マンション長寿命化工事減税の申請方法【4ステップ完全ガイド2027年まで】

マンション長寿命化促進税制に関する主要な参考資料のリスト。国土交通省の「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」、同省の「マンション管理の新制度がスタート!」、東京都主税局の「マンション長寿命化促進税制」、および国土交通省の「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)(更新)」令和7年11月28日版が挙げられている。これらの資料は、制度の詳細や最新情報を確認するために有用。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンションの大規模修繕を計画中の管理組合役員の皆様へ。適切な手順で「長寿命化工事」を実施し申請することで、翌年度の固定資産税が減額される「マンション長寿命化促進税制」をご存じでしょうか。この制度を活用すれば、マンションの資産価値を維持しつつ、区分所有者の経済的負担を軽減できます。

しかし、「申請手続きが複雑そう」「自分のマンションが対象かわからない」といった不安を感じる方も多いでしょう。この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、減税制度の適用要件から、具体的な申請方法、必要書類、失敗しないための注意点までを4ステップで分かりやすく解説します。計画的な準備を進め、賢く税制優遇を活用するための一助となれば幸いです。

目次

【結論】マンション長寿命化促進税制とは?知っておくべき3つのポイント

マンション長寿命化促進税制は、老朽化するマンションの適切な維持管理と長寿命化を促すために創設された、固定資産税の特例措置です。まずは、この制度の核心となる3つのポイントを押さえましょう。

ポイント1:適切な工事で翌年度の固定資産税が減額される

この制度の最大のメリットは、経済的負担の軽減です。要件を満たす長寿命化工事を完了させ、所定の手続きを行うことで、工事完了の翌年度に課される家屋(専有部分)の固定資産税が、1戸あたり1/6から1/2の範囲で減額されます(出典:国土交通省)。減額率は、地方税法に基づき、マンションが所在する市区町村の条例によって定められます。

ポイント2:申請には「管理計画認定」と「期限内の証明書取得」が必須

減税を受けるためには、単に工事を行うだけでは不十分です。以下の2つの条件をクリアすることが不可欠です。

  1. 管理計画認定の取得: マンション管理適正化法に基づき、長期修繕計画や組合の運営体制が良好であると自治体から「管理計画認定」を受けている必要があります。または、認定取得はしていないものの、自治体から助言・指導を受けて管理組合の運営が改善された「助言指導に係る管理者等の管理組合」であることが必要です。この助言指導とは、マンション管理適正化法に基づく自治体の具体的なアドバイスや指導を指し、認定が困難な組合でも活用可能です。詳細は所在自治体のマンション管理担当課にご相談ください。
  2. 証明書の取得: 工事完了後、3ヶ月以内に、実施した工事が制度の要件に適合することを証明する「大規模の修繕等証明書」などを市区町村から取得しなければなりません。

これらの要件は、手続き上の重要な関門となります。

ポイント3:適用期間は令和9年3月31日までの工事完了分

【2025年4月改正版】マンション長寿命化促進税制の適用期間は、令和5年4月1日から令和7年3月31日(2025年3月31日)までに完了した長寿命化工事が対象でしたが、2025年度税制改正により適用期間が2年間延長され、令和9年3月31日(2027年3月31日)までに完了した工事が対象となりました。この税制優遇には期限があります。工事の計画から完了までには時間がかかるため、制度の活用を検討している管理組合は、早めに準備を開始することが重要です。

この制度は、マンションの適切な維持管理を促し、資産価値の維持・向上を図ることを目的としています。単なる減税だけでなく、マンション全体の価値を高める機会と捉えることが大切です。

あなたのマンションは対象?固定資産税減額の適用要件チェックリスト

ご自身のマンションが減税を受けられるか、具体的な要件を確認してみましょう。以下の4つのカテゴリーすべてを満たす必要があります。なお、この制度は耐震改修工事の減税制度とは異なり、建物の長寿命化に特化した措置です。耐震改修は建物の耐震性を向上させる工事が対象で、適用要件や手続きも別です。混同しないよう注意してください。

マンション自体の要件(築年数・戸数など)

まず、建物そのものが基本的な条件を満たしているかを確認します。

  • 築年数: 新築時から20年以上が経過していること。
  • 総戸数: 総戸数が10戸以上であること。
  • 用途: 区分所有者の専有部分の床面積の2分の1以上が居住用であること。

管理組合の要件(管理計画認定など)

マンションの管理状態が良好であることが求められます。

  • 管理計画認定等: マンション管理適正化法に基づく「管理計画認定」を取得していること。または、認定取得はしていないものの、助言・指導を受けて管理組合の運営が改善された「助言指導に係る管理者等の管理組合」であることが必要です。助言・指導とは、自治体が管理組合に対して行う具体的な改善アドバイスを指し、認定の代替として機能します。認定が難しい場合でも、このルートを活用することで対象となり得ます。
  • 修繕積立金の引き上げ: 令和3年9月1日以降に、修繕積立金の額を管理計画の認定基準以上に引き上げていること。積立金の平均額は、長寿命化工事実施に必要な資金を確保する水準であることが求められます。

工事内容の要件(3つの必須工事)

減税の対象となるのは、過去に1回以上長寿命化工事(外壁塗装等、床防水、屋根防水)を実施しており、今回で2回目以降となる工事です。その際、以下の3種類の工事すべてを含んでいる必要があります(出典:国土交通省)。初回の長寿命化工事ではこれらの3項目をすべて含まなくても、今回の2回目以降の工事で3項目すべてを満たせば減税対象となります。工法・部材は建築工事標準仕様書・同解説(JASS)または建築保保全標準・同解説(JAMS)に適合するものが求められます。

  1. 屋根防水工事
  2. 床防水工事
  3. 外壁塗装等工事

これらは建物の寿命を延ばすために不可欠な工事であり、部分的な補修やいずれか1つだけの工事では減税対象とはなりません。

長期修繕計画の要件(計画期間・積立金)

将来を見据えた計画的な修繕体制が整っていることが重要です。

  • 計画期間: 長期修繕計画の計画期間が30年以上であること。
  • 工事計画: 長期修繕計画の中に、長寿命化工事が2回以上含まれていること。残存期間とは、計画期間の残り部分を指し、そこに2回以上の長寿命化工事が配置されている必要があります。
  • 積立金水準: 長期修繕計画の期間全体を通じて、修繕積立金が不足せず、一時金を徴収する計画がないことが絶対条件です。一時金徴収が予定されている場合、計画的な修繕積立ができていないと判断され、制度の対象外となります。この税制は、継続的な積立金による適切な管理を支援する趣旨からです。

【4ステップで解説】減税申請までの完全ロードマップ

減税を受けるための手続きは、計画的に進める必要があります。全体の流れを4つのステップで確認しましょう。申請の流れは以下の通りです:STEP1: 長寿命化工事の完了 → STEP2: 管理計画認定の取得 → STEP3: 各種証明書の取得(工事完了後3ヶ月以内) → STEP4: 市区町村への減額申告。

STEP1:長寿命化工事の完了(〜令和9年3月31日)

まず、減税対象となる「屋根防水」「床防水」「外壁塗装等」の3つをすべて含む長寿命化工事を、令和9年3月31日までに完了させます。令和7年3月31日までに完了させることが元々の期限でしたが、2025年度税制改正により令和9年3月31日(2027年3月31日)まで延長されました。現在最新の期限は令和9年3月31日です。工事の開始時期は問いませんが、完了期限は厳守する必要があります。

STEP2:マンション管理計画認定の取得

工事の前後を問わず、マンションが所在する自治体から「管理計画認定」を取得します。【重要】2025年4月以降、管理計画認定の取得要件が簡略化されました。減税申告を行う年の1月1日(賦課期日)時点で認定を受けていることが必須のため、工事計画と並行して認定取得の準備を進めましょう。ただし、修繕積立金の見直しは令和3年9月1日以降に実施済みであることが条件です。詳細は所在自治体に確認してください。

STEP3:各種証明書の取得(工事完了後3ヶ月以内)

工事完了後、最も重要な期限が訪れます。完了日から3ヶ月以内に、以下の証明書を市区町村に申請し、取得しなければなりません。この期限を過ぎると、他の要件をすべて満たしていても減税は受けられなくなりますが、要件該当時は自治体の裁量で適用される場合もあります。

  • 大規模の修繕等証明書
  • 過去工事証明書 など

STEP4:市区町村への減額申告

必要な証明書が揃ったら、工事が完了した年の翌年の固定資産税の納税通知書が届いた後、申告期限内に市区町村の資産税担当課へ「固定資産税減額申告書」を提出します。申告は管理組合単位ではなく、納税義務者(区分所有者)ごとに行います。管理組合は証明書の写しを区分所有者に配布するなど、効率化支援が可能です。

減税申請に必要な書類一覧と取得方法

申請手続きでつまずかないよう、必要となる主要な書類と取得方法をまとめました。自治体によって細部が異なる場合があるため、必ず事前に担当窓口にご確認ください。

書類名内容取得・作成のポイント
① 大規模の修繕等証明書実施した工事が減税要件を満たすことを証明する書類。一級建築士や指定確認検査機関などが証明し、市区町村が確認・受理します。工事の仕様書や竣工写真などが必要です。所管の市区町村に申請先を確認してください。
② 過去工事証明書過去に1回以上の長寿命化工事を実施したことを証明する書類。過去の工事の契約書や議事録、竣工図書、施工会社が作成した証明書など、客観的な証拠を準備します。施工会社の書類だけでは信頼性が低い場合があるため、管理組合の議事録などを併用してください。
③ 管理計画認定通知書の写し自治体から管理計画認定を受けていることを証明する書類。自治体から交付された通知書をコピーして添付します。
④ その他、自治体ごとに定められた書類減額申告書、工事請負契約書の写し、修繕積立金の引き上げを証する総会議事録など。市区町村のホームページや担当窓口で、必須書類のリストを必ず確認してください。
減税申請に必要な書類一覧

どのくらい減税される?減額率と計算方法の目安

実際にどれくらいの減税効果が見込めるのか、計算方法と具体例を見ていきましょう。

減額対象と減額率(1/6〜1/2の範囲)

減税の対象となるのは、工事完了の翌年度における居住用専有部分(1戸あたり100㎡相当分まで)に係る家屋の固定資産税です。減額率は、地方税法に基づき、各市区町村が条例で 1/6から1/2 の範囲内で定めています。例えば、東京都23区では1/3が基本となります(出典:東京都主税局、2025年時点確認)。

自治体による違いと確認方法

減額率は全国一律ではありません。ご自身のマンションが所在する市区町村のホームページで「マンション長寿命化促進税制」と検索するか、資産税(固定資産税)担当課に直接問い合わせて、正確な減額率を確認することが不可欠です。

具体的な計算例(シミュレーション)

仮に、あなたの専有部分の固定資産税額(家屋分)が年間12万円、市区町村の条例で定める減額率が「3分の1」だった場合、減税額は以下のように計算されます。

計算式固定資産税額(家屋分)× 減額率 = 減税額
計算例120,000円 × 1/3 = 40,000円
固定資産税の減税額シミュレーション

この場合、工事完了の翌年度に4万円の減税が受けられることになります。これは1戸あたりの金額であり、マンション全体では大きな負担軽減に繋がります。

失敗しないための専門家相談と業者選定の注意点

手続きをスムーズに進め、工事の質を確保するためには、専門家の協力と慎重な業者選定が鍵となります。

相談すべき専門家とその役割(税理士・行政書士・一級建築士)

この制度は複数の専門領域にまたがっているため、必要に応じて専門家への相談を検討しましょう。

  • 一級建築士など: 工事内容が要件に適合しているかを判断し、「大規模の修繕等証明書」を発行します。
  • 行政書士: 「管理計画認定」の申請や、減額申告手続きのサポートを依頼できます。
  • 税理士: 税務全般に関する相談や、減税額のシミュレーション、申告に関する助言を求められます。

工事の見積もりは2〜3社が現実的

大規模修繕のコストを比較するために相見積もりは有効ですが、やみくもに多くの業者へ依頼するのは現実的ではありません。特に20〜40戸程度の中小規模マンションでは、過度な相見積もりは敬遠される傾向にあります。

管理会社や施工会社は、正確な見積もりを作成するために、現地調査、図面確認、協力会社との折衝など、多大な労力をかけています。5社も6社も見積もりを依頼する管理組合は、受注できる可能性が低いと判断され、真剣な提案を受けにくくなる可能性があります。信頼できる業者を2〜3社に絞って、深く検討するのが賢明な進め方です。

見積書で「一式」を避け、詳細な内訳を確認する重要性

業者から提出された見積書を確認する際は、「〇〇工事一式」といった大まかな記載に注意が必要です。どの範囲の、どのような材料・工法で工事を行うのかが不明確であり、後々のトラブルの原因になりかねません。

必ず工事項目ごとの数量、単価、仕様が明記された詳細な内訳のある見積書を提出してもらい、内容を精査することが、適正価格と工事品質を担保する上で非常に重要です。

よくある質問(Q&A)

Q1. 耐震改修工事の減税制度とは違うのですか?

A1. はい、全く別の制度です。 耐震改修工事に伴う固定資産税の減額制度は、建物の耐震性を向上させる工事が対象です。一方、本記事で解説している長寿命化促進税制は、屋根防水・床防水・外壁塗装といった建物の長寿命化に資する工事が対象となります。適用要件や申請手続きも異なるため、混同しないよう注意が必要です。

Q2. 管理計画認定が無くても「助言・指導」を受けていれば対象になりますか?

A2. はい、対象となる場合があります。 原則として「管理計画認定」の取得が要件ですが、認定を受けていない場合でも、自治体からマンション管理適正化法に基づく「助言・指導」を受け、それに基づいて管理組合の運営を改善した場合は、減税の対象となり得ます。助言・指導の詳細や手続きについては、マンションが所在する自治体のマンション管理担当課にご相談ください。管理組合総会での決議(区分所有法第39条に基づく普通決議が原則、ただし規約に別段の定めがあればそれに従う)も必要になる場合があります。

Q3. 申請期限を過ぎてしまったらどうなりますか?

A3. 残念ながら、減税は受けられなくなります。 特に「工事完了後3ヶ月以内」の証明書取得期限は厳格です。この期限を1日でも過ぎてしまうと、他の要件をすべて満たしていても制度の適用は認められません。工事の工程管理と並行して、申請スケジュールを管理することが極めて重要です。

Q4. 一時金を徴収する計画があると、なぜ対象外になるのですか?

A4. 計画的な修繕積立ができていないと判断されるためです。 この税制は、将来にわたって計画的に修繕積立金を集め、適切な維持管理を継続できる優良な管理組合を支援する趣旨があります。一時金の徴収は、その場しのぎの資金集めと見なされ、「計画的な管理が行われていない」と判断されるため、減税の対象外となります。

まとめ:計画的な準備でマンションの資産価値と財産を守ろう

マンション長寿命化促進税制は、区分所有者の負担を軽減しつつ、建物の寿命を延ばし資産価値を維持するための強力な支援策です。

この制度を最大限に活用するための鍵は、計画性です。

  1. 要件の確認: まずは自身のマンションが築年数や管理計画認定などの要件を満たすか確認する。
  2. 期限の遵守: 工事完了期限(令和9年3月31日)と、完了後3ヶ月以内の証明書取得期限を厳守する。
  3. 計画的な資金計画: 一時金に頼らない、長期的な視点での修繕積立金計画を立てる。
  4. 専門家との連携: 必要に応じて建築士や行政書士、税理士といった専門家の協力を得る。

大規模修繕は管理組合にとって大きな事業ですが、この減税制度を活かすことで、より良い形で次世代へと資産を引き継ぐことができます。まずは、あなたのマンションが所在する市区町村の担当窓口へ問い合わせることから始めてみましょう。

免責事項

本記事は、2025年12月20日時点の法令や公開情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。特に国土交通省が令和7年11月28日に公表した「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)(更新)」を踏まえ、適用期間延長(2027年3月31日まで)の最新情報を反映しています。制度の適用にあたっては、必ず最新の法令や、お住まいの自治体が公表する最新の情報をご確認ください。また、最終的な税務判断については、税務署または税理士等の専門家にご相談ください。個別の契約条項や管理規約の内容が、本記事の情報に優先します。2025年以降の改正を確認の上、税務署または税理士等の専門家にご相談ください。


参考資料

  • 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000085.html
  • 国土交通省「マンション管理の新制度がスタート!」
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/conten/001471416.pdf
  • 東京都主税局「マンション長寿命化促進税制」
    https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/kotei_tosi.html#k_13
  • 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)(更新)」令和7年11月28日版
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000121.html

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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