マンション管理適正評価制度のメリットは本当?デメリットと登録判断の徹底検証

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンション管理組合の理事の皆様、「マンションの評価制度に登録しませんか?」と管理会社から提案され、その手間や費用に見合うメリットがあるのか、疑問に思っていませんか。「結局メリットなしなのでは?」という声も聞こえてきます。

実は、「マンションの評価制度」には、目的もメリットも全く異なる2つの制度が存在します。この2つを混同していると、コストをかけても期待した効果が得られないという事態に陥りかねません。重要な点として、マンション管理に関する評価制度は、国(自治体)が関与する公的な「認定制度」と、民間団体が運営する「評価制度」の2種類があることを理解する必要があります。多くの人がこの2つを混同し、「メリットがない」という誤解を抱いています。

この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、2つの制度の違いを明確にした上で、特に民間運営の「マンション管理適正評価制度」について、世間で言われるメリット・デメリットが本当なのかを徹底検証します。最後まで読めば、あなたのマンションが本当に評価制度に登録すべきか、冷静な損得勘定ができるようになります。

目次

背景知識:混同厳禁!2つのマンション評価制度

比較軸① 管理計画認定制度② マンション管理適正評価制度
主体市区町村などの地方公共団体民間組織が運営
根拠マンション管理適正化法(法的根拠あり民間団体の独自基準(法的根拠なし)
目的管理計画の適正化促進、居住環境の維持向上管理状態の「見える化」、市場への情報公開
評価対象管理組合が策定した管理計画(長期修繕計画など)管理組合の運営や建物状態などの管理状態全般
メリット・【フラット35】金利引下げ
・固定資産税の減税(※自治体による)
・(将来的には)マンション共用部分改修融資の金利引下げなど
・市場評価への好影響(期待)
・管理改善の指標となる(副次的効果)
費用各自治体が定める手数料登録料5,500円+評価者手数料(変動)
表1:2つのマンション評価制度の比較

国(自治体)が認定する「管理計画認定制度」:法的メリットあり

管理計画認定制度とは、マンション管理組合が作成した長期修繕計画などの「管理計画」が、法律で定められた一定の基準を満たしている場合に、市区町村などの地方公共団体が「認定」を与える公的な制度です(出典:国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」)。

この制度の最大のメリットは、認定を受けることで明確な経済的インセンティブが期待できる点です。具体的には、住宅金融支援機構の【フラット35】における金利引下げや、自治体によっては固定資産税の減税措置を受けられる可能性があります。

民間が評価する「マンション管理適正評価制度」:市場への情報公開が主目的

一方、マンション管理適正評価制度は、民間の団体が運営する制度です。マンションの管理状態を「管理組合運営」「建物・設備」など5分野30項目で評価し、その結果を星の数(6段階、例: 60点以上で星3、90点以上で星5)でインターネット上に公開します(出典:yamatozaitaku.com, 2024)。なお、制度を運営するマンション管理業協会によると、登録件数は2025年11月25日に1万件を突破しています。

こちらの制度には、管理計画認定制度のような直接的な税制優遇や融資優遇はありません。主な目的は、管理状態を「見える化」し、中古マンション市場での評価を高めることにあります。

なぜ「メリットなし」と感じるのか?制度の混同が生む誤解

「マンション管理適正評価制度はメリットがない」という声の多くは、この2つの制度を混同していることに起因します。

具体的には、「マンション管理適正評価制度」に登録すれば「管理計画認定制度」のような税金の優遇が受けられると誤解し、手間と費用をかけて登録したものの、期待した経済的メリットが得られなかった、というケースです。

この記事では、特に誤解の多い後者、「マンション管理適正評価制度」のメリット・デメリットを詳しく掘り下げていきます。

検証:「マンション管理適正評価制度」の3つのメリットと現実

それでは、マンション管理適正評価制度で謳われているメリットは、本当に組合にとって価値があるものなのでしょうか。一つずつ冷静に検証します。

メリット1:市場価値の向上は期待できる?

公称されるメリット:
高い評価(星の数)を得ることで、管理状態の良さが証明され、中古市場での売却時に有利に働くことが期待できる、とされています。

現実と注意点:
「管理を買え」という言葉がある通り、管理状態が資産価値に影響を与えるのは事実です。しかし、評価制度の登録が、売却価格にどれほどプラスに働いたかを示す定量的な公的データは存在しません。

このメリットが機能するには、以下のような条件が必要です。

  • 比較対象が多いエリア: 周辺に似たような中古マンションが多数ある都市部など。
  • 一定規模以上のマンション: 比較検討されやすい30戸以上の規模。
  • 高評価の取得: 星3つ以上の評価でないと、アピールポイントになりにくい。

小規模マンションや、そもそも物件の流動性が低いエリアでは、評価があっても価格に反映されにくいのが実情です。あくまで「好影響が期待できる」程度に捉えるべきでしょう。

メリット2:管理組合の運営は改善される?

公称されるメリット:
30項目の評価基準を目標にすることで、理事会の運営方針が明確になり、管理組合の運営レベルが向上する、とされています。

現実と注意点:
これは確かに一理あります。評価項目は、良い管理組合運営のためのチェックリストとして非常に有用です。

しかし、この効果は制度に「登録」しなくても、評価基準を調べて自主的に改善活動を行うことで達成可能です。わざわざ費用を払って登録しなくても、公式サイトなどで公開されている評価項目を参考に、自分たちの管理組合の課題を洗い出すことはできます。※決議方法は管理組合の管理規約で異なる場合があります。規約で「管理費の支出は理事会決議で足りる」と定めている場合も、「評価制度登録は総会決議必須」と特別に定めている場合も存在します。申請前に必ず管理規約を確認してください。

メリット3:管理会社選定の基準になる?

公称されるメリット:
評価結果は、現在の管理会社の仕事ぶりを客観的に測る指標となり、将来、管理会社を見直す(相見積もりを取る)際の判断材料になります。

現実と注意点:
これも事実ですが、過度な期待は禁物です。評価が低い原因がすべて管理会社にあるとは限りません。理事会の協力体制や、修繕積立金の状況など、組合側の問題が要因であることも多いからです。

あくまで、管理会社との対話や見直しの「きっかけ」や「参考情報」の一つとして活用するのが現実的です。

【注意】管理委託契約と評価申請業務の関係

マンション管理適正評価制度に登録する際、管理会社に「評価申請の補助業務」を依頼する場合、現在の管理委託契約書に明示的な規定がない可能性があります。

この場合:

  • 管理会社によっては「契約外業務」として別途費用を請求する可能性
  • 標準管理委託契約書(国土交通省)では、このような評価申請業務が明示的に含まれていないケースが多い
  • 申請前に、管理会社に「評価申請業務が現契約に含まれるか、別途費用か」を確認し、書面で記録しておくことが重要

契約変更が生じる場合は、理事会と管理会社の協議が必要となります。

無視できないデメリット:「評価者手数料」と「理事の負担」という現実

メリットが限定的である一方、デメリットは明確に存在します。特にコストと労力の問題は無視できません。

直接コスト:登録料5,500円+α(不透明な評価者手数料)

制度登録には、以下の費用が発生します。

費用項目金額摘要
登録料5,500円(税込)(※2025年度時点)システムへの登録・1年間の情報公開費用
評価者手数料自由設定評価を行う管理会社等が設定する調査・評価費用
更新料3,300円(税込)(※2025年度時点)登録を更新する場合(毎年)
表2:マンション管理適正評価制度の費用構造
※金額は毎年度の予算決定等で変更される可能性があります。登録申請前に、民間団体の公式サイトで最新の金額を確認してください。公式サイト:https://www.mansion-evaluationsystem.org

ここで最も注意すべきは「評価者手数料」です。この手数料は、管理業協会の評価者講習を修了した評価者(主に管理会社)がそれぞれ独自に価格設定するため、数万円から十数万円と幅があり、組合側が事前に総額を把握しにくいという問題があります(出典:yamatozaitaku.com, 2024)。申請を依頼する前に、必ず複数の評価者から見積もりを取る必要があります。

【重要】評価者手数料の見積もりは「総会決議前に必ず取得」してください。登録申請を決議した後に「実は費用が〇〇万円かかる」という事態を避けるため、以下の手順が必須です:

  1. 現在の管理会社に「評価者手数料」の見積もりを請求(※形式は自由)
  2. 2~3社から相見積もりを取得(手数料の相場確認)
  3. 見積額を理事会で検討し、総会資料に金額を明記
  4. 総会で費用支出を承認した上で、初めて申請手続きを進める

間接コスト:総会決議など、理事会にのしかかる事務手続き負担

費用だけでなく、理事の労力という間接的なコストも発生します。

  1. 事前検討: 制度登録のメリット・デメリットを理事会で議論・検討。
  2. 見積取得: 評価者(管理会社など)から評価者手数料の見積もりを取得・比較。
  3. 総会準備: 総会に議案として上程するための資料作成、説明準備。
  4. 総会決議: 費用支出を伴うため、通常、総会の普通決議が必要。※決議方法は管理組合の管理規約で異なる場合があります。規約で「管理費の支出は理事会決議で足りる」と定めている場合も、「評価制度登録は総会決議必須」と特別に定めている場合も存在します。申請前に必ず管理規約を確認してください。
  5. 申請手続き: 評価者と連携し、必要書類を準備して申請。

本業で忙しい理事が、ボランティアでこれらの手続きを進めるのは、決して小さな負担ではありません。

低評価のリスク:スコアが低い場合、むしろ資産価値を下げる可能性も

メリットとして「市場価値の向上」が挙げられますが、逆もまた然りです。万が一、評価が星0や星1といった低い結果になった場合、その情報がインターネットで公開されてしまいます。

これにより、「管理不全の疑いがあるマンション」と市場に認識され、かえって売却時の価格や成約率に悪影響を及ぼすリスクも念頭に置くべきです。このリスクは特に以下の場合に顕著です:

  • 築15年以上の中古マンション(既に築年による価格低下がある状態で、評価低下が追い打ち)
  • 地方都市など物件流動性が低い地域(低評価の情報がより目立つ)
  • 戸数30未満の小規模マンション(比較対象物件が少ないため、評価スコアの相対的ウェイトが大きい)

比較:「管理計画認定制度」ならメリットはあるのか?

ここまで見てきた「マンション管理適正評価制度」と異なり、先に紹介した「管理計画認定制度」は、認定を受けることで明確な法的・経済的メリットを享受できます。

管理計画の認定を受けたマンションは、【フラット35】の金利引下げや、地方公共団体による固定資産税の減額といった支援を受けられる場合があります。

これらのメリットは、法律や公的機関の制度に基づいたものであり、民間評価制度の「市場での評価が期待できる」といった曖昧なものとは性質が異なります(出典:住宅金融支援機構ウェブサイト、国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」)。※金利優遇や税制優遇の最新情報および適用条件は、必ず住宅金融支援機構や各自治体の公式サイトでご確認ください。

ただし、認定を受けるには、長期修繕計画の計画期間や積立額、総会開催など、法律で定められた基準をクリアする必要があります。ハードルは決して低くありませんが、挑戦する価値は大きいと言えるでしょう。

興味深いことに、この2つの制度は連動しており、「マンション管理適正評価制度」で高評価を得るための取り組みは、「管理計画認定制度」の認定基準クリアにもつながる部分が多くあります。

結論:あなたのマンションは評価制度に登録すべきか?【判断チェックリスト】

結局のところ、あなたのマンションは「マンション管理適正評価制度」に登録すべきなのでしょうか。これまでの情報を基に、判断基準となるチェックリストを作成しました。

「マンション管理適正評価制度」を検討すべき4つのケース

以下のすべてに当てはまる場合は、費用と労力をかけて登録を検討する価値があるかもしれません。

  • [ ] ① 近い将来の売却: 組合員の誰かが3年以内に売却を予定している。
  • [ ] ② 管理会社の見直し: 現在の管理に不満があり、近々、管理会社の相見積もりを検討している。
  • [ ] ③ 一定の規模: マンションの総戸数が概ね30戸以上である。
  • [ ] ④ 理事会の余力: 総会決議などの事務手続きを進める時間と労力を確保できる。③ 決議要件の確認:管理規約で総会決議の要件が異なる可能性があるため、必ず事前確認。

上記に当てはまらないなら「メリットなし」の可能性大

上記のチェックリストに1つも当てはまらない、あるいは1〜2つしか当てはまらない場合、「マンション管理適正評価制度」への登録は、コストに見合うメリットがない可能性が高いと言えます。特に、売却予定がなく、現在の管理に満足している小規模マンションでは、恩恵を実感しにくいでしょう。

まずは評価基準のセルフチェックから始めるのが現実解

登録するかどうかにかかわらず、運営改善のヒントとして「マンション管理適正評価制度」の評価項目を活用するのは非常に有効です。まずは公式サイトなどで公開されている30の評価項目をダウンロードし、自分たちのマンションがどのくらい達成できているか、理事会でセルフチェックしてみることをお勧めします。協会公式サイトで公開の30項目チェックリストを参照し、自己評価することで、登録なしで改善課題を特定可能です。

よくある質問(Q&A)

最後に、マンション管理組合の理事の皆様からよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 管理会社から評価制度への登録を勧められたらどうすればいい?

管理会社の提案を鵜呑みにせず、一度立ち止まって冷静に検討しましょう。
まずは「提案されているのは『管理計画認定制度』『マンション管理適正評価制度』のどちらですか?」と確認してください。その上で、この記事で解説したメリット・デメリットを理事会で共有し、「私たちの組合にとって本当にメリットがあるのか?」という視点で判断することが重要です。

Q. 相見積もりは何社に依頼するのが適切?

管理会社の見直しを検討する際、多くの会社から見積もりを取りたいと考えるかもしれません。しかし、5社も6社も依頼すると、管理会社側から敬遠される可能性があります。

管理委託費の見積もり作成には、現地調査や協力会社との調整など、管理会社にとって相当な労力がかかります。特に20~40戸程度のマンションでは、過度な相見積もり競争に参加するメリットが管理会社側に少ないのが実情です。管理会社側は、管理委託内容の精査および、会計状況、そして1棟全体の管理費等の見積もり作成をするには3-4回ほど現地に足を運び、また清掃会社、EV点検、消防、警備など多岐にわたって外注先会社との打ち合わせを行ったうえで理事会数名との面談も数回こなすため労力がかかります。

結論として、本気で検討している2~3社に絞って依頼するのが、管理会社にも誠実な対応をしてもらいやすい現実的なラインです。2~3社の相見積もりが、相手方に誠実性を示しながら、管理会社側の提案負担を適正に配慮するバランスです。

Q. 評価制度の登録費用は、管理費から支出して良い?

はい、支出できます。マンション管理適正評価制度への登録は「建物の管理に関する事項」に該当するため、管理費から支出することが一般的です。

ただし、費用支出には総会の決議が必要です。区分所有法第39条により、管理に関する事項は区分所有者および議決権の各過半数による「普通決議」で決定すると定められています。ご自身のマンションの管理規約で、これと異なる定め(例:特別決議が必要)がないか、必ず確認してください。

まとめ

「マンション管理適正評価制度はメリットがない」という疑問について解説してきました。重要なポイントを改めて整理します。

  1. 2つの制度を混同しない: 法的メリットのある公的な「管理計画認定制度」と、市場への情報公開が目的の民間「マンション管理適正評価制度」は全く別物です。
  2. 「適正評価制度」のメリットは限定的: 市場価値向上は「期待」の域を出ず、運営改善は登録しなくても可能です。
  3. コストと労力を直視する: 登録料に加え、不透明な「評価者手数料」や、総会決議などの理事の負担は明確なデメリットです。
  4. 登録検討は条件付きで: 売却予定や管理会社見直しの予定がある、一定規模以上のマンションでなければ、メリットを実感しにくいのが現実です。

結論として、多くのマンションにとって「マンション管理適正評価制度」への登録は、急いで取り組むべき必須事項ではありません。まずは評価基準を参考に自主的な管理改善から始めるのが、最も賢明でコストのかからない第一歩と言えるでしょう。

免責事項

本記事は、マンション管理に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、特定のマンションや個別具体的な事案に対する法的助言、または専門的アドバイスを提供するものではありません。

記載されている情報については、記事公開時点の法令や情報に基づいておりますが、その正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。特に、税制優遇や融資制度に関する内容は、法改正や各自治体・金融機関の方針により変更される可能性があります。費用や制度詳細については、2025年12月20日時点の情報を基にしていますが、最新の確認をおすすめします。

制度の利用や具体的な意思決定にあたっては、必ず国土交通省、所在地の地方公共団体、住宅金融支援機構などの公式サイトで最新の情報を確認するとともに、必要に応じて管理会社、マンション管理士等の専門家にご相談ください。本記事の情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、当サイトは一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

参考資料

  • 国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」(管理計画認定制度について) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
  • 住宅金融支援機構【フラット35】公式サイト https://www.flat35.com/
  • e-Gov法令検索(マンションの管理の適正化の推進に関する法律) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000149
  • yamatozaitaku.com (2024), マンション管理適正評価制度とは?メリット・デメリットを解説 https://yamatozaitaku.com/media/article/48616/
  • s-mankan.com (2024), 2つのマンション評価制度「管理計画認定制度」と「マンション管理適正評価制度」の違いをプロが解説 https://s-mankan.com/sakurachan-blog/14545
  • mansionlibrary.jp (2024), マンション管理適正評価制度とは?評価項目から登録方法まで解説 https://mansionlibrary.jp/article/686

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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