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東京都渋谷区の投資用マンションオーナー様で、分譲管理と賃貸管理の連携不足にお悩みではありませんか。連絡窓口が複数あることによる非効率や、情報共有の遅れは、資産価値の維持・向上において見過ごせないリスクです。特に渋谷区のような変化の激しい市場では、両者を一括で管理できるパートナーの存在が成功の鍵を握ります。
この記事では、宅地建物取引士の視点から、渋谷区で「分譲・賃貸の一括管理」を依頼するメリットと、信頼できる管理会社を見抜くための具体的なチェックポイントを解説します。さらに、管理会社側の本音を踏まえた「失敗しない見積もり依頼の進め方」まで、実践的なノウハウを提供します。この記事を読めば、あなたのマンションに最適な管理パートナーを見つけるための道筋が明確になるでしょう。
なぜ渋谷区でこそ「分譲・賃貸の一括管理」が重要なのか?

渋谷区は都内でも特に不動産市場が活発で、その特性ゆえに分譲管理と賃貸管理の連携が資産価値に直結します。他のエリア以上に一括管理が有効な3つの理由を見ていきましょう。
高い賃貸需要と多様な入居者層
渋谷区は、単身者を中心に高い賃貸需要を維持しており、国内外から多様な人々が集まるエリアです。一方で、競争も激しく、物件の魅力を維持し、入居者に適切に対応できなければ空室リスクは高まります。分譲管理と賃貸管理が連携していれば、共用部の維持管理と専有部の入居者対応がスムーズに進み、物件全体の満足度を高め、安定した賃貸経営につながります。
活発な再開発と資産価値の変動
渋谷駅周辺では複数の大規模再開発プロジェクトが進行中です。こうした市場の変化を捉え、長期修繕計画(分譲管理)と家賃設定(賃貸管理)を連動させて戦略的に見直すことが不可欠です。オーナーは、最新の再開発計画を渋谷区役所の開発情報サイト等で確認した上で、管理会社にも市場動向の定期報告を求めることが重要です。
単身者向け物件が多く、入退去サイクルが早い
渋谷区の賃貸物件は単身者向けが中心のため、学生や若手社会人の入居者が多く、入退去のサイクルが比較的早い傾向にあります。退去から次の入居までの期間をいかに短縮するかが、収益を左右する重要なポイントです。分譲・賃貸を担う管理会社が一体であれば、退去時の原状回復工事と共用部の連携(工事車両の駐車許可など)がスムーズに進み、空室期間の短縮化を実現しやすくなります。
分譲管理と賃貸管理の役割の違いと、一括委託の3大メリット

「管理」と一言でいっても、その対象と目的によって業務内容は大きく異なります。まずは基本を整理し、一括委託がもたらす具体的なメリットを理解しましょう。
【基本の確認】分譲管理と賃貸管理(PM)の業務範囲
分譲管理と賃貸管理は、目的も対象も異なります。混同を避けるため、それぞれの役割を明確に区別することが重要です。
| 項目 | 分譲管理 | 賃貸管理(プロパティマネジメント) |
|---|---|---|
| 目的 | 建物の維持・保全(資産価値維持) | 賃貸経営の収益最大化 |
| 契約者 | 管理組合 | 区分所有者(オーナー) |
| 対象 | マンションの共用部分(廊下、エレベーター等) | オーナーが所有する専有部分(個別の住戸) |
| 主な業務 | ・理事会、総会の運営支援 ・管理費、修繕積立金の会計報告 ・長期修繕計画の策定・実行支援 ・共用部の清掃、設備点検 |
・入居者募集(リーシング) ・家賃集金、滞納督促 ・入居者からのクレーム対応 ・退去時の原状回復、精算 |
| 関連する管理 | 建物管理(ビルメンテナンス):清掃、設備点検、警備など、建物を物理的に維持する業務。分譲管理・賃貸管理の一部として委託されることが多い。 | |
メリット1:窓口一本化による情報共有の迅速化
最大のメリットは、連絡窓口が一つになることです。例えば、「賃貸住戸で水漏れが発生し、階下の部屋に影響が出た」というケースを考えてみましょう。
- 別々の会社の場合:オーナーは賃貸管理会社に連絡し、賃貸管理会社は状況確認後、原因が共用部(給排水管など)にあれば、さらに分譲管理会社に連絡…と、伝言ゲームになりがちで対応が遅れる可能性があります。
- 一括管理の場合:オーナーからの連絡一本で、社内の分譲・賃貸担当者が連携して原因究明と対応にあたります。これにより、迅速なトラブル解決が期待でき、入居者とオーナー双方の安心につながります。
メリット2:建物全体を見据えた統一的な管理戦略
分譲管理会社は長期修繕計画を、賃貸管理会社は空室対策を考えます。これらが別々の会社だと、短期的な視点と長期的な視点が乖離してしまうことがあります。一括管理であれば、例えば「近隣の競合物件に対抗するため、エントランスのセキュリティを強化する(分譲管理)」という修繕計画と、「セキュリティ向上をアピールポイントとして家賃を維持・向上させる(賃貸管理)」という戦略を連動させることが可能です。
メリット3:オーナーと管理組合、双方の負担軽減
特に、賃貸住戸を複数所有するオーナーが管理組合の理事を務めている場合、その効果は絶大です。理事としてマンション全体のことを考える立場と、一人のオーナーとして賃貸経営を考える立場。両方の情報を一括管理会社が把握しているため、報告や相談が一度で済み、オーナーの貴重な時間を節約できます。
渋谷区で信頼できる一括管理会社の選び方【5つのチェックポイント】

では、実際にどのような基準で管理会社を選べば良いのでしょうか。渋谷区の市場特性を踏まえた5つのポイントを紹介します。
Point1: 分譲・賃貸両部門の連携体制が機能しているか
名目上は両方扱っていても、社内で部門が完全に分断され、連携が取れていない会社も存在します。契約前の面談で、連携体制について具体的に質問しましょう。
【担当者への質問例】
「御社では、分譲管理の担当者と賃貸管理の担当者は、どのように情報共有を行っていますか? 定期的なミーティングなどはありますか?」
「大規模修繕工事の際、賃貸入居者への告知や協力依頼は、どの部門が主導して行うのでしょうか?」
Point2: 渋谷区の市場に特化した賃貸募集力があるか
渋谷区は単身者や外国人など、ターゲット層が多様です。地域の特性を理解した募集活動ができるかどうかが、空室期間の長短に直結します。
【担当者への質問例】
「渋谷区内のワンルームや1LDKの管理実績と、平均的な入居率を教えてください。」
「外国人入居希望者への対応(言語、契約手続きなど)は可能ですか?」
「どのような広告媒体(ポータルサイトなど)を使って入居者募集を行いますか?」
Point3: 法律・契約実務に関する専門知識と実績
分譲マンションの賃貸には、区分所有法と借地借家法が複雑に絡み合います。管理規約と賃貸借契約の内容に齟齬がないかなど、専門的なチェック能力が求められます。宅地建物取引士やマンション管理士といった有資格者が在籍しているかは、専門性を測る一つの指標になります。
Point4: 費用の透明性(詳細な項目別見積書の提出)
注意:「管理委託費一式」のような大まかな見積書を提出する会社は避けるべきです。業務ごとの費用が不明確で、サービス内容の評価や他社との比較が困難になるためです。
分譲管理と賃貸管理、それぞれの業務内容に応じて、費用が項目別に細かく記載された見積書を必ず請求してください。一般的な費用の目安はありますが、物件の規模や委託する業務範囲によって大きく変動するため、内訳の明確さが重要です。
Point5: 担当者の専門性とコミュニケーション能力
最終的には、窓口となる担当者との相性が大切です。専門知識はもちろんのこと、こちらの意図を正確に汲み取り、迅速かつ丁寧な報告・連絡・相談ができる人物かを見極めましょう。面談時の受け答えや提案内容から、あなたのマンションの資産価値向上に真剣に向き合ってくれるパートナーかどうかを判断してください。
【管理会社の本音】失敗しない見積もり依頼の現実的な進め方

管理会社を変更・選定する際、多くのオーナーが「できるだけ多くの会社から見積もりを取ろう」と考えがちです。しかし、これがかえって良い提案を遠ざけてしまう可能性があります。ここでは、管理会社側の視点に立った、現実的な進め方をご紹介します。
なぜ相見積もりは「2〜3社」に絞るべきなのか?
特に20戸~40戸程度の中小規模マンションの場合、相見積もりは本気で検討している2~3社に絞るのが賢明です。5社も6社も見積もりを依頼すると、管理会社側は「受注できる可能性が低い『数合わせ』の依頼ではないか」と判断し、提案の優先順位を下げてしまうことがあります。
【注記】
この「2~3社」という推奨は、管理会社業界内の慣行に基づく実務アドバイスであり、法令上の定めではありません。オーナー様は、自身の判断により必要な社数から見積もりを取得する自由があります。ただし、過度に多数の相見積もり依頼は、管理会社の提案精度を低下させ、結果として品質の低い見積書が提出される可能性があるという傾向が報告されているため、参考にしてください。
管理会社が見積もり作成にかける労力とコスト
適正な見積書を作成するために、管理会社は多くの時間と労力をかけています。
- 現地調査: 建物の状況、共用設備の仕様などを確認するため、複数回現地に足を運びます。
- 協力会社との調整: 清掃、エレベーター点検、消防設備点検など、多くの協力会社に見積もりを依頼し、調整を行います。
- 既存資料の精査: 現在の管理規約、長期修繕計画、会計状況などを詳細に読み込み、問題点を洗い出します。
- 理事会等との面談: オーナー様や理事会の要望をヒアリングし、提案内容に反映させるため、複数回の打ち合わせを行います。
これらの労力をかけたにもかかわらず受注に繋がらないケースが多いため、管理会社は依頼主の本気度を慎重に見極めているのです。
信頼されるオーナーになるための見積もり依頼4ステップ
管理会社から「このオーナーのためなら」と質の高い提案を引き出すための、理想的な依頼手順は以下の通りです。
- Step1: 事前準備
- 現在の管理の課題点、新しい管理会社に期待することを整理する。
- 管理規約、長期修繕計画書、直近の総会議事録などを手元に用意する。
- Step2: 候補を2〜3社に絞る
- ウェブサイトで渋谷区での実績や一括管理体制を確認し、候補を絞り込む。
- Step3: 誠実な見積もり依頼
- 電話や問い合わせフォームで、現在の課題と変更を真剣に検討している旨を伝える。
- 「項目別に詳細な見積もりをお願いします」と明確に依頼する。
- Step4: 比較検討と面談
- 提出された見積書を、価格だけでなくサービス内容や提案の質で比較する。
- 最終候補の担当者と面談し、人柄や相性を見極めて決定する。
契約前に必ず確認すべき法的注意点と契約形態

最適なパートナー候補が見つかったら、契約内容の最終確認です。後々のトラブルを防ぐため、以下の点は必ずチェックしてください。
管理会社変更に必要な手続き「総会の普通決議」
管理会社の選定・変更は、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第39条第1項に基づき、管理組合の集会(総会)における「普通決議」(区分所有者および議決権の各過半数)によって決定されるのが原則です。
【ただし重要】
この定足数・決議要件は、マンションの管理規約によって別段の定めをすることが可能です。必ずご自身の管理規約を事前に確認し、必要とされる決議方法・定足数を把握した上で手続きを進めてください。
出典:e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」
契約形態の比較|「2本立て契約」vs「統合管理契約」
一括管理を依頼する場合の契約形態は、主に2つあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合った方を選びましょう。
| 契約形態 | メリット | デメリット/注意点 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 2本立て契約 (分譲管理契約+賃貸管理契約) |
・業務範囲と責任の所在が明確 ・片方の契約だけ見直し・解約が可能 |
・契約書が2通になり、管理が煩雑になる場合がある | ・初めて一括管理を試す場合 ・将来的に片方の管理だけを別の会社に任せる可能性がある場合 |
| 統合管理契約 | ・窓口が完全に一本化され、連携がよりスムーズになる | ・解約条件をより慎重に確認する必要がある。特に、①契約期間中の中途解約が可能か、②中途解約時の予告期間(通常3ヶ月以上)、③解約手数料や違約金の有無と金額、④分譲・賃貸いずれか一方のみを解約できるかの4点を契約書に明記させてください。 | ・信頼関係が構築できた管理会社と長期的な関係を築きたい場合 |
解約条件・報告体制・トラブル対応フローの確認
契約書にサインする前に、以下の項目が明確に記載されているか、必ず確認してください。
- 契約期間と中途解約: 契約期間は通常1年です。中途解約する場合の予告期間(例:3ヶ月前)や、違約金の有無を確認します。
- 報告体制: 管理組合向けの会計報告(分譲)と、オーナー向けの収支報告(賃貸)が、それぞれどのような形式・頻度で提出されるかを確認します。
- 緊急時対応: 夜間や休日に設備トラブルやクレームが発生した場合の連絡体制と対応フローを確認します。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 分譲管理と賃貸管理、別々の会社に任せるメリットはありますか?
A1. メリットとしては、それぞれの分野で最も専門性が高い会社を個別に選べる点が挙げられます。例えば、大規模修繕コンサルティングに非常に強い分譲管理会社と、特定のターゲット層(例:外国人富裕層)へのリーシングに特化した賃貸管理会社を組み合わせる、といった選択が可能です。ただし、本記事で解説したように、情報連携の煩雑さや戦略の不統一といったデメリットが生じる可能性があります。
Q2. 見積もり依頼時に、現在の管理会社に知られずに進めることはできますか?
A2. はい、可能です。管理会社の変更検討は管理組合の正当な権利です。見積もり依頼の段階では、現在の管理会社に通知する必要はありません。候補の会社にも、守秘義務を徹底してもらうよう依頼しましょう。ただし、現地調査の際には、現在の管理会社のスタッフと顔を合わせないよう、日程調整などの配慮が必要になる場合があります。
Q3. 管理会社の変更にはどのくらいの期間がかかりますか?
A3. 一般的には、候補会社の選定から総会での決議、業務の引き継ぎ完了まで、スムーズに進んでも3ヶ月から6ヶ月程度かかります。特に、既存の管理会社との契約解約予告期間(通常3ヶ月)があるため、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
まとめ:渋谷区での最適なマンション管理パートナーを見つけるために
渋谷区という変化の激しい市場で、大切な資産であるマンションの価値を維持・向上させるためには、分譲管理と賃貸管理の両面から戦略的にアプローチできるパートナーが不可欠です。
一括管理を依頼することで、情報共有の迅速化、統一的な管理戦略の実現、そしてオーナー自身の負担軽減という大きなメリットが得られます。
最適な管理会社を選ぶためには、以下のポイントを忘れないでください。
- 渋谷区の市場特性を理解し、実績があるか。
- 分譲・賃貸両部門の連携体制が実質的に機能しているか。
- 費用内訳が明確な、詳細な見積書を提出するか。
- 過度な相見積もりは避け、2〜3社と真剣に向き合う姿勢で臨むこと。
この記事が、あなたのマンション経営における最良のパートナー探しの一助となれば幸いです。
【免責事項】
本記事は、不動産管理に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、特定の物件や状況に対する法的な助言を与えるものではありません。管理会社の選定や契約締結にあたっては、必ずご自身のマンションの管理規約や契約条項をご確認の上、ご自身の判断と責任において行ってください。また、法令等は改正される可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。
参考資料
- e-Gov法令検索. 「建物の区分所有等に関する法律」. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
- 国土交通省. 「マンション標準管理規約」. https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
- 株式会社i-dea. (2023). 「渋谷区の不動産価値は今後どうなる?将来性をエリアごとに解説」. https://www.i-dea.co.jp/cms/slog/entry/61
島 洋祐
保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

