マンション建替えが失敗・頓挫する5つの原因と対策|宅建士が最新法改正まで解説

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

老朽化したマンションの建替えは、区分所有者の合意が要ります。計画が止まる理由は、賛成者が少ないことだけではありません。母数の数え方、決議に書く四つの事項、招集の期間、費用の見通し、事業の相手、がそれぞれ別の壁になります。

目次

建替えが頓挫する5つの原因|賛成不足だけではない

  • 母数。建替えは、出席者の割合ではありません。
  • 中身。設計、概算、分担、新しい住戸の帰属を、決議で定めます。
  • 期間。通知は少なくとも二月前、説明会は一月前です。
  • お金。修繕積立金の月額平均を、建替えの持ち出し額としては使いません。
  • 相手。事業の協力者が途中で降りることと、管理会社の見積もり辞退は、別の話です。

この記事では、2026年9月時点の区分所有法に沿って、この五つを分けます。建替え費用の金額は、公的な単価表がないため仮の相場では判断できません。個別の計画は、弁護士と、その建物の規約で確認してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。決議は、自組合の管理規約に従ってください。

賛成は、全員の各5分の4

区分所有法第62条第1項の建替え決議は、議決権を有しない者を除く区分所有者と、その議決権の各5分の4以上です。数える相手は、その集会に出席した人ではありません。議決権を持つ区分所有者の全体です。

建替えが止まりやすい五つの確認
  • 頭数と議決権の、両方です。一方が5分の4でも、他方が足りなければ決議になりません。
  • 5分の4は、規約で下げられません。普通決議の第39条を、建替えに使いません。
  • 第39条の普通決議は、別段の定めがなければ、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)およびその議決権の各過半数です。建替えはこの条ではありません。

書面や代理人で議決権を行使した人は、第39条第2項により、出席した人数と議決権に入ります。建替えの5分の4は出席者の割合ではないので、賛成の書面を出していない議決権は、賛成に数えません。その議決権は母数に残ります。

4分の3になるのは、五つの基準のとき

建物が第62条第2項の各号のいずれかに該当するときだけ、5分の4が各4分の3になります。古いこと、大規模修繕の時期であること、積立金が足りないことは、この各号そのものではありません。

建替えが4分の3になる五つの安全性基準
  • 耐震。地震に対する安全性について、法務大臣が定める基準に適合していないとき。
  • 火災。火災に対する安全性について、同じように基準に適合していないとき。
  • 外壁。外壁などが剥離して落下し、周辺に危害が生ずるおそれとして、法務大臣が定める基準に該当するとき。
  • 配管。改修が著しく困難なものとして法務省令で定める配管が、衛生上有害となるおそれの基準に該当するとき。
  • 移動。バリアフリーの基準に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。

基準を定めるのは法務大臣で、定めるときは国土交通大臣と協議します。該当するかは、築年数の一言では決まりません。議案の前に、どの号に当たるかを資料で示します。当たらない建物は、各5分の4のままです。

決議に書く四つの事項

第62条第4項は、建替え決議で次を定める、としています。第5項は、費用の分担と、新しい区分所有権の帰属を、各区分所有者の衡平を害しないように定める、としています。

  • 設計の概要。新たに建築する建物の概要です。
  • 費用の概算。取り壊しと、新しい建物の建築に要する費用です。
  • 費用の分担。誰が、どの割合で負担するかです。
  • 帰属。新しい建物の区分所有権を、誰にどう帰属させるかです。

この四つが空欄の「建替えを進める」という一行は、第62条第4項の決議になりません。分担の割合だけが一部の区分所有者に偏る案は、第5項の衡平の問題になります。賛成を集める前に、四つの欄を埋めた議案にします。

通知は二月前、説明会は一月前

建替えを会議の目的にする招集は、通常の一週間ではありません。

建替え決議の招集、説明会、催告の期間
  • 第62条第6項。通知は、会日の少なくとも二月前です。この期間は、規約で長くできます。短くはできません。
  • 標準管理規約の二週間も、この二月を縮める根拠にはなりません。建替えの招集は、第35条の一週間より長い特別の期間です。
  • 第62条第8項。招集した者は、会日の少なくとも一月前までに、通知した事項を説明する説明会を開きます。

二月前の通知には、会議の目的と議案の要領に加え、第7項の事項を載せます。

  • 建替えを必要とする理由
  • 建替えをしない場合に、建物の効用を維持し、または回復する費用の額と内訳
  • 修繕の計画があるときは、その内容
  • 修繕積立金として積み立てられている金額

決議のあと、招集した者は、賛成しなかった区分所有者へ、決議の内容で建替えに参加するかを回答するよう、遅滞なく書面で催告します。回答の期間は、催告を受けた日から二月です。期間内に回答しない人は、参加しない回答をしたものとみなされます。この催告を、招集の通知と同じ書面にはしません。

積立金の平均は、建替えの予算ではない

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、駐車場使用料などからの充当を除く、1戸あたり月額の修繕積立金の平均は13,054円です。充当を含む平均は13,378円です。これは月々の積立の平均であり、建替えで各戸が持ち出す金額ではありません。

修繕積立金の平均と建替え費用を分けて見る図
  • 建替えの費用は、決議に書く概算と、各戸の分担です。全国平均の月額を、その概算の代わりにしません。
  • 容積に余裕があるかは、新しい住戸を売って費用を埋める話です。余裕がない物件は、売上が立たない前提で分担を書きます。売上を仮に置いた概算と、置かない概算は、別の列です。
  • 管理費の平均(駐車場を含む全国で17,103円など)は、修繕積立金とも、建替えの分担とも別の数字です。

事業の協力者は、採算が立たない案件から降りることがあります。降りる理由を、管理会社が日常の委託を断る理由と混ぜません。建替えの相手は、設計と施工と合意形成を担う事業者です。日常の管理委託の見積もりは、別の依頼書です。

  • 同じ条件の依頼を、2〜3社に出します。5社、6社へ同時に出すと、20戸から40戸程度では辞退が増えます。これは実務上の傾向であり、公的な統計ではありません。
  • 現地を何回見るかは、各社の見積もりの条件です。回数をこちらで決めて、その回数に満たない社を不合格にはしません。

建替えを進めるための組合を別に作る道は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律の手続です。区分所有法第55条の管理組合法人の解散ではありません。建物が残るあいだ、第3条の管理組合は、建替えの話合いだけでは消えません。

所在が分からない人は、裁判のあとで母数から外れる

連絡が取れない区分所有者がいると、5分の4に届かないことがあります。除ける相手は、招集に返事がなかった人全員ではありません。

所在不明の区分所有者を母数から外す手続
  • 第38条の2第1項。区分所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき、他の区分所有者または管理者が裁判所に請求し、その人を除いて集会の決議ができる旨の裁判を求めることができます。
  • 第2項。その裁判で所在などが不明とされた人は、集会の議決権を有しません。第62条の5分の4は、議決権を有しない者を除いた母数です。裁判のあとで、その人は母数から外れます。
  • 返事がない、転居の届出がない、というだけでは、この裁判があったことにはなりません。申立の前に、調査で誰かと所在が分からないことを残します。

止まり方は、この五つに分かれる

タイトルの五つの原因は、次の止まり方です。対策は、それぞれ別の資料です。

  • 母数の取り違え。出席者の5分の4で足りる、と思い込む。対策は、議決権を持つ全員の名簿で、頭数と議決権の両方を数えることです。
  • 4分の3の早合点。古いから下げられる、と思い込む。対策は、第62条第2項の五つの基準のどれに当たるかを、議案の前に示すことです。当たらなければ各5分の4です。
  • 決議の空欄。建替えを進める、の一行で足りると思い込む。対策は、設計の概要、費用の概算、分担、帰属の四欄を埋めることです。
  • 期間の不足。通常総会の一週間で招集する。対策は、少なくとも二月前の通知と、一月前の説明会です。規約が二月より長いときは、その期間です。
  • お金の置き方。修繕積立金の月額平均を、建替えの予算にする。対策は、概算と各戸の分担を決議に書き、積立金の残高は通知の事項として別に示すことです。

議案の前に揃えるもの

五つが揃う前の説明会は、賛成のお願いだけになります。資料は次の束です。

  • 登記と、区分所有者の名簿。所在が分からない人は、調査の経過を別紙にします。
  • 長期修繕計画と、修繕積立金の残高。通知の第7項に、残高を書きます。
  • 建替えをしない場合の、効用を維持する費用の内訳。
  • 五つの基準のどれに当たるかの資料。当たらなければ、各5分の4と書きます。
  • 設計の概要、費用の概算、分担、帰属の四欄。空欄は未記入のまま残し、ゼロ円としては扱いません。

助成は、建替えそのものに全国共通の金額表がありません。自治体が当該年度の要領を出しているかは、その自治体の公式サイトで確認します。要領にない金額を、分担の概算から引かないでください。

契約の終了を打診されたときに先に見る条項

管理会社から日常の委託契約の終了を打診されたときは、建替え決議とは別に、次を確認してください。

  • いまの管理委託契約書にある、解約の予告期間
  • 総会で委託契約を決議するときの、管理規約の条項

委託の終了は、別段の定めがなければ第39条の普通決議の範囲です。建替えの各5分の4を、委託の解約には使いません。

決議のあとに起きること

建替え決議があっても、その日に取り壊しは始まりません。賛成しなかった区分所有者(承継人を含みます)への手続が、先にあります。

  • 催告。招集した者は、遅滞なく、決議の内容で建替えに参加するかを、書面で回答するよう催告します。相手の承諾があれば、電磁的方法でも催告できます。
  • 回答。催告を受けた日から二月以内です。この期間に回答しない人は、参加しない回答をしたものとみなされます。
  • 売渡しの請求。二月が過ぎたあと、賛成した各区分所有者、参加すると回答した各区分所有者、または全員の合意で指定された買受指定者は、期間満了の日から二月以内に、参加しない人へ、区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すよう請求できます。
  • 明渡しの猶予。明渡しで生活上著しい困難が生ずるおそれがあり、かつ、建替えの遂行に甚だしい影響を及ぼさない顕著な事由があるときは、裁判所は、その人の請求により、代金の支払または提供の日から一年を超えない範囲で、明渡しの期限を許与できます。
  • 二年の着手。決議の日から二年以内に取り壊しの工事に着手しないときは、売り渡した人は、その期間の満了から六月以内に、支払われた代金に相当する金銭を提供して、権利を売り渡すよう請求できます。

時価の鑑定、買受指定者の選び方、明渡しの猶予に当たるかは、この記事の一般論では決められません。決議の日までに、売渡しの資金を誰が用意するかを、分担の欄と別に書いておきます。

よくある質問

Q. 古いマンションは、4分の3で建替えを決められますか。
A. 古さだけでは、各4分の3になりません。第62条第2項の五つの基準のいずれかに該当するときだけです。該当しなければ、議決権を持つ全員の各5分の4です。

Q. 所在が分からない人を、最初から母数の外にできますか。
A. 第38条の2の裁判で、所在などが不明とされた人が、議決権を有しない扱いになります。返事がないだけでは外れません。

Q. 最初にどの書類を見ますか。
A. 管理規約、区分所有者の名簿、修繕積立金の残高、長期修繕計画です。5分の4は規約で下げられません。規約に別段の定めがある事項は、その定めに従ってください。

まとめ

  • 建替え決議は、議決権を有しない者を除く区分所有者と議決権の各5分の4です。出席者の割合ではありません。
  • 各4分の3になるのは、第62条第2項の五つの基準のいずれかに該当するときだけです。
  • 決議では、設計の概要、費用の概算、分担、帰属を定めます。分担と帰属は衡平を害しないようにします。
  • 通知は少なくとも二月前、説明会は少なくとも一月前です。決議のあと、賛成しなかった人へ参加の有無を書面で催告します。
  • 13,054円は、駐車場充当を除く修繕積立金の月額平均です。建替えの持ち出し額ではありません。

免責事項本記事は2026年9月時点の区分所有法に基づく一般的な説明であり、個別の建替えの助言ではありません。安全性の基準への当てはめ、所在不明の裁判、費用の分担は、弁護士と当該年度の自治体の要領で確認してください。通知の二月は、規約で長くしている組合はその長い期間に従ってください。

島 洋祐

株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

建物管理に関するお悩みはお気軽にご相談下さい!
大手建物管理会社では対応が難しい自主管理物件や小規模マンションにも、当社は的確なサポートを提供します。
規模に関わらず、管理組合様のニーズに寄り添い、資産価値の維持・向上に貢献する最適な管理プランをご提案。
長期的な安定と快適な居住環境づくりを全力でサポートいたします。

マンション管理のこと、 どんな小さな疑問でも
大丈夫です!

どんな些細なことでも構いません。管理費の最適化や修繕計画、住民トラブルの対応まで、
少しでも気になることはMIJまでお気軽にご相談ください!

相談は無料です!マンション管理のことは
何でもご相談ください!

03-5333-0703 電話で相談する

営業時間:10:00~18:00
平日、土日も営業(年末年始・お盆を除く)