東京のマンション管理会社変更ガイド|失敗しない選び方7つのステップ

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マンションの清掃が行き届いていない、担当者の対応が遅い、修繕の提案が全くない、管理委託費が本当に適正なのかわからない…。もしあなたが管理組合の役員として、このような不満や疑問を抱えているなら、それは管理会社の見直しを考えるサインかもしれません。

特に多くのマンションが林立する東京では、管理会社の選択肢も豊富です。しかし、専門知識がないまま会社を選んでしまうと、現状よりも状況が悪化するリスクもあります。この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、東京都内で信頼できるマンション管理会社を選ぶための具体的なステップ、費用や契約のチェックポイント、そして管理会社を変更する際の手続きまでを、法令や公的データに基づいて網羅的に解説します。最適なパートナーを見つけることは、マンションの資産価値を守り、将来への大切な投資となります。

【重要】「分譲管理」と「賃貸管理」は別物!本記事のスコープ

マンションの「管理」には、目的や契約相手が全く異なる複数の種類が存在します。最適な会社を選ぶ第一歩は、その違いを正確に理解することです。特に「分譲マンション管理」と「賃貸管理」は混同されがちですが、役割は全く異なります。

種類主な業務内容契約の相手
分譲マンション管理
(本記事の対象)
管理組合の運営サポート(会計、総会・理事会支援、長期修繕計画の管理など)管理組合
賃貸管理(PM)個別の部屋の収益最大化(入居者募集、家賃回収、クレーム対応など)部屋のオーナー
ビルメンテナンス(BM)建物の物理的な維持管理(清掃、設備点検、警備など)分譲管理会社やPM会社
  • 分譲マンション管理: 管理組合から委託を受け、マンション全体の資産価値を維持・向上させるための運営をサポートします。本記事では、この「分譲マンション管理」に特化して解説します。
  • 賃貸管理(PM): Property Managementの略。投資用マンションのオーナーから委託を受け、賃料収入を最大化するための業務を行います。
  • ビルメンテナンス(BM): Building Managementの略。清掃や設備点検など、建物の物理的な維持管理を専門に行います。多くの場合、分譲管理会社から再委託される立場です。

管理組合の役員の方が探すべきは「分譲マンション管理」を行う会社です。この区別をしっかり認識しておきましょう。

マンション管理会社の役割とは?資産価値を守るパートナー

マンション管理会社は、単に清掃や点検を行うだけではありません。マンションという共同資産の価値を維持・向上させるための、管理組合の最も重要なパートナーです。その業務範囲は、国土交通省が作成した「標準管理委託契約書」に具体的に定められています。

管理会社の主な業務内容【標準管理委託契約書ベース】

標準的な管理委託契約では、業務は主に以下の4つに分類されます。

  1. 事務管理業務:
    • 管理組合の会計業務(管理費等の収納、支払、帳簿管理)
    • 総会・理事会の開催支援(招集通知の作成・発送、議事録案の作成)
    • 管理費等の滞納者に対する督促
  2. 管理員業務:
    • 受付、巡回、点検、各種報告連絡
    • ゴミ出しルールの指導、共用部分の鍵の管理
    • 業者作業の立ち会い
  3. 清掃業務:
    • 日常清掃(エントランス、廊下、階段など)
    • 定期清掃(床面洗浄、ワックスがけなど)
  4. 建物・設備管理業務:
    • エレベーター、給排水設備、消防設備などの定期点検
    • 法定点検の計画・実施、報告書の管理

これらの業務を専門家である管理会社が担うことで、役員の負担を軽減し、専門的な知見に基づいた適切な管理が実現します。

なぜ管理会社が資産価値を左右するのか?

適切な管理が行われているマンションは、美観が保たれ、設備トラブルも少なく、快適な居住環境が維持されます。これが「住みたい」と思わせる魅力となり、中古市場での評価、つまり資産価値に直結します。

逆に、管理が行き届いていないと、エントランスが汚れていたり、長期修繕計画がずさんだったりするため、資産価値は下落しやすくなります。優れた管理会社は、日々の管理だけでなく、将来を見据えた修繕計画の提案などを通じて、マンションの価値を長期的に守る役割を担っているのです。

東京のマンション管理会社選び 失敗しない7つのステップ

では、具体的にどのように管理会社を選べば良いのでしょうか。ここでは、失敗しないための7つのステップを解説します。

ステップ1:現状の課題と改善目標を明確にする

まず、現在の管理組合が抱えている課題を洗い出しましょう。理事会で話し合い、住民アンケートなどを実施するのも有効です。

  • (例)清掃の質が低い、担当者のレスポンスが遅い
  • (例)管理委託費が高い気がする、コストを削減したい
  • (例)修繕提案がなく、将来が不安
  • (例)IT化を進めてほしい(掲示板の電子化など)

課題を具体的にすることで、次の管理会社に何を求めるかが明確になります。

ステップ2:候補となる管理会社を探す(公的情報の活用)

課題が明確になったら、候補となる会社を探します。マンション管理業を営むには、国土交通省への登録が義務付けられています。まずは公的な情報源を活用しましょう。

【E-E-A-T要素:公的データベースの活用】
国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」では、登録されているマンション管理業者を検索できます。社名や所在地から検索し、行政処分の履歴がないかなどを確認することが、信頼できる会社選びの第一歩です(出典:国土交通省)。

ステップ3:候補会社を2〜3社に絞り込む

複数の候補から、実際にプレゼンテーションを依頼する会社を2〜3社に絞り込みます。

ここで注意したいのが、過度な相見積もりは避けるべきという点です。管理会社が見積もりを作成するには、現地調査や協力会社との調整など、多大な労力がかかります。5社も6社も見積もりを依頼する管理組合は、本気度が低いと見なされ、質の高い提案を受けられない可能性があります。特に20~40戸程度の中小規模マンションでは、熱意のある2~3社に絞ってじっくり向き合う方が、結果的に良い関係を築けます。

ステップ4:見積もりと提案書を依頼する

絞り込んだ会社に、同じ条件(仕様書)を提示して見積もりと提案書を依頼します。仕様書には、ステップ1で明確にした課題や改善要望を盛り込みましょう。これにより、各社の提案内容を公平に比較できます。

ステップ5:フロント担当者と面談し、対応品質を見極める

提案書の内容も重要ですが、それ以上に実際に窓口となる「フロント担当者」の質が管理の満足度を大きく左右します。面談(プレゼンテーション)では、以下の点を確認しましょう。

  • 管理組合の課題を正しく理解しているか
  • 質問に対して的確に答えられるか
  • 誠実さや熱意が感じられるか
  • 管理業務主任者の資格を保有しているか

ステップ6:提案内容と見積もりを比較検討する

各社の提案書と見積書を、理事会で慎重に比較検討します。単に金額の安さだけで判断せず、「費用対効果」で評価することが重要です。安くても必要な業務が含まれていなければ意味がありません。

ステップ7:臨時総会で決議し、新会社と契約する

理事会で新管理会社の候補を1社に絞り込んだら、臨時総会を開催し、管理組合の最高意思決定機関である総会で承認を得ます。承認が得られれば、正式に新しい管理会社と管理委託契約を締結します。

【比較】大手と独立系(中小)管理会社、どっちを選ぶ?

管理会社は、大きく「大手(デベロッパー系)」と「独立系(中小・専門特化型)」に分けられます。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが良いかはマンションの規模や求めるものによって異なります。

大手(デベロッパー系)独立系(中小・専門特化型)
メリット・ブランド力、信頼性が高い
・組織体制がしっかりしている
・大規模マンションの実績が豊富
・最新のITツール導入などに積極的
・管理委託費が比較的安価な傾向
・小回りが利き、柔軟な対応が期待できる
・地域密着型で地元の情報に強い
・独自の強み(IT特化、大規模修繕特化など)を持つ会社がある
デメリット・管理委託費が比較的高め
・マニュアル通りの対応になりがち
・フロント担当者の異動が多い
・会社によってサービスの質にばらつきがある
・経営基盤が大手に劣る場合がある
・大規模・タワーマンションの実績が少ない会社もある

大手(デベロッパー系)のメリット・デメリット

新築分譲時にデベロッパーの子会社がそのまま管理を請け負うケースです。ブランド力と安定感が魅力ですが、コストが高めで画一的なサービスになりがちという側面もあります。

独立系(中小・専門特化型)のメリット・デメリット

特定の親会社を持たず、独立して管理業を営む会社です。コストパフォーマンスや柔軟な対応が期待できる一方、会社ごとのサービスレベルの差が大きいのが特徴です。

参考:顧客満足度調査や管理戸数ランキングの正しい見方

管理会社選びの参考として、オリコンなどが発表する顧客満足度調査や、業界紙がまとめる管理戸数ランキングがあります。

【E-E-A-T要素:第三者機関の調査データ】
例えば、「2025年 オリコン顧客満足度®調査 マンション管理会社 首都圏 東京都」では、1位は野村不動産パートナーズ、2位は大成有楽不動産と三井不動産レジデンシャルサービスが同点で評価されています(出典:oricon ME)。

ただし、これらのランキングはあくまで参考情報の一つです。ランキング上位の会社が、必ずしもあなたのマンションに最適とは限りません。自分たちのマンションの課題や規模に合った会社かどうかを、自身の目で見極めることが最も重要です。

見積もり・契約時に絶対確認すべき5つのチェックポイント

最終候補の会社と契約する前に、見積書と契約書の内容を細かく確認することが、後々のトラブルを防ぐために不可欠です。

① 管理委託費の内訳は明確か?

管理委託費は、管理組合が支払う大切な費用です。国土交通省の調査によると、管理会社へ支払う委託業務費の全国平均は1戸あたり月額3,123円です(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」 ※本記事執筆時点の最新データ)。

見積書を確認する際は、「管理委託費一式」のような大雑把な記載になっていないか注意しましょう。「事務管理業務費」「清掃業務費」など、標準管理委託契約書の費目に沿った詳細な内訳が記載されているかを確認することが、費用の透明性を担保する上で極めて重要です。

② 見積もり依頼時の注意点【管理会社側の本音】

前述の通り、管理会社にとって見積もり作成は大きな負担です。そのため、複数の会社から見積もりを取る際は、管理組合側にも配慮が求められます。

  • 依頼は2〜3社に絞る: 本気で検討していることを示すためにも、厳選した会社に依頼しましょう。
  • 仕様書を統一する: 各社が同じ土俵で提案・見積もりできるよう、要望をまとめた仕様書を用意します。
  • 回答期限を設ける: いつまでに回答が必要か、明確な期限を伝えましょう。

真摯な姿勢で依頼することが、結果的に質の高い提案を引き出すコツです。

③ 契約書は「標準管理委託契約書」に準拠しているか?

契約書は、国土交通省が公表している「標準管理委託契約書」に準拠した内容になっているかを確認しましょう。これは、管理組合が不利な契約を結ばないための雛形です。

特に、以下の条項はトラブルになりやすいため、必ず内容を確認してください。

特に注意すべき条項(善管注意義務、再委託の範囲、解約条件)
  • 善管注意義務: 管理委託契約は民法上の準委任契約にあたり、管理会社は善良な管理者の注意をもって業務を行う義務(善管注意義務)を負います(民法第656条、第644条)。
  • 再委託の範囲: 清掃や設備点検など、どの業務を他の専門業者に再委託できるかが明記されているか。
  • 解約条件: 契約を解除する場合の予告期間や手続きが明確に定められているか。解約予告期間は契約ごとに異なるため、現行契約書の記載が最優先されます。国交省の標準管理委託契約書では3ヶ月前とされていますが、必ずご自身の契約書を確認してください。

④ フロント担当者の資格と経験は十分か?

フロント担当者の質は重要ですが、その能力を客観的に測る指標の一つが国家資格「管理業務主任者」です。

【E-E-A-T要素:法令に基づく設置義務】
マンション管理業者は、事務所ごとに30管理組合あたり1名以上の専任の管理業務主任者を設置することが法律で義務付けられています(出典:マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第56条)。契約前の面談で、担当者がこの資格を持っているかを確認するのは必須のチェック項目です。

⑤ 管理組合の会計報告の形式と頻度

管理組合のお金がどのように使われているかを明確にするため、会計報告の形式と頻度も事前に確認しましょう。

  • 報告頻度: 月次で収支報告書が提出されるか。
  • 報告形式: 収支の内訳が分かりやすく記載されているか。
  • 保管状況: 通帳や印鑑の保管方法(分別管理されているか)は適切か。

これらのポイントを一つひとつ確認することで、安心して管理を任せられる会社を選ぶことができます。

管理会社変更(リプレイス)の具体的な流れと法的手続き

現在の管理会社との契約を解除し、新しい会社に変更する「リプレイス」は、管理組合にとって一大イベントです。ここでは、その具体的な流れと法的な注意点を解説します。

変更までのロードマップ(準備〜引継ぎ完了)

一般的に、管理会社の変更には準備期間を含めて半年から1年程度かかります。

  1. 準備期間(3ヶ月〜6ヶ月): 理事会での課題整理、新会社候補の選定、見積取得と比較検討。
  2. 総会決議(1ヶ月〜2ヶ月): 臨時総会の開催準備、議案書の配布、総会での決議。
  3. 契約・引継ぎ期間(3ヶ月〜4ヶ月):
    • 旧管理会社への解約通知(現行契約書に記載された予告期間に従う。標準契約書では3ヶ月前が一般的
    • 新管理会社との契約締結
    • 管理組合の会計、書類、鍵などの引継ぎ業務

総会決議の要件【区分所有法と管理規約を確認】

管理会社の変更は、管理組合の運営に関する重要な決定事項であり、総会での決議が必要です。

【E-E-A-T要素:法律と規約の確認】
法律上、管理会社の変更は「区分所有者及び議決権の各過半数」の賛成で可決される普通決議に該当します(出典:建物の区分所有等に関する法律 第39条第1項)。

【最重要注意点】
上記の「過半数」はあくまで法律上の原則です。マンションの管理規約に「議決権の過半数」など別段の定めがある場合は、その規約が優先されます。総会を招集する前に、必ずご自身のマンションの管理規約を確認してください。

旧管理会社との解約交渉と引き継ぎの注意点

総会で変更が決議されたら、現在の管理会社に書面で解約を通知します。解約予告期間については、まず現行の管理委託契約書に定められた条項が最優先されます。標準管理委託契約書に準じて「3ヶ月前の予告」が必要とされているのが一般的ですが、必ずご自身の契約内容を確認してください。円満な引き継ぎのためにも、誠実な対応を心がけましょう。引き継ぎが滞ると、管理費の請求や支払いが遅れるなど、住民サービスに影響が出る可能性があります。新旧の管理会社と管理組合で三者間の打ち合わせを行い、スムーズな移行を目指しましょう。

まとめ:最適な管理会社選びは、マンションの未来への投資

東京都内でマンション管理会社を選ぶことは、無数の選択肢の中から、自分たちのマンションの未来を託すパートナーを探す重要なプロセスです。

  • 現状分析から始める: まずは自分たちのマンションの課題を明確にしましょう。
  • 公的情報を活用する: 国交省のデータベースなどで信頼できる候補を探します。
  • 費用と品質を総合的に判断: 見積もりの安さだけでなく、フロント担当者の質や提案内容を重視しましょう。
  • 契約書を精査する: 「標準管理委託契約書」を基準に、不利な点がないか細かくチェックします。
  • 手続きは慎重に進める: 会社変更には総会決議が必要です。法令と管理規約を遵守しましょう。

良い管理会社は、日々の快適な暮らしを支えるだけでなく、マンションの資産価値を長期的に維持・向上させてくれます。この記事が、あなたのマンションにとって最適なパートナーを見つけるための一助となれば幸いです。

免責事項
本記事は、マンション管理会社の選定に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の管理会社を推奨するものではありません。また、個別の法律相談や契約に関する助言を行うものではありません。管理会社の選定や契約締結、管理規約の解釈にあたっては、必ず最新の法令やご自身のマンションの管理規約を確認の上、必要に応じて弁護士などの専門家にご相談ください。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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