、第47条第2項改正):大規模修繕など重要な決議の要件が緩和され、合意形成がしやすくなります。ただし、管理規約でより厳格な要件を定めている場合は規約が優先します(同法第31条1項)。
- 所在不明所有者への対策(同法第41条1項新設):連絡が取れない区分所有者がいる場合、裁判所の許可を得て、その所有者を議決権の母数から除外して決議できるようになります。これにより、修繕計画の承認が迅速化します。
- 所有者不明専有部分管理制度・管理不全専有部分管理制度の新設(同法新設条項):国外所有者含む所在不明所有者の管理を円滑化するための制度が導入されます。
【用語の整理】
・区分所有法:マンションの所有権など「権利」に関する基本ルールを定める法律。
・マンション管理適正化法:管理組合の運営や管理会社との関係など「管理」に関する実務的なルールを定める法律。
【重要】施行日を正確に理解する
法改正の情報を集める上で最も注意すべきは施行日です。「2025年にすべてが変わる」わけではありません。2つの法律は、施行されるタイミングが異なります。
- 改正マンション管理適正化法:一部(管理計画認定制度、行政指導強化など)が2025年11月28日から順次施行予定。
- 改正区分所有法:2026年4月1日から施行。
管理規約の変更などを検討する際は、総会招集時期により適用法が異なるため(施行前総会は現行法適用)、国土交通省の「管理規約改正の手引き」を確認し、専門家と相談してください。
法改正で何が変わる?管理組合への影響と3つの重要ポイント
法改正は、管理組合の日常業務や将来計画に具体的にどのような影響を与えるのでしょうか。特に重要な3つのポイントに絞って解説します。
1. 長期修繕計画と修繕積立金の基準が厳格化される
今回の改正で最も影響が大きいのが、長期修繕計画と修繕積立金の扱いです(マンション管理適正化法第80条の2、改正マンション標準管理規約)。これまでは努力義務に近かったものが、より具体的な基準をもって評価されるようになります。
管理組合が作成した管理計画を自治体が認定する「管理計画認定制度」では、以下の点が厳しくチェックされます(国土交通省ガイドライン準拠)。
- 長期修繕計画が国のガイドラインに沿って作成されているか(期間30年以上推奨)。
- 修繕積立金の額が、計画に対して著しく低くないか。国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年公表)では、専有面積あたりの月額目安(例: 築年数に応じ月額170〜270円/㎡)が示されており、これを参考に自己診断を。
- 管理費(日常管理費用)と修繕積立金(将来大規模修繕費用)が明確に区分して経理されているか。別口座管理を推奨。
改正標準管理規約では、修繕積立金を管理・運用に充当可能とし、性能向上(改良)工事への充当も許容されますが、不足時は合意形成に基づく見直しが必要です。
2. 管理不全マンションへの行政指導が強化される
適切な管理が行われず、管理不全状態(積立金不足含む)のマンションに対しては、行政の関与が強化されます(マンション管理適正化法第81条改正)。
具体的には、都道府県知事などが管理組合に対して、管理状況の報告を求めたり、必要な助言・指導を行ったりできるようになります。勧告に従わない場合は、その事実が公表される可能性もあります。外部管理者の選任(同法第81条の2)も一定条件下で可能ですが、強制徴収ではなく、計画見直しと合意形成に基づく是正指導が中心です。放置すればマンションの評判や資産価値にダメージを与えかねません。
3. 総会決議の要件が緩和され、意思決定が迅速化する
合意形成の停滞を解消するため、総会の決議要件が合理化されます(区分所有法第17条改正)。特に共用部分の変更に関する決議が重要です。ただし、管理規約で厳格化されている場合は規約優先です。
| 項目 | 改正前(現行) | 改正後(2026年4月1日〜) |
|---|---|---|
| 共用部分の変更(軽微変更を除く) | 区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数(出席者過半数以上基盤) | 区分所有者および議決権の各3分の2以上の多数(出席者過半数以上基盤) |
表が表示されない場合: 共用部分変更(軽微除く) – 改正前: 区分所有者および議決権の各4分の3以上(出席者過半数以上)。改正後: 各3分の2以上(出席者過半数以上)。ただし、管理規約でより厳格な要件を定めている場合は規約が優先(区分所有法第31条)。
この緩和により、耐震改修やバリアフリー化、宅配ボックスの設置といった改修工事が進めやすくなります。また、特別決議も出席者による多数決が可能に(同法第47条第2項)。
【実践ガイド】法改正に向けて管理組合が今すぐ取り組むべき3ステップ
法改正の概要を理解したところで、次はいよいよ具体的な行動計画です。管理組合として、今すぐ取り組むべきことを3つのステップに分けて解説します。
ステップ1:現状把握 – 長期修繕計画と積立金の自己診断
まずは、自分たちのマンションの現状を客観的に把握することから始めましょう。以下のチェックリストを参考に、理事会で確認作業を行ってください。
【現状把握チェックリスト】
- □ 長期修繕計画書は存在するか?(最終更新はいつか?)
- □ 計画の期間は30年以上か?(国土交通省ガイドラインでは25年程度が一般的だが、より長期が望ましい)
- □ 修繕積立金の残高は、計画に対して不足していないか?(ガイドライン目安: 月額170〜270円/㎡)
- □ 管理費と修繕積立金は、別の口座で明確に分けて管理されているか?
- □ 管理規約は、国土交通省の「標準管理規約」(2024年改正版)に準拠しているか?
特に修繕積立金の水準は重要で、大幅に下回る場合は資金不足リスクが高い状態です。改正施行前の2026年内に自己診断を完了し、必要に応じて見直しを。
ステップ2:計画見直し – 管理規約の改正と総会準備
現状把握の結果、長期修繕計画や積立金額に問題が見つかった場合、その見直しと、必要に応じた管理規約の改正が必要になります。
修繕積立金の値上げは負担増につながるため、丁寧な説明と合意形成が不可欠です。
- 見直し案の作成: マンション管理士などの専門家と協力し、客観的なデータに基づいた計画を作成。
- 説明会の開催: 総会前に区分所有者対象の説明会を。リスク(放置時の行政指導など)を明確に伝える。
- 総会の開催: 管理規約変更には特別決議(現行: 各4分の3以上)が必要。2026年4月1日以降の総会なら緩和適用可能だが、タイミングを専門家と相談(区分所有法第31条)。所在不明所有者の除外手続きも検討を。
現行管理委託契約の条項(解約条件など)が優先するため、契約書を確認してください。
ステップ3:専門家への相談と助成金・補助金の活用
法改正への対応は、専門知識がない管理組合だけで進めるのは困難です。早い段階でマンション管理士や弁護士に相談を強く推奨します(法務省「区分所有法改正に関するQ&A」参照)。
また、地方自治体によっては、管理組合の取り組みを支援する助成金・補助金制度があります。例えば、管理計画認定の取得を支援する補助制度を設けている自治体もあります。ただし、制度の有無や内容は年度や自治体ごとに大きく異なるため、必ずお住まいの自治体の住宅担当部署で最新情報を確認してください。管理会社は手続きの手間から提案を避けがちですが、株式会社MIJのようなコンサルティング会社では、利用可能な制度を調査し、申請代行を積極的に提案します。
【注意】補助金・助成金は、年度や自治体ごとに内容・予算・申請時期が異なります。必ずお住まいの自治体の最新情報を確認してください。
よくある質問(Q&A)
法改正に関して、管理組合の役員の方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 法改正はいつから施行されますか?
A1. 2つの法律で施行日が異なります。
- 改正マンション管理適正化法(管理計画認定制度など):一部が2025年11月28日から。
- 改正区分所有法(決議要件緩和など):2026年4月1日から。
重要な決定時は適用時期を確認し、専門家相談を。
Q2. 修繕積立金が足りない場合、どうなりますか?
A2. 直ちに罰則や強制徴収はありません。法改正の目的は、管理組合が主体的に計画を見直し、合意形成を通じて積立金を正常化することです(マンション管理適正化法第81条)。ただし、管理不全を放置し行政指導に従わない場合、公表などのペナルティ可能性あり。
Q3. 管理計画認定制度のメリットは何ですか?
A3. 自治体認定により、以下のメリットが期待できます(主に高経年マンション対象)。
- 管理状態の公的証明で資産価値維持・向上。
- 住宅金融支援機構の融資で金利優遇の可能性(例: マンションすまい・る債)。
- 一部の自治体で固定資産税減免や補助金の要件緩和の可能性。ただし、地域条例による変動あり。
失敗しない管理会社との付き合い方 – 見積もり取得時の注意点
法改正を機に、現在の管理会社との契約を見直したり、新しい管理会社を探したりする管理組合も多いでしょう。その際、過度な相見積もり(5〜6社同時依頼など)は避けるべきです。
なぜ複数社への過度な見積もり依頼は避けるべきか
多くの会社から見積もりを取って比較するのは自然ですが、過度な依頼は有力な管理会社の参加を遠ざけます。特に20〜40戸程度の小規模マンションでは、管理会社にとって労力が利益に見合わず、辞退されやすいです。
管理会社は、見積もり作成で以下の労力を要します。
- 現地調査(複数回、建物・設備確認)。
- 外注先調整(清掃、エレベーター点検、消防設備など)。
- 理事会面談(要望ヒアリング)。
これにより、質の低い提案しか集まらないリスクがあります。組合側の要望が一方的(例: 内訳不明の安さ優先)だと敬遠されやすいため、現実的な範囲で交渉を。結論として、候補を2〜3社に絞り、真摯に向き合うのがおすすめです(現行管理委託契約の条項優先)。一式見積もりは避け、内訳を明確に依頼してください。
【管理事業撤退をご検討の企業様へ】MIJによる円滑な事業移行支援とは
本セクションは株式会社MIJ提供の情報に基づく一般的な解説です。執筆者はMIJ非所属の不動産ライター(宅地建物取引士資格保有)で、独立した視点からまとめています。詳細相談はMIJ公式サイト(https://www.mij.co.jp/)参照。
今回の法改正は、管理組合だけでなく、マンション管理事業を営む企業側にも影響を与えます(マンション管理適正化法第91条の2、2025年11月28日施行の登録制度)。コンプライアンス強化や人材不足で撤退を検討する企業が増えていますが、撤退は管理組合とのトラブルリスクを伴います。
撤退時に多発するトラブルとリスク
- 管理空白期間で居住者生活に支障。
- 後継会社が見つからず組合が困惑。
- 引き継ぎ不十分で修繕・会計情報喪失。
改正法では、「マンション管理適正化支援法人」(地方公共団体や民間団体の登録制度)が創設され、円滑な事業承継を支援します。
MIJが提供する3つの具体的なサポート
株式会社MIJは、この制度を活用し、撤退企業を支援事例に基づく形でサポートします。撤退企業の切実な課題解決を重視。
- トラブル回避のための既存業者継続: 撤退後も清掃・設備点検などの協力業者を可能な限り継続調整。管理品質低下を防ぎ、組合の不安解消。
- 管理事業撤退費用面のサポート: 事業譲渡円滑化のため、当面の人件費を補助するなど、費用負担軽減。
- 円滑な引き継ぎと後継会社のマッチング: ネットワークを活かし、組合に最適な後継会社を探し、業務引き継ぎをバックアップ。現行契約条項を優先。
撤退は企業評判を守り、組合に迷惑をかけない形で進めることが重要です。ご検討の企業様はMIJにご相談ください。
まとめ:法改正をマンションの資産価値向上につなげるために
2025年以降のマンション管理適正化法(一部2025年11月28日施行)と区分所有法(2026年4月1日施行)の改正は、管理組合にとって転換点です。
- 2つの法改正: 管理適正化法は管理運営、区分所有法は権利関係を強化。
- 重要なポイント: 長期修繕計画・積立金の厳格化(ガイドライン準拠)、行政指導強化(是正中心)、決議要件緩和(3分の2へ、管理規約優先)。
- 今すぐすべきこと: 現状把握から計画見直し、専門家相談へ。団地建て替え緩和もオプション。
- 管理会社との関係: 2〜3社相見積もりで良好パートナーシップを。
これを好機と捉え、資産価値向上へ。今日から備えを。
免責事項
本記事は、2026年2月時点の法令や情報(改正成立日: 令和7年5月23日)に基づき、一般的な情報提供を目的としています。個別の事案に対する法的助言ではありません。法改正の詳細や対応は、弁護士やマンション管理士にご相談ください。補助金・助成金は自治体の最新情報を確認を。
参考資料
- 国土交通省「マンションの管理の適正化の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第31号)について」(2024年公表、2025年施行), https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000089.html
- 法務省「区分所有法制の改正に関する要綱案」(2025年基準), https://www.moj.go.jp/content/001407337.pdf
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年公表), https://www.mlit.go.jp/common/001389812.pdf
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(2024年改正), https://www.mlit.go.jp/common/001389802.pdf
島 洋祐
保有資格:(宅地建物取引士・管理業務主任者)不動産業界歴23年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

