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マンション建替えが失敗・頓挫する5つの原因と対策|宅建士・管理業務主任者が徹底解説
老朽化したマンションの建替えは、区分所有者にとって喫緊の課題ですが、その道のりは決して平坦ではありません。実際、多くの計画が合意形成の段階で頓挫しています。なぜマンションの建替えはこれほど難しいのでしょうか。
本記事では、宅地建物取引士・管理業務主任者の視点から、マンション建替えが失敗する典型的な5つの原因を一次資料に基づき解説します。また、管理組合が取り組むべき具体的な対策と、管理業界の裏側にある「見積もりの罠」についても触れていきます。
※本記事はマンション管理・コンサルティングを行う株式会社MIJが、自社の見解とサービス情報を含めて作成したものです。一部に自社サービスの紹介を含むため、広告記事としての性格を有します。また、本記事は2026年9月12日時点の公表法令・資料に基づいています。
マンション建替えが直面する根深い「5つの壁」
【法の壁】区分所有法が定める「5分の4」の合意形成というハードル
最大の障壁は、法律が定める厳格な合意形成要件です。
(建替え決議) 第六十二条 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、(中略)建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。 (出典:建物の区分所有等に関する法律第62条1項)
この「頭数」と「議決権」の両方で80%以上の賛成を必要とする要件は、個人の判断で可能なリフォームとは根本的に異なります。なお、区分所有法第39条は「法律又は規約に別段の定めがない限り」過半数で決すると定めていますが、建替え決議は法的な特別多数要求が強く、管理規約や重要事項説明書の定めが本記事の一般論に優先する場合があるため、個別の確認が不可欠です。なお、2025年の法改正(2026年4月施行)により、耐震性不足など客観的な理由がある物件については、この要件が4分の3に緩和される特例が設けられています。
【お金の壁】建築費高騰と「持ち出し金」の増大
近年の建築資材費や人件費の高騰は資金計画を直撃しています。国土交通省「令和5年度マンション総合調査」によれば、駐車場使用料等の充当額を除く戸当たり修繕積立金の平均額は13,054円であり、建替え費用を賄うには不足するケースがほとんどです。容積率に余裕がない物件では、新たな住戸の販売収益が見込めず、多額の「持ち出し金」が発生することが頓挫の主因となります。
【事業者の壁】デベロッパーの撤退リスク
建替えには専門知識を持つ事業協力者(デベロッパー等)が不可欠ですが、採算が見込めない立地や規模の案件では、事業者が参画に消極的であったり、途中で撤退したりするリスクがあります。特に郊外型や既存不適格物件ではこの傾向が顕著です。
【情報の壁】複雑な補助金制度と専門性
自治体の助成制度は非常に複雑です。例えば、東京都の「マンション建替え等に伴う助成制度(都市居住再生促進事業)」では、建替タイプに応じて区市が行う助成額の上限が1戸当たり150万円等と細かく規定されています。これらは年度や自治体ごとに要綱が改定されるため、最新の公式情報を専門家(マンション管理士等)と確認する必要があります。※上記の助成内容は東京都の例です。他の自治体でも独自の助成制度を設けている場合がありますが、要件・金額はそれぞれ異なるため、必ずお住まいの自治体にご確認ください。
【無理解の壁】管理会社を疲弊させる「NG行動」
後述する「過度な相見積もり」など、管理組合側の無理解な行動が、協力者であるはずの管理会社を遠ざけてしまうケースが多々あります。
【業界の裏側】なぜ「5社以上の相見積もり」は無視されるのか
「条件を比較するために多くの会社に見積もりを依頼する」ことは一見正しいように思えますが、管理業界の実務(特に20戸〜40戸程度の小規模物件)では逆効果になる懸念があります。これは公的統計こそ存在しませんが、多くの実務者が直面する現実です。
見積もり作成の膨大なコスト
管理会社が適切な見積もりを出すには、3〜4回の現地調査、清掃・EV点検・消防設備等の外注先との調整、会計状況の精査、理事会との面談数回など、多大な労力がかかります。受注確率が極端に下がる「5社以上の一斉依頼」は、事業者から「手間だけかかる可能性の低い案件」と見なされ、敬遠されるリスクを高めます。
「2〜3社」への絞り込みが成功の鍵
本気で検討していることを示すためにも、実績や企業情報をリサーチした上で「2〜3社」に絞って依頼することが推奨されます。MIJでは、この範囲の相見積もりであれば積極的に参加し、具体的な提案を行います。
建替え頓挫を回避する3つのステップ
- 現実的な資金シミュレーションと透明性 修繕積立金の現状(平均13,054円)と実情を比較し、甘い見通しを排除した情報開示を行います。
- 信頼できる事業協力者の選定 実績だけでなく、合意形成支援や自治体との交渉能力を重視してパートナーを選びます。
- 補助金の活用と専門家への相談 補助金申請は手間がかかるため、多くの管理会社は嫌がりますが、MIJでは条件に合致する場合、積極的に申請代行を提案します。
マンション建替えに関するFAQ
Q. 所在不明の区分所有者がいて5分の4に届きません。
A. 2025年の法改正(2026年4月施行)で創設された制度を活用できます。 「建物の区分所有等に関する法律」第38条の2に基づき、裁判所への申し立てと認定を経て、所在不明者の議決権を総数から除外した上で決議することが可能になりました。ただし、この手続きは自動的に認められるものではなく、弁護士等の専門家の関与が実質的に不可欠です。
Q. 専有部の配管更新、SRCT工法と全交換ではどちらが安い?
A. 特定の条件下では、SRCT工法が約40%安くなる事例があります。 SRCT工法は配管を研磨・コーティングする技術で、壁や床を壊さないため内装復旧費を抑えられます。ただし、この数値は特定企業の施工例に基づく参考値であり、配管の劣化状況により全交換が必要な場合もあります。
【管理事業者様へ】円滑な事業承継・撤退を支援します
管理事業の継続が困難な経営者様向けに、MIJでは以下のソリューションを提供しています。
- 撤退時のトラブル回避: 管理組合との協議や契約手続きを円満に代行します。
- 既存業者の継続: 清掃や点検等の地元の協力会社との契約を可能な限り維持し、現場を守ります。
- 費用面のサポート: 撤退に伴う当面の人件費補助など、具体的なコスト負担を支援します。
※既存契約の解約・承継は、現契約の予告条項および管理規約が最優先され、総会決議が必要です。
免責事項
本記事は、2026年9月12日時点の法令・公的資料に基づき一般的な情報提供を行うものです。個別具体的な案件への法的助言には該当しません。実際の建替え計画や契約にあたっては、必ず弁護士・マンション管理士等の専門家にご相談ください。各マンションの管理規約および管理委託契約書の条項は、本記事の一般論に優先します。
出典・参考文献
- 建物の区分所有等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」(2024年6月21日公表)
- 法務省「改正・建物の区分所有等に関する法律 新旧対照条文」
- 東京都住宅政策本部「マンション建替え等に伴う助成制度(都市居住再生促進事業)」公式サイト(2026年アクセス時点の令和6年度制度情報)
- 大木祐悟「マンション建替えの課題に関する論文」(日本不動産学会誌, 2019年)
島 洋祐
株式会社MIJ 代表 / 不動産コンテンツ監修者 宅地建物取引士 管理業務主任者 不動産業界歴 23年不動産投資歴 15年会社経営 11年 売買・賃貸・管理・一棟リフォームを一通り経験した不動産のプロフェッショナル。自社不動産ブログにてSEOキーワード「東京 マンション 買取」および「マンション管理会社 東京」で検索順位1位を獲得。現場経験と情報発信の両面から、読者に正確・実践的な不動産情報をお届けします。

