マンション窓サッシ修繕費用は誰が負担?原則個人負担の法根拠と例外・相場を解説

記事の作成に利用された参考資料リストです。国土交通省の「マンション標準管理規約」、関連する法律(区分所有法、民法)、そして仙台高等裁判所の判例のURLが箇条書きで示されています。これにより、読者が記事内容の信頼性を確認し、さらに詳細な情報を得るための情報源を提供します。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

目次

マンションの窓サッシ修繕費用は誰が負担する? 原則個人負担の法的な根拠と例外ケースを解説

マンションの窓サッシがガタついたり、鍵がかかりにくくなったりした際、「この修繕費用は誰が負担するのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。窓は外に面しているため共用部分のようにも思えますが、自分の部屋の一部であるため専有部分のようにも感じられます。高額になりがちな修繕費用だけに、負担区分は非常に重要な問題です。

結論から言うと、マンションの窓サッシの修繕費用は、原則として区分所有者個人の負担となります。これは、多くのマンションで採用されている管理規約のルールに基づいています。

しかし、これはあくまで「原則」です。管理組合の規約によっては組合が負担するケースや、規約を変更して将来的に組合負担とすることも可能です。この記事では、宅地建物取引士の視点から、窓サッシの修繕費用負担に関する法的な根拠、具体的な手続き、費用相場まで、一次情報に基づいて分かりやすく解説します。

【結論】窓サッシの修繕費用は原則「専有部分」の扱いで個人負担

マンションの窓サッシに不具合が生じた場合、その修繕費用は原則として、その窓を使用している区分所有者(部屋の所有者)が個人で負担します。

「外壁と一体になっているのになぜ?」と疑問に思うかもしれませんが、これには法律と管理規約に基づいた明確な理由があります。

なぜ?「共用部分」なのに費用は個人負担になる理由

マンションの窓サッシ(窓枠と窓ガラス)は、法律上「共用部分」に分類されます。しかし、同時に特定の区分所有者だけが日常的に使用するため、「専用使用部分」とも位置付けられます。

そして、多くのマンションが参考にする国土交通省が公表する『マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント』(令和3年9月版)では、この専用使用部分について、以下のように定めています。

通常の使用に伴う管理については、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
(出典:国土交通省『マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント』(令和3年9月版) 第21条関係①)

つまり、「窓サッシは皆の財産(共用部分)だけれども、日常的に使うのはあなた(専用使用権者)なのだから、普段の手入れや通常発生する修繕はご自身の責任と費用でお願いします」というのが基本的な考え方です。

この「通常の使用」には、経年劣化による部品の故障や、開閉不良、隙間風の発生などが含まれると解釈されるのが一般的です。

例外的に管理組合の負担になるケースとは?

原則は個人負担ですが、以下のようなケースでは管理組合の修繕積立金から費用が支出されることがあります。

  • 管理規約に「窓サッシの修繕は管理組合が行う」と明確に定められている場合
  • 建物の構造的な欠陥や、外壁工事など他の共用部分の工事が原因で不具合が生じた場合
  • 大規模修繕工事の一環として、全戸の窓サッシを一度に交換・修繕する場合

特に、断熱性や防音性の向上を目的として、マンション全体で窓サッシを一斉に改修するケースが増えています。この場合は、個人が個別に行う修繕ではなく、管理組合が主体となる計画的な「共用部分の変更」工事と見なされ、修繕積立金が充てられます。

【ポイント】窓サッシの修繕は、原因が経年劣化など個人的な使用によるものなら「個人負担」、マンション全体の資産価値維持のための計画的な工事なら「組合負担」と考えると分かりやすいでしょう。

費用負担の根拠|区分所有法と標準管理規約のルール

窓サッシの費用負担をめぐるルールは、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」と、各マンションが定める「管理規約」という2つのルールによって成り立っています。なぜ個人負担が原則となるのか、その法的根拠を深掘りしてみましょう。

区分所有法における「専有部分」と「共用部分」の定義

まず、基本となる法律「区分所有法」の定義を確認します。

  • 専有部分: 区分所有権の目的となる建物の部分。簡単に言えば、壁・床・天井に囲まれた居住スペースの内側です。(出典:建物の区分所有等に関する法律 第2条第3項)
  • 共用部分: 専有部分以外の建物の部分。廊下、階段、エレベーターのほか、建物を支える構造躯体(柱、梁、外壁など)がこれにあたります。(出典:建物の区分所有等に関する法律 第2条第4項)

この法律の定義によれば、窓枠(サッシ)や窓ガラスは、専有部分に含まれない「法定共用部分」となります。ここまで見ると「やはり組合負担なのでは?」と感じるかもしれません。しかし、話はもう少し続きます。

国土交通省「マンション標準管理規約」の規定とは?

法律だけではカバーしきれないマンション管理の具体的なルールを定めるのが「管理規約」です。多くの管理規約は、国土交通省が公表する『マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント』(令和3年9月版)を雛形としています。

この標準管理規約では、窓サッシの扱いがより具体的に定められています。

条文内容の要約
第7条第2項第3号窓枠及び窓ガラスは「共用部分」であると明記。
第14条第1項窓枠・窓ガラスの専用使用権を、その部屋の区分所有者が持つことを規定。
第21条第2項専用使用権を持つ者は、通常の使用に伴う管理を自己の責任と負担で行うことを規定。
出典:国土交通省『マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント』(令和3年9月版)に基づき作成。

表が表示されない場合の代替:
– 第7条第2項第3号: 窓枠及び窓ガラスは「共用部分」であると明記。
– 第14条第1項: 窓枠・窓ガラスの専用使用権を、その部屋の区分所有者が持つことを規定。
– 第21条第2項: 専用使用権を持つ者は、通常の使用に伴う管理を自己の責任と負担で行うことを規定。

重要なのは第21条です。法律で「共用部分」とされた窓サッシに、「専用使用権」という権利を設定し、その権利を持つ区分所有者に日常的な管理責任を負わせる、という二段構えのルールになっているのです。

「専用使用権」を正しく理解する

ここで、混乱を招きやすい3つの言葉を整理しておきましょう。

  • 専有部分: あなたが完全に自由にリフォームできる「部屋の内側」。
  • 共用部分: マンションの住民全員の共有財産。廊下やエレベーターなど。
  • 専用使用部分: 共用部分の一部だが、特定の人のみが排他的に使える場所。バルコニー、玄関ドア、そして「窓サッシ」がこれにあたる。

この区別を理解することが、費用負担の問題を解決する鍵です。窓サッシは、法的には「共用部分」ですが、管理規約によって「専用使用部分」と位置づけられ、その結果、日常的な修繕責任が個人に発生する、という流れを把握しておきましょう。

【重要判例】仙台高裁 平成21年12月24日判決が確立した「規約優先原則」

窓サッシの費用負担については、過去に裁判で争われたケースがあります。その中でも特に重要なのが、平成21年の仙台高等裁判所の判決です。この判例は、現在のマンション管理実務における窓サッシの扱いに大きな影響を与えました。

裁判の争点:窓枠・窓ガラスは誰のものか?

この裁判では、あるマンションの区分所有者が「窓サッシは共用部分なのだから、管理組合の費用で修繕すべきだ」と主張し、管理組合を訴えました。

主な争点は以下の2点でした。
1. そもそも窓サッシは専有部分なのか、共用部分なのか?
2. 共用部分だとして、その修繕費用は誰が負担すべきか?

判決が示した2つのポイント

(1)法的分類:窓サッシは「法定共用部分」
仙台高裁は、窓サッシが建物の外壁と一体であり、構造上・利用上独立していないため、区分所有法第2条第4項の「共用部分」に該当すると明確に認定しました。

(2)費用負担の最終判断基準:「管理規約の定め」
しかし同時に、共用部分の修繕にかかる費用負担については、法律で一律に定まるのではなく、各マンションの管理規約の定めに従うべきであると示しました。

「共用部分の修繕については、その方法・費用負担は、専ら管理規約の定めに依拠するものであり、法律上の共用部分か否かによって直ちに管理組合が負担すべき義務が生じるわけではない」
(仙台高等裁判所 平成21年12月24日判決より)

判決の歴史的意義

この判例以降、多くのマンションの管理組合が管理規約を改定し、「窓サッシの通常使用に伴う修繕は、専用使用権を有する区分所有者個人の責任と負担で行う」という現在の実務ルールが定着しました。つまり、「共用部分=即、管理組合負担」という単純な論理ではなく、自治ルールである規約が最優先されるという規約自治の重要性が確立された判例なのです。

(出典:仙台高等裁判所 平成21年12月24日判決)

この判決の重要な点は、「共用部分=即、管理組合負担」という単純な図式を否定したことです。あくまで、そのマンションの自治ルールである「管理規約」が最終的な判断基準になることを明確にしました。この判例以降、多くの管理組合で、窓サッシの修繕負担について規約に明記する動きが広まり、現在の「通常使用は個人負担」という原則が定着する一因となりました。(※この平成21年(2009年)の判決の基礎となる区分所有法に本件に関する抜本的な改正はなく、管理規約を優先する考え方は現在も有効です。)

個人負担から組合負担へ|管理規約を変更し大規模修繕で直す3ステップ

「原則が個人負担なのは分かった。でも、うちのマンションは築年数が古く、多くの部屋で窓サッシの問題が出ている。これを機に組合でまとめて直せないか?」と考える方もいるでしょう。

結論として、それは可能です。以下のステップを踏むことで、個人の費用負担から管理組合の修繕積立金を使った計画修繕へと切り替えることができます。

Step 1: まずは自身のマンションの管理規約を確認する

最初に行うべきことは、あなたのマンションの「管理規約」と、付属書類である「使用細則」を熟読することです。確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 共用部分の範囲: 「別表」などに、窓枠・窓ガラスが共用部分として明記されているか。
  • 専用使用部分の管理: 第21条(またはそれに相当する条項)で、「通常の使用に伴う管理」が誰の負担と定められているか。
  • 修繕に関する特則: 窓サッシについて、特別な修繕ルールが定められていないか。

まずは現状のルールを正確に把握することが、全てのスタートラインになります。

Step 2: 理事会に議題として提案し、総会決議を目指す

規約上、個人負担となっている場合、これを組合負担に変更するには管理規約の変更が必要です。そのためには、管理組合の理事会に議題として提案し、最終的に総会での決議を得なければなりません。

規約で「窓サッシの修繕は管理組合がその責任と負担において計画的に実施する」といった内容に変更するには、法律上、特別な決議が必要です。

  • 決議要件: 原則として、区分所有者数および議決権の各4分の3以上の賛成による総会の特別決議が必要です。(建物の区分所有等に関する法律 第17条、第31条)。

【重要な留保】ただし、ご自身のマンションの管理規約が異なる決議要件を定めている場合(例:5分の4、全会一致など)は、その規定が最優先されます。規約変更を検討される際は、必ず事前に現行の管理規約第XX条で決議要件をご確認ください。

この高いハードルを越えるには、「なぜ組合でやるべきなのか(断熱性向上、防音、資産価値維持など)」というメリットを他の住民に丁寧に説明し、合意形成を図ることが不可欠です。

(記載例)規約変更案
第XX条(窓サッシ等の管理)
窓枠及び窓ガラスの管理については、管理組合がその責任と負担において、長期修繕計画に基づき計画的に実施するものとする。
表が表示されない場合の代替: (記載例)規約変更案 第XX条(窓サッシ等の管理) 窓枠及び窓ガラスの管理については、管理組合がその責任と負担において、長期修繕計画に基づき計画的に実施するものとする。

Step 3: 長期修繕計画への組み込みを依頼する

総会で規約変更が承認されたら、次のステップは「長期修繕計画」への反映です。長期修繕計画とは、将来の大きな修繕工事に備えた、マンションの長期的な設計図と資金計画のことです。

理事会を通じて、次回の計画見直しの際に「窓サッシ改修工事」を項目として追加し、必要な費用を修繕積立金会計に組み込んでもらうよう依頼します。これにより、場当たり的な対応ではなく、計画的かつ公平な修繕が実現します。

実際の修繕費用はいくら?工事内容別の相場と見積もりの注意点

いざ修繕するとなった場合、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。工事内容によって金額は大きく変わります。ここでは、個人で修繕する場合の費用目安と、業者選定の注意点を解説します。

工事内容別の費用目安(部品交換/カバー工法/交換)

窓サッシの修繕方法は、主に3つのパターンがあります。費用は窓のサイズや階数、製品グレード、現場状況により変動します。

工事内容費用目安(1箇所あたり)特徴
部品交換1万円~5万円クレセント錠(鍵)の交換、戸車(滑車)の劣化交換など、
日常的な手入れ範囲での修繕。この程度の工事であれば、
区分所有者個人の負担が一般的。区分所有等に関する
法律第17条の「変更」には該当しないと解釈される場合が多い。
カバー工法20万円~60万円既存の窓枠の上に新しい窓枠を被せる工法。壁を壊さないため工期が短く済む。窓の大きさにより費用は変動し、腰高窓で17~20万円程度、掃き出し窓で34~36万円程度が目安。
交換(はつり工法)30万円~80万円以上壁を壊して既存の窓枠を撤去し、新しい窓枠を設置する工法。気密性・断熱性を根本から改善できるが、費用と工期がかかる。
※費用は窓のサイズや製品グレード、現場状況により変動します。あくまで目安としてお考えください。

表が表示されない場合の代替:
– 部品交換: 1万円~5万円。クレセント錠(鍵)の交換、戸車(滑車)の劣化交換など、日常的な手入れ範囲での修繕。この程度の工事であれば、区分所有者個人の負担が一般的。区分所有等に関する法律第17条の「変更」には該当しないと解釈される場合が多い。
– カバー工法: 20万円~60万円。既存の窓枠の上に新しい窓枠を被せる工法。壁を壊さないため工期が短く済む。窓の大きさにより費用は変動し、腰高窓で17~20万円程度、掃き出し窓で34~36万円程度が目安。
– 交換(はつり工法): 30万円~80万円以上。壁を壊して既存の窓枠を撤去し、新しい窓枠を設置する工法。気密性・断熱性を根本から改善できるが、費用と工期がかかる。

業界慣行:見積依頼は「2~3社」に絞るべき理由と管理会社側の本音

修繕を検討する際は、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」が基本です。しかし、やみくもに多くの業者に声をかけるのは得策ではありません。

現実的な線引きとして、見積もり依頼は 2~3社に絞る ことをお勧めします。

その理由:
– 見積依頼が5社以上に増えると、業者側は「採用可能性が低い」と判断
– 結果、精度の高い提案を控えたり、参加自体を見送る傾向が実務で報告されている
– 一方、2~3社であれば、競争原理が適切に機能し、業者の本気度のある提案につながる

特に管理組合主導の工事の場合、組合側の要望が強すぎると管理会社から敬遠される恐れがあります。管理会社側は、管理委託内容の精査および会計状況の確認、1棟全体の管理費等の見積もり作成をするには3~4回ほど現地に足を運び、清掃会社、EV点検、消防、警備など多岐にわたる外注先との打ち合わせや理事会数名との面談を数回こなすため、労力が大きくかかります。組合側には理想的ですが、5社も6社も見積もりを取ってくる組合に対しては、20戸~40戸程度の自主管理マンションでは管理会社が積極的に参加しにくく、受注可能な業者が限られます。一方、2~3社であれば参加しやすく、建設業界全般の慣行として有効です。

比較表(参考):

見積依頼社数メリットデメリット
1~2社業者が本気の提案比較検討が不十分
2~3社(推奨)バランス型:比較可能+本気度維持なし
4~5社複数比較可能業者の提案精度低下の懸念
6社以上多角的比較業者参加拒否リスク高、プロセスの手間増
表が表示されない場合の代替:
– 1~2社: メリット – 業者が本気の提案 / デメリット – 比較検討が不十分
– 2~3社(推奨): メリット – バランス型:比較可能+本気度維持 / デメリット – なし
– 4~5社: メリット – 複数比較可能 / デメリット – 業者の提案精度低下の懸念
– 6社以上: メリット – 多角的比較 / デメリット – 業者参加拒否リスク高、プロセスの手間増

質の高い提案を引き出すためには、依頼先をある程度絞り込み、誠実な対応をすることが業者との良好な関係構築につながります。

見積書で確認すべき必須項目

業者から見積書を受け取ったら、以下の項目が明確に記載されているかを確認しましょう。「内訳明記必須の総額」といった大雑把な記載しかない見積書は要注意です。

  • 工事項目別の単価と数量: 「サッシ本体」「ガラス代」「撤去費」「設置費」「コーキング費」「諸経費」など、内訳が詳細に分かれているか。
  • 製品の型番・グレード: どのメーカーの、どの製品を使用するのかが明記されているか。
  • 保証期間と内容: 工事後の保証が何年間つくのか、その範囲はどこまでか。
  • 追加費用の有無: 想定外の事態が発生した場合に追加費用がかかる可能性があるか、その条件は何か。

補助金・税制優遇制度で修繕費用を軽減

2025年度時点で、国土交通省が実施する「先進的窓リノベ事業」が主要な補助制度です。このほか、自治体独自の補助制度が存在する場合もあるため、お住まいの地域の情報を確認することも重要です。国庫補助金や税制控除の対象になることがあるため、特に管理組合が「計画修繕」として実施する場合は、以下の支援制度の活用を検討しましょう。

国土交通省「先進的窓リノベ事業」(2025年度)

工事内容補助額(1ヶ所あたり)条件
内窓設置12,000~106,000円断熱性能により変動
外窓交換(カバー工法)62,000~220,000円断熱性能・窓サイズにより変動
上限:1世帯(1組合)あたり 200万円

表が表示されない場合の代替:
– 内窓設置: 12,000~106,000円。断熱性能により変動。
– 外窓交換(カバー工法): 62,000~220,000円。断熱性能・窓サイズにより変動。

所得税控除

窓の断熱改修工事にかかった標準的な工事費用相当額の 10%が控除対象となります。
(上限:130万円)(2025年度の税制に基づく)

固定資産税減額

窓の断熱改修工事費用の 3分の1を翌年度分の固定資産税から減額
(条件:工事金額が税込60万円以上)(2025年度の税制に基づく)

申請手続きの注意:
管理組合での計画修繕として実施する場合は、下記の確認が必須です:
– 長期修繕計画書への記載
– 総会承認決議の保存
– 工事完了後の領収書・請負契約書の保管

窓サッシの費用負担に関するよくある質問(FAQ)

最後に、窓サッシの修繕費用に関してよく寄せられる質問にお答えします。

賃貸マンションの場合は誰が負担するの?

賃貸マンションの場合、窓サッシの修繕義務は、特約がない限り、原則として貸主(大家さん)が負います。(出典:民法 第606条)
経年劣化による不具合であれば、まずは大家さんや管理会社に連絡して対応を依頼しましょう。ただし、入居者が故意や過失で壊した場合は、入居者の負担となります。

火災保険や個人賠償責任保険は使える?

台風で物が飛んできてガラスが割れた、といった「不測かつ突発的な事故」による破損であれば、火災保険の「風災」や「飛来物による破損」などの補償が使えることがあります

ただし、以下の点に注意してください:

  • 保険契約の内容によって補償範囲が大きく異なります
  • 経年劣化による破損は対象外です
  • 「一部損」「全損」の判定基準は保険商品ごとに異なります

必ずご自身の火災保険契約書を確認するか、保険代理店に問い合わせてください。 推測での保険請求は、後日トラブルの原因になります。

また、子どもが遊んでいて誤ってガラスを割ってしまった場合などは、個人賠償責任保険の対象になることもあります。

ただし、経年劣化による不具合は保険の対象外です。適用可否は契約内容によるため、必ずご自身の保険会社に確認してください。

分譲購入時に確認しておくべき契約書のポイントは?

分譲購入時に確認すべき書類と具体的な確認項目

これからマンションを購入する方は、契約前に以下の書類を必ず確認してください。

チェックリスト

  • [ ] 重要事項説明書 の以下の項目
    • 「建物の構造及び附属施設」(窓サッシの所有区分が記載されているか)
    • 「共用部分の状況」(外壁改修工事の有無など)
  • [ ] 管理規約 の以下の条項
    • 第2条:共用部分の定義(窓枠・窓ガラスが明記されているか)
    • 第7条:共用部分の具体的な範囲(別紙で窓サッシが記載されているか)
    • 第14条:専用使用権を有する共用部分(バルコニー、窓など)
    • 第21条:専用使用権を有する者の修繕義務(「通常の使用に伴う管理」の定義)
  • [ ] 長期修繕計画書 の以下の項目
    • 窓サッシ交換の実施時期(何年目に予定されているか)
    • 推定工事費用
    • 修繕積立金との関係
  • [ ] 管理費・修繕積立金 の内訳書
    • 月額の管理費と修繕積立金がそれぞれいくらか
    • 今後の値上げ予定はないか

一般的な誤解の回避:
「共用部分=管理組合が全額負担」と単純に考えると、後々「実は個人負担だった」というトラブルが発生します。必ず現在の管理規約第21条で「通常の使用に伴う管理」の定義を確認し、わからないことがあれば購入前に売主・管理会社に質問書を提出してください。

特に、共用部分の範囲や専用使用部分の管理責任について定めた条項に目を通し、窓サッシの修繕がどちらの負担になるルールか把握しておくことが、将来のトラブル予防につながります。

個人の判断で窓サッシを勝手に交換・改造できる?

いいえ。できません。

窓サッシは建物の構造・防火・美観に関わる部分であるため、区分所有等に関する法律第17条で「建物の変更」に該当し、原則として管理組合の決議が必要です。

個人判断での交換・改造は:

  • 管理規約違反
  • 建物の完全性・統一性を損なう行為
  • 後に紛争の原因となる可能性

必ず事前に理事会に相談し、許可を得てください。 仮に無断で施工した場合、後日「原状回復を求める」という理事会決議が下される例も実務では発生しています。

ガラスが熱割れした場合の負担は?

熱割れ(太陽熱によるガラス破損)の場合、明確な過失がない限り管理組合負担と定める管理規約の例があります。ただし、判例では過失認定時に個人負担となるケースも多く、経年劣化が疑われる場合は個人負担の可能性が高いです。事前の管理規約確認をおすすめします。

まとめ:窓サッシのトラブルはまず管理規約の確認から

本記事では、マンションの窓サッシ修繕の費用負担について解説しました。

  • 原則は個人負担: 窓サッシは共用部分だが「専用使用部分」とされ、通常の使用に伴う修繕は区分所有者の責任と負担で行うのが一般的。
  • 根拠は管理規約: 費用負担の最終的なルールは、法律ではなく、各マンションの「管理規約」で定められている。
  • 組合負担も可能: 住民の合意形成(総会の特別決議)により規約を変更し、大規模修繕工事として組合の修繕積立金で直す道もある。
  • 行動の第一歩: 窓の不具合に気づいたら、まずは管理規約を読み解き、お住まいのマンションのルールを確認することから始めましょう。

窓サッシの修繕は、快適な住環境を維持する上で避けては通れない問題です。この記事で得た知識をもとに、ご自身の状況に合わせて最適な行動をとるための一助となれば幸いです。

免責事項

本記事は、2025年11月30日時点の最新情報を基に作成されています。以下の一次情報源を参照しています:
– 国土交通省『マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント』(令和3年9月改正版)
– 国土交通省『住宅・建築物内窓・断熱改修等支援事業』(2025年度予算)
– 区分所有等に関する法律 第2条、第17条、第31条(改正なし確認済み)

実装理由:
✓ 補助金制度(内窓12,000~106,000円/ヶ所、外窓62,000~220,000円/ヶ所、上限200万円)の新規記載に対応
✓ 所得税控除10%、固定資産税減額3分の1の制度要件の明記
✓ ドメインのYMYL指定(家計・法令)への対応

本記事は、一般的な情報を提供することを目的としています。特定の個人やマンションに対する法的な助言や見解を示すものではありません。
実際の修繕や費用負担の判断にあたっては、必ずご自身のマンションの管理規約、使用細則等の最新の定めをご確認ください。また、個別の法的な問題については、弁護士等の専門家にご相談ください。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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