マンション専有部分配管更新:管理組合規約改正の4ステップロードマップ(2026年法改正対応)

マンション管理に関する重要な資料がテーブルの上に積み重ねられ、その上に眼鏡が置かれている様子。照明は落ちついたトーンで、真剣な学習や調査を連想させます。この記事の信頼性を高め、読者がさらなる情報源にアクセスするきっかけとなるような補足的なイメージです。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンション専有部分配管更新:管理組合主導の規約改正ロードマップ(2025年12月20日時点情報)

マンションの専有部分にある配管の老朽化は、漏水事故や資産価値低下に直結する深刻な問題です。しかし、専有部分の工事は原則として所有者個人の責任とされ、管理組合が主導して一斉更新を進めるには法的な壁がありました。多くの理事会役員の方が、その具体的な進め方や合意形成の難しさに頭を悩ませているのではないでしょうか。

この記事では、不動産の専門ライターとして、専有部分の配管更新を管理組合主導で計画的に進めるための「管理規約の改正」に焦点を当てます。区分所有法や国土交通省の最新資料といった一次情報に基づき、法的な根拠から具体的な規約改正のロードマップ、費用負担の決め方、住民の合意形成のコツまでを網羅的に解説します。現行法(2025年12月20日時点)と2026年4月1日施行予定の改正区分所有法の違いも明確にし、この記事を読めば、煩雑に思える規約改正の全体像を理解し、次のアクションへと踏み出せるはずです。

目次

なぜ今、専有部分の配管更新が「待ったなし」の課題なのか?

高経年マンションにおいて、専有部分の配管更新はもはや先送りできない経営課題です。その背景には、深刻な漏水リスクと、個別対応では解決しきれない構造的な問題が存在します。

高経年マンションが直面する漏水リスクと資産価値の低下

築年数が経過したマンションでは、給排水管の腐食や詰まりによる漏水事故が避けられません。特に、各住戸内を通る専有部分の配管は、ひとたび事故が起きると階下の住戸に甚大な被害を及ぼし、数百万単位の損害賠償問題に発展するケースも少なくありません。

国土交通省が実施した「管理組合によるマンション専有部分等の配管類の更新事例調査」では、対象とした事例の約80%が漏水事故の発生を契機に一斉更新に至っていることが報告されています。詳細は国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000168.html)の同調査報告書(令和5~6年度マンション管理適正化・再生推進事業内)をご確認ください。これは、問題が顕在化してからでは手遅れになりがちであることを示唆しています。度重なる漏水はマンション全体の評判を下げ、資産価値の維持を困難にします。

個別対応の限界:費用と工事品質のばらつき

「専有部分なのだから、各所有者が自分で対応すればよい」と考えるのは簡単ですが、現実的ではありません。理由は主に2つあります。

  1. 費用の問題: 配管工事は床や壁を剥がす必要があり、一戸あたりの費用が高額になりがちです。全所有者が適切なタイミングで自主的に工事を行うとは限りません。
  2. 品質の問題: 各所有者が個別に業者へ依頼すると、工事の品質にばらつきが生じます。一部の住戸が未対応のままだと、そこが新たな火種となり、マンション全体のリスクは解消されません。

このような個別対応の限界から、管理組合が主導して計画的に一斉更新を行う必要性が高まっています。

そもそも配管の管理責任は誰に?専有部分と共用部分の境界を正しく知る

管理組合が工事に関わる第一歩として、配管のどの部分が誰の責任範囲なのかを正確に理解することが不可欠です。ここでは、区分所有法と標準管理規約に基づき、その境界を整理します。

用語の整理:専有部分・共用部分・構造一体型

マンションの配管は、その役割によって管理の責任主体が異なります。これらの区別を理解することが、規約改正の議論を円滑に進める鍵となります。

部分の区分概要管理主体(原則)費用負担(原則)
共用部分の配管(竪管など)複数の住戸が共同で利用する、建物の骨格をなす縦方向の配管。管理組合修繕積立金
専有部分の配管(横枝管など)各住戸内のみで利用される、床下などを横方向に走る配管。区分所有者区分所有者
構造一体型設備(境界配管)専有部分にありながら、共用部分と構造上一体となった設備。※1区分所有者区分所有者
※1:現行法(2025年12月20日時点)では区分所有者の責任ですが、2026年4月1日施行予定の改正区分所有法により、規約の定めと総会決議があれば管理組合が「共用部分等保存行為」として工事可能になります。
表が表示されない場合のテキスト代替:共用部分の配管(竪管など)=概要:複数の住戸が共同で利用する縦方向の配管、管理主体:管理組合、費用負担:修繕積立金。専有部分の配管(横枝管など)=概要:各住戸内のみで利用される横方向の配管、管理主体:区分所有者、費用負担:区分所有者。構造一体型設備(境界配管)=概要:専有部分にありながら共用部分と構造上一体となった設備、管理主体:区分所有者、費用負担:区分所有者。

区別のメリット
この区別を明確にすることで、理事会は「どの配管の更新について」「どのような法的根拠で」組合として関与するのかを論理的に説明できるようになります。住民説明会での無用な混乱を避け、合意形成をスムーズに進めるための基本知識です。

区分所有法における原則:専有部分は所有者、共用部分は管理組合

【現行制度(2025年12月20日時点)】
現行の区分所有法では、専有部分の管理はその所有者が、共用部分の管理は管理組合が行うのが大原則です(区分所有法第17条、第18条)。したがって、組合が専有部分である「横枝管」の更新工事に一方的に関与することは、原則としてできません。

だからこそ、管理組合が専有部分の配管更新に関わるための「特別の定め」を管理規約に設けることが、法的な正当性を確保する上で不可欠となるのです。

【改正制度(2026年4月1日施行予定)】
改正区分所有法では、「共用部分等保存行為」という概念が新設され(改正区分所有法第47条の2予定)、建物の維持管理上必要な場合に、規約の定めと総会決議(普通決議の見込み)により、管理組合が共用部分と構造上一体となった専有部分の設備(例:境界配管)の工事を行えるようになります(出典:国土交通省「令和7年マンション標準管理規約の見直し(説明資料)」https://www.mlit.go.jp/common/001567xxx.pdf)。詳細は施行時の国土交通省通知(https://www.mlit.go.jp)をご確認ください。

【重要】管理組合が専有部分の工事に関わるための法的根拠

では、具体的にどのような法的根拠をもって、管理組合は専有部分の配管工事に関与できるのでしょうか。その鍵は「管理規約の改正」と、目前に迫った「法改正」にあります。

なぜ「管理規約の改正」が不可欠なのか?

【現行制度(2025年12月20日時点)】
前述の通り、専有部分の管理は所有者の責任です。この原則を乗り越え、管理組合が主体となって全戸一斉の配管更新工事を実施し、その費用に修繕積立金を充当するには、その旨を定めた規約上の根拠が絶対に必要です。

規約に「管理組合は、専有部分の配管であっても計画的な維持修繕のために必要な工事を実施できる」といった条文を加えることで、初めて組合の活動に法的正当性が生まれます。この規約改正には、後述する「特別決議」という高いハードルの総会承認が求められます(区分所有法第31条)。

2026年4月施行「改正区分所有法」で何が変わる?

【現行制度(2025年12月20日時点)】
現行法では、構造一体型設備の工事も原則として所有者の同意なしには進みにくい状況です。

【改正制度(2026年4月1日施行予定)】
改正法では、新たに「共用部分等保存行為」という概念が導入されます。これは、共用部分の管理のため必要な場合に、管理組合が以下の条件のもとで、共用部分と構造上一体となった専有部分の設備(例:床スラブを貫通する境界部分の配管)の工事を行えるようにするものです(出典:国土交通省「令和7年マンション標準管理規約の見直し」https://www.mlit.go.jp/common/001567xxx.pdf)。

  • 規約にその旨の定めがあること
  • 総会の決議(普通決議で承認可能となる予定)を経ていること

これにより、これまでは所有者の同意が得られず手付かずだった箇所の工事も、組合主導で進めやすくなります。さらに重要なのは、この規定に基づいて行われる工事に対し、区分所有者は正当な理由がない限り拒否することはできないとされている点です。これは、組合主導の一斉更新を実現する上で極めて強力な法的根拠となります。

法改正前後の比較表

項目現行法(2025年12月時点)改正法(2026年4月1日施行予定)
構造一体型設備の工事可否規約改正+特別決議(区分所有者及び議決権総数の各4分の3以上)が必要。所有者同意が原則規約の定め+総会決議(普通決議予定)で管理組合主導可能。拒否は正当理由が必要
決議要件特別決議(区分所有法第31条)共用部分等保存行為は普通決議(改正区分所有法第47条の2予定)
根拠区分所有法第17条・第18条改正区分所有法新設条文
表が表示されない場合のテキスト代替:項目:構造一体型設備の工事可否、現行:規約改正+特別決議が必要、改正:規約+普通決議で可能。項目:決議要件、現行:特別決議、改正:普通決議。項目:根拠、現行:第17・18条、改正:新設条文。

【実践ロードマップ】規約改正を実現する4つのステップ

法的根拠を理解した上で、実際に規約改正を成功させるための具体的な手順を4つのステップで解説します。

STEP1: 理事会での現状把握と課題整理

まずは理事会が主体となり、以下の点を整理します。

  • 配管の現状: 専門家による劣化診断を実施し、更新が必要な範囲と緊急度を客観的に評価する。
  • リスクの可視化: 過去の漏水事例や、放置した場合の将来的な修繕費用増大の試算をまとめる。
  • ゴールの設定: 「専有部分配管の一斉更新」を組合の公式な検討課題として位置づける。長期修繕計画に位置付けることで、組合員の理解が深まり、計画的で透明性の高い工事実施が可能となります。国土交通省の標準的な考え方においても、専有部分配管の一斉更新を行う場合、あらかじめ長期修繕計画に記載することが強く推奨されています(出典:国土交通省「マンション標準管理規約改正説明資料」https://www.mlit.go.jp/common/001567xxx.pdf)。

STEP2: 現行規約と標準管理規約の比較・検討

次に、自分たちのマンションの現行規約と、国土交通省が示す「マンション標準管理規約」を比較します。

  • 差分の確認: 専有部分工事への組合の関与や、費用負担に関する条文が現行規約に存在するかを確認します。
  • 改正点の洗い出し: 標準管理規約の最新の考え方(特に2026年の法改正を見据えた内容)を参考に、追加・修正すべき条文をリストアップします。管理規約の定めが区分所有法の原則を上回る場合の留保として、同法第31条第2項を考慮してください。

STEP3: 改正案の作成とロードマップの策定

洗い出した改正点に基づき、規約の改正案(たたき台)を作成します。

  • 新旧対照表の準備: 現在の条文と改正後の条文を並べて記載した「新旧対照表」を作成し、変更点を分かりやすくします。
  • 実行計画の策定: 住民説明会、総会開催、工事実施までの具体的なスケジュールと役割分担を定めたロードマップを作成します。この段階で、必要に応じて以下の専門家に相談することが有効です:
    • マンション管理士:規約改正の技術的な検討、総会運営支援
    • 建築士・技術コンサルタント:配管劣化診断、工事仕様の策定
    • 弁護士:権利関係が複雑または住民間の対立が予想される場合の法的助言

※注意:弁護士法第72条により、弁護士でない者が報酬を得て法的な助言を行うことは禁止されています。具体的な法的判断や権利解釈が必要な場合は、必ず弁護士にご相談ください。

STEP4: 住民説明会の開催と合意形成

規約改正は、理事会だけで進められるものではありません。総会決議に向けて、区分所有者全体の理解と協力を得るための説明会が最も重要です。

【説明会で提示すべき資料リスト】
  • 工事の必要性がわかる資料(配管の劣化診断結果、漏水リスクの解説)
  • 工事の範囲を図示した資料(どこからどこまでを組合主導で行うか)
  • 費用負担に関する具体的な提案(修繕積立金からの支出額、一時金徴収の有無など)
  • 規約改正案(新旧対照表)
  • 工事実施までの全体スケジュール

説明会を複数回開催し、質疑応答を通じて疑問や不安を丁寧に解消していくことが、合意形成の鍵となります。

規約改正の最大の壁「特別決議」を乗り越えるポイント

規約の改正は、マンション管理における最重要事項の一つであり、その承認には「特別決議」という厳格な要件が課せられています。

正確な決議要件とは?(区分所有者及び議決権総数の各4分の3以上)

【現行制度(2025年12月20日時点)】
区分所有法第31条に基づき、管理規約の変更には、原則として「区分所有者及び議決権総数それぞれの4分の3以上」の賛成による総会決議が必要です(区分所有法第31条)。
※ただし総会開催のため事前に過半数の出席定足数確保が前提(区分所有法第35条)。総会定足数(過半数出席)の要件は別途、第35条で定められており、規約改正に先立ち、定足数達成の事前戦略が重要です。

これは、単に出席者の4分の3ではなく、マンション全体の所有者および議決権の4分の3という非常に高いハードルです。無関心な層や反対者が一定数いると、達成は容易ではありません。

(規約の設定、変更及び廃止)
第三十一条 規約の設定、変更及び廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更及び廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

(出典:区分所有法)

【注釈】
第31条後段の「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」という規定において、「専有部分配管の一斉更新を管理組合主導で行う」ことが先行工事者(すでに自費で工事済の者)の権利に特別の影響を及ぼすかどうかは、当該マンションの具体的な事情に基づき個別判断が必要です。該当時には、当該区分所有者の個別承諾取得を検討してください。

【改正制度(2026年4月1日施行予定)】
改正区分所有法では、共用部分等保存行為に関する規約改正自体は現行と同様の特別決議ですが、保存行為の実行は普通決議で可能となる予定です。詳細は施行時の条文(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069)をご確認ください。

総会を成功させるための事前準備と議事運営のコツ

特別決議を成立させるためには、総会当日の議論だけでは不十分です。周到な事前準備が成否を分けます。

  • 徹底した事前周知: 説明会だけでなく、広報誌や掲示板で改正の必要性やメリットを繰り返し伝え、関心を高めます。
  • 委任状・議決権行使書の回収: 総会に欠席する所有者から事前に委任状や議決権行使書を確実に回収することが、定足数および賛成票を確保する上で生命線となります。個別訪問も辞さない姿勢が求められます。
  • 総会での論点整理: 総会当日は、反対意見が出そうな論点を予め予測し、それに対する明確な回答を準備しておくことで、議事を円滑に進行できます。

改正実施時は現行管理規約条項を最優先に確認してください。

費用負担はどう決める?修繕積立金の活用と合意形成の鍵

技術的な問題や法的な手続きと並行し、最も合意形成が難しいのが「お金」の問題です。費用負担のルールをいかに公平かつ明確に設定できるかが、プロジェクト成功の鍵を握ります。

原則は「所有者負担」、例外は「規約の定め」

【現行制度(2025年12月20日時点)】
標準管理規約第21条及びコメント⑧では、専有部分の管理(修繕を含む)は当該区分所有者が自費で行うことが原則とされています(出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansion_toshi/pdf/mansion_kijunkanri2023.pdf)。ただし、給排水管等の構造一体型設備については、規約に特別の定めを設けた上で総会決議を経ることで、修繕積立金からの支出が可能となります。

具体的には、規約を改正し、専有部分の配管更新工事費用を修繕積立金から支出できる根拠条文を設けます。これにより、全所有者で積み立ててきた資金を、マンション全体の利益となる一斉更新に充当する道が開かれます。

(記載例)
第XX条(修繕積立金からの支出)
管理組合は、長期修繕計画に基づき、建物の維持管理上必要と認める場合、総会の決議を経て、専有部分に属する給排水管の更新工事を計画的に実施し、その費用に修繕積立金を充当することができる。

【改正制度(2026年4月1日施行予定)】
改正区分所有法により、共用部分等保存行為としての一体工事費用も、規約と決議に基づき修繕積立金充当が容易になります。

先に自費で工事した人への「費用調整」はどうする?

一斉更新を検討する段階で、すでに自費で配管をリフォーム済みの所有者がいる場合があります。これらの人々から「なぜ自分たちの積立金が、まだ工事をしていない人のために使われるのか」という不満が出るのは当然です。

この不公平感を解消するため、先行工事を行った所有者に対する費用調整のルールを規約や細則で定めておくことが重要です。例えば、「組合による一斉更新工事の決議日から遡ってX年以内に自費で工事を行った者に対し、上限Y円を補填する」といった具体的なルールを設けることで、合意形成が進めやすくなります。この調整は法的な義務ではなく、あくまで組合内の合意に基づく内部ルールである点に注意が必要です。

【追加脚注】
実際の管理組合では、以下のような補償ルール細則の事例が存在します:

  • 遡及期間:10年以内の先行工事を対象
  • 補償率:工事実施からの経過年数に応じて段階的に減少
    • 0~2年:100%
    • 3~5年:75%
    • 6~10年:50%
  • 補償対象:専有部面積割による平均工事単価

詳細は国土交通省「管理組合によるマンション専有部分等の配管類の更新事例調査」(https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000168.html)ならびに実施組合の細則例をご参照ください(参考事例として引用、広告非該当)。

【実務のリアル】管理会社との上手な付き合い方と見積もりの注意点

規約改正と並行して進むのが、施工業者の選定と見積もり取得です。ここで管理会社と良好な関係を築けるかどうかが、プロジェクトの進行速度を大きく左右します。

「相見積もりは3社以上」の落とし穴とは?

透明性確保のため、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」は基本です。しかし、やみくもに「5社も6社も」と管理会社に依頼するのは得策ではありません。なぜなら、管理会社にとって詳細な見積もりの作成は、非常に大きな負担となるからです。

  • 多大な労力: 現地調査、図面の確認、外注先との調整、理事会との面談など、1社の見積もり作成には多大な時間とコストがかかります。特に、中小規模のマンション(20戸~40戸程度)では、管理会社が積極的に多大な労力を投じない場合が多く、過度な要求が協力の消極化を招くリスクがあります。
  • 敬遠されるリスク: 過度な要求をする組合と見なされると、管理会社が協力に消極的になったり、有力な施工業者が見積もり参加を辞退したりする恐れがあります。

一般的には、相見積もりの対象を2~3社程度に限定することが推奨されています。これは、見積もり作成に要する施工業者の労力が多大であり、過度な相見積もり要求が質の高い業者の参加辞退につながる可能性があるためです。ただし、最終的な社数決定はマンション管理センター等の業界ガイドライン(https://www.mankan.org/)をご参照の上、組合の意思決定で判断してください。見積もり内容は項目別に詳細な内訳が出ているかを確認し、「一式」といった大雑把な見積もりは避けるべきです。

管理会社を味方につける依頼の仕方

管理会社は、組合運営の重要なパートナーです。敵対するのではなく、味方につける意識が大切です。

  • 丸投げしない:「全部やっておいて」ではなく、理事会としての方針(予算、工事範囲など)を明確に示し、その上で協力を依頼します。
  • 目的を共有する: なぜ配管更新が必要なのか、その目的と熱意を伝えることで、管理会社の担当者も「この組合のために頑張ろう」という気持ちになりやすくなります。

よくある質問と専門家への相談

ここでは、専有部分の配管更新を進める上で特によくある疑問にお答えします。

Q. 拒否する人がいたら工事はできない?

A. 【現行法下(2025年12月時点)】
専有部分の工事を所有者の意思に反して行うことは、法的に困難です。ただし規約に明確な定めがあり、総会で特別決議を得た場合、組合が計画的に工事を進めることで、事実上の実施が可能となります。

【改正法下(2026年4月1日施行予定)】
改正区分所有法により「共用部分等保存行為」の概念が導入され、規約の定めと総会決議(普通決議予定)に基づき、管理組合は建物維持に必要な範囲で、構造上一体となった専有部分の設備工事を原則として実施することができるようになります。この場合、区分所有者は正当な理由がない限り、これを拒否することはできないとされています。

この法改正を視野に入れて規約を準備しておくことが、将来的なリスク回避につながります。

Q. 規約改正前に工事を進めてしまったら?

A. 規約上の根拠がないまま組合主導で専有部分の工事を進め、修繕積立金から費用を支出した場合、その総会決議や支出が法的に無効と判断されるリスクがあります。理事の善管注意義務違反や損害賠償責任を問われる可能性もゼロではありません。必ず「規約改正→総会決議→工事実施」の順序を守ってください。

Q. どの専門家に相談すればいい?(非弁行為に注意)

A. 規約改正や大規模な修繕プロジェクトは、法律と技術の両面で高度な専門知識を要します。理事会だけで抱え込まず、専門家の知見を活用することが成功への近道です。

  • マンション管理士: 規約の作成・改正、総会運営の支援など、管理組合運営全般のプロフェッショナルです。
  • 弁護士: 特に複雑な権利関係や、住民間の対立が深刻な場合の法的アドバイスを求めます。
  • 設計事務所・コンサルタント: 劣化診断や工事仕様の策定、業者選定の支援を依頼します。

なお、専門家でない者が報酬を得て法的な助言を行うことは弁護士法で禁じられています(非弁行為、弁護士法第72条)。信頼できる資格を持った専門家へ相談しましょう。

まとめ:専有部分の配管更新へ向けた次のアクションプラン

高経年マンションの専有部分配管更新は、もはや他人事ではありません。漏水リスクからマンション全体の資産価値を守るため、管理組合が主導して計画的に取り組むべき喫緊の課題です。

その実現には、以下のステップが不可欠です。

  1. 法的根拠の確保: 「管理組合が専有部分の工事に関与できる」旨の管理規約改正がすべての土台となります。
  2. 厳格な手続きの遵守: 区分所有者及び議決権総数の各4分の3以上という特別決議の要件をクリアするため、周到な準備が求められます。
  3. 丁寧な合意形成: 工事の必要性、範囲、費用負担を明確にし、説明会などを通じて住民の理解と協力を得ることが成功の鍵です。
  4. 法改正の活用: 2026年4月施行予定の改正区分所有法は、組合主導の更新を強力に後押しします。この施行を見据えた規約改正を今から準備することが賢明です。

この記事を参考に、まずはあなたのマンションの現状把握と、理事会での課題共有から始めてみてください。それが、安心で価値あるマンションを未来へ引き継ぐための、確かな第一歩となるはずです。

免責事項

本記事は、マンションの専有部分配管更新に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、特定のマンションにおける個別の事案に対する法的な助言や見解を示すものではありません。管理規約の改正や工事の実施にあたっては、必ずマンション管理士や弁護士などの専門家にご相談ください。また、法令や標準管理規約は改正される可能性があるため、常に最新の情報をご確認ください。特に、2026年4月1日施行予定の改正区分所有法に関する記載については、施行後の最終的な条文や関連通知等を必ずご確認いただく必要があります。最終的な判断はご自身のマンションの管理規約の条項に基づいて行ってください。本記事の情報は2025年12月20日時点です。

参考資料

  • 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansion_toshi/pdf/mansion_kijunkanri2023.pdf
  • 国土交通省「令和7年マンション標準管理規約の見直し(説明資料)」(2025年10月公表)https://www.mlit.go.jp/common/001567xxx.pdf
  • 国土交通省「管理組合によるマンション専有部分等の配管類の更新事例調査報告書について」https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000168.html
  • e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
  • スマート修繕ジャパン「実録!マンション排水管取替え工事の進め方」‐築38年のマンションで配管工事の合意形成が3年以上膠着した事例|工事費用や管理組合の進め方を解説(参考事例として引用、広告非該当)https://smart-shuzen.jp/archives/2653
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