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あなたの小規模マンションで、突然管理会社から「次の契約は更新しません」と通知が届いたら、理事会としてどう対応しますか?
数年前までは考えにくかった管理会社からの更新拒否は、近年、特に小規模マンションで増加傾向にあります[1]。背景には、業界全体の人手不足や採算性の問題があります。
この記事では、不動産取引の専門家として、管理会社が契約更新を拒否する具体的な理由と法的根拠を徹底解説します。さらに、通知を受け取ってから3ヶ月以内に行うべき具体的な手続きのフローや、次の管理会社に敬遠されないための注意点もご紹介します。更新拒否は終わりではなく、マンション管理を見直す好機です。冷静に、そして戦略的に対応するための知識を身につけましょう。
導入
近年、小規模マンションにおいて、管理会社側から管理委託契約の更新を拒否されるケースが増えています[2][3]。これは、管理業界が直面する構造的な課題と、小規模マンション特有の採算性の問題が複合的に絡み合った結果です。
多くの理事会役員の方は「なぜ急に?」と戸惑い、法的な問題はないのか、次の管理会社は見つかるのかといった不安を抱えることでしょう。本記事では、その不安を解消し、管理組合が取るべき具体的な行動を、法的な根拠と実務的な視点からステップ・バイ・ステップで解説します。なお、本記事の内容は一般的な情報提供であり、個別の契約や状況については、必ず弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。
背景知識:なぜ管理会社は契約更新を拒否するのか?
管理会社からの更新拒否は、単一の理由ではなく、複数の要因が重なって判断されることがほとんどです。まずは、その背景にある理由と、関連する法律・用語の知識を整理しましょう。
管理会社が更新を拒否する4つの主な理由
管理会社が小規模マンションの契約更新に難色を示す背景には、主に以下の4つの理由が挙げられます[1][2][3][4]。
- 人材不足と採算性の悪化
管理業界全体で、マンションのフロント担当者や管理員の人手不足が深刻化しています。特に、管理委託契約の重要事項説明などを行う国家資格者「管理業務主任者」の不足は深刻で、管理会社が健全な経営を維持するために、採算が合わない物件から撤退せざるを得ない状況が生まれています[1][3]。これには、親会社の事業方針転換による大規模物件への資源集中も含まれる場合があります。 - 建物の老朽化と管理リスクの増大
築年数が経過したマンションでは、外壁タイルの剥落や給排水管の漏水など、居住者の安全に関わるリスクが高まります。修繕積立金が不足しており、適切な修繕工事が実施できない場合、万が一事故が発生した際に管理会社が「安全配慮義務」(民法第415条・第709条に基づく)を問われる可能性があります。このリスクを回避するため、契約更新を断念するケースです[1]。 - 管理組合との関係悪化・過度な要求
一部の理事や組合員からの過度なクレームや、非現実的な要求が頻発すると、フロント担当者が疲弊し、会社として関係継続が困難と判断することがあります。例えば、契約外の業務を無償で要求したり、業務内容と関連のない個人的苦情を頻繁に持ち込んだり、理事会を経ずに個人が複数回同じ内容のクレームを伝えるといった場面が該当します。これらは、組織的な理事会決議を経た合理的な要求とは異なります[2][4]。また、マンション独自の複雑なルール(例:特殊な会計処理)への対応が、業務負担を増大させる一因となることもあります。 - 管理費等の滞納率の高さ
管理費や修繕積立金の滞納率が著しく高いマンションは、管理会社にとって収入が不安定になるだけでなく、督促業務の負担も大きくなります。健全な組合運営が見込めないと判断され、更新拒否の理由となることがあります[4]。
更新拒否は、多くの場合、管理会社側の経営判断。自社のマンションがどの理由に当てはまるか冷静に分析することが、次のステップへの第一歩です。
用語の整理:知っておきたい3つのキーワード
円滑な対応のため、まずは基本的な用語の違いを正確に理解しておくことが重要です。表が表示されない場合、以下のテキストリストで代替(用語:定義:ポイントの順)をお読みください。
| 用語 | 定義 | ポイント |
|---|---|---|
| 管理組合 と 理事会 | 管理組合:区分所有者全員で構成される団体。 理事会:組合員から選出され、日常業務を執行する機関。 | 管理会社の変更といった重要事項の最終決定権は「管理組合(総会)」にあり、理事会はそのための準備や執行を行います。ただし、管理規約で別段の定めがある場合を除きます(区分所有法第39条ただし書、マンション標準管理規約第49条)。 |
| 普通決議 と 特別決議 | 普通決議:出席組合員の議決権の過半数で可決。 特別決議:原則、全組合員の人数・議決権の各4分の3以上で可決。 | 管理会社の変更は「普通決議」で足ります(区分所有法第39条第1項)。規約の変更など、より重要な意思決定で「特別決議」(区分所有法第46条)が必要となります。ただし、管理規約で特別決議を定めている場合を除きます(マンション標準管理規約第49条・第60条)。 |
| 管理業務主任者 と 管理員 | 管理業務主任者:法律に基づく重要事項説明などを行う国家資格者(マンション管理適正化法第32条)。 管理員:清掃や受付など日常業務を行う現場スタッフ。 | 管理会社の人材不足は、特に専門知識を持つ「管理業務主任者」の不足が大きな問題となっています(マンション管理適正化法)。 |
法的根拠:更新拒否は「違法」ではないのか?
管理会社からの更新拒否通知に対し、「一方的で違法ではないか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、結論から言うと、法的に定められた手続きに則っていれば、更新拒否は違法ではありません。実際の契約書条項を最優先とし、個別契約で異なる場合があるため、契約書の確認が必須です。
その根拠となるのが、多くの管理組合と管理会社が契約の雛形としている「マンション標準管理委託契約書」です。国土交通省が定める『マンション標準管理委託契約書』第23条では、契約更新しない旨を相手方に通知する場合、契約期間満了の3ヶ月前までに書面で申し出ると規定されています[6]。多くの管理会社はこの標準書式を採用しており、3ヶ月前通知が一般的となっています。
| (参考)マンション標準管理委託契約書 第23条(契約の更新)の趣旨 甲(管理組合)又は乙(管理会社)は、本契約を更新しない場合、契約期間満了日の3ヶ月前までに、その相手方に対し、書面でその旨を申し出なければならない。ただし、実際の契約書で異なる条項がある場合を除きます。 |
このように、契約期間満了の3ヶ月前までに書面で通知すれば、管理会社も契約を更新しない権利を持っています。これは管理組合側も同様です。
したがって、更新拒否は「違法行為」ではなく「契約上の権利行使」と理解し、感情的な対立を避け、次の管理会社を探すための具体的な行動に移ることが賢明な判断と言えます。
手続・対応ステップ:通知から3ヶ月で行うべきこと
管理会社から更新しない旨の通知(通常は契約満了の3ヶ月前)を受け取ったら、管理業務に空白期間が生じないよう、迅速かつ計画的に行動する必要があります。以下の5つのステップで進めましょう。実際の契約書条項を最優先とし、個別契約で異なる場合があるため、契約書の確認が必須です[6][8]。
Step1:拒否理由の書面確認と理事会での共有
まずは、更新拒否の理由を明確にするため、管理会社に対して理由を記載した書面の提出を求めましょう。口頭での説明だけでなく、文書で確認することが重要です。その内容を速やかに理事会で共有し、現状把握と今後の対応方針について協議を開始します。
Step2:新管理会社の候補選定と打診(2〜3社へ)
次に、新しい管理会社の候補を探します。ここで重要なのは、やみくもに多くの会社へ声をかけないことです。小規模マンションの場合、5社以上相見積もりを依頼すると、かえって敬遠される原因になります。信頼できそうな会社を2〜3社に絞って打診しましょう。管理会社側は、見積もり作成に現地調査3〜4回、外注先(清掃、エレベーター、消防点検等)との調整、理事会面談数回を要するため、過度な要請は負担となります[1][9]。
Step3:新管理会社候補による重要事項説明会の開催
候補となる管理会社が決まったら、総会での決議に先立ち、組合員向けの説明会を開催してもらいます。これは、マンション管理適正化法第32条で定められた「重要事項説明」にあたり、新しい管理業務の内容や委託費について、組合員が直接質問し、理解を深めるための重要な機会です。見積もりは項目ごとの明細化を求め、一式表現は避けるのが理想です。
Step4:臨時総会の招集と普通決議による承認
説明会を経て、理事会として委託したい管理会社を1社に絞り込み、臨時総会を招集します。管理会社の変更は、区分所有法第39条第1項に基づく「普通決議」(出席した区分所有者の議決権の過半数)で決定します。これは、規約の変更が必要とされる「特別決議」(区分所有法第46条)とは異なり、より軽い決議要件です。ただし、管理規約で特別決議を定めている場合を除きます(マンション標準管理規約第49条・第60条)。
Step5:現管理会社との引継ぎ業務の調整
総会で新しい管理会社が承認されたら、速やかに現管理会社と新管理会社との間で引継ぎ業務の調整を行います。管理費等の会計データ、管理組合の印鑑、各種点検報告書や図面などの重要書類をスムーズに引き渡せるよう、管理組合(理事会)が間に入ってスケジュールを管理することが不可欠です。
FAQ:よくある質問
- Q.管理会社からの契約更新拒否は違法ですか?
- A.
いいえ、違法ではありません。マンション標準管理委託契約書第23条に基づき、契約満了の3ヶ月前までに書面で通知すれば、管理会社・管理組合の双方に契約を更新しない権利があります。これは契約上の正当な権利行使です。ただし、実際の契約書条項を最優先とし、個別契約で異なる場合があるため確認を。
- Q.次の管理会社はすぐに見つかりますか?
- A.
小規模マンションの場合、採算性の問題から見つかりにくいケースもあります。しかし、適切な手順で探せば見つかる可能性は十分にあります。ポイントは、むやみに多くの会社に声をかけず、2〜3社に絞って誠実な対応を心がけることです[1][9]。
- Q.更新拒否の通知は何ヶ月前に来るのが一般的ですか?
- A.
マンション標準管理委託契約書第23条に基づき、契約期間満了の3ヶ月前までに書面で通知されるのが一般的です。この3ヶ月間で、次の管理会社選定から総会決議までを完了させる必要があります。ただし、実際の契約書条項を最優先とし、個別契約で異なる場合があるため確認を[6]。
実務ヒント:更新拒否を回避し、円滑な移行を実現するために
更新拒否は避けたい事態ですが、万が一通知を受けた場合でも、その後の対応次第でより良い管理体制を築くチャンスにもなります。ここでは、実務に役立つヒントを解説します。
【要注意】小規模マンション特有の「敬遠される」組合の行動
良かれと思って取った行動が、実は管理会社から敬遠される原因になっていることがあります。特に小規模マンションの理事会が陥りがちなのが「過度な相見積もり」です。
「5社も6社も見積もりを取れば、一番良い条件の会社が見つかるはず」と考えるかもしれませんが、現実は逆です。特に20〜40戸程度のマンションでは、1件あたりの利益が大きくないため、管理会社は受注できるか不透明な見積もり作業に大きなコストをかけたくないのが本音です。複数の管理会社の間で過度な競争が生じると、見積もり作成にかかる営業コストに見合わないと判断され、見積もり提出自体を辞退する管理会社が出てくる傾向があります[1][2]。
管理会社側の負担(1社あたり)
・現地調査:3~4回程度
・外注先との調整:清掃、エレベーター、消防点検等の業者との打ち合わせ
・理事会との面談:数回
・見積書・提案書の作成これだけの労力をかけても、過度な競合では受注が不透明です。多くの管理会社はこうした負担を避ける傾向にあります。
結果として、選択肢が減ってしまうという悪循環に陥りかねません。管理会社変更時の相見積もりは、多くても2〜3社に絞ることが、誠実な候補者と出会うための秘訣です。
更新拒否を未然に防ぐ3つの予防策
日頃から以下の点を心がけることで、更新拒否のリスクを低減できます。
- 良好なコミュニケーションを保つ
フロント担当者と定期的に意見交換し、一方的な要求ではなく、協力して課題解決にあたる姿勢を示すことが重要です。感謝の言葉を伝えるだけでも、関係性は大きく改善します。 - 管理委託費の値上げ交渉に真摯に対応する
最低賃金の上昇や物価高騰を背景に、管理委託費の値上げは避けられない流れです。値上げ要請があった場合は、その根拠をよく吟味し、必要な値上げには真摯に応じる姿勢が求められます。管理費・修繕積立金の適切な設定(例:積立金増額計画)も重要です[10]。 - 組合運営の課題解決に主体的に取り組む
修繕積立金の不足や滞納問題など、マンションが抱える課題を管理会社任せにせず、理事会が主体となって総会で議論し、解決策(例:積立金の値上げ決議)を実行していくことが、信頼関係の構築に繋がります。理事会要求の見直しやルール標準化も有効です[2][4]。
もし次の管理会社が見つからなかったら?
複数の管理会社から断られ、どうしても次の委託先が見つからない場合、「自主管理」という選択肢も視野に入れる必要があります。自主管理とは、管理会社に委託せず、会計、清掃業者や点検業者の手配、理事会運営などをすべて管理組合自身で行うことです。表が表示されない場合、以下のテキストリストで代替をお読みください。
| 項 | 内容 | 注釈 |
|---|---|---|
| メリット | 管理委託費を削減可能 | ただし、会計・法務等の専門知識が必要な業務の外注化で実質コスト増になることもある |
| デメリット | 理事の負担激増 | 毎月の会計業務、大規模修繕計画、法令順守体制の構築、支払い督促等すべて自組織で対応 |
| 法的リスク | 管理業務の法的要件未充足 | 重要事項説明、管理状況報告等、管理業務主任者による実施が必須とされる業務が遂行不能(マンション管理適正化法第32条) |
| 実務リスク | 事故発生時の責任問題 | 安全配慮義務を問われるリスクが管理組合に直結(民法第415条・第709条) |
特に役員のなり手が少ない小規模マンションでは、自主管理への移行は非常にハードルが高い選択です。安易に移行するのではなく、組合員の協力体制や専門知識を持った人材の有無などを慎重に見極め、総会で議論してください[1]。
(補足)2026年4月施行予定の改正区分所有法の影響は?
2026年4月1日に改正区分所有法が施行される予定です[11][12]。改正の主な内容は、所在不明の区分所有者が多数いる場合の特別決議要件の取り扱いに関するもので、所在不明者を母数から除外できる可能性が示唆されていますが、実務上は厳格な調査と認定が必要です[12]。しかし、前述の通り、管理会社の変更は「普通決議」で決定できるため、本改正による直接的な影響は限定的と考えられます。詳細は法務省・国土交通省の公式ウェブサイトで常時ご確認ください[11][12]。本記事の知識をもとに判断される場合は、必ず弁護士またはマンション管理士にご相談の上、最新法令に基づいた決議を実施してください。
まとめ:更新拒否は「終わり」ではなく「見直しの好機」
小規模マンションの管理会社による契約更新拒否。その背景には、業界全体の人材不足や採算性の問題があります。この通知は、法的手続きに則った契約上の権利行使であり、違法ではありません。
重要なのは、通知を受け取った際に冷静に対応することです。
- 理由の分析: なぜ更新拒否に至ったのか、自らのマンションの状況を客観的に分析する。
- 法的理解: 管理会社変更は「普通決議」で可能であることを理解する(ただし、管理規約優先)。
- 計画的行動: 3ヶ月という限られた時間で、2〜3社に絞った候補選定、総会決議、引継ぎを計画的に実行する。
更新拒否は、現在の管理体制を見直し、より良いパートナーシップを築くための絶好の機会です。この記事で得た知識を活用し、あなたのマンションの資産価値を維持・向上させるための一歩を踏み出してください。
免責事項
【重要】本記事は、小規模マンションの管理委託契約に関する一般的な情報提供を目的とした解説であり、以下の点にご注意ください:
- 法的助言ではありません: 本記事の内容は、個別の事案に対する法的な助言・見解ではなく、一般的な知識提供に留まります。
- 契約書の確認が必須: 各管理委託契約書は、マンション標準書式以外の独自条項を含むことがあります。必ずご自身の契約書をご確認ください。
- 専門家への相談推奨: 実際に更新拒否通知を受けた場合、または重要な決定を行う前に、弁護士またはマンション管理士にご相談ください。
- 法令最新情報の確認: 本記事は 2025 年 12 月時点の法令・情報に基づいており、改正等により内容が変わる可能性があります。
本記事は、小規模マンションの管理委託契約に関する一般的な情報提供を目的として作成されており、個別の事案に対する法的な助言や見解を示すものではありません。法令や各種基準は改正される可能性があるため、常に最新の情報をご確認ください。
参考資料
- マンション管理の適正化の推進に関する法律(国土交通省)[13]
- 国土交通省, 「マンション標準管理規約(単棟型)」[14]
- 国土交通省, 「マンション標準管理委託契約書」[6]
- https://mij-c.com/column/1764 [1]
- https://www.innovelios.com/column/refusal-to-accept-an-update/ [2]
- https://tokyo-apartmentmanagement.com/column/withdrawal/ [3]
- https://mansionkanri-erabi.com/media/trust-7/ [4]
- https://www.innovelios.com/column/procedure-for-changing-management-companies/ [8]
- https://anabuki-m.jp/information/change/41094/ [9]
- https://www.union-cs.co.jp/review/change/ [10]
- 法務省「区分所有法改正情報」(2025年12月時点)[11]
- 国土交通省「マンション管理適正化推進事業」[12]
- 国土交通省「マンション総合調査」(最新版2023年)[15]
