東京のマンション管理会社変更|資産価値を守る7ステップ完全ガイド

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東京の分譲マンションにお住まいで、現在の管理会社に不満や疑問を感じていませんか?管理会社の対応品質や管理委託費は、マンションの居住快適性だけでなく、長期的な資産価値にも直結する重要な要素です。しかし、いざ変更を検討しようにも、「何から手をつければ良いのか」「法的な手続きは難しいのでは」と不安に思う方も少なくありません。

この記事では、宅地建物取引士の知見を基に、東京のマンション管理会社を変更するための具体的な手順、失敗しない選び方のポイント、そして法的根拠までを網羅的に解説します。この記事を読めば、管理組合の理事や区分所有者の皆様が、自信を持って資産価値を守るための第一歩を踏み出せるようになります。

はじめに:なぜ今、東京でマンション管理会社の変更が検討されるのか?

近年、東京都内の分譲マンションで管理会社の見直しを検討する管理組合は少なくありません。その背景には、コスト、サービス品質、そして将来の資産価値に対する意識の高まりがあります。

管理委託費への不満とサービス品質のミスマッチ

管理会社変更の最も一般的な理由の一つが、コストとサービス内容の不均衡です。住民が毎月支払う「管理費」の中から、管理組合は管理会社へ「管理委託費」を支払っています。この管理委託費がサービス内容に見合っていないと感じるケースが散見されます。

国土交通省の最新調査でも、管理組合が抱える課題として「修繕積立金の不足」が最も多く挙げられており、コストへの意識の高さがうかがえます(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」)。

【用語解説:管理費と管理委託費】
管理費:区分所有者が「管理組合」に支払う、日常の維持管理(共用部の光熱費、清掃費など)に使われる費用。
管理委託費:管理組合が「管理会社」に業務の対価として支払う費用。「管理費」の中から支出される。

フロント担当者の対応力とコミュニケーション不足

日々の窓口となるフロント担当者(担当マネージャー)の対応も、満足度を大きく左右します。

  • 理事会からの提案や質問への返答が遅い
  • 住民からのクレーム対応が不十分
  • 管理組合の課題解決に向けた積極的な提案がない

このようなコミュニケーション不足は、管理組合の円滑な運営を妨げ、住民の不信感を招く原因となります。

【東京特有】大規模修繕と資産価値維持への危機感

東京では、建設費や人件費の高騰により、大規模修繕工事のコストが上昇傾向にあります。将来の修繕に備える「修繕積立金」の重要性が増す中で、現行の管理委託費が適正か、より良い長期修繕計画を提案してくれる管理会社はないか、という視点での見直しが活発化しています。適切な管理と計画的な修繕は、マンションの資産価値を維持・向上させるための生命線と言えるでしょう。

管理会社変更は資産価値にどう影響する?3つのメリットを解説

管理会社の変更は、単なるコスト削減にとどまらず、マンション全体の価値を高めるための積極的な経営判断です。ここでは、変更によって得られる主な3つのメリットを解説します。

メリット1:管理委託費の適正化による修繕積立金の健全化

新しい管理会社との契約により、現在のサービス内容を維持したまま管理委託費を削減できるケースは少なくありません。削減できた費用を修繕積立金に充当することで、将来の大規模修繕に備えることができます。資金計画に余裕が生まれれば、計画的な修繕が可能となり、建物の劣化を防ぎ、資産価値の維持に繋がります。

メリット2:管理品質の向上と居住満足度のアップ

競争原理が働くことで、より質の高いサービスを提供する管理会社を選ぶことが可能になります。

  • 清掃の頻度や質が向上し、共用部が清潔に保たれる
  • 管理員の対応が丁寧になり、防犯面でも安心感が増す
  • 迅速で的確なトラブル対応により、住民間の問題が減る

これらの改善は、日々の暮らしの快適性を高め、居住者満足度の向上に直結します。良好なコミュニティと管理状態は、中古市場での評価にも良い影響を与えます。

メリット3:新たな視点による長期修繕計画の見直し

管理会社が変わることで、これまで見過ごされてきた課題や新たな改善点が見つかることがあります。特に長期修繕計画については、新しい管理会社が第三者の視点でチェックすることで、より現実的でコスト効率の高い計画に見直せる可能性があります。将来のコストを正確に予測し、適切な積立額を設定することは、長期的な資産価値の維持に不可欠です。

【法的根拠から解説】マンション管理会社変更の全7ステップ

管理会社の変更は、感情的に進めるのではなく、法的な根拠に基づいた正しい手順を踏むことが極めて重要です。ここでは、理事会での検討開始から業務引継ぎまでを7つのステップに分けて解説します。

ステップ1:現状の管理会社の問題点を洗い出す(理事会)

まずは理事会で、現在の管理会社に対する問題点や改善要望を具体的にリストアップします。

  • 管理委託契約書と実際のサービス内容に乖離はないか
  • 過去の総会や理事会の議事録を確認し、指摘事項が改善されているか
  • 可能であれば、住民アンケートを実施し、客観的な意見を収集する

これらの課題を整理し、管理会社変更の必要性について理事会内での合意を形成します。

ステップ2:管理規約の確認と変更スケジュールの策定

次に、ご自身のマンションの「管理規約」を必ず確認してください。管理会社の変更(管理委託契約の解除・締結)に関する総会の決議要件が定められています。その上で、総会開催の時期から逆算して、全体のスケジュールを立てます。

ステップ3:新管理会社の候補選定と見積もり依頼(2〜3社が現実的)

複数の候補会社を選定し、相見積もりを依頼します。ただし、むやみに多くの会社へ依頼することは避けるべきです。管理会社は見積もり作成のために、現地調査や協力会社との調整、理事会との面談など、多大な労力をかけます。特に20〜40戸規模のマンションで5社も6社も見積もりを依頼すると、対応を敬遠される可能性があります。現実的には、信頼できそうな2〜3社に絞って依頼するのが賢明です。

ステップ4:候補会社の比較検討とプレゼンテーション

各社から提出された見積書と提案書を比較検討します。費用だけでなく、管理体制や担当者の専門性、過去の実績などを多角的に評価しましょう。書類選考で絞り込んだ会社に理事会向けの説明会(プレゼンテーション)を依頼し、質疑応答を通じて疑問点を解消します。

ステップ5:総会に向けた準備と重要事項説明の実施

理事会として推薦する新管理会社候補を1社に絞り込み、総会に向けて準備を進めます。マンション管理適正化法に基づき、新しい管理会社は、管理組合(全区分所有者)に対し、契約を締結するまでに管理業務主任者をして、契約内容に関する重要事項の説明を行わなければなりません。実務上、この説明は総会前に説明会形式で実施されるのが一般的です。

【法的根拠:重要事項の説明義務】
マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約を締結しようとするときは、…あらかじめ、…管理業務主任者をして、…重要事項について、…説明をさせなければならない。(出典:マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第72条1項)

ステップ6:総会での決議(普通決議)

総会を開催し、現在の管理会社との契約解除と、新しい管理会社との契約締結について議案を上程します。この決議は、原則として「普通決議」で行われます。

【法的根拠:普通決議の要件】
管理会社の変更に必要な普通決議の要件は、原則として「組合員総数の過半数」かつ「議決権総数の過半数」の賛成が必要です(出典:建物の区分所有等に関する法律 第39条1項)。
【最重要注意点】
ただし、多くのマンションが準拠する国土交通省の「マンション標準管理規約」では、普通決議を「出席組合員の議決権の過半数」で可決できると定めています(出典:マンション標準管理規約 第47条)。
必ずご自身のマンションの管理規約を確認し、定められた決議要件に従ってください。

【2025年法改正について】
2025年5月に区分所有法の改正が成立し、2026年4月1日から施行されます。ただし、管理会社変更に関わる普通決議の要件(第39条)については、本改正による実質的な変更はありません。決議要件は従来通り、各マンションの管理規約に従って判断してください。(参考:法務省ウェブサイト)

ステップ7:新旧管理会社での業務引継ぎ

総会で承認されたら、新旧の管理会社間で業務の引継ぎが行われます。管理組合の通帳や印鑑、共用部の鍵、各種点検報告書などが引き渡されます。国土交通省の「標準管理委託契約書」では、旧管理会社は新管理会社へ業務を誠実に引き継ぐ義務が定められています(出典:標準管理委託契約書 第21条)。管理組合としても、引継ぎが滞りなく行われるよう、進捗を確認しましょう。

東京で失敗しない!新しい管理会社の比較検討4つのポイント

数ある管理会社の中から、自分たちのマンションに最適なパートナーを見つけるためには、明確な評価基準を持つことが重要です。ここでは、特に重視すべき4つのポイントを解説します。

ポイント1:見積書は「一式」を避け、費目の内訳を精査する

見積書を比較する際は、総額だけでなく、その内訳を詳細に確認することが不可欠です。

悪い例 ❌良い例 ✅
管理委託業務費 一式 〇〇円・事務管理業務費
・管理員業務費
・清掃業務費
・建物・設備管理業務費
(各項目に詳細な仕様と金額)

「一式」という表記では、どの業務にいくらかかっているのか不明瞭です。「標準管理委託契約書」の考え方に基づき、「事務管理」「管理員」「清掃」「設備管理」といった費目ごとに内訳が明記されているかを確認しましょう。これにより、各社の価格設定の妥当性を正確に比較できます。

ポイント2:東京での管理実績と担当者の専門性

マンション管理には地域性が影響します。特に東京では、タワーマンションや大規模物件の管理ノウハウ、行政との連携などが求められる場合があります。

  • 東京23区内での管理実績は豊富か
  • 自分たちのマンションと類似規模・形態の物件の管理経験はあるか
  • フロント担当者は管理業務主任者などの資格を持ち、経験豊富か

担当者一人の能力に依存するのではなく、会社全体としてバックアップ体制が整っているかも重要なポイントです。

ポイント3:緊急時対応と報告・連絡・相談の体制

設備の故障や漏水など、マンションでは24時間365日、緊急事態が発生する可能性があります。

  • 夜間や休日の緊急連絡体制はどうか
  • 緊急時の出動体制や協力業者との連携はスムーズか
  • 理事会への報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が徹底される仕組みがあるか

これらの体制が明確であることは、安心・安全なマンションライフの基盤となります。

ポイント4:「管理計画認定制度」等の理解度と提案力

近年、マンションの管理状態を公的に評価する制度が始まっています。

  • 管理計画認定制度:地方公共団体(市区町村など)が、マンションの管理計画を認定する制度。
  • マンション管理適正評価制度:管理組合が自らの管理レベルを客観的に評価・公表する民間の制度。

これらの制度は、マンション(管理組合)を評価するものであり、管理会社自体をランク付けするものではありません。しかし、優れた管理会社はこれらの制度を深く理解し、認定取得に向けた具体的な提案やサポートができます。制度への理解度を通じて、その会社の専門性や提案力を見極めることができます。

管理会社変更のよくある質問(Q&A)

ここでは、管理会社の変更に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 変更にかかる期間はどのくらい?

A1. 理事会での検討開始から、新しい管理会社の業務開始まで、一般的には6ヶ月から1年程度かかります。特に、候補会社の選定や総会準備には時間を要するため、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。

Q2. 契約期間の途中でも解約できる?

A2. はい、可能です。国土交通省の「標準管理委託契約書」では、契約の有効期間内であっても、管理組合から解約を申し入れる場合、3ヶ月前までに書面で通知すれば解約できると定められています(出典:標準管理委託契約書 第20条)。多くの管理委託契約書がこれに準じていますが、念のため、現在の契約書に記載されている解約条項をご確認ください。

Q3. 旧管理会社が引継ぎに協力してくれない場合は?

A3. 管理委託契約に基づき、旧管理会社には契約終了に伴う業務を誠実に引き継ぐ義務があります(出典:標準管理委託契約書 第21条)。もし非協力的な態度を取る場合は、まず契約書を根拠に協力を求めます。それでも改善されない場合は、弁護士やマンション管理士などの専門家に相談することも検討しましょう。ただし、多くの場合は契約に従い、適切に引継ぎが行われます。

実務担当者からのヒント:円滑な変更を実現するコツ

円滑な移行の鍵は、丁寧なコミュニケーションと明確な記録にあります。

  • 旧管理会社への配慮:解約を通知する際は、これまでの協力への謝意を伝え、あくまで管理組合の方針として決定した旨を丁寧に説明しましょう。感情的な対立を避けることが、円滑な引継ぎに繋がります。
  • 住民への丁寧な説明:なぜ管理会社を変更するのか、そのメリットは何なのかを総会だけでなく、広報誌などを通じて丁寧に説明し、住民の理解と協力を得ることが大切です。管理費の口座変更など、住民自身が行う手続きについても早めに周知しましょう。
  • 引継ぎチェックリストの活用:新旧管理会社と管理組合の三者で、引き継ぐべき書類(設計図書、点検報告書、議事録など)や物品(鍵、印鑑など)のリストを作成し、確認しながら進めることで、引継ぎ漏れを防げます。

まとめ:適切な管理会社選びがマンションの未来を創る

マンション管理会社の変更は、単なるコスト削減ではなく、自分たちの資産であるマンションの価値を長期的に維持・向上させるための重要な経営判断です。

東京という不動産価値の高いエリアだからこそ、管理の質が資産価値に与える影響は計り知れません。現在の管理会社に少しでも疑問があるなら、まずは理事会で問題点を共有し、本記事で解説したステップに沿って検討を進めてみてください。

法的な根拠に基づいた正しい手順を踏み、複数の候補を客観的な視点で比較することで、きっとあなたのマンションに最適なパートナーが見つかるはずです。適切な管理会社と共に、より快適で資産価値の高いマンションの未来を築いていきましょう。


免責事項
本記事は、2025年10月17日時点の情報に基づき、マンション管理会社の変更に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別の事案に対する法的な助言を行うものではありません。具体的な手続きを進めるにあたっては、必ずご自身のマンションの管理規約をご確認の上、必要に応じて弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。法令や各種制度は改正される可能性があるため、常に最新の情報をご参照ください。


参考資料

  • 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」 (https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html)
  • e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」 (https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069)
  • e-Gov法令検索「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」 (https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC1000000149)
  • 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和3年6月22日改正) (https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000080.html)
  • 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」 (https://www.mlit.go.jp/common/001197368.pdf)
  • 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(所有者不明土地関係)」 (https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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