第三者管理者方式にすると管理組合の権限はどうなる?不安解消の完全ガイド

第三者管理者方式における監視体制の重要ポイントを3つのパネルで紹介。監事の設置、定期的な業務報告の義務化、外部監査の活用による多層的なチェック体制を視覚的に説明しています。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

目次

第三者管理者方式にすると管理組合の権限はどうなる?

役員のなり手不足や高齢化を背景に、マンション管理の新たな選択肢として「第三者管理者方式」が注目されています。しかし、「導入すると管理組合の権限がなくなって、管理会社にすべてを乗っ取られてしまうのでは?」といった不安の声をよく耳にします。

結論から申し上げますと、第三者管理者方式を導入しても、管理組合や組合員の基本的な権限はなくなりません。日常的な管理業務は外部の専門家に委託しますが、予算の承認や大規模修繕の実施といった重要事項の最終的な決定権は、引き続き管理組合(総会)が保持します。

この記事では、宅地建物取引士の視点から、第三者管理者方式における権限の仕組み、管理組合に残る権限と監視機能、そして導入で失敗しないための実務上の注意点を、国土交通省のガイドラインなどの一次情報に基づいて分かりやすく解説します。なお、本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対する法的助言ではありません。導入を検討される際は、専門家にご相談ください。

結論:第三者管理者方式で管理組合の権限はなくならない

第三者管理者方式は、管理組合の権限を「なくす」のではなく、「役割を分担する」仕組みです。役員の負担を軽減しつつ、管理の専門性を高めることを目的としています。権限の所在について、まずは全体像を把握しましょう。

日常業務は委託、重要事項の決定権は組合が保持

この方式の核心は、権限の分離にあります。

  • 委託する権限: 清掃、点検、小修繕、管理費の収納といった日常的な管理業務の「執行権」を、マンション管理士などの外部専門家(第三者管理者)に委託します。
  • 保持する権限: 年間の活動方針や予算の承認、管理規約の変更、大規模修繕工事の実施といった、マンションの資産価値に直結する重要事項の「意思決定権」は、管理組合の総会が持ち続けます。

つまり、外部管理者はあくまで管理組合(総会)の方針に従って業務を執行する立場であり、管理組合がその監督権を失うことはありません。(出典:国土交通省「外部管理者方式の活用に向けたガイドライン」、p.12)

組合員の基本的な権利(総会参加など)も変更なし

区分所有者である組合員一人ひとりの基本的な権利も、第三者管理者方式の導入によって何ら変更はありません。具体的には、以下の権利が維持されます。

  • 総会に出席し、議決権を行使する権利
  • 管理組合の会計報告などを閲覧する権利
  • 役員(監事など)を選任・解任する権利
  • 外部管理者の選任・解任を決議する権利

むしろ、専門家が管理を担うことで、これまで役員任せになりがちだった管理状況が可視化され、一般の組合員がより関心を持ちやすくなるという側面もあります。

第三者管理者方式とは?導入に必要な法的プロセス

制度の概要と、導入するために不可欠な法的手続きについて正確に理解しておくことが、トラブルを避ける第一歩です。2011年の区分所有法改正により居住区分所有者への限定が撤廃され、2016年の改正で外部専門家の役員選任が可能となった背景も、この方式の基盤です。(出典:建物の区分所有等に関する法律)

区分所有法に基づく「管理者」を外部専門家が担う制度

まず、重要な用語を整理しましょう。

  • 管理者: 区分所有法で定められた、管理組合を代表し、その業務を執行する者。通常は理事長が就任しますが、規約で定めることにより法人や外部の専門家も就任できます。
  • 第三者管理者: 区分所有法上の「管理者」に、理事長ではなく、マンション管理士や管理会社といった外部の専門家が就任する管理形態、またはその専門家自身を指します。

つまり、第三者管理者方式とは、法律で定められた「管理者」の役割を、組合内部の役員ではなく、外部の専門家に担ってもらう仕組みです。主に高齢化進行の組合や投資用・リゾートマンションなどで適用が検討されます。(出典:国土交通省「マンション標準管理規約」)

導入には規約改正の「特別決議」が必須

第三者管理者方式を導入するには、マンションの憲法ともいえる「管理規約」の変更が不可欠です。

(規約の設定、変更及び廃止)
第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

(出典:建物の区分所有等に関する法律 第三十一条)

この規約変更には、「特別決議」という、極めて重い合意形成が必要です。ただし、個別の管理規約に別段の定めがある場合はそちらが優先されます。

  • 普通決議: 区分所有者数および議決権の各過半数の賛成で可決。(出典:区分所有法 第三十九条)
  • 特別決議: 区分所有者数および議決権の各4分の3以上の賛成で可決。

安易な多数決で導入できる制度ではなく、多くの組合員の賛同がなければ実現しない、非常にハードルの高い手続きが求められます。

【権限の分離】委託される業務と管理組合に残る権限

「権限がなくなる」のではなく、「権限が分離する」というのが実態です。具体的にどのような業務が委託され、何が管理組合に残るのかを明確に見ていきましょう。

管理規約で定める業務範囲の例として、以下のような規定が一般的です(規約例として記載):

管理者は、管理組合を代表し、その業務として組合員のために、第△条に定める業務(大規模修繕工事の実施、管理費等の額の変更などを除く。)を行う。

外部管理者に委託(委譲)される主な業務

これらは主に、日常的な管理運営に関する「執行業務」です。

  • 管理費、修繕積立金等の収納・保管・支出
  • 清掃、設備点検、植栽管理などの維持管理業務の業者手配
  • 小規模な修繕の実施
  • 総会で承認された予算の執行
  • 管理組合の会計・収支報告書の作成

管理組合・総会に残る重要な権限

これらは、マンションの資産価値や組合員の負担に直接影響する「意思決定権」です。

  • 予算・決算の承認: 1年間の管理組合の活動方針と、その結果を最終承認する権限。
  • 管理規約の改正: マンションのルールそのものを変更する最高権限。
  • 管理費・修繕積立金の額の変更: 組合員の金銭的負担を決定する重要な権限。(出典:国土交通省「マンション標準管理規約」、p.91)
  • 大規模修繕工事の実施決定: 多額の費用がかかる工事の実施や、業者選定を最終決定する権限。(出典:国土交通省「外部管理者方式の活用に向けたガイドライン」、p.12)
  • 外部管理者の選任・解任: 管理を委託する専門家を選び、その働きぶりに問題があれば交代させる権限。

主な2つの運営形態とそれぞれの監視体制

第三者管理者方式には、主に2つの運営形態があります(理事・監事外部専門家型を除き)。どちらを選ぶかによって、理事会の役割や監視の仕組みが異なります。

外部管理者理事会監督型:理事会が監視役となる

これは、理事会を残しつつ、その役割を「業務執行」から「外部管理者の監督」へとシフトさせる方式です。

  • メリット: 区分所有者で構成される理事会がチェック機能を担うため、管理の透明性を確保しやすい。組合員の意見を外部管理者に伝えやすい。
  • デメリット: 監督役とはいえ理事会役員の負担が一定程度残る。外部管理者と理事会の間で意見が対立する可能性がある。

この形態は、役員の負担は減らしたいが、組合運営への主体的な関与は続けたいという管理組合に向いています。(出典:国土交通省「外部管理者方式の活用に向けたガイドライン」、p.8)

外部管理者総会監督型:理事会を廃止し、総会が直接監督する

これは、理事会そのものを廃止し、年に1回などの定時総会が直接、外部管理者を監督する方式です。

  • メリット: 役員のなり手不足を根本的に解消できる。意思決定のプロセスがシンプルになる。
  • デメリット: 総会が唯一のチェック機関となるため、組合員の関心が低いと監視機能が形骸化するリスクが高い。日常的な問題への対応が遅れる可能性がある。

この形態を選ぶ場合は、後述する「監事」の役割が極めて重要になります。役員の負担をゼロに近づけたい場合に検討されますが、管理の丸投げ状態に陥らないよう、厳格な監視体制の構築がセットで必要です。(出典:国土交通省「外部管理者方式の活用に向けたガイドライン」、p.12)

管理組合の「監視機能」をどう機能させるか?

権限を委託する以上、その業務が適切に行われているかをチェックする「監視機能」の構築が、第三者管理者方式の成否を分ける最大のポイントです。

重要な役割を担う「監事」の設置

理事会を廃止する「総会監督型」はもちろん、理事会が残る「理事会監督型」でも、監事の設置は非常に重要です。2024年3月29日に改定された国土交通省のガイドラインでも、管理者を監督する監事の設置を促すことが柱の一つとされています。(出典:国土交通省「外部管理者方式の活用に向けたガイドライン」2024年3月29日改定)

監事は、管理組合の会計や業務執行状況を監査し、不正がないかをチェックする役割を担います。組合員の中から選任するほか、より客観的なチェックを期待して、外部のマンション管理士や弁護士などに監事を依頼することも有効な選択肢です。(出典:国土交通省「マンション標準管理規約」)

外部管理者からの定期的な業務報告

外部管理者に、管理組合(理事会や監事、総会)に対して定期的な業務報告を義務付けることが不可欠です。

  • 月次報告: 毎月の収支状況、管理業務の実施内容、未収金の状況などを書面で報告させる。
  • 年次報告: 1年間の業務全体を総括し、決算報告とともに総会で説明させる。

これらの報告内容を厳しくチェックし、不明な点があれば必ず説明を求める姿勢が、外部管理者の規律を保ちます。報告の電子保管による情報開示も、透明性を高める一例です。

外部監査の活用による二重チェック体制

特に会計の透明性を確保するため、外部の公認会計士や監査法人による会計監査を定期的に導入することも、有効な監視手段です。これにより、専門的な視点から不正や誤りを発見しやすくなり、外部管理者に対する強力な牽制となります。

組合員(区分所有者)の権利と果たすべき役割

第三者管理者方式は「役員任せ」「管理会社任せ」を解消するための手段であり、組合員が「他人事」でいることを許容するものではありません。組合員一人ひとりに残された権利と果たすべき役割があります。

総会での議決権は最大の権利

前述の通り、予算の承認や大規模修繕の決定など、重要事項の意思決定は総会で行われます。総会への出席(または委任状・議決権行使書の提出)は、組合員としての最も重要かつ強力な権利です。外部管理者の提案が妥当かどうかを判断し、自らの意思を表明することが求められます。

外部管理者の解任・交代も総会で決議可能

もし外部管理者の業務遂行能力に問題があったり、不正が疑われたりする場合には、管理組合は総会の決議によって、その外部管理者を解任・交代させることができます。ただし、現行管理委託契約の条項が最優先され、解任には契約上の制約(例: 通知期間、違約金)が伴う場合があるため、専門家相談をおすすめします。これは、管理組合が最終的なコントロール権を握っていることの証左です。

収支報告などの情報開示を求める権利

組合員は、管理規約や法律に基づき、管理組合の会計帳簿や議事録などの閲覧を請求する権利を持っています。外部管理者が作成した報告書に疑問があれば、この権利を行使して情報の開示を求め、自らチェックすることが可能です。

導入で失敗しないための3つの重要注意点

第三者管理者方式は有効な解決策となり得ますが、安易な導入はかえって問題を深刻化させる恐れがあります。実務上の重要な注意点を3つ挙げます。

注意点1:安易な導入はNG!規約変更は慎重に

一度、外部管理者に広範な権限を与える規約改正を行ってしまうと、後から「やはり業務範囲を狭めたい」と思っても、再び総会の特別決議が必要です。導入前に、どの業務を委託し、どの権限を組合に残すのか、組合内で徹底的に議論し、弁護士などの専門家にも相談しながら、規約案を慎重に作成することが極めて重要です。(出典:国土交通省 マンション政策小委員会 第48回配付資料、p.20)

注意点2:外部管理者の不正リスクと監視体制の構築

外部管理者が単独で財産を管理する場合、横領などの不正リスクは常に存在します。このリスクを低減するため、「監事による定期監査」「外部会計監査の導入」「複数人での通帳管理」など、不正を許さない具体的な監視の仕組みを規約や契約で定めておく必要があります。(出典:国土交通省 マンション政策小委員会 第48回配付資料、p.19)

注意点3:管理会社への相見積もり依頼の実務と注意点

外部管理者(管理会社)を選定する際、相見積もりは重要ですが、やり方を間違えると有力な会社から敬遠される恐れがあります。20〜40戸規模のマンションでは、やみくもに5社も6社も見積もり依頼を出すのは現実的ではありません。

  • 敬遠される理由: 管理会社にとって、正確な見積もり作成は大きな負担です。現地を複数回訪れ、清掃・エレベーター・消防設備などの協力会社と打ち合わせを重ね、理事会との面談もこなす必要があります。多数の競合がいると、労力をかけても受注できる可能性が低いと判断され、真剣な提案をしてもらえなくなることがあります。
  • 適切な依頼方法: 依頼先は2〜3社に絞り込むのが一般的です。その上で、マンションの現状や課題を真摯に伝え、協力的な姿勢を示すことが、質の高い提案を引き出す鍵となります。
  • 詳細内訳のない見積もりに注意: 提出された見積もりが詳細な費目内訳を欠いた大雑把な項目になっていないか確認しましょう。清掃費、設備点検費、事務管理費など、費目の明細が記載されているかを必ずチェックし、不明瞭な点は質問することが重要です。

まとめ:第三者管理者方式は権限委譲と監視がセット

この記事の要点をまとめます。

  • 権限はなくならない: 第三者管理者方式は、管理組合の権限を「なくす」のではなく、日常業務の「執行権」と重要事項の「決定権」に「分離」する仕組みです。
  • 最高意思決定権は総会: 予算承認、規約変更、大規模修繕の決定など、最も重要な権限は管理組合(総会)が保持し続けます。
  • 組合員の権利は不変: 総会での議決権や管理者を選び、交代させる権利など、区分所有者の基本的な権利は変わりません。
  • 監視が成否の鍵: 権限を委託する以上、「監事の設置」や「定期報告の義務化」といった厳格な監視体制をセットで構築することが成功の絶対条件です。

第三者管理者方式は、役員のなり手不足に悩む管理組合にとって強力な解決策となり得ます。しかし、それは「管理の丸投げ」を意味するものではありません。権限を適切に委譲し、その働きを厳しく監視するという新しい役割を、管理組合と組合員一人ひとりが担う覚悟が求められるのです。区分所有法の決議要件を遵守した運用が重要です。


免責事項

本記事は、2026年1月5日時点の法令や情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。特定のマンションの状況に対する法的な助言や、個別の契約内容の解釈を保証するものではありません。第三者管理者方式の導入を検討される際は、最新の法令を確認するとともに、必ず弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。また、最終的な権利義務は、個別の管理規約や管理委託契約書の定めが優先されます。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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