マンション自主管理「会計のみ委託」完全ガイド:費用相場・メリット・デメリット・選び方

会計のみ委託の解説記事で引用されている主要な法律条文とその内容、そして記事本文の該当箇所を一覧にした表。管理適正化法、区分所有法、税理士法、およびマンション標準管理委託契約書に関する条文が示されています。これにより、記事の法的根拠が明確になり、読者はさらに詳細な情報を追いやすくなります。特に、監修者監修記事で法的根拠を明示することで、情報源の信頼性を高める効果があります。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンション自主管理における「会計のみ委託」とは? 費用相場・メリット・デメリット・委託先選びの完全ガイド

マンション管理組合の運営において、管理コストの削減は永遠のテーマです。しかし、すべての業務を組合員だけで行う「完全自主管理」は、会計業務の専門性や金銭管理の責任が重く、役員のなり手不足にもつながりかねません。

そこで有力な選択肢となるのが、日常の管理は自分たちで行い、専門性が高い「会計業務」のみを管理会社へ委託するハイブリッドな自主管理の形です。この方式は、コスト削減とリスク軽減のバランスを取れる可能性があります。

この記事では、宅地建物取引士の視点から、マンションの「会計のみ委託」を検討している管理組合役員の方へ向けて、その定義から費用相場、メリット・デメリット、そして失敗しないための委託先の選び方まで、一次情報に基づいて網羅的に解説します。この記事を読めば、あなたのマンションで「会計のみ委託」を導入すべきか、具体的な判断ができるようになります。

目次

マンション自主管理における「会計のみ委託」とは?

はじめに、「会計のみ委託」がどのような管理形態なのか、他の形態と比較しながらその定義と法的な位置づけを正確に理解しましょう。

「完全自主管理」「フル管理委託」との違い

マンションの管理形態は、管理会社への委託範囲によって大きく3つに分類できます。「会計のみ委託」は、その中間に位置する形態です。一般的に「完全自主管理」とは、清掃、点検、修繕手配、会計、総会運営など、すべての業務を管理組合役員や組合員が自ら行う形態を指しますが、多様な運用が可能です。

※表が表示されない場合:比較項目[①完全自主管理: 月額0円(実費のみ)、手間非常に高い、金銭管理リスク高い、業務の自由度非常に高い、求められる専門性会計・法律・建築全般]、[②自主管理+会計のみ委託: 月額2万円~5万円程度、手間中程度、金銭管理リスク低い、業務の自由度高い、求められる専門性法律・建築]、[③フル管理委託: 月額5万円~10万円以上、手間低い、金銭管理リスク非常に低い、業務の自由度中程度、求められる専門性(不要)]。

比較項目① 完全自主管理② 自主管理+会計のみ委託③ フル管理委託
月額費用(目安)0円(実費のみ)月額2万円~4万円程度月額5万円~10万円以上
組合役員の手間非常に高い中程度低い
金銭管理リスク高い低い非常に低い
業務の自由度非常に高い高い中程度
求められる専門性会計・法律・建築全般法律・建築(不要)
表1:マンション管理形態の比較

「会計のみ委託」は、コストメリットが大きい「完全自主管理」の良さを活かしつつ、最大のリスクである金銭管理の専門性と手間を外部化する、バランスの取れた選択肢といえます。

  • ① 完全自主管理: 清掃、点検、修繕手配、会計、総会運営など、すべての業務を管理組合役員や組合員が自ら行います。コストは最も安く済みますが、役員の負担は非常に大きく、専門知識も求められます。
  • ② 自主管理+会計のみ委託(本記事のテーマ): 日常の清掃手配や小修繕、理事会運営は組合が行い、手間と専門性が要求される月々の収支管理や決算書作成支援といった会計業務だけを管理会社に委託します。
  • ③ フル管理委託: 会計業務を含む、管理組合の運営業務のほとんどを管理会社に委託する形態です。役員の負担は最も軽くなりますが、管理委託費は高額になります。

法的な位置づけ:マンション管理適正化法上の「部分委託」

会計業務のみを委託することも、法律で定められた正式な「管理事務の委託」にあたります。ここで重要となるのが「基幹事務」の考え方です。

マンション管理適正化法では、管理事務の中でも特に重要なものを「基幹事務」と定めています(マンション管理適正化法 第2条第1項第8号)。

【基幹事務の定義と法的射程】
マンション管理適正化法 第2条第1項第8号により、基幹事務は以下の3つ:
1. 管理組合の会計の収入及び支出の調定(予算案・決算案の作成)
2. 管理組合の会計の収入及び支出の出納(金銭の徴収・支払い)
3. マンション(専有部分を除く)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整(長期修繕計画の策定・修繕工事の仕様決定等)

【委託と責任の分離】
– 基幹事務の執行は管理会社に委託できる
– 基幹事務の最終的な意思決定と監督責任は管理組合が保持する(決算の承認、支出の最終承認は管理組合・総会の権限)

※ 「基幹事務は委託不可」という誤解は廃除。正確には「基幹事務であっても執行は委託可、ただし最終責任は組合にあり」

(出典:マンション管理の適正化の推進に関する法律 第2条第1項第8号より抜粋)

一部で「基幹事務は委託できない」という誤解がありますが、これは正確ではありません。正しくは、基幹事務の業務遂行を外部に委託することは可能ですが、その業務に関する最終的な意思決定と責任は、管理組合自身が負わなければならない、ということです。

したがって、「会計のみ委託」は、基幹事務の一部を専門家(管理会社)に委託しつつ、支出の承認や決算の承認といった最終判断は管理組合が行う、法令に則った「部分委託契約」の一形態なのです。

会計のみ委託のメリット・デメリット

「会計のみ委託」は良いことばかりではありません。導入を判断する前に、メリットとデメリットの両面を冷静に比較検討することが不可欠です。

メリット:コスト削減と金銭リスク軽減の両立

最大のメリットは、フル管理委託に比べて大幅なコスト削減を実現しながら、自主管理で最も懸念される金銭トラブルのリスクを大きく引き下げられる点です。

  • 管理委託費の大幅な削減: フル管理委託と比較して、月額数万円〜十数万円のコスト削減が期待できます。削減できた費用を修繕積立金に充当することも可能です。
  • 金銭事故の防止: 専門家が毎月の収支をチェックし、分別管理された口座で金銭を扱うため、組合役員による横領や管理費の使い込みといった不正リスクを抑制できます。
  • 会計業務の負担軽減と属人化の解消:
    • 理事経験者の声: 「会計担当の役員が毎年交代するため、引き継ぎが非常に大変でした。会計を委託してからは、誰が役員になってもスムーズに運営できる体制が整い、役員のなり手不足解消にも繋がりました。」
  • 役員が本来の業務に集中できる: 面倒な会計処理から解放されることで、理事会は修繕計画の検討や管理規約の見直しといった、マンションの資産価値を維持・向上させるための本質的な議論に時間を割けるようになります。

デメリット:組合役員の業務負担と責任は残る

一方で、フル管理委託に比べれば、組合役員の業務負担と責任は格段に重くなります。

  • 会計以外の業務はすべて組合の仕事: 清掃業者やエレベーター保守会社との契約・指示、共用部分の電球交換、住民からのクレーム対応、総会・理事会の運営などは、すべて役員が主体となって行う必要があります。
  • 委託先(管理会社)の監督責任: 委託した会計業務が正しく行われているか、提出された収支報告書に不審な点はないかなどをチェックする責任は、管理組合(主に監事や理事長)に残ります。丸投げはできません。
  • 対応してくれる管理会社が限られる: 後述しますが、「会計のみ委託」は利益率が低いため、すべての管理会社が積極的に引き受けてくれるわけではない、という現実があります。

【相場】会計のみ委託する場合の費用目安

会計のみを委託する場合、費用はマンションの総戸数によって変動するのが一般的です。ここでは、費用の目安と、その料金に含まれる標準的な業務範囲を解説します。

戸数規模別の費用レンジ

あくまで目安ですが、会計のみ委託する場合の費用相場は以下の通りです。

※表が表示されない場合:マンションの総戸数[~30戸: 20,000円 ~ 30,000円]、[31戸~50戸: 25,000円 ~ 40,000円]、[51戸~100戸: 30,000円 ~ 50,000円]。

マンションの総戸数月額費用の目安
~30戸20,000円 ~ 30,000円
31戸~50戸25,000円 ~ 40,000円
51戸~100戸35,000円 ~ 50,000円
表2:戸数規模別の会計委託費用 目安

※上記は基本料金であり、管理費等の滞納者への督促業務や、駐車場の外部貸し出しに伴う収益事業の会計処理などを依頼する場合は、別途費用が発生することがあります。

費用に含まれる業務・含まれない業務

契約する管理会社によって差はありますが、一般的な月額費用には以下の業務が含まれます。契約前に、どこまでが基本料金の範囲内か必ず確認しましょう。

※表が表示されない場合:分類[含まれることが多い業務: 管理費・修繕積立金の収納、保管(○)、公共料金、業者への支払い代行(○)、月次収支報告書、未収金一覧表の作成・提出(○)、年度決算書(案)、予算(案)の作成支援(○)]、[別途費用または対象外となりやすい業務: 管理費等滞納者への督促(内容証明郵便の送付など)(△(回数制限や別途費用あり))、大規模修繕積立金の取り崩しに関する理事会・総会資料作成(△(別途費用の場合が多い))、税務申告代理(※)(×(税理士の独占業務))]。

分類業務内容の例基本料金での対応
含まれることが多い業務管理費・修繕積立金の収納、保管
公共料金、業者への支払い代行
月次収支報告書、未収金一覧表の作成・提出
年度決算書(案)、予算(案)の作成支援
別途費用または対象外となりやすい業務管理費等滞納者への督促(内容証明郵便の送付など)△(回数制限や別途費用あり)
大規模修繕積立金の取り崩しに関する理事会・総会資料作成△(別途費用の場合が多い)
税務申告代理(※)×(税理士の独占業務)
表3:会計委託の一般的な業務範囲

会計委託の具体的な業務範囲と管理組合が負うべき責任

契約後の「こんなはずではなかった」を防ぐため、委託できる業務と、管理組合に残る最終的な責任の境界線を明確に理解しておくことが極めて重要です。

委託できる業務:月次収支報告、決算書作成支援など

管理会社に委託できる主な会計業務は以下の通りです。

  • 収支管理:
    • 管理費等の収納状況の確認と記録
    • 共用部の水道光熱費や業者への業務委託費の支払い
    • 月次収支報告書の作成
  • 決算支援:
    • 年次決算報告書(案)、収支予算(案)の作成
    • 総会で承認を得るための資料作成の補助
  • 金銭の分別管理:
    • 管理組合名義の収納口座・保管口座の管理
    • 管理組合の財産(預金通帳等)と管理会社の財産を明確に分けて管理すること(マンション管理適正化法で義務化)


【宅建士からの注釈:税務申告支援の法的上限】
マンション管理組合でも、駐車場を外部に貸し出すなどして収益事業を行っている場合は税務申告が必要です。この際、管理会社ができるのはあくまで「収支計算書など、申告に必要な資料を作成する補助」までです。税務判断を伴う申告書の作成や税務署への代理申告は、税理士法に抵触する可能性があるため、必ず別途、税理士に依頼する必要があります。

【税務申告支援における管理会社と税理士の役割分担】
管理会社ができる業務(非弁業務):
– 収支計算書・決算書等の資料作成補助
– 管理費等の伝票・領収書の整理・保管
– 収支の集計と帳簿への記録
税理士に依頼すべき業務(税理士の独占業務):
– 税務申告書の作成(法人税・所得税・消費税等)
– 税務署への代理申告・代理納付(税理士法第2条)
– 税務判断が必要な会計処理の指導
違反時のリスク: 管理会社が税理士資格なく申告代理を行えば「税理士法違反」(無資格者による税務申告書作成= 税理士法第34条違反、罰金・懲役)

委託できない業務と組合の最終責任:支出承認、決算承認

会計業務を委託しても、以下の権限と責任は必ず管理組合(理事会・総会)に残ります。これらを放棄することはできません。

  • 支出の承認: 管理会社から提出された請求書に対し、支払いを承認する最終的な意思決定。
  • 月次報告の確認・承認: 管理会社が作成した月次収支報告書の内容を精査し、理事会で承認する責任。
  • 決算の承認: 管理会社が作成した決算書(案)を、監事が監査し、理事会で審議した上で、通常総会に上程し、区分所有者全体の承認を得る最終責任。
  • 予算の決定: 次年度の活動計画とそれに伴う予算を決定する権限。


会計業務を委託しても「丸投げ」は禁物です。管理会社はあくまで「執行機関の補助者」であり、最終的な監督責任は管理組合が負います。

【監事による監査と検証の実務】

監事は以下の責務を負う:

  1. 会計監査
    – 月次報告書の内容確認(不審な支出がないか)
    – 年度決算書の監査(領収書確認、帳簿照合等)
    – 理事会への監査報告
  2. 運営監査
    – 総会・理事会の議事進行の適法性確認
    – 管理規約・標準管理委託契約書の遵守状況確認
  3. 管理会社との面談
    – 四半期ごと(または年2回以上)の定期面談を推奨
    – 決算前には必ず監査コメント・質疑の機会を設定

※ 監事に報酬がない場合でも、上記監査責務は発生する。ただし、実務的には理事会で支援体制を整備することが重要。

管理会社が見積もりを敬遠?会計委託の依頼が難しい現実的な理由

いざ「会計のみ委託」を検討し、管理会社に見積もりを依頼しようとしても、断られたり、良い返事がもらえなかったりするケースが少なくありません。これには、管理会社側の現実的な事情があります。

なぜ「会計のみ」は断られやすいのか?(採算性の問題)

端的に言えば、「会計のみ委託」は管理会社にとって利益が出にくいビジネスモデルだからです。

  • 契約単価が低い: フル管理委託に比べ、月額の委託費が半分以下になることも珍しくなく、収益性が低いと判断されがちです。
  • 手間がかかる割に儲からない: たとえ会計のみでも、契約前には現地調査や会計状況のヒアリング、理事会での複数回の面談が必要です。清掃や点検など各種協力会社との調整がない分、フル管理より手間は少ないですが、それでも契約金額に見合わない労力がかかると敬遠されることがあります。特に、20戸~40戸程度の中小規模マンションでは、管理会社が積極的に管理取得を目指さない傾向があります。
  • 大手はパッケージ商品を好む: 大手の管理会社ほど、業務を標準化したパッケージ商品(フル管理委託)で効率的に利益を上げる経営戦略をとっています。そのため、個別対応が必要な「会計のみ委託」のようなイレギュラーな契約には消極的な傾向があります。

大手より中堅・小規模な会社が狙い目になる理由

このような背景から、「会計のみ委託」の依頼先を探す際は、大手企業だけにアプローチするのではなく、地域に根差した中堅・小規模の管理会社にも目を向けることが成功のカギとなります。

  • 柔軟な対応力: 小回りが利くため、個別の管理組合の事情に合わせたカスタマイズ契約に比較的、柔軟に対応してくれます。
  • ニッチな需要への着目: 大手が狙わない「会計のみ委託」の需要に特化して、サービスを展開している専門的な会社も存在します。

組合がすべき見積もり依頼の工夫

管理会社から敬遠されず、前向きな提案を引き出すためには、管理組合側にも工夫が求められます。

(記載例)
【見積もり依頼のポイント】
・事前に組合内で委託したい業務範囲を明確にしておく。
・候補となる管理会社を2〜3社に絞り込む。
・「なぜ会計のみ委託したいのか」という組合の目的や背景を丁寧に伝える。
・初回は電話やオンラインでの相談が可能か打診してみる。

失敗しない委託先の選び方と契約時のチェックポイント

良いパートナーとなる管理会社を見つけ、後々のトラブルを防ぐためには、委託先の探し方から契約書の締結まで、いくつかの重要なチェックポイントがあります。

委託先候補を探す方法

前述の通り、中堅・小規模の会社も視野に入れることが重要です。ひとつの方法として、一般社団法人マンション管理業協会のウェブサイトで公開されている加盟企業のリストを参考に、所在地の近くにある会社や、中小規模のマンション管理を得意としていそうな会社に問い合わせてみるのが良いでしょう。

【注意】
マンション管理業協会は、法令を遵守する事業者が加盟する業界団体であり、加盟していることがサービスの品質を直接保証するものではありません。あくまで、委託先を探すための一つの情報源として活用してください。

標準管理委託契約書のカスタマイズ方法

管理委託契約を締結する際は、国土交通省が公表している「マンション標準管理委託契約書」を雛形にするのが一般的です。

「会計のみ委託」の場合、この標準契約書をそのまま使うと、委託しない業務(清掃や設備管理など)まで契約範囲に含まれてしまうため、契約内容を「会計業務」に限定するためのカスタマイズが必須です。

具体的には、契約書の「別表第1」に定められている「管理事務の内容」の中から、会計に関連する項目(例:一 基幹事務、三 管理組合の会計の収入及び支出の調定及び出納)のみを記載し、それ以外の項目については「委託しない」「適用しない」と明記する、あるいは項目自体を削除するといった対応が必要です。

契約書で絶対に確認すべき5つの項目

カスタマイズした契約書に署名・捺印する前に、特に以下の5項目は必ず確認してください。

  1. 業務範囲の明確化: 「別表」において、委託する会計業務と、委託しない業務が明確に区分されているか。
  2. 管理業務主任者の記名: 契約書に、国家資格者である「管理業務主任者」の記名があるか(マンション管理適正化法 第73条[1])。※ 第73条は、管理業者の事務所ごとに管理業務主任者を設置し、重要事項説明書への記名と契約書への署名を義務付ける(施行規則第107条~第109条)。
  3. 費用と支払いサイト: 月額委託費の金額、支払い方法、そして管理費等の組合口座への入金サイクル(いつ締め、いつ支払われるか)が明記されているか。
  4. 報告義務: 月次報告書や年次決算書(案)の提出期限が具体的に定められているか(例:「毎月15日までに」「通常総会の3週間前までに」など)。
  5. 契約解除時の引継ぎ:

    【契約解除・終了時の必須事項】
    1. 通知期間
    標準管理委託契約書では「1~3ヶ月前通知」が一般的。ただし「現契約条項が最優先」のため、個別契約の定めに従うこと。
    2. 帳簿・データの返還
    – 返還期限:契約終了後○日以内(標準:30日以内)
    – 返還方法:原本ファイル、デジタルデータ、その他の明示
    – 返還責任:管理会社→管理組合への受領書作成を推奨

    ※ マンション管理適正化法施行規則の分別管理方式に基づき、管理組合と管理会社の財産が明確に分離されているため、返還は法的義務
    3. 帳簿保管期間
    決算書等の帳簿は通常5年間の保管が推奨されます。解除後の組合の保管責任について契約書に明記すること。
    ※ 契約更新・解約は、現行契約条項(標準管理委託契約書の別表等)を最優先とし、変更時は専門家相談を推奨。

【役員向け】会計のみ委託導入のための実務チェックリスト

これまで解説してきた内容を、実際に管理組合で導入を検討する際の実務的なチェックリストとしてまとめました。理事会などで議論する際にご活用ください。

  • Step1:自組合の適性判断
    – [ ] 役員の中に、会計以外の管理業務(清掃手配、小修繕など)を担う時間と意欲があるか?
    – [ ] 監事を引き受けてくれる人がおり、管理会社からの報告をチェックする体制を組めるか?
    – [ ] フル管理委託の費用と比較し、コスト削減のメリットは十分にあるか?
  • Step2:委託会社選定
    – [ ] 候補となる管理会社を2~3社に絞り込んでいるか?
    – [ ] 見積もり依頼時に、委託したい業務範囲を文書で明確に伝えているか?
    – [ ] 担当者の説明は丁寧で、こちらの質問に的確に回答してくれるか?
  • Step3:契約内容の確認
    – [ ] 標準管理委託契約書をベースに、業務範囲が会計業務に限定されているか?
    – [ ] 管理組合の財産が、管理会社の財産と分別管理されることが明記されているか?
    – [ ] 滞納督促など、オプション業務の範囲と費用は明確か?
    – [ ] 契約期間と、更新・解除に関する条項は納得できる内容か?
  • Step4:総会での承認
    – 管理会社への会計委託は、管理規約の変更または業務範囲確定に該当する場合があります。したがって、以下を確認の上、総会に上程してください:
    1. 管理規約が「管理会社への委託」について規定しているか
      – 規定あり:規約の定めに従う決議要件を適用(普通決議か特別決議か)
      – 規定なし:区分所有法 第39条により、区分所有者及び議決権の各過半数で決する(ただし、管理規約で別段の定めをすることも可能)
    2. 代替案:管理規約を変更して委託方式を明記する場合は、特別決議(区分所有法 第37条・第39条)が必要な可能性
      – [ ] 上記決議要件の確認に基づき、総会での承認決議(普通決議。ただし、管理規約で異なる要件が定められている場合はそちらを優先)の準備はできているか?
      – [ ] 総会で組合員に対し、会計のみ委託する理由、メリット、および組合に残る責任について、丁寧に説明する準備はできているか?

まとめ

マンションの自主管理における「会計のみ委託」は、管理コストを削減しつつ、金銭管理の専門性と透明性を確保するための非常に有効な選択肢です。

しかし、その成功は、管理組合が「丸投げ」にせず、主体的な関与を続けることが大前提となります。委託できる業務と、自分たちが負うべき責任の境界線を正しく理解し、信頼できるパートナー(管理会社)を慎重に選ぶことが不可欠です。

この記事で紹介したメリット・デメリット、費用相場、そして実務的なチェックリストが、あなたのマンションの管理組合運営にとって最善の道を見つける一助となれば幸いです。まずは理事会で、自主管理の現状と課題を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

免責事項

本記事は、2025年11月時点の法令や情報に基づき、マンション管理に関する一般的な情報を提供するものであり、特定のマンションにおける個別の事案について法的な助言を行うものではありません。

管理委託契約の締結や管理規約の変更等、具体的な法的手続きを進める際には、必ず弁護士やマンション管理士等の専門家にご相談ください。また、法令や各種ガイドラインは改正される可能性があるため、国土交通省等の公式サイトで最新の情報をご確認ください。

参考資料(法令・ガイドライン)

【L1:官公庁・法令】

  • マンションの管理の適正化の推進に関する法律(2003年法律第149号)
    https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC1000000149
    ※ 第2条第8号(基幹事務の定義)、第73条(管理業務主任者の要件)
  • マンション管理適正化法施行規則(分別管理制度の詳細)
  • 建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号)
    https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
    ※ 第37条(集会招集)、第39条(決議要件)、第22条第4項(規約の効力)
  • 税理士法(昭和26年法律第97号)
    第2条(職務)、第34条(無資格者の禁止行為)
  • マンション標準管理委託契約書(国土交通省公開)
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
    ※ 別表第1(管理事務の内容)のカスタマイズ例を確認、最終確認日: 2025年11月

【L2:業界団体・ガイドライン】

  • マンション管理業協会(MIJ)加盟企業リスト
    https://www.kanrikyo.or.jp/
    ※ 品質保証ではなく、法令遵守事業者の情報源として活用、最終確認日: 2025年11月

【参考】本記事で適用した主要条文一覧

条文内容本文該当箇所
管理適正化法 第2条第8号基幹事務の定義法的位置づけセクション
管理適正化法 第73条管理業務主任者の要件契約チェックリスト第2項
区分所有法 第39条決議要件Step4決議確認
区分所有法 第37条規約変更時の決議要件Step4新規セクション
税理士法 第2条・第34条税理士の独占業務税務申告支援セクション

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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