※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。
20戸以下の小規模マンションの管理組合役員の皆様へ
管理委託費の割高さや役員の担い手不足といった、特有の課題にお悩みではありませんか。適切な管理会社を見つけられなければ、管理品質の低下を招き、大切な資産価値を損なうことにもなりかねません。しかし、どの会社が自物件に適しているのか判断するのは難しいものです。
この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、20戸以下の小規模マンションに最適な管理会社を選ぶための具体的な基準とプロセスを徹底解説します。国土交通省の公的データや法律に基づき、費用を抑える新しい選択肢、相見積もりの実践的なノウハウ、契約前の法的注意点まで網羅。最後まで読めば、信頼できるパートナーを見つけ、管理組合を成功に導くための具体的な行動計画が立てられるようになります。
背景知識:小規模マンション管理の現状と法的義務
まず、なぜ小規模マンションの管理が難しいのか、その背景と法律が求める義務について正しく理解することが、適切な対策を講じる第一歩となります。
20戸以下の管理が難しい3つの理由
小規模マンションの管理には、大規模マンションにはない特有の難しさがあります。多くの理事様が直面する代表的な課題は以下の3つです。
- 戸数あたり管理委託費が割高になる
管理会社に支払う費用には、管理員の人件費や事務管理費といった固定費が含まれます。これを少ない戸数で分担するため、1戸あたりの負担額が大規模マンションに比べて割高になる傾向があります。 - 役員の担い手不足と業務負担の増大
区分所有者が少ないため、理事の役職が数年で一巡してしまいがちです。「誰もやりたがらない」「特定の人が長年務めている」といった状況は、属人化や負担の集中を招きます。本業の傍ら、会計報告や総会運営を行うのは大きな負担です。 - 専門知識(会計・法律・建築)が不可欠
マンション管理には、区分所有法などの法律、日々の会計処理、そして最も重要な長期修繕計画の策定といった高度な専門知識が求められます。専門家のサポートなしにこれら全てを適切に運営するのは極めて困難です。
管理委託の必要性:自主管理との違いと法的根拠
「コストを抑えるために自主管理で頑張る」という選択肢もありますが、法律が求める義務を理解すると、専門家である管理会社へ委託する重要性が見えてきます。
自主管理と委託管理の違い
- 自主管理: 管理組合が、会計、清掃、点検、総会運営などの管理業務をすべて自ら行う方式。コストは抑えられますが、役員の負担が非常に大きく、専門知識不足によるトラブルのリスクがあります。
- 委託管理: 管理業務の全部または一部を、専門のマンション管理会社に委託する方式。コストはかかりますが、専門知識に基づいた安定的な管理運営が期待でき、役員の負担を大幅に軽減できます。
法律(建物の区分所有等に関する法律、通称:区分所有法)では、区分所有者全員で構成される「管理組合」を設立し、建物の管理を行うことを義務付けています。管理会社への委託は、この管理組合の義務を適正に果たすための有効な手段なのです。
管理計画認定制度(令和4年導入、令和5年改正)は、申請日現在で20戸以上の分譲マンションが対象です。認定基準には長期修繕計画(計画期間30年以上、期間内に大規模修繕2回以上含む)の策定が求められ、20戸以下の物件は現在適用外です。20戸以下の小規模マンションは「管理適正化推進事業」など別枠の支援制度を検討する必要があります。
【用語解説】管理費・管理委託費・修繕積立金の違い
費用について正しく議論するため、混同しがちな3つの用語を整理しておきましょう。これらの違いを理解することが、見積もりを正しく読み解く第一歩となります。
| 管理費 | 日常の管理(清掃、共用部の光熱費、管理会社への委託費など)に充てるため、区分所有者が管理組合に支払うお金。 |
| 管理委託費 | 管理業務を委託する対価として、管理組合が管理会社に支払うお金。「管理費」の中から支払われます。 |
| 修繕積立金 | 将来の大規模修繕工事に備えて、管理費とは別に積み立てるお金。計画的な資産価値維持の要です。 |
本記事で「費用の比較」や「見積もり」について議論するのは、主に「管理委託費」に関する内容です。
手続・対応ステップ:適切な管理会社の選定プロセス
課題と法的背景を理解した上で、いよいよ具体的な管理会社の選定プロセスに進みます。失敗しないための基準と、実践的なステップを解説します。
失敗しない!20戸以下向け管理会社の選び方5つの基準
数ある管理会社の中から、自物件に最適なパートナーを見つけるには、明確な評価基準を持つことが不可欠です。特に小規模マンションでは、以下の5つの基準を重視しましょう。管理会社の評価は単純な比較にとどまらず、個別のマンションの状況やニーズに即したものであることが重要です。
| 基準 | チェックポイント |
|---|---|
| 基準1:同規模の実績 | 20戸前後のマンション管理実績が豊富か。ウェブサイトの事例や担当者へのヒアリングで確認します。 |
| 基準2:拠点の近さ | トラブル時に迅速な対応が期待できるか。支店や営業所がマンションから物理的に近い会社が有利です。 |
| 基準3:担当者の専門性 | フロント担当者が「管理業務主任者」の国家資格を保有しているか。専門知識の証明になります。 |
| 基準4:部分委託への柔軟性 | 会計や清掃だけなど、業務を絞った「部分委託」に対応できるか。コスト削減の選択肢になります。 |
| 基準5:見積もりの透明性 | 事務管理費、管理員人件費、清掃費など、項目別に内訳が明示されているか。 |
【新潮流】コストを抑える新しい管理の選択肢
従来の全部委託だけでなく、近年はコストを抑えつつ専門家のサポートを得られる新しい選択肢も登場しています。
-
選択肢1:シェア型管理サービス
複数の小規模マンションが共同で一つの管理サービスを利用する仕組みです。巡回頻度などを調整することで、1組合あたりのコストを抑える効果が期待できます。
【法的要件の確認が必須】:
① サービス提供事業者が『マンション管理適正化法 第2条第2項』に規定する『マンション管理業』に該当する場合、国土交通大臣への登録が法定義務。
② 登録業者か否かは、国土交通省「マンション管理業者名簿」で確認可能:https://www.mlit.go.jp/tochikokensetsu/const/soumoku2_6_et_1.html
③ 登録業者でない場合、管理組合の保護(管理業務主任者、弁済保証金など)が適用されない。
④ ご自身の管理規約で『管理業者委託』が定義・許可されているか、総会決議前に必ず確認してください。管理規約で別段の定めがある場合、その規約が優先されます。
※シェア型の法的評価は組合により異なるため、マンション管理士または弁護士の相談を推奨します。20戸以下の小規模物件は管理計画認定制度の対象外(令和4年改正時点)ですが、シェア型サービス提供事業者の登録状況をe-Gov法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0000000087)で確認してください。 -
選択肢2:IT支援ツールの活用
会計ソフトやコミュニケーションツールを導入し、理事会の業務を効率化する方法です。自主管理に近い形ですが、手間のかかる会計報告などを自動化することで、役員の負担を軽減できます。導入前のデータセキュリティ・契約確認が重要です。こちらも、一部を管理会社に部分委託する形と組み合わせるのが現実的です。
管理会社変更・新規選定の4ステップ
実際に管理会社を選定・変更するプロセスは、以下の4ステップで進めるのが基本です。
- Step1:現状把握と「変更目的」の明確化
まずは理事会で「なぜ管理会社を変えたいのか(新規で選びたいのか)」を明確にします。「コストが高い」「清掃の質が悪い」「担当者の対応が遅い」など、課題をリストアップし、組合としての目的を共有します。 - Step2:候補先の絞り込み(2~3社が現実的)
先の「5つの基準」を基に、インターネットや近隣の実績調査で候補を2~3社に絞り込みます。多くの会社から見積もりを取るのは、対応する管理会社側の負担も大きく、敬遠される可能性があるため現実的ではありません。管理会社側は、管理委託内容の精査および、会計状況、そして1棟全体の管理費等の見積もり作成をするには3-4回ほど現地に足を運び、また清掃会社、EV点検、消防、警備など多岐にわたって外注先会社との打ち合わせを行ったうえで理事会数名との面談も数回こなすため労力がかかります。結論として、2-3社での相見積もりに対しては参加しやすいため、そのくらいが管理会社としても適切です。 - Step3:複数社から「項目別見積もり」を取得
絞り込んだ会社に、現在の管理仕様を伝えた上で「項目別の見積もり」を依頼します。提示された金額だけでなく、サービス内容と担当者の対応力を比較検討することが重要です。見積もり条件を統一し、極端に安い見積もりはリスクがある点に注意してください。 - Step4:総会での決議と承認(普通決议)
契約する会社が決まったら、管理組合の最高意思決定機関である「総会」で議案として上程し、承認を得る必要があります。原則として、区分所有者数および議決権の「各過半数」の賛成(普通決議)が必要です(出典:区分所有法 第39条)。※注:決議の具体的要件は管理規約に別段の定めがある場合、その規約が優先されます(区分所有法第39条但し書き)。
20戸以下マンション管理に関するFAQ
ここまででよく寄せられる質問について、簡潔にお答えします。
Q1. 20戸以下の管理委託費の相場は?
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果」で公表されたデータ(調査時点は平成30年度)によると、20戸以下のマンションにおける1戸あたりの管理委託費の月額平均は17,992円とされています。
ただし、このデータは平成30年度(2018年度)のものであり、2026年現在では上昇している可能性が高いため、参考値としてのみ捉え、必ず相見積もりで実際の相場を確認してください。同統計では、20戸以下マンションの『自主管理率は21.0%』とされており、全部委託が当たり前ではないことも認識しておくべき点です。本データは2018年時点の参考値であり、最新の国土交通省調査(2023年度以降)で確認を推奨します。
Q2. 管理会社を選ぶ上で最も重要な基準は?
5つの基準はどれも重要ですが、特に「同規模マンションの管理実績」を最優先で確認すべきです。小規模物件特有の課題解決ノウハウを持っているかどうかは、管理の質に直結します。次いで、緊急時対応の観点から「拠点の物理的な近さ」も重要です。
Q3. 管理会社との契約に総会決議は必要ですか?
はい、必ず必要です。管理会社との委託契約(初回契約、変更、終了)は、管理組合の重要な業務執行に該当し、総会での決議が法的に求められます(区分所有法第39条)。
【決議要件の確認フロー】:
① 管理規約の『第12条(管理会社への委託)』を確認 → 特別多数決(例:4分の3以上)を要する定めがないか。
② 定めがない場合 → 『普通決議』(区分所有者数および議決権の各過半数)。
③ 定めがある場合 → その定めが優先される。
【注意】:「普通決議=簡単」と誤解しないこと。「各過半数」は「両方の過半数が必要」という意味です。
例)100戸のマンション、議決権が均等の場合:
・区分所有者50戸以上の出席、かつ
・そのうち26票以上の賛成が必要。
具体的な判断が困難な場合は、マンション管理士に相談してください。
実務ヒント:コスト構造と契約時の注意点
ここでは、さらに踏み込んだ費用構造の理解と、契約で失敗しないための法的なチェックポイントを解説します。
管理委託費の構造と相見積もりの注意点
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によれば、マンションの総戸数規模別の管理委託費には明確な傾向が見られます。本データは2018年時点の参考値であり、最新の国土交通省調査(2023年度以降)で確認を推奨します。
| 総戸数 | 月額/戸あたり | 特徴 |
|---|---|---|
| 20戸以下 | 17,992円 | 管理の固定費を少ない戸数で割るため、最も割高な傾向。 |
| 21~30戸 | 15,487円 | 全国平均とほぼ同水準。 |
| 31~50戸 | 13,890円 | スケールメリットが出始め、コスト効率が改善。 |
(出典:国土交通省 平成30年度マンション総合調査結果)
このデータからも、20戸以下のマンションがいかにコスト面で不利かがわかります。だからこそ相見積もりが重要ですが、ここで注意点があります。
【専門家からの注意喚起】過度な相見積もり依頼は敬遠される
管理会社が見積もりを作成するには、現地調査、既存の契約内容の精査、清掃や設備点検などの外注先との調整など、多大な時間と労力がかかります。特に採算性が厳しい小規模物件において、5社も6社も相見積もりを依頼する組合は、管理会社から敬遠され、結果的に良い提案を受けられなくなる可能性があります。候補は2~3社に絞り、誠実な姿勢で交渉に臨むことが成功の鍵です。
契約前に!確認すべき法的ポイント
最終的に契約を結ぶ前には、以下の3点を必ず確認してください。
-
決議要件は必ず管理規約で確認を
総会決議の要件は、区分所有法が原則ですが、管理規約に上乗せの定め(例:特別決議が必要)がある場合があります。契約後に「決議が無効だった」とならないよう、規約の再確認は必須です。 -
標準管理委託契約書との比較
国土交通省が公表している「マンション標準管理委託契約書」(最新版:令和2年改正)は、契約内容の妥当性を測る「ものさし」になります。あわせて「マンション標準管理規約(単棟型)」(最新版:令和3年改正)の「第12条(管理会社への委託)」および「第13条(委託費用)」を確認すると、組合の権利義務がより明確になります。
提示された契約書が、これらの標準形から著しく乖離していないか、特に以下の点を確認してください:
① 管理業務主任者の配置と報告体制
② 管理委託費の項目別明示(事務管理費、人件費、清掃費等)
③ 契約期間と更新・解除条件
④ 損害保険加入(火災、賠償責任)の有無
⑤ 修繕工事の施工実績開示と競争入札要件
提示条件に疑問がある場合は、契約前にマンション管理士または弁護士に相談してください。 -
長期修繕計画の妥当性
優れた管理会社は、目先の管理だけでなく、30年先を見据えた適切な長期修繕計画の策定・見直しを提案してくれます。修繕積立金が将来不足しないか、計画に無理がないか、その提案力も重要な判断材料です。
【特殊ケース】管理会社が事業撤退を示唆した場合の解決策
管理組合だけでなく、管理事業を行う企業側にも課題はあります。特に小規模マンションの管理は採算性が厳しく、事業からの撤退を検討する管理会社も少なくありません。
そのような撤退を検討する企業にとって、管理組合や従業員への影響を最小限に抑えることは大きな課題です。管理会社が経営難で撤退を示唆された場合、以下の対応が考えられます:
① 業界団体や自治体の住宅課、またはマンション管理士会に相談。
② 新規委託先管理会社による引き継ぎ手続きの確認。
③ 補助金申請の代行を積極的に提案できる専門サービスを活用(例: 撤退時のトラブル回避、既存業者の継続支援、事業撤退に伴う負担軽減のための人件費補助など)。
補助金・助成金について:本記事作成にあたり参照した情報には、2026年度の具体的な補助制度の詳細は含まれていませんでした。マンション管理組合向けの支援制度は年度や自治体によって大きく異なるため、最新の正確な情報については、必ず以下の機関に直接お問い合わせください。
・東京都住宅政策本部 https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
・各区の住宅課(区役所)
・公益財団法人 マンション管理センター
通常の管理会社は手間がかかるため補助金の提案を敬遠しますが、積極的に申請代行を行えるサービスを検討すると、管理組合側のメリットも追求できます。2026年度の東京23区などの補助制度については、各自治体に直接確認し、改定に注意してください。具体的なサービス提供企業については、営業内容・契約条件・利益相反リスクを十分に検証した上で判断してください。
まとめ:小規模マンション管理成功の鍵は「適切なパートナー選び」
20戸以下の小規模マンション管理は、「割高な費用」「担い手不足」「専門知識の不足」という三重の課題を抱えています。これらの課題を解決し、資産価値を維持・向上させるためには、管理組合が主体となって、自物件の状況に最適な管理会社という「パートナー」を選ぶことが不可欠です。
選定にあたっては、以下の5つの基準を忘れないでください。
- 同規模マンションの管理実績
- 拠点の物理的な近さ
- 担当者の専門性(管理業務主任者資格)
- 部分委託への柔軟性
- 見積もりの透明性(項目別内訳)
そして、現状把握から総会決議まで、4つのステップを着実に進めましょう。シェア型管理やITツールといった新しい選択肢も視野に入れ、2~3社に絞った上で誠実な交渉を行うことが、信頼できるパートナーと出会うための最も確実な道筋です。この記事が、皆様のマンション管理を成功に導く一助となれば幸いです。
免責事項
本記事は、2026年2月27日時点の法令や情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。特定の物件や個別の状況に対する法的助言を与えるものではありません。
管理会社の選定や契約、管理規約の解釈など、具体的な判断を行う際には、必ず弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。また、補助金や助成金に関する制度は、年度や自治体によって頻繁に変更されるため、最新の情報は必ず管轄の行政機関にご確認ください。
参考資料
- デジタル庁 e-Gov法令検索. 「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000054
- デジタル庁 e-Gov法令検索. 「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)”. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0000000087
- 国土交通省. 「令和5年度マンション総合調査結果」. https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000062.html
- 国土交通省. 「マンション標準管理規約(単棟型)」. https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/index.html
- 国土交通省. 「マンション標準管理委託契約書」. https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/index.html
- 国土交通省「マンション管理計画認定基準の見直し等について」. https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001967968.pdf

