小規模マンションの管理会社費用、相場は?国交省データでわかる適正化の全手順

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「うちのマンションの管理委託費、もしかして高すぎ…?」

小規模マンションの管理組合役員や区分所有者の皆様から、このようなご相談をいただく機会は少なくありません。特に30戸未満のマンションでは、大規模マンションに比べて戸あたりの費用が割高になりがちです。しかし、その費用が本当に適正なのか、どこから手をつけて見直せば良いのか、判断に迷う方も多いでしょう。

この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、小規模マンションの管理会社費用に関する疑問を徹底解説します。国土交通省の公式データを基にした費用の相場から、見積書の内訳、費用が割高になる構造的な理由、そして具体的な費用の適正化アプローチまで、順を追って分かりやすくご説明します。

最後までお読みいただくことで、現在の管理委託費を客観的に評価し、サービス品質を維持しながらコストを最適化するための具体的な一歩を踏み出せるようになります。

まずは基本用語の整理から

記事を読み進める前に、混同しやすい3つの費用について整理しておきましょう。

用語誰が誰に目的
管理委託費管理組合管理会社管理業務(事務・清掃等)を委託する対価(本記事の主題
管理費区分所有者管理組合共用部分の日常的な維持管理(電気代・水道代等)
修繕積立金区分所有者管理組合将来の大規模修繕工事のための積立金

本記事では、管理組合が管理会社に支払う「管理委託費」に焦点を当てて解説します。

目次

小規模マンションの管理委託費用、本当に高い?戸数別の公式データで相場を知る

管理委託費が高いか安いかを判断する第一歩は、客観的なデータと自身のマンションの費用を比較することです。ここでは、国土交通省が公表している最新の統計データを基に、費用の実態を見ていきましょう。

【国土交通省データ】戸数別・管理委託費の月額平均

最新の国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」によると、管理組合が管理会社へ支払う管理委託費の全体平均は、1戸あたり月額10,838円です。しかし、この金額はマンションの規模によって大きく異なります。

総戸数規模管理委託費(1戸あたり月額)
20戸以下17,992円
21~30戸15,487円
31~50戸13,890円
51~75戸12,491円
76~100戸10,501円
101~150戸9,263円
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」(2024年4月26日公表)のデータを基に作成。※消費税率10%を含む金額。人件費高騰等により今後変動する可能性があります。

この表から、マンションの戸数が少ないほど、1戸あたりの管理委託費は高くなることが明確に分かります。例えば、20戸以下のマンションは101~150戸のマンションに比べて、戸あたり単価が約1.9倍にもなります。

小規模物件特有の料金体系:「戸あたり単価」と「最低保証料金」

なぜ小規模マンションの費用は割高になるのでしょうか。その理由の一つが、管理会社の料金体系にあります。多くの管理会社では、小規模物件に対して「最低保証料金(ミニマムチャージ)」を設定しています。

これは、マンションの戸数に関わらず、管理会社がサービスを提供するために最低限必要となる固定費(後述するフロント担当者の人件費や点検費用など)をカバーするための料金です。

仮に「戸あたり単価15,000円、ただし最低保証料金は月額30万円」という契約の場合、

  • 30戸のマンション:15,000円 × 30戸 = 450,000円
  • 15戸のマンション:15,000円 × 15戸 = 225,000円 → 最低保証料金の300,000円が適用

となり、15戸のマンションでは戸あたり単価が実質20,000円に上昇します。このように、小規模マンションでは戸数で費用を単純に割り算できない構造があることを理解しておくことが重要です。

管理委託費の4つの内訳とは?見積書を正しくチェックする基本知識

管理委託費が何に使われているのかを理解するためには、その内訳を知る必要があります。国土交通省が定める「マンション標準管理委託契約書」では、管理委託費を主に以下の4つの業務に区分して明記することが推奨されています。

見積書に「管理業務一式」としか書かれていない場合は、内訳の提示を求めるようにしましょう。「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」第72条でも、管理業者は管理組合に対し、契約前に管理事務の内容や実施方法、費用などを記載した書面を交付して説明する義務が定められています。

① 事務管理業務費(会計・総会支援など)

管理組合の運営をサポートする頭脳的・事務的な業務に対する費用です。

  • 管理費・修繕積立金の出納、会計帳簿の作成
  • 資金の保管・運用
  • 理事会・総会の開催支援、議事録案の作成
  • 各種点検報告書や契約書類の保管

② 管理員人件費(受付・巡回など)

マンションに常駐または巡回する管理員の人件費です。管理委託費の中でも大きな割合を占めることが多く、費用の見直しを検討する際の重要なポイントになります。

  • 受付、来訪者の確認
  • 共用部分の鍵の管理
  • 建物・設備の目視点検、異常の報告
  • 各種業者作業の立ち会い

③ 清掃業務費(日常清掃・定期清掃)

マンションの美観と衛生を保つための費用です。

  • 日常清掃:エントランス、廊下、階段、ゴミ置き場などの日常的な清掃
  • 定期清掃:ポリッシャーなど専門機材を使った床面洗浄やワックスがけ

④ 建物・設備管理業務費(法定点検など)

建物の安全性や機能を維持するための専門的な点検・保守にかかる費用です。

  • エレベーター設備点検:建築基準法第12条に基づく定期検査
  • 消防用設備点検:消防法第17条の3の3に基づく定期点検
  • 給排水設備点検:貯水槽の清掃や水質検査など
  • 機械式駐車場設備点検

これらの内訳を理解することで、どの業務にどれだけのコストがかっているのかを把握し、費用削減を検討する際の具体的な議論が可能になります。

なぜ割高に?小規模マンションの管理委託費が高くなる3つの構造的理由

「データ上、小規模だと高いのは分かった。でも、なぜ?」という疑問に、3つの構造的な理由からお答えします。この背景を理解することで、管理会社との交渉や費用見直しをより建設的に進めることができます。

理由1:スケールメリットが働かず、固定費の負担が重い

スーパーで商品をまとめ買いすると単価が安くなるように、マンション管理にも「スケールメリット(規模の経済)」が働きます。

大規模マンションでは、管理に必要な様々な固定費を多くの戸数で分担するため、1戸あたりの負担は軽くなります。一方、小規模マンションでは、同じ固定費を少ない戸数で分担するため、1戸あたりの負担が重くなります。

理由2:フロント担当者の人件費が分散しにくい

管理組合の窓口となる管理会社の担当者(フロントマン)の人件費も、スケールメリットに影響する大きな要素です。

フロント担当者1人が担当できる物件数には限りがあります。大規模マンションであれば1棟で多くの戸数を担当できますが、小規模マンションばかりを担当すると、同じ労力をかけても担当戸数が少なくなり、結果として1戸あたりの人件費負担が大きくなってしまうのです。

理由3:清掃・点検業務の「1回あたり」のコスト効率が悪い

日常清掃や各種の法定点検は、マンションの規模に関わらず「1回の訪問」に対して一定の基本料金や人件費が発生します。

例えば、20戸のマンションでも100戸のマンションでも、消防設備点検の作業員が訪問するためのコストは大きくは変わりません。そのため、戸数が少ないほど、1戸あたりの点検費用は割高になる傾向があります。

【実践】管理委託費用を適正化する2つの具体的アプローチ

費用が割高になる構造を理解した上で、いよいよ具体的な費用適正化のアプローチを見ていきましょう。やみくもな値下げ要求はサービスの質の低下を招くだけです。重要なのは、以下の2つのアプローチを組み合わせ、コストと品質のバランスを取ることです。

アプローチ1:業務仕様(サービスレベル)を見直す

現在の管理委託契約書に記載されている業務内容が、本当に自分たちのマンションに必要か、過剰になっていないかを見直すことが最も効果的です。コスト削減は、サービスレベルの変更とセットで考えるのが基本です。

注意点
コスト削減だけを追求すると、「安かろう悪かろう」の状態に陥り、マンションの資産価値を損なう恐れがあります。どのサービスが本当に必要か、管理組合内で十分に議論することが不可欠です。

以下に見直しの具体例を挙げます。

(業務仕様見直しの検討例)
■管理員業務
・勤務時間を短縮する(例:月~金 9時~17時 → 9時~15時)
・勤務日数を減らす(例:週5日勤務 → 週3日勤務)
・常駐から巡回方式に変更する

■清掃業務
・日常清掃の頻度を見直す(例:週5回 → 週3回)
・定期清掃(床洗浄等)の回数を減らす(例:年2回 → 年1回)

■設備管理業務
・エレベーターの契約をフルメンテナンス契約からPOG契約(パーツ・オイル・グリス契約)に見直す ※築年数や使用頻度を考慮する必要あり

アプローチ2:相見積もりを取得して比較検討する

現在の管理会社との契約内容が適正か判断するために、他の管理会社から見積もり(相見積もり)を取得することは非常に有効な手段です。複数の会社から提案を受けることで、費用だけでなく、サービス内容や担当者の対応力も比較できます。

小規模マンションに強い管理会社の選び方 3つの重要ポイント

相見積もりを取得する際や、新たに管理会社を探す際に、どのような点に注目すればよいのでしょうか。特に小規模マンションの管理においては、以下の3つのポイントが重要になります。

ポイント1:同規模物件の管理実績が豊富か

小規模マンションには、大規模マンションとは異なる特有の課題(コミュニティ形成の難しさ、役員のなり手不足など)があります。そのため、自社と同じくらいの戸数(例:30戸未満)のマンションの管理実績が豊富な会社を選ぶことが重要です。実績が豊富であれば、小規模物件特有の課題に対するノウハウや、コストを抑えつつ質を保つための工夫を期待できます。

ポイント2:柔軟な契約プラン(部分委託など)を提案できるか

全ての業務を管理会社に任せる「全部委託(フルサポート)」だけでなく、必要な業務だけを選ぶ「部分委託」に対応できるかどうかも確認しましょう。

例えば、「会計業務はプロに任せたいが、清掃は自分たちでできる」といった場合に、柔軟なプランを提案できる会社は、小規模マンションにとって心強いパートナーとなり得ます。

ポイント3:フロント担当者の対応力と専門性を見極める

最終的に管理組合の窓口となるのは、管理会社の「フロント担当者」です。会社の規模や知名度だけでなく、実際に担当してくれる個人のスキルや人柄が、管理の質を大きく左右します。

面談の際には、以下のような点を確認しましょう。

  • 説明が分かりやすく、こちらの質問に的確に答えられるか
  • 小規模マンションの課題を理解し、具体的な改善提案ができるか
  • 対応が迅速で、誠実な印象を受けるか

【専門家コラム】「管理計画認定制度」と管理会社の評価は別物です
近年、「管理計画認定制度」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体(都道府県または市区町村)が認定する制度です。しかし、この制度はあくまで「マンションの管理状態」を評価するものであり、「管理会社」の優劣を評価・認定するものではありません。「認定を受けているから良い管理会社だ」という判断は誤りですので注意しましょう。
詳細は国土交通省「マンション管理計画認定制度の概要」をご参照ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000198.html (※2025年10月時点の最新リンク)

管理会社変更(リプレイス)で失敗しないための手順と注意点

現在の管理委託費やサービスに納得できず、管理会社の変更(リプレイス)を検討する場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか。手続きのハードルは決して低くありませんが、ポイントを押さえれば成功させることは可能です。

管理会社変更を成功させる5つのステップ

  1. 現契約の確認:まず現在の管理委託契約書を確認し、「解約予告期間」を把握します。国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」では3ヶ月前までとされていますが、ご自身の契約書で定められた期間が最優先されますので、必ず確認してください。
  2. 新会社の選定・見積取得:前述のポイントを参考に、2~3社の候補を選定し、相見積もりを取得します。
  3. 理事会での審議:取得した見積もりを基に、理事会で新会社の候補を1社に絞り込みます。
  4. 総会での決議:管理会社との契約変更は、管理組合の総会での承認が必要です。新会社候補の提案内容や契約案を議案として上程し、決議を得ます。
  5. 新旧会社の引継ぎ:総会で承認された後、現在の管理会社へ解約を通知し、新会社との間で管理業務の引継ぎ(通常1~2ヶ月)を行います。

総会での決議要件|原則「普通決議」だが規約の確認は必須

管理会社の変更は、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第18条第1項に基づき、原則として「普通決議」で決定できます。これは、区分所有者数および議決権の「各過半数」の賛成で可決されるものです。

しかし、ここで非常に重要な注意点があります。

ただし、ご自身のマンションの管理規約で「特別決議(区分所有者数および議決権の各4分の3以上の賛成)」など、より厳しい要件を定めている場合は、規約が優先されます。手続きを進める前に、必ず管理規約の該当条項をご確認ください。

見積もり依頼は2~3社に絞るべき理由【管理会社側の本音】

費用適正化のために相見積もりは有効ですが、5社も6社も声をかけるのは避けるべきです。結論から言うと、真剣に比較検討できる2~3社に絞って依頼することが、成功の秘訣です。

なぜなら、管理会社にとって、1つのマンションの見積書と提案書を作成するには、非常に大きな労力がかかるからです。

  • 現地調査:建物の状態や設備の仕様を詳細に確認する。
  • 資料読込:既存の契約書や管理規約、長期修繕計画を読み解く。
  • 協力会社との調整:清掃や設備点検の協力会社と打ち合わせ、見積もりを取得する。
  • プレゼンテーション準備:理事会での説明資料を作成し、質疑応答に備える。

これらの作業には、担当者が何度も現地に足を運び、多大な時間を費やします。

そのため、多数の会社が競合する「受注できる可能性が低い案件」と判断されると、管理会社は真剣な提案を躊躇したり、見積もりの提出自体を辞退したりすることがあります。特に採算性がシビアな小規模マンションでは、その傾向が顕著です。

管理組合と管理会社は、対等なパートナーです。2~3社に絞り、真摯な姿勢で依頼することで、各社から質の高い、現実的な提案を引き出すことが可能になります。

まとめ:コストと品質のバランスが小規模マンション管理の鍵

小規模マンションの管理委託費は、構造的に割高になりやすいという側面があります。しかし、その構造を理解し、適切な手順を踏むことで、費用を適正化することは十分に可能です。

今回のポイントを改めて整理します。

  1. 現状把握:国交省の最新データを参考に、自分のマンションの費用水準を客観的に把握する。
  2. 内訳理解:管理委託費は「事務管理」「管理員」「清掃」「建物・設備管理」の4つで構成されていることを理解する。
  3. 費用適正化:まずは「業務仕様の見直し」でサービスレベルを調整し、その上で「相見積もり」を取得する。
  4. 会社選び:小規模物件の実績、柔軟なプラン、担当者の対応力を見極める。
  5. 賢い見積依頼:管理会社の労力も考慮し、見積もり依頼は真剣に検討する2~3社に絞る。

管理委託費の見直しは、単なるコストカットが目的ではありません。管理の質を維持・向上させ、マンションの資産価値を守り育てるための重要な活動です。この記事が、皆様のマンション管理をより良くするための一助となれば幸いです。


免責事項

本記事は、不動産管理に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の物件や契約に関する法的助言を行うものではありません。管理会社の選定や契約内容の変更にあたっては、必ずご自身のマンションの管理規約をご確認の上、必要に応じてマンション管理士や弁護士等の専門家にご相談ください。関連法令や制度は改正される可能性があるため、最新の情報をご確認ください。


参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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