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マンションの管理委託費について、「うちのマンションは相場より高いのでは?」と疑問に感じたことはありませんか。管理組合の理事や区分所有者にとって、管理委託費の内訳と平均値は非常に気になるところです。しかし、その内訳は複雑で、適正価格を判断するのは容易ではありません。
この記事では、宅地建物取引士の視点から、マンション管理委託費の 기본적인知識をわかりやすく解説します。国土交通省が公表する最新の統計データ(令和5年度)を基に、管理委託費の内訳項目や規模別の平均額を具体的に紹介します。さらに、ご自身のマンションの費用が適正かを見極める法的チェックポイント、そして実際に費用を見直すための具体的な5ステップと交渉のコツまで、実践的な情報をお届けします。
この記事を最後まで読めば、管理委託費の構造を正しく理解し、平均と比較しながら現状を客観的に評価し、適正化に向けた第一歩を踏み出せるようになります。
そもそも「管理委託費」とは?「管理費」との違いを正しく理解する
管理委託費の見直しを検討する前に、まず関連する用語を正しく理解することが不可欠です。特に「管理委託費」と「管理費」は混同されがちですが、その意味は全く異なります。
管理委託費:管理組合が管理会社へ支払う業務の対価
管理委託費とは、マンションの管理組合が、管理業務を委託した管理会社に対して支払う「業務の対価」のことです。具体的には、事務管理、清掃、設備点検といった専門的なサービスへの報酬であり、管理組合の支出項目の一つとなります。
管理費:区分所有者が管理組合へ支払う運営費用
一方、管理費とは、区分所有者全員が、マンションの共用部分を維持管理するために、管理組合へ毎月支払う費用のことです。この集められた管理費が管理組合の収入となり、その中から管理会社への管理委託費や、共用部分の光熱費などが支払われます。
つまり、お金の流れは「区分所有者 →(管理費)→ 管理組合 →(管理委託費)→ 管理会社」となります。管理委託費の額は、私たちが毎月支払う管理費の額に直接影響を与える重要な要素なのです。
修繕積立金との関係性と分別管理の義務
マンションで毎月支払う費用には「管理費」のほかに「修繕積立金」があります。これは、将来の大規模修繕工事に備えるための積立金であり、日常の維持管理に使われる管理費とは明確に区別されます。
マンション管理適正化法第76条では、管理会社は、管理組合から預かったこの「管理費」と「修繕積立金」を、自社の財産とは明確に分けて管理すること(分別管理)が義務付けられています(出典:マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第76条)。これにより、会計の透明性が確保され、組合の財産が保護されています。
管理委託費の5つの主要な内訳と費用項目
管理委託費は、具体的にどのような業務の対価なのでしょうか。国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」などを参考にすると、主に以下の5つの業務に大別されます。ご自身のマンションの契約書と見比べてみましょう。
① 事務管理業務費(会計、総会支援など)
管理組合の運営をサポートする頭脳部分の費用です。主な業務は以下の通りです。
- 管理費・修繕積立金の出納・会計業務
- 理事会や総会の運営支援(資料作成、議事録案作成など)
- 管理組合の予算案・決算案の作成補助
② 管理員業務費(受付、巡回、立会いなど)
マンションの”顔”ともいえる管理員さんの人件費です。勤務形態(常駐、巡回、勤務時間など)によって費用は大きく変動します。
- 来訪者の受付・対応
- 共用部分の鍵の管理・貸出
- 建物・設備の目視点検、巡回
- 業者作業の立会い
③ 清掃業務費(日常清掃、定期清掃)
マンションの美観と衛生を保つための費用です。日常的な清掃と、専門機材を使った定期的な清掃に分かれます。
- 日常清掃:エントランス、廊下、階段などの掃き拭き、ゴミ置き場の整理など。
- 定期清掃:床面のポリッシャー洗浄やワックスがけなど。
④ 設備管理業務費(エレベーター、消防設備点検など)
住民の安全と快適な生活を守るため、各種設備の法定点検や保守にかかる費用です。マンションの設備が複雑・多機能であるほど高くなる傾向があります。
- エレベーター保守点検
- 消防用設備等点検
- 給排水設備、受水槽・高置水槽の点検・清掃
- 機械式駐車場保守点検
⑤ 24時間遠隔管理費などその他費用
火災報知器や給排水設備の異常などを24時間体制で監視するシステムの利用料です。警備会社と連携している場合が多く、緊急時の駆けつけ対応なども含まれます。
Point:これらの内訳が「どの業務に」「いくら」かかっているかを把握することが、管理委託費の適正化に向けた第一歩です。
【国土交通省統計】管理委託費の平均は月額10,838円/戸|規模別の実態
国土交通省が約5年ごとに実施している「マンション総合調査」の最新版(令和5年度)によると、管理会社に管理を委託しているマンションの管理委託費の全体平均は、1戸あたり月額10,838円でした。
ただし、この数値はあくまで全国平均です。実際にはマンションの戸数規模によって1戸あたりの負担額は大きく異なります。
全体平均と戸数規模別の月額平均データ(令和5年度)
以下の表は、マンションの総戸数規模別の1戸あたり月額管理委託費の平均値です。
| 総戸数規模 | 管理委託費(1戸あたり月額) |
|---|---|
| 20戸以下 | 17,992円 |
| 21~30戸 | 15,487円 |
| 31~50戸 | 13,890円 |
| 51~75戸 | 12,491円 |
(表が表示されない場合:総戸数規模20戸以下 17,992円、21~30戸 15,487円、31~50戸 13,890円、51~75戸 12,491円)
なぜ小規模マンションほど一戸あたりの負担が大きくなるのか?
表を見ると、マンションの規模が小さいほど、1戸あたりの管理委託費が割高になる傾向がはっきりとわかります。これは、エレベーターの保守点検費や消防設備点検費といった、マンションの規模にかかわらず一定額かかる「固定費」を、より少ない戸数で分担するためです。
平均値は絶対ではない!比較時に考慮すべき4つの変動要因
この統計データは非常に参考になりますが、ご自身のマンションの管理委託費が平均より高いからといって、直ちに「不適正」と判断するのは早計です。比較する際には、以下の変動要因を必ず考慮してください。
- 所在地:人件費が高い都市部か、そうでない地方か。
- 築年数:新しいか古いか。古いほど点検や補修の頻度が上がり、費用が増加する傾向があります。
- 共用設備:エレベーターの基数、機械式駐車場の有無、ゲストルーム、フィットネスジムといった特殊な設備の有無。
- サービスレベル:管理員の勤務形態(常駐か巡回か、週何日・何時間勤務か)、清掃の頻度など。
これらの条件が平均的なマンション像から離れているほど、管理委託費も平均値から乖離します。管理委託費は規模別・地域別・設備複雑度・提供サービスの複合要因で決定されるため、単一の比率計算は適切ではありません。
あなたの管理委託費は適正?契約書で確認すべき法的チェックポイント
平均値との比較とあわせて、契約内容そのものが透明性を確保しているか、法的な観点からチェックすることも重要です。
マンション管理適正化法が定める「会計の透明性」
前述の通り、マンション管理適正化法は管理組合の財産の分別管理を義務付けています。この法律の根底にあるのは「会計の透明性」の確保です。管理委託費の内訳が不明瞭な状態は、この法の趣旨に反するともいえます。
「標準管理委託契約書」で内訳の明記が標準に
国土交通省は、管理組合と管理会社が契約を結ぶ際のひな形として「マンション標準管理委託契約書」を公表しています。これは法律ではありませんが、契約内容の標準的なモデルを示すものです。
この標準契約書では、管理委託費の内訳を「別紙1(定額委託業務費)」および「別紙2(精算対象費用)」に具体的に明記することが定められています(出典:国土交通省「マンション標準管理委託契約書及び同コメント」)。もし、あなたのマンションの契約書に詳細な内訳の記載がない場合、この標準的な形式に準拠していない可能性があります。
要注意!「一式」見積もりは透明性を損なう危険なサイン
管理会社からの見積書や契約書で最も注意すべきなのが「一式」という表記です。
| (記載例) 【悪い例】設備管理業務費 一式 〇〇〇円 【良い例】 ・エレベーター保守点検費 〇〇円 ・消防設備点検費 〇〇円 ・給水設備点検費 〇〇円 |
「一式」表記は、具体的にどの業務にいくらかかっているのか全く分からず、費用の妥当性を判断する材料を奪ってしまいます。これは会計の透明性を著しく損なうものであり、管理組合として基本的に受け入れてはならない危険なサインと認識すべきです。一式表記は透明性を著しく損なうため、避けるべきです。
管理委託費を見直すための具体的な5ステップと交渉術
管理委託費に疑問を感じたら、以下のステップに沿って見直しを進めましょう。
Step1: 現状の契約書と収支報告書を精査する
まずは「敵を知り己を知る」です。現在の管理委託契約書と、毎月の収支報告書を照らし合わせ、「どの業務に」「実際にいくら支払っているのか」を正確に把握します。特に「一式」表記になっている項目がないかチェックしましょう。
Step2: 内訳の不明点を管理会社に質問・明確化を求める
Step1で不明瞭だった点、特に「一式」表記の項目について、管理会社に文書で質問し、詳細な内訳の提示を求めます。「国土交通省の標準管理委託契約書に則った形式でご提示ください」と伝えるのが効果的です。
Step3: 2〜3社から相見積もりを取得する
現在の管理会社との交渉材料、あるいは管理会社変更の判断材料として、他の管理会社から相見積もりを取得します。この際、現在の管理仕様(業務内容や頻度)と同じ条件で見積もりを依頼することが比較の基本です。
Step4: 見積もり内容を比較・検討する
取得した複数の見積書を比較します。単に総額の安さだけで判断してはいけません。
- 各業務項目の費用は妥当か?
- 安すぎる項目はないか?(サービスの質が低下するリスク)
- 提案されている業務内容に漏れはないか?
理事会でこれらの点を十分に議論し、どの会社が組合にとって最適かを検討します。
Step5: 理事会・総会で決議し、契約変更または更新を行う
現在の管理会社との条件交渉、または新しい管理会社への変更について、理事会で方針を固めます。最終的に管理委託契約の締結や変更を行うには、管理規約に別段の定めがない限り、区分所有法第39条に基づく普通決議(区分所有者および議決権の各過半数の賛成)が必要です(出典:建物の区分所有等に関する法律 第39条)。総会で組合員の合意を得て、正式に契約手続きを進めます。
【重要】相見積もりを依頼する際の注意点|管理会社側の事情
管理委託費の見直しで有効な相見積もりですが、やみくもに行うと失敗する可能性があります。管理組合側だけでなく、管理会社側の事情も理解しておくことが、成功の秘訣です。
なぜ相見積もりは2〜3社が現実的なのか?
管理会社は、正確な見積もりを作成するために多大な労力をかけます。
- 現地に何度も足を運び、建物の状況を確認する。
- 清掃、警備、設備点検など、多数の外注先と調整・交渉を行う。
- 理事会に出席し、提案内容の説明や質疑応答を行う。
これらはすべてコストのかかる作業です。そのため、例えば5社も6社も相見積もりを取ろうとすると、「受注できる可能性が低い」と判断され、多くの管理会社から見積もりの提出を断られたり、形式的な提案しか受けられなかったりする可能性が高まります。
本気の提案を引き出すためには、依頼先を2〜3社に絞り込むのが現実的かつ効果的です。
過度な要求が敬遠される理由:管理会社の労力とコスト
特に、現在自主管理を行っている場合や小規模なマンションからの依頼は、管理仕様を一から策定する必要があり、管理会社側の負担はさらに大きくなります。過度なコスト削減要求や無理な仕様変更を最初から求めると、敬遠される一因となります。
特に20〜40戸規模のマンションが見積もり取得で注意すべきこと
20戸から40戸程度の、いわゆる小規模マンションは、管理会社にとって利益を出しにくい規模であるのが実情です。そのため、大手管理会社の中には、この規模のマンションの管理を積極的に受注しない方針のところもあります。相見積もりを依頼する際は、小規模マンションの管理実績が豊富な中堅の管理会社なども候補に入れると、より良い提案を受けられる可能性が高まります。
Q&A|管理委託費に関するよくある質問
Q. 管理委託契約の変更にはどんな手続きが必要?
A. 前述の通り、管理会社を変更したり、現在の契約内容を大幅に変更したりする場合、管理規約に別段の定めがなければ、区分所有法第39条に基づく総会での普通決議(区分所有者数および議決権の各過半数による賛成)が必要です。理事会だけで勝手に決めることはできません。
Q. 「マンション管理適正評価制度」は管理会社の評価ではない?
A. はい、その通りです。時々誤解されますが、「マンション管理適正評価制度」は、管理会社を評価・格付けする制度ではありません。これは、管理組合の管理状況(運営、会計、建物維持など)がどのレベルにあるかを星の数などで評価・公表する制度です。管理の質を客観的に示す指標にはなりますが、管理会社の優劣を直接示すものではない点に注意が必要です。この制度は管理組合の管理状態の自己認証の公表であり、管理会社の登録義務(マンション管理適正化法第44条)は別途定められています。
Q. 自主管理に切り替えれば安くなる?
A. 理論上、管理会社に支払う管理委託費がゼロになるため、コストは削減できます。しかし、その分、会計、総会運営、業者手配、トラブル対応といった全ての業務を理事会役員が担うことになります。専門知識の不足や役員の過大な負担、緊急時対応の遅れといったデメリットも大きく、安易な移行は推奨されません。
2025年時点での市場トレンド
マンション管理費市場は人手不足の深刻化に伴い、管理委託費の上昇圧力が増す傾向にあります。特に100世帯未満の小規模物件では、管理会社の採算性重視により、一戸あたりの負担額が規模の大きいマンションをさらに上回る見通しです。
まとめ:平均値は参考に、内訳の透明化から始めよう
本記事では、マンション管理委託費の内訳、平均値、そして見直しの手順について詳しく解説しました。
- 管理委託費と管理費の違い:管理委託費は管理組合が管理会社へ支払う業務対価であり、区分所有者が支払う管理費の中から支出される。
- 全国平均と規模別データ:全体平均は1戸あたり月額10,838円(令和5年度)だが、小規模マンションほど割高になる傾向がある。
- 平均値は参考程度に:平均との比較も重要だが、それ以上に立地・築年数・設備・サービス内容といった個別要因の考慮が不可欠。
- 最重要ポイントは「内訳の透明化」:「一式」見積もりを排し、何にいくらかかっているかを明確にすることが適正化の第一歩。
- 見直しは手順を踏んで:現状分析から始め、相見積もり取得、총会決議というステップを慎重に進めることが成功の鍵。
ご自身のマンションの管理委託費が高いと感じたら、まずは平均値と比較してみましょう。そして、それ以上に大切なのは、現在の契約書を手に取り、費用の内訳がガラス張りになっているかを確認することです。そこから、あなたのマンションの管理をより良く、より適正にするための道が拓けるはずです。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、各マンションの管理委託契約の更新・変更・解約に際しては、当該マンションの現在の管理委託契約書に記載された条項が最優先されます。契約条項と本記事の記述に矛盾がある場合、必ず契約書を確認し、必要に応じて弁護士・マンション管理士に個別相談してください。
本記事は、マンション管理委託費に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、特定のマンションや契約に関する個別具体的な法的助言またはコンサルティングを行うものではありません。著者は特定の管理会社等と利害関係はありません。
記事内の情報は、執筆時点の法令(マンションの管理の適正化の推進に関する法律、建物の区分所有等に関する法律など)および公的資料に基づいておりますが、その後の法改正等により内容が変更される可能性があります。
CNN管理委託費の見直しや管理会社の変更など、 중요한意思決定を行う際には、必ず最新の法令や個別の管理規約・契約条項をご確認の上、必要に応じて弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。
参考資料
本記事で使用する統計データは令和5年度(2023年度実績)を基準としています。国土交通省は約5年ごとにマンション総合調査を実施しており、最新の発表動向についてはe-Gov及び同省公式サイトでご確認ください。
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html - 国土交通省「マンション標準管理委託契約書及び同コメント」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000056.html - マンションの管理の適正化の推進に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000149 - 建物の区分所有等に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069 - 国土交通省「マンション管理の新制度」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000053.html
島 洋祐
保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

