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マンションの管理組合役員や区分所有者の皆様にとって、火災保険料の値上げは家計や組合財政に直結する深刻な問題です。特に「マンション火災保険 値上げ 2026」といったキーワードで情報を探している方は、今後の見通しと具体的な対策に強い関心をお持ちのことでしょう。
2025年12月20日現在、近年の保険料は、自然災害の多発や建築費の高騰を背景に上昇を続けており、特に2024年10月の改定は過去最大級となりました。さらに、多くの10年契約が満期を迎えた2025年、これまでの値上げ分が一気に反映される「2025年問題」が顕在化しています。
この記事では、資格を持つ不動産ライターが、公的な一次情報に基づき、マンション火災保険料が値上げされる構造的な理由を徹底解説します。その上で、管理組合と個人それぞれが実践できる具体的な対策3ステップや、見直し時にやってはいけない注意点を分かりやすくお伝えします。目指すは「最低価格」ではなく、マンションの資産価値を守る「最適」な保険選びです。
まさに他人事ではない。マンション火災保険料、驚きの値上げ実態
マンション火災保険料の上昇は、もはや無視できないレベルに達しています。これは特定の保険会社の問題ではなく、保険業界全体で起きている構造的な変化です。まずは、値上げの具体的な状況と、多くの方が直面する「2025年問題」について正確に理解しましょう。
過去10年で5回以上の改定、2024年10月には過去最大級の値上げ
損害保険料の目安となる「参考純率」は、この10年で複数回にわたり引き上げられてきました。直近では2024年10月に、全国平均で過去最大となる+13.0%もの引き上げが実施されています(出典:損害保険料率算出機構、2024年改定(2023年発表))。
これはあくまで平均値であり、マンションの所在地や構造によっては、これを上回る値上げとなるケースも少なくありません。
- 改定時期: 2015年10月、主な改定内容(全国平均): +3.5%、最長契約期間を10年に短縮
- 改定時期: 2019年10月、主な改定内容(全国平均): +5.5%
- 改定時期: 2021年1月、主な改定内容(全国平均): +4.9%
- 改定時期: 2022年10月、主な改定内容(全国平均): +10.9%、最長契約期間を10年→5年に短縮
- 改定時期: 2024年10月、主な改定内容(全国平均): +13.0%、水災リスクの複数段階料率導入
火災保険 参考純率の改定推移(住宅物件)。表はアクセシビリティのためテキスト記述を推奨。
【時系列解説】「2025年問題」で保険料が最大2倍に?なぜ負担が集中するのか
特に注意が必要なのが「2025年問題」です。これは、2015年の改定で保険の最長契約期間が36年から10年に短縮されたことに起因します。当時、駆け込みで10年契約を結んだ多くのマンションが、2025年に一斉に満期を迎えました。
この10年間で繰り返された保険料の値上げ分が、2025年の契約更新時に一度に反映されるため、保険料が1.5倍から2倍近くに急騰するケースも珍しくありません。例えば、2015年の約55,000円/年が2025年に約120,000円/年(約2.2倍)となる事例も報告されています。長期契約で安心していた方ほど、その衝撃は大きくなります。
なぜ高騰は止まらない?保険料を押し上げる4つの構造的要因
保険料の値上げは、複数の社会的な要因が複雑に絡み合って起きています。なぜこれほどまでに高騰が続くのか、その構造的な4つの背景を理解することが、適切な対策を講じる第一歩です。
要因1:自然災害の激甚化と保険金支払いの急増
最大の要因は、台風や集中豪雨といった自然災害の増加と、それに伴う保険金の支払額急増です(出典:損害保険料率算出機構、2024年改定(2023年発表))。気象庁のデータを見ても、大規模な水害や風害の発生頻度は年々高まる傾向にあります。保険会社は、将来のリスクに備えるため、保険料を引き上げざるを得ない状況に置かれています。
要因2:建築費・人件費の高騰による修理費の上昇
ウッドショックや円安、人手不足などを背景に、建築資材費や工事に関わる人件費は高騰を続けています(出典:国土交通省 建築着工統計調査)。万が一、マンションが被災した場合、その復旧にかかる費用は10年前と比べて格段に高くなっています。そのため、建物を再建・修繕するために必要な保険金額(補償額)そのものを見直す必要があり、これも保険料を押し上げる一因です。
要因3:マンションの老朽化による水漏れ等の事故リスク増大
築年数が経過したマンションでは、給排水管の劣化による漏水事故などのリスクが高まります。こうした状況を反映し、保険会社は築年数に応じた料率を導入しています。結果として、築古のマンションほど保険料が高くなる傾向にあります。地域・構造別の最大30%以上値上げとなるケース(築年数古い木造、災害リスク高地域)も見られます。
要因4:水災リスクの細分化による地域格差の拡大
2024年10月の改定から、これまで全国で一律に近かった水災補償の料率が、市区町村ごとに複数段階で細分化されました。ハザードマップなどに基づき、浸水リスクが高いと判定された地域のマンションでは、保険料が大幅に上昇する可能性があります。詳細な算定基準については、最新の損害保険料率算出機構資料を参照してください。
【管理組合向け】保険料負担を軽減する現実的な3ステップ
2025年12月20日現在、急騰する保険料を前に、管理組合として何から手をつければよいのでしょうか。現在の管理規約・契約書の定めを最優先とした上で、見直しの検討を進めることが重要です。ここでは、資産価値を損なうことなく、保険料負担を適正化するための現実的な3つのステップを解説します。
Step1:現行契約の「補償範囲」と「保険金額」を正確に把握する
まずは、現在加入している火災保険の証券を取り寄せ、以下の2点を正確に確認することから始めましょう。
- 補償範囲: どのような事故(火災、風災、水災、水濡れ、破損・汚損など)が補償対象となっているか。
- 保険金額(支払限度額): 万が一の際、最大でいくらまで保険金が支払われるか。
特に、保険金額が「新価(再調達価額)」ベースになっているか、現在の建築費で再建可能な金額が設定されているかは重要なチェックポイントです。
Step2:補償内容を「適正化」する3つの視点(過剰・不足はないか)
管理規約で異なる要件を定めている場合は規約を優先してください。次に、把握した補償内容が「今のマンションの実態に合っているか」を検証します。「削減」ではなく、あくまで「適正化」の視点が重要です。法令義務を超えない調整が前提です。
- 水災補償の要否: ハザードマップで浸水リスクが低いと判定される地域でも、共用部分(特に地下ピット、エントランス、機械式駐車場)は局所的な浸水被害のリスク評価が必要です。近年の水災は予測不可能な局所豪雨が増加しており、全体的なリスク判定とは別に、建物構造別・部位別の詳細なリスク分析を保険代理店と共同で実施した上で、補償内容を決定することをお勧めします。削減判断は、管理組合での十分な検討と総会承認が前提です。
- 免責金額(自己負担額)の設定: 免責金額を高く設定すれば保険料は安くなりますが、いざという時に組合会計から捻出できる金額でなければ意味がありません。修繕積立金の状況と合わせて、適切なバランスを検討します。
- 不要な特約の有無: 過去の経緯で付帯されたものの、現在は不要となっている特約がないか確認します。
補償内容の変更は、区分所有法第39条に基づき、管理組合総会での決議(通常は普通決議)が必要です。ただし、管理規約で異なる要件を定めている場合は規約を優先してください。理事会だけで判断せず、必ず正規の手続きを踏みましょう。
Step3:相見積もりを成功させるコツと注意点
保険の更新にあたり、複数の保険代理店から見積もりを取る「相見積もり」は有効な手段です。しかし、やみくもに数を増やせば良いというものではありません。相見積もりは管理組合の正当な権利ですが、実務的には2〜3社の厳選が効果的です。理由として:①複数の見積比較検討に必要な管理組合内での審議時間が増加しすぎること、②保険代理店が現地調査や資料精査に投じる労力が分散し、精度の高い提案が困難になる傾向があること、が挙げられます。依頼前に【見積項目を統一】(補償内容、免責金額、契約期間の3点セット)し、比較条件を揃えることで、少数社での効率的な検討が実現できます。
特に、20戸〜40戸程度の自主管理マンションの場合、5社や6社以上の依頼は管理会社から敬遠される可能性が高く、質の高い提案を受けにくくなります。管理会社側は、現地調査(3〜4回程度)、外注先(清掃、EV点検、消防、警備など)との打ち合わせ、理事会面談を複数回こなす労力がかかります。2〜3社であれば協力体制が築きやすいのが実情です。
- 管理会社との連携: まずは現在の管理を委託している管理会社に相談し、協力体制を築くことがスムーズな進行の鍵となります。
更新/解約時は、現行契約の条項(保険法準拠)を最優先に確認し、代理店に相談を。
【区分所有者向け】個人でできる備えと確認ポイント
マンションの火災保険は、管理組合が加入する「共用部分」の保険だけでは万全ではありません。区分所有者一人ひとりが、自分の資産を守るために個人で備えるべき保険についても理解しておく必要があります。
「専有部分」と「家財」の保険は今のままで大丈夫か?
ここで重要なのが「共用部分」と「専有部分」の区別です。
- 共用部分: 廊下、階段、外壁、屋上など。管理組合が火災保険に加入する。
- 専有部分: 住戸の内部(壁紙、床、キッチン、ユニットバスなど)。区分所有者自身が火災保険に加入する必要がある。
管理組合の保険は、あくまで共用部分の損害をカバーするものです。区分所有者は、自らが占有する専有部分(室内の壁紙、床、建具、設備、家財等)の火災・水濡れ等の事故に対する保険を、個別に加入する必要があります。【重要】共用部分保険(管理組合が加入)でカバーされるのは、廊下・階段・外壁・屋上などの共用部のみです。上階からの漏水で自宅が被害を受けた場合でも、管理組合保険は原則として補償しません。その場合、①原因となった上階の居住者が個人賠償責任保険に加入していれば、そこから補償を受けられる可能性がありますが、②加入していない場合は、ご自身の家財保険で対応するか、民事訴訟で損害賠償を求める必要があります。管理組合の保険更新を機に、ご自身の個人向け火災保険の内容を改めて確認されることを強くお勧めします。
共用部分保険(全体契約)でカバーされないリスクを正しく理解する
例えば、上階からの水漏れであなたの部屋の天井や家財が被害を受けた場合、管理組合の保険では基本的に補償されません。この場合、原因となった上階の居住者が「個人賠償責任保険」に加入していればそこから補償を受けられますが、そうでなければ、泣き寝入りになるか、ご自身が加入している家財保険で対応することになります。
管理組合の保険更新を機に、ご自身の個人向け火災保険の内容も合わせて見直すことを強くお勧めします。
やってはいけない!保険見直しで資産価値を損なう3つのNG行動
保険料を抑えたい一心で、やってはいけない見直しをしてしまうと、かえってマンション全体の資産価値を大きく損なう危険があります。以下の3つのNG行動は避けるべきです。
NG1:法令・規約義務を無視した過度な補償削減
多くのマンションの管理規約では、共用部分の火災保険加入が義務付けられています(国土交通省『標準管理規約』第37条参照)。保険料を抑えるために補償範囲を大幅に削減する場合は、必ず総会決議(通常は普通決議・区分所有法第39条)を得た上で、現在の管理規約の定める最低補償水準を満たしていることを確認してください。ただし、管理規約で異なる要件を定めている場合は規約を優先してください。規約に違反する補償削減の決議は、後の紛争時に無効とされる可能性があります。
NG2:手続きの遅れによる「保険の空白期間」の発生
保険の見直しや切り替えには、見積もりの比較検討、総会での決議など、相応の時間がかかります。手続きが遅れ、現在の保険が満了してから次の保険が開始するまでに「無保険期間」が生じてしまうのは最も危険です。その間に万が一災害が発生した場合、すべての損害が自己負担となります。更新/解約時は、現行契約の条項(保険法準拠)を最優先に確認し、代理店に相談を。
NG3:「時価」契約による再建費用不足のリスク
保険金額の評価方法には「新価」と「時価」の2種類があります。
- 評価方法: 新価(再調達価額)、内容: 同等の建物を新たに建築・購入するために必要な金額、注意点: 現在の主流。自己負担なく再建が可能。
- 評価方法: 時価、内容: 新価から、経年劣化や使用による消耗分を差し引いた金額、注意点: 築年数が古いほど評価額が低くなり、再建時に多額の自己負担が発生するリスク大。
保険料は時価契約の方が安くなりますが、いざという時に「保険金だけではマンションを再建できない」という最悪の事態に陥ります。マンションの資産価値を守るためにも、契約は必ず「新価」を基準にしましょう。
2026年「改正マンション関係法」は影響する?今後の保険料見通し
2026年4月に施行が予定されている改正マンション関係法について、火災保険料への影響を心配する声も聞かれます。現時点で分かっている情報と、今後の見通しを整理します。
法改正の目的と火災保険料への直接的な影響
この法改正は、管理不全マンションの増加を防ぐことなどを目的としており、管理計画認定制度の見直しなどが含まれます。
2026年4月施行予定の改正マンション関係法と火災保険料の直接的な連動について、現時点では保険業界からの公式な見解は確認されていません。改正法の主要な目的は管理不全マンション防止であり、保険料アルゴリズムへの影響は別途検討が必要とされています。今後、金融庁による保険料率の監督強化が継続されることから、管理状況が良好なマンションへの料率優遇制度の導入など、新たな仕組みが登場する可能性も考えられます。
専門家が見る今後の動向:値上げ傾向は続く可能性が高い
法改正との直接的な関連はなくとも、火災保険料を取り巻く環境(自然災害の増加、建築費高騰)に変化はありません。2025年7月以降、金融庁の監督規制強化と異常危険準備金基準が50%→55%へ引き上げられる可能性もあり、多くの専門家は、今後も保険料の値上げ傾向は続くと見ています。災害リスクが高いエリアの資産価値は今後下がる可能性もあり、全体としては厳しい状況が続くと考えられます。
まとめ:目指すは「最低価格」でなく「最適」。マンションの資産価値を守る保険選び
マンション火災保険料の値上げは、今後も避けられない大きな流れです。重要なのは、この変化に冷静かつ的確に対応することです。
本記事で解説したポイントをまとめます。
- 値上げの背景を理解する: 自然災害の増加や建築費高騰など、やむを得ない構造的要因があることを受け入れる。
- 管理組合は3ステップで対応: ①現状把握 → ②補償の適正化 → ③現実的な相見積もり(2〜3社)
- 区分所有者も個人で備える: 共用部分の保険だけでは不十分。「専有部分」と「家財」の保険を見直す。
- NG行動を避ける: 過度な削減、保険の空白期間、「時価」契約はマンションの資産価値を毀損する。
目指すべきは、目先の保険料を追求する「最低価格」の保険ではありません。万が一の時にマンションとそこに住む人々の生活を確実に守れる「最適」な保険です。
保険の見直しは、専門的な知識が必要な複雑な作業です。管理組合や個人で判断に迷う場合は、信頼できる保険代理店やマンション管理士などの専門家に相談し、客観的なアドバイスを求めることをお勧めします。
免責
この記事は、マンションの火災保険に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品を推奨するものではありません。また、個別具体的な案件に関する法務・税務上の助言を行うものでもありません。保険契約の締結や見直しにあたっては、必ず保険会社・代理店の担当者にご相談の上、ご自身の責任においてご判断ください。保険料率や法令、制度は改正される可能性があるため、最新の情報をご確認ください。
参考資料
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内(2024年改定、2023年発表)」(https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/2023_revision.html)
- 国土交通省「建築着工統計調査」(https://www.mlit.go.jp/statistics/details/kentiku_list.html)
- 国土交通省「マンション標準管理規約」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html)
- e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069)
- e-Gov法令検索「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC1000000149)
- 国土交通省「標準管理規約」関連資料 (https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/)
