2025.05.28
- column
【2025年改正】区分所有法のポイント解説:管理組合が押さえるべき変更点と適用要件
2025年、マンション管理の基盤となる「区分所有法」が大きく改正されます。この改正は、老朽化マンションの増加や所有者の高齢化・所在不明化といった社会課題に対応するためのものです。管理組合の皆さまにとって、今後の運営に直結する重要な変更点を以下にまとめました。
◆ 改正の背景と目的
全国的に築40年以上のマンションが増加し、今後20年でその数は約425万戸に達すると予測されています。また、相続や投資目的での所有が増え、所有者の所在不明や非居住化が進行。これにより、修繕や建替えの意思決定が困難になるケースが増えています。今回の改正は、こうした課題に対応し、マンションの適切な維持管理と再生を促進することを目的としています。
.png)
~令和7年3月4日国土交通省 報道発表資料より~
◆ 改正の主なポイントと具体例
1. 決議要件の緩和
これまで、共用部分の大規模な変更や建替えには、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要でした。改正後は、耐震性不足やバリアフリー基準への不適合など、一定の要件を満たす場合に限り、4分の3以上の賛成で決議が可能となります。
具体例:
築50年のマンションで、耐震診断の結果、耐震性が不足していることが判明。改正後は、建替え決議に必要な賛成数が緩和され、4分の3以上の賛成で建替えが可能となります。
2. 所有者不明問題への対応強化
所在不明の所有者がいる場合、裁判所の決定により、その所有者を決議の分母から除外できる制度が導入されます。これにより、合意形成が円滑に進むことが期待されます。
具体例:
管理組合が建替えを検討しているが、所有者の一部が長期間連絡が取れず、所在不明。裁判所の決定により、所在不明の所有者を決議の分母から除外し、残りの所有者で建替えの意思決定を進めることが可能となります。
3. 管理不全建物への対処制度の創設
管理が適切に行われていないマンションに対し、行政が是正勧告や命令を出すことができる制度が新設されます。これにより、管理不全の状態を是正し、住環境の改善を図ることが可能となります。
具体例:
共用部分の修繕が長年行われず、エレベーターや配管の故障が頻発しているマンション。行政が是正勧告を出し、管理組合に対して修繕計画の策定と実施を求めることが可能となります。
4. 一棟リノベーションの決議要件の緩和
建物全体のリノベーションについても、一定の要件を満たす場合には、従来よりも少ない賛成数で決議が可能となります。これにより、老朽化したマンションの再生が促進されることが期待されます。
具体例:
築40年のマンションで、外壁や共用部分の老朽化が進行。改正後は、全体のリノベーションを行うための決議要件が緩和され、より少ない賛成数でリノベーションを実施できるようになります。
◆ 管理組合が取るべき対応策
- 建物の現状把握
耐震診断や設備の劣化状況を確認し、必要な修繕や改修の計画を立てましょう。 - 所有者情報の整理
所有者の連絡先や居住状況を把握し、所在不明者がいる場合は早期に対応策を検討しましょう。 - 管理規約の見直し
改正法に対応した管理規約への改定を検討し、必要に応じて専門家の助言を受けましょう。 - 合意形成のための情報共有
所有者間での情報共有を積極的に行い、改正内容や必要性についての理解を深めましょう。
◆ まとめ
2025年の区分所有法改正は、マンションの適切な管理と再生を促進するための重要な一歩です。管理組合としては、改正内容を正しく理解し、早期に対応策を講じることが求められます。不明点や対応に不安がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。
まずは無料相談から。専門家と進め方について一緒に考えましょう。
📋 この記事を書いたのは…
株式会社MIJ 建物管理部 杉浦(マンション管理士・二級建築士)
不動産業界に従事して13年。現在は小規模マンションや自主管理組合のサポートに注力しています。
本年より自身も居住しているマンションの理事長に就任。首都圏の実情に即した現場支援をモットーに、日々管理組合の課題解決に取り組んでいます。