マンション清掃状況改善の5ステップ|管理組合必見の実践ガイド

マンションの住民参加型清掃におけるメリット・デメリットと、導入時の重要な注意点をまとめた図解です。メリットとしては、清掃コストの削減、住民間の交流促進とコミュニティ活性化、マンションへの愛着向上による美化意識の高まりが挙げられます。一方で、デメリットや注意点としては、参加者による清掃品質のばらつき、清掃中の怪我や設備破損時の責任問題の曖昧さ、一部住民に負担が偏ることで生じる不公平感やトラブルの可能性が指摘されます。導入の際は、管理組合がボランティア活動保険に加入し、活動日時、清掃範囲、用具管理に関する明確なルールを定めることが不可欠であり、法的責任は管理規約改正を検討し、総会で承認することが推奨されます。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

目次

マンションの清掃状況を改善させる具体的な方法

マンションのエントランスが汚れている、ゴミ置き場から異臭がする、廊下の隅にホコリが溜まっている…。このような清掃状況の悪化は、住民の満足度を低下させるだけでなく、マンション全体の資産価値にも影響を及ぼす問題です。管理会社に任せているだけでは、なかなか改善しないケースも少なくありません。

この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、マンションの清掃品質に不満を持つ管理組合の役員や区分所有者の皆様に向けて、清掃状況を効果的に改善するための具体的な5つのステップを解説します。現状把握から業者選定、法的な合意形成まで、管理組合が主体的に取り組むための実践的なノウハウを網羅しました。この記事を読めば、清掃問題解決への道筋が明確になり、資産価値を守るための具体的な第一歩を踏み出せるはずです。

背景知識:なぜマンションの清掃状況は悪化するのか?

清掃品質の改善に取り組む前に、なぜ問題が発生しているのか、その根本原因と基本的な知識を整理することが重要です。

よくある3つの原因

マンションの清掃状況が悪化する背景には、主に3つの原因が考えられます。

  1. 現在の清掃仕様書がマンションの実態に合っていない
    新築当初に作成された清掃仕様書が、何年も見直されないまま運用されているケースです。経年による汚れの蓄積、住民のライフスタイルの変化(例:子供の増加、ゴミ出しルールの形骸化)など、マンションの実態と仕様書にズレが生じ、清掃が追いつかなくなります。
  2. 清掃業者・スタッフの品質や技術力に問題がある
    コスト削減を優先しすぎた結果、技術力の低い業者を選定してしまったり、業者側のスタッフ教育が不十分だったりするケースです。挨拶などのマナーが悪い、決められた作業を省略するなど、スタッフの質が低いと、仕様書通りの品質は期待できません。
  3. 管理組合のチェック機能が働いていない
    管理会社や清掃業者に「任せきり」になり、管理組合として清掃状況を定期的にチェックする仕組みがない状態です。誰も確認しないため、手抜き作業が横行し、徐々に品質が低下していきます。

「日常清掃」「定期清掃」「特別清掃」の役割の違い

マンションの清掃は、主に3つの種類に分けられます。それぞれの役割を理解し、適切に組み合わせることが品質維持の鍵となります。日常清掃は日常的な汚れの除去と美観維持を目的とし、エントランス、廊下、階段、ゴミ置場などを週数回~毎日清掃します。定期清掃は日常清掃で落とせない汚れの専門的な除去を目的とし、共用廊下の床洗浄、ワックスがけ、窓ガラスなどを月1回~半年に1回実施します。特別清掃は突発的な汚れや特定の時期に必要な清掃を目的とし、照明器具の清掃、外壁の高圧洗浄、排水管洗浄などを年1回~数年に1回行います。

多くの場合、問題となるのは日常清掃の範囲と頻度、そして定期清掃の仕様がマンションの規模や汚れ具合に適していないことです。

【用語整理】管理委託費と管理費、普通決議と特別決議

清掃費用の見直しや仕様変更を検討する上で、混同しやすい用語を正しく理解しておくことが不可欠です。

  • 管理費と管理委託費
    • 管理費: 区分所有者が管理組合に支払う、日常の管理(清掃費、共用部光熱費など)に使われる費用。
    • 管理委託費: 管理組合が管理会社へ業務を委託するために、管理費の中から支払う費用。清掃費はこの管理委託費に含まれることが多いです。
    • 区別のメリット: 清掃費の見直しは、管理委託費の内訳、ひいては管理費全体の使い道を見直すことに繋がります。財源を正しく理解することで、適切な予算議論が可能になります。
  • 普通決議と特別決議
    • 普通決議: 区分所有者および議決権の各過半数で可決される決議。清掃仕様の変更や予算の決定など、通常の管理に関する事項が対象です(区分所有法 第39条)。ただし、管理規約で特別規定がある場合、その規約が優先される可能性があります。最新の管理規約を確認してください。
    • 特別決議: 区分所有者および議決権の各4分の3以上で可決される、より厳格な決議。管理規約の変更など、マンションの根幹に関わる重要事項が対象です(区分所有法 第31条)。
    • 区別のメリット: 清掃業者の変更や仕様の見直しがどちらの決議に該当するかを事前に把握することで、総会準備をスムーズに進められます。通常、清掃仕様の変更は普通決議で足りますが、規約改正を伴う場合は特別決議が必要です。

手続・対応ステップ:清掃品質を改善する5つのステップ

ここからは、実際に清掃品質を改善していくための具体的な5つのステップを解説します。

【Step1】現状把握:住民アンケートと現場チェック

改善の第一歩は、現状を客観的に把握することから始まります。「どこが」「どの程度」汚れているのか、住民は何に不満を感じているのかを可視化します。

  • 住民アンケートで不満点を可視化する
    全戸を対象にアンケートを実施し、清掃に関する具体的な意見を集めます。アンケート項目例として、「エントランスの清掃満足度(5段階評価)」「ゴミ置場の異臭の頻度」「改善希望の箇所」を設定し、回答率70%を目標に年2回実施します。これにより、「汚い」という漠然とした不満ではなく、「エントランスのガラスがいつも曇っている」「自転車置き場の落ち葉が放置されている」など、具体的な場所と内容を把握し、頻度調整のための総会決議プロセスに活用します。アンケート結果は理事会で集計し、管理規約に基づく集会や総会で合意形成を図ります。
  • 理事会による定期的な現場チェックリストの作成
    アンケート結果を基に、理事会が現場を確認するためのチェックリストを作成します。仕様書と照らし合わせながら、定期的に(例:月1回)巡回し、写真付きで記録を残しましょう。これにより、管理会社や業者への具体的な指摘が可能になります。チェックリストは視覚補助のため使用。テキストブラウザでは以下のリスト形式で読み替えてください。
    • エントランスの床に足跡や泥汚れはないか?
    • 集合ポストの上にチラシが散乱していないか?
    • 廊下・階段の隅にホコリや髪の毛は溜まっていないか?
    • ゴミ置場は整理整頓され、異臭はないか?
    • 手すりやガラスに手垢や汚れは付着していないか?

【Step2】業者選定:信頼できるパートナーを見つける実践ガイド

現状の業者との契約内容を見直す、あるいは新たな業者を選定するステップです。価格だけで判断せず、総合的な品質を見極めることが重要です。

信頼できる清掃業者の選定基準5つ

実績や報告体制など、以下のポイントを総合的に評価しましょう。

  1. 実績: マンション清掃に特化した実績が豊富か(例:年間300棟以上、運営歴10年以上など)[1]。
  2. 保険: 万が一の物損事故に備え、損害賠償責任保険に加入しているか。
  3. 報告体制: 作業完了後に写真付きの報告書を提出してくれるか。
  4. 資格: 「ビルクリーニング技能士」や「清掃作業監督者」といった国家資格を持つスタッフが在籍しているか。専門知識の証明になります。これらは業界標準ですが、法定要件ではないため、参考として評価してください。
  5. 教育体制: スタッフへのマナー研修や技術研修の制度が確立されているか。具体的な内容として、接遇マナー(挨拶・態度)、清掃技術(ポリッシャーや高圧洗浄機の適切使用)、安全衛生(転倒防止・化学薬品取り扱い)のトレーニングを義務付けます。

管理組合による業者監査の手順として、契約後、定期的に(例:四半期ごと)現場訪問を実施し、チェックリストで作業内容を確認。教育効果の測定基準は、スタッフの資格保有率や再教育実施記録の提出を求めます。

見積もり依頼は「2~3社」が現実的である理由

業者比較のために相見積もりは必須ですが、むやみに多くの業者(例えば5社以上)に依頼するのは避けるべきです。管理会社は、見積もりを作成するために現地調査や複数の外注先(清掃会社、EV点検、消防、警備など)との調整、理事会との面談(3~4回程度)など、多大な労力を要します。特に20~40戸程度の中小規模マンションでは、過度な相見積もりを要求する管理組合は敬遠されがちで、積極的な管理取得意欲を失わせる可能性があります。組合側の要望が強すぎると、管理会社から敬遠される恐れがあるため、注意が必要です。

現実的な選択肢として、現在の管理会社経由で1社、管理組合で独自に1〜2社探し、合計2〜3社から見積もりを取得するのが、比較検討の質と実現可能性のバランスが取れた進め方です。見積もり依頼時は、説明資料を標準化(例:マンション規模・仕様概要の共有)し、管理会社の負担を軽減します。この目安は業界慣例に基づきます。

「一式表記」はNG!詳細な見積書のチェックポイント

見積書で「清掃業務一式 〇〇円」といった大まかな記載しかない場合は要注意です。内訳が不明確で、どこまでの作業が含まれているのか分かりません。管理委託費に含める清掃費の内訳化として、実務例では作業内容を項目別に分解(例:日常清掃の廊下掃き拭きを単価化)し、一式表記を排除します。

【良い見積書の例】

  • 日常清掃(週3回):廊下掃き拭き、手すり清掃… 月額〇〇円
  • 定期清掃(年4回):共用廊下ポリッシャー洗浄… 1回あたり〇〇円

詳細な作業内容と頻度、単価が明記されていることが重要

作業範囲、頻度、単価が項目別に記載されている詳細な見積書を提出する業者を選びましょう。

【Step3】合意形成:区分所有法に基づく総会決議の進め方

清掃仕様の変更や業者の切り替えには、管理組合の正式な意思決定、すなわち総会での決議が必要です。区分所有法第26条(管理者選任)、第31条(規約の設定・変更・廃止は各4分の3以上)、第39条(普通決議の原則、各過半数)を基に、清掃に関する取り決めを進めます。費用負担の公平性は第39条に基づき、区分所有者の合意で確保。異議申立手続は総会後、書面で理事会に提出可能です。ただし、管理規約で特別規定がある場合優先。最新の管理規約を確認してください。

清掃仕様の変更は「普通決議」

前述の通り、清掃業者の変更や、それに伴う管理委託費の予算変更は、管理組合の通常の業務執行にあたるため、原則として普通決議(区分所有者および議決権の各過半数の賛成)で決定できます(区分所有法 第39条、マンション標準管理規約 第48条(2023年改正対応))。これにより、住民全体の合意のもとで計画を進めることができます。

総会議案の作り方

総会では、なぜ仕様変更が必要なのか、変更によってどのような効果が期待できるのか、費用はどう変わるのかを明確に説明する必要があります。議案記載例は以下のリスト形式で読み替えてください。視覚補助のため使用。

  • 第〇号議案:清掃仕様の見直し及び管理委託費予算変更の件
    1. 提案理由:住民アンケートの結果、〇〇(場所)の清掃品質に不満が集中。現行仕様では不十分なため、清掃頻度及び範囲を見直す必要があるため。
    2. 変更内容:
      • 日常清掃:週2回 → 週3回に変更
      • 定期清掃:床面洗浄を年2回 → 年4回に変更
    3. 見積結果:A社、B社、C社の見積もりを比較検討した結果、提案内容と金額のバランスからA社を推奨する。
    4. 予算:管理委託費(清掃費)を月額〇〇円増額する。

複数の見積もり結果を比較できる資料を添付し、理事会として特定の業者を推奨する理由を説明することで、他の区分所有者の理解を得やすくなります。

【Step4】効果測定:PDCAサイクルで品質を維持する仕組み

業者を変更して「終わり」ではありません。改善効果を測定し、継続的な品質を維持していく仕組み(PDCAサイクル)を回すことが不可欠です。

  • Plan(計画): Step1〜3で作成した新しい清掃仕様書と契約。
  • Do(実行): 新しい仕様に基づき清掃作業を開始。
  • Check(評価): 変更後に再度、住民満足度調査や理事会による現場チェックを実施します。調査設計はアンケート項目(満足度評価・具体的不満点)を明確にし、実施頻度を年2回、回答率目標70%とします。視覚点検のチェック項目はStep1のリストを活用。業者から提出される写真付き報告書も重要な評価材料です。改善効果を理事会で報告する際の標準フォーマット例:
    • 満足度スコア前後比較表
    • 現場写真ビフォーアフター
    • フィードバック要点まとめ
  • Action(改善): 評価結果を基に、清掃業者と定例会(例:マンション規模や課題に応じて3ヶ月~6ヶ月ごと)を開催。「エントランスの拭き残しが多い」などの具体的なフィードバックを行い、さらなる改善を促します。継続的なフィードバック体制として、理事会主宰の月次レビューを構築。

このサイクルを回すことで、清掃品質の「やりっぱなし」「劣化の再発」を防ぎます。

【Step5】応用編:住民参加型清掃のメリット・デメリット

コスト削減やコミュニティ活性化を目的として、住民が主体となって清掃活動を行う「住民参加型清掃」という選択肢もあります。ただし、導入には慎重な検討が必要です。

  • メリット:
    • 業者に委託するコストを削減できる。
    • 住民同士の交流が生まれ、コミュニティが活性化する。
    • 美化意識が高まり、マンションへの愛着が深まる。
  • デメリット・注意点:
    • 品質のばらつき: 参加者によって清掃の質が不安定になりやすい。
    • 責任問題: 参加者が清掃中に転倒して怪我をした場合や、マンションの設備を破損した場合の責任の所在が曖昧になる(民法717条参照)。
    • 参加の強制感: 一部の人に負担が偏り、不公平感から住民トラブルに発展する可能性がある。

導入する場合は、必ず管理組合としてボランティア活動保険に加入し、活動日時、清掃範囲、用具の管理方法など、明確なルールを定めておくことが絶対条件です。具体的な実施方法として、月1回のスケジュール調整、理事会による監督・報告体制(参加ログ記録)を構築。法的責任の設定は管理規約改正を検討し、区分所有法第39条の普通決議(または第31条の特別決議)で承認します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 清掃業者を変更するのに、総会決議は必ず必要ですか?
A1. 現在の管理規約や管理会社との管理委託契約の内容によりますが、多くの場合、業者変更やそれに伴う予算の変更は総会の普通決議が必要です。ただし、管理規約で特別規定がある場合優先。管理組合の費用で業者に委託する以上、区分所有者全体の合意形成を経るのが適切な手続きです。最新の管理規約を確認してください。

Q2. 管理会社に任せきりでも良いですか?
A2. 管理会社はマンション管理の重要なパートナーですが、任せきりにすると品質低下に気づきにくくなるリスクがあります。管理組合が主体的に仕様を定め、本記事で紹介したチェックリストなどで定期的に状況を確認する体制を築くことが、マンションの資産価値を長期的に維持するために不可欠です。

Q3. 清掃費用の相場はどれくらいですか?
A3. マンションの規模、戸数、清掃頻度、仕様によって大きく異なります。目安として、小規模マンションの日常清掃(週1回)で月額1.5万~4万円程度ですが[2][3][4]、あくまで参考値です。まずは複数の業者から見積もりを取得し、ご自身のマンションの適正価格を把握することが重要です。

まとめ:清掃品質の改善はマンションの資産価値を守る第一歩

マンションの清掃状況を改善することは、単に「綺麗で気持ちが良い」というレベルの話に留まりません。清潔で手入れの行き届いた共用部は、内覧者に好印象を与え、中古市場での評価を高めるなど、マンション全体の資産価値に大きく影響する重要な要素です。

今回解説した5つのステップは以下の通りです。

  1. 現状把握: アンケートと現場チェックで問題を可視化する。
  2. 業者選定: 価格だけでなく品質や体制を総合的に評価する。
  3. 合意形成: 総会で適切な決議を経て、全住民の合意を得る。
  4. 効果測定: PDCAサイクルで継続的な品質維持を図る。
  5. 応用編: 住民参加型はリスクを理解した上で慎重に検討する。

管理会社任せにせず、管理組合が主体となってこれらのステップを着実に実行することが、清掃品質を効果的に改善し、ひいては大切な資産であるマンションの価値を守り育てることに繋がります。まずは理事会で現状の問題点を共有することから始めてみてはいかがでしょうか。

免責事項

本記事は、2025年12月時点の情報に基づくマンション管理に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の物件や個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。実際の契約や総会決議等を進めるにあたっては、必ず最新の法令(2023年改正対応)やご自身のマンションの管理規約、管理委託契約書の内容をご確認の上、必要に応じてマンション管理士や弁護士等の専門家にご相談ください。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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