【2025年改正】区分所有法のポイント解説:管理組合が押さえるべき変更点と適用要件

2025年施行の区分所有法改正ポイント(決議要件の緩和と所有者不明対応)を示すビジュアル

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2025年、マンション管理の根幹となる「建物の区分所有等に関する法律(略称:区分所有法)」が大きく改正されます。
この改正は、急速に進むマンションの老朽化、所有者不明・非居住化、災害対応、管理不全の増加など、現実の課題に対応するためのものです。
管理組合や管理会社は、今後の運営を左右する法改正を正しく理解し、事前準備を進めておくことが求められます。

以下では、改正の背景から主要なポイント、対応策までを、わかりやすく整理してご紹介します。

目次

区分所有法の役割と管理組合との関わり

「区分所有法」とは、戸建て住宅とは異なり、各住戸を所有する区分所有者が共用部分を共同管理する分譲マンションの体制を法制度として支える法律です。
例えば、共用部分(廊下、エレベーター、屋根、外壁など)の修繕、増改築、建て替え、管理組合運営、管理規約の変更などは、この法律の枠組みの下で調整・決議を行う必要があります。

マンションが築年数を重ねるにつれて、修繕頻度や合意形成の困難性が高まるため、区分所有法の実効性が住環境の持続性を大きく左右します。
今回の改正は、まさにこの法制度を「実務対応型」にアップデートしようという試みとも言えます。

区分所有法改正が必要な理由:背景にある課題

改正に至った背景には、いくつかの重大な課題があります。以下では、特に注目すべき4つを整理します。

築40年超のマンションが急増 ― 老朽化問題

全国的に築40年以上のマンションが増加し、今後20年でその数は約425万戸に達すると予測されています。
これだけ老朽化物件が増えると、給排水管や電気設備、エレベーター、外壁などの劣化や不具合は必至で、修繕コストと頻度が上昇します。
同時に、修繕積立金が不足するマンションも多く、必要な改修・再生が後手に回る事例も増えてきます。

所有者不明・非居住化の広がりと合意形成困難

相続登記が放置されたまま所有者不明となる住戸、遠方住まいで投資目的の非居住の所有者、連絡不能な所有者などが増加しています。
こうした住戸があると、総会や決議を行う際の合意形成が事実上ストップしてしまうケースが多いです。
特に「建て替え」「大規模修繕」「共用部分の変更」など、高い決議要件を伴う案件では、少数の反対や所在不明者の存在が足かせになります。

被災マンションの再建が進まない現実

地震、水害など災害で被害を受けたマンションでは、再建・復旧が滞る事例が報告されています。
被災後に経済的・心理的負荷が大きい中で、全員一致や高い賛成割合を要する法律設計では、迅速な復建が困難になる恐れがあります。

管理不全マンションの拡大

修繕が長年行われず、設備故障が多発、共用部が放置されているような「管理不全状態」のマンションが全国で増えています。
管理組合が機能不全に陥ると、そのまま建物価値や住環境が悪化するリスクが高まります。

~令和7年3月4日国土交通省 報道発表資料より~

改正の主なポイントと具体例

建替え・共用部分の大規模な変更決議要件の緩和

これまで、共用部分の大規模な変更や建替えには、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要でした。改正後は、耐震性不足やバリアフリー基準への不適合など、一定の要件を満たす場合に限り、4分の3以上の賛成で決議が可能となります。

具体例:
築50年のマンションで、耐震診断の結果、耐震性が不足していることが判明。改正後は、建替え決議に必要な賛成数が緩和され、4分の3以上の賛成で建替えが可能となります。

所有者不明問題への対応強化

所在不明の所有者がいる場合、裁判所の決定により、その所有者を決議の分母から除外できる制度が導入されます。これにより、合意形成が円滑に進むことが期待されます。

具体例:
管理組合が建替えを検討しているが、所有者の一部が長期間連絡が取れず、所在不明。裁判所の決定により、所在不明の所有者を決議の分母から除外し、残りの所有者で建替えの意思決定を進めることが可能となります。

管理不全建物への対処制度の創設

管理が適切に行われていないマンションに対し、行政が是正勧告や命令を出すことができる制度が新設されます。これにより、管理不全の状態を是正し、住環境の改善を図ることが可能となります。

具体例:
共用部分の修繕が長年行われず、エレベーターや配管の故障が頻発しているマンション。行政が是正勧告を出し、管理組合に対して修繕計画の策定と実施を求めることが可能となります。

一棟リノベーションの決議要件の緩和

建物全体のリノベーションについても、一定の要件を満たす場合には、従来よりも少ない賛成数で決議が可能となります。これにより、老朽化したマンションの再生が促進されることが期待されます。

具体例:
築40年のマンションで、外壁や共用部分の老朽化が進行。改正後は、全体のリノベーションを行うための決議要件が緩和され、より少ない賛成数でリノベーションを実施できるようになります。

管理組合が取るべき対応策

マンションの管理組合にとって、区分所有法や関連法令の改正は直接自分たちの運営に影響を及ぼす重要な問題です。改正後に慌てて対応するのではなく、今のうちから準備を進めておくことが安定した管理につながります。以下のような取り組みを進めることが望ましいでしょう。

法改正の情報収集と理解

まず重要なのは、管理組合として正しい情報を得ることです。法改正は専門的な表現が多いため、国土交通省や自治体の公表資料、信頼できる専門家の解説を参考にして理解を深めることが必要です。理事長や理事だけでなく、組合員全体が概要を共有できるよう、総会や掲示板での説明も効果的です。

規約・細則の点検と見直し

法改正に合わせて、管理規約や使用細則が現状に即しているかを確認することが大切です。特に議決要件やオンライン総会の規定、防災関連のルールなどは今後の改正に影響を受けやすい部分です。規約改正が必要な場合は、専門家の助言を受けながら早めに草案を準備しておくことが望まれます。

合意形成の準備

管理組合が区分所有法改正に備えるためには、まず情報共有の仕組みを整えることが重要です。従来はアンケートや理事会便りといった紙媒体が中心でしたが、最近ではより効率的なデジタル手段の活用が進んでいます。

例えば、グループLINEや情報共有システムツールを導入すれば、所有者・居住者間での迅速な意見交換や資料共有が可能になります。これにより、総会前に議案への意見を集約したり、修繕計画や防災情報をタイムリーに発信することができます。

また、デジタル化は外部所有者や遠方在住の組合員との連携強化にも有効です。郵送や紙資料に頼らずとも、必要な情報をオンラインで確認・参加できる体制を整えておくことは、合意形成をスムーズに進めるための大きな一歩となります。

専門家・外部の力を活用

法改正に関する判断を組合だけで行うのは難しい場合があります。顧問弁護士や管理士、行政窓口など外部の専門家に相談することで、誤った解釈や対応の遅れを防ぐことができます。

まとめ:改正は「壁」ではなく「転換機」

2025年の区分所有法改正は、従来制度の限界を乗り越え、マンションの維持・再生を可能にする制度基盤を刷新する試みです。
管理組合・管理会社にとっては、制度対応を怠れば「旧制度の制約」に縛られることになりますが、先手を打って準備すれば、法改正を追い風とする体制づくりの好機にもなります。

まずは無料相談から。専門家と進め方について一緒に考えましょう。

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