※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。
「共用部分の補償って、そもそも何が対象になるの?」
「事故なしでも更新時に保険料が跳ね上がるって本当?」
「特約はどこまで必要か迷う…」
管理組合として、このような問いに答えられる準備があるかが重要です。
🔍 マンション総合保険とは?
分譲マンションの**共用部分(躯体、設備、エントランス、配管、エレベーターなど)**を一括して補償する保険です。
基本補償に加え、水濡れや施設賠償責任などの特約もセット可能で、管理組合向けに特化した設計です
- 共用部への漏水事故や第三者への損害賠償に対応する賠償責任特約も標準またはオプションで選べ、
水漏れ事故の多い築古マンションでは特に重要です。
💸 保険料の実態と見直しの必要性
- 保険料は築年数や事故頻度によって大きく変動し、築20年を超えると年数百万の単位で上昇するケースもあります 。
- 損保各社は近年、値上げと同時に、事故率が低いマンションには**割引制度(優良物件割引など)**を導入しています。
- 長期契約(主に5年契約)が割安ですが、料率改定後の更新時には保険料が倍以上になるリスクもあります。
👉 管理組合は契約内容の定期的な見直し、複数社見積比較、事故履歴との見合い評価が不可欠です。
🛠 必要な補償と特約の選び方
必須の補償・特約項目:
① 火災・爆発・風水災(基本補償)
補償対象:
- 共用部の火災、爆発、落雷、台風・竜巻・豪雨・洪水・高潮・雪災などによる物理的な損壊
- 電気設備のショート、エアコン室外機の火花による火災なども含む
具体例:
- エントランス内の分電盤から出火し、オートロック扉が焼損
- 強風で屋上設備が飛散し、周囲の建物や車両に損害を与えた
管理組合の判断ポイント:
- 高層階では「風災」の影響が強まるため、階数・立地(沿岸部など)に応じて補償上限の調整も視野に入れる
- 一部では「風水災の免責10万円」や「屋根外装の補償制限」が設定される商品もあり、細かな約款チェックが必須
② 水濡れ原因調査費用特約(オプション)
補償対象:
- 漏水が発生した際の「原因調査費用」および「復旧費用」
- 原因不明の天井・床・壁の破損調査、赤外線カメラによる水路特定作業など
具体例:
- 天井からの漏水で専有部のクロスが濡れたが、共用管・専有管のどちらか不明。
→ 業者を呼んで調査した結果、共用部排水管のピンホール破損と判明。
→ 調査費用+該当部分の修繕費が補償対象に。
管理組合の判断ポイント:
- 「調査費用」は通常の火災保険では非補償。この特約がないと、原因が特定できるまでの費用を組合が全額負担する羽目になる。
- 築年15年以上のマンションでは実質必須。水トラブル発生率が高く、1回の調査で10~30万円がかかるケースも。
③ 施設賠償責任特約(オプション)
補償対象:
- 共用部や設備の不具合により第三者(来訪者・近隣住民)へ損害を与えた場合の賠償責任
具体例:
- 駐車場の鉄製ゲートが自動開閉中に誤作動し、車両に接触→塗装損傷
- 外構フェンスが劣化し、強風で隣地の車に倒れ損害発生
管理組合の判断ポイント:
- 「管理組合が所有・使用・管理するものからの事故」に限定されるため、賃貸業者や店舗区画が原因の事故は対象外の可能性あり。
- 補償額の相場は「1事故1億円」が基準。自動車や人身が関係する場合、上限不足で追加請求が来る恐れもあるため、補償額設定に注意。
④ 個人賠償責任特約(包括契約型)
補償対象:
- 居住者が原因で他の専有部・共用部・第三者に損害を与えた場合の損害賠償責任
- 通常は居住者が個別で火災保険に付帯しているが、管理組合が包括で契約するケースも増加中
具体例:
- 住民Aの洗濯機ホースが外れ、階下Bの天井・照明器具が水濡れ
- 子供のボール遊びで共用廊下の照明が破損
管理組合の判断ポイント:
- 「包括型」は火災保険未加入の住民でもカバーされるため、高齢者・単身者の多いマンションで特に有効。
- 費用は安価(例:1世帯月額100〜200円前後)で、トラブル対応の一元化と管理負担の軽減に寄与
⑤ 地震保険(オプション)
補償対象:
- 地震・噴火・津波により共用部分が損傷した場合の再建・補修費用
具体例:
- 震度6の地震で外壁の一部タイルが落下、エレベーター機器に歪みが発生
- 駐輪場の屋根が地震で倒壊 → 破損自転車に対して損害賠償を求められる
管理組合の判断ポイント:
- 通常の火災保険では地震による損害は一切対象外。地震保険を付帯しないと無補償リスクが非常に高い。
- 補償額は火災保険金額の50%が上限(法律上)。全額補償ではない点に注意
- 保険料は高額になるが、震災リスクの高いエリア(南海トラフ想定地域、首都直下など)では組合責任としての備え
選び方のポイント:
- 築年数・共有設備の状態(水回り・配管更新の有無)
- 過去2〜5年の事故件数・損害額の実績
- **管理体制評価(管理適正評価制度適用)**による割引の可否
👥 導入運用のベストプラクティス
- 現在の契約内容と補償範囲を精査:特約の有無、免責金額、補償限度額など
- 複数社から見積もりを取得し比較:東京海上・損保ジャパン・日新火災・三井住友等
- リスクとコストのバランス評価:保険料 vs 管理体制割引
- 理事会/総会での説明資料準備:事故事例、保険料の推移、割引制度の活用例
- 長期契約の有効期間と更新後の料率変動を想定:契約期間終了時の再評価を前提にスケジューリング
✅ メリット・注意点まとめ
視点 | 内容 |
---|---|
補償範囲 | 共用部の物損、水濡れ、第三者賠償、地震などをまとめてカバー |
費用感 | 築20〜30年を超えると年100万~300万円台の保険料も(70戸規模/5年契約で) |
割引制度 | 管理実績や事故率に応じた割引あり(優良物件割引等) |
トラブル対応 | 特約が不十分だと事故時に個別負担/補償漏れが発生するため慎重な選択が必須 |
🔚 終わりに:保険は“事故に備える安心”ではなく“財政設計”の一環
マンション総合保険はただの“保険”ではなく、管理運営上のリスクヘッジ装置です。
契約内容や特約の有無によって、事故発生時の負担も将来の会計見込みも大きく変わります。
特に、築年数の進行や料率改定時の保険負担増に備えて、見直しと管理体制の整備が不可欠です。