東京の分譲マンション管理会社変更ガイド|失敗しない8ステップと選び方

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東京都内で分譲マンションの管理会社変更を検討されている管理組合の皆様へ。
「管理委託費が高い」「フロント担当者の対応が悪い」といった不満から管理会社の変更を考えても、手続きの複雑さや組合員の合意形成に不安を感じ、一歩を踏出せないケースは少なくありません。特に管理会社の数が豊富な東京では、どこを基準に選べば良いのか迷ってしまうでしょう。

この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、管理会社変更の法的な根拠から具体的な手順、東京エリアならではの会社選びのポイントまでを網羅的に解説します。国土交通省の示す最新の標準モデルや法令に基づき、失敗しないための注意点を8つのステップに沿って詳しくご説明します。この記事を読めば、管理会社変更の全体像が明確になり、ご自身のマンションで「次に何をすべきか」が具体的に見えてくるはずです。

マンション管理に関する用語の整理

本題に入る前に、混同しやすい用語を整理します。

  • 管理費:日常の管理のために組合員が管理組合に支払う費用。
  • 管理委託費:管理組合が管理会社へ業務の対価として支払う費用で、主な原資は「管理費」です。
  • 分譲マンション管理:本記事の対象。管理組合の運営支援や建物の維持管理を行う業務です。賃貸物件の入居者募集などを行う「賃貸管理(PM)」とは異なります。

マンション管理会社の変更は、一般的に半年から1年程度の期間を要するプロジェクトです。思いつきで進めるのではなく、計画的に手順を踏むことが成功の鍵となります。ここでは、法的な根拠も交えながら、標準的な8つのステップを解説します。

分譲マンションの管理会社を変更するための8つの手順を示したフローチャート図。総会決議や引継ぎの流れがわかります。
【img1】管理会社変更の8ステップ・フローチャート

Step 1: 現状の問題点洗い出しと目的の明確化【合意形成の第一歩】

まず、なぜ管理会社を変更したいのか、理事会内で具体的な問題点を洗い出し、目的を明確にします。これは、後の組合員への説明や新しい管理会社を選ぶ際の基準となる最も重要な工程です。

  • コスト面:管理委託費が周辺のマンションと比較して高い、不要なサービスが含まれている。
  • サービス品質:清掃の質が低い、フロント担当者の対応が遅い・専門知識が不足している。
  • 提案力:長期修繕計画や管理費削減に関する積極的な提案がない。

最新の国土交通省の調査でも、管理組合が抱える問題として「建物の老朽化」が最も多く、次いで「修繕積立金の不足」「居住者のマナー」などが上位に挙がっており、これらは管理会社の提案力や実行力が問われる部分です(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」)。

これらの問題点を客観的な事実としてリストアップし、「何のために管理会社を変更するのか」という目的を理事会で共有しましょう

Step 2: 新しい管理会社候補の情報収集とリストアップ

目的が明確になったら、新しい管理会社の候補を探します。インターネット検索や、近隣マンションの評判などが主な情報源となります。この段階では、東京エリアでの実績や口コミを参考に、5社程度を候補にリストアップするのが現実的です。ただし、次のステップで正式な見積もりを依頼する際は、管理会社側の負担を考慮し、本命の2〜3社に絞り込むことをお勧めします。

Step 3: 相見積もりの依頼 —【現実的な依頼先は2〜3社】

リストアップした候補の中から、特に有力な2〜3社に絞って見積もりを依頼します。ここで注意すべきは、過度な相見積もりです。

注意点:過度な相見積もりは敬遠される
管理会社にとって、正確な見積もりの作成には大きな労力がかかります。現地調査や清掃・各種点検会社との調整など、複数回の訪問と打ち合わせが必要です。そのため、5社を超えるような多数の会社への一斉見積もり依頼は、特に中小規模のマンションの場合、管理会社側から敬遠され、質の高い提案を受けられない可能性があります。

本命候補を2〜3社に絞り込んでから、正式に見積もりを依頼するのが、質の高い提案を引き出し、スムーズに進めるコツです。依頼時には、以下の書類を準備しておくと話が早く進みます。

  • 現行の管理委託契約書および重要事項説明書
  • 直近の総会議案書・議事録
  • 長期修繕計画書
  • 建物の竣工図書

Step 4: 見積書の比較精査 —【「一式」表記はNG】

提出された見積書を比較検討します。ここで最も重要なのは、**費用の安さだけで判断しないこと**です。特に「管理委託費一式」といった大まかな記載しかない見積書は、サービス内容が不透明なため必ず避けましょう。

マンション管理委託費の見積書で確認すべきポイント。「一式」ではなく項目別の内訳が重要です。
【img3】見積書チェックポイントの図解

国土交通省が示す「マンション標準管理委託契約書」では、業務が大きく分けて4つに分類されています。この分類に沿って、詳細な内訳が記載されているかを確認しましょう。

  • 事務管理業務:会計、総会・理事会支援など
  • 管理員業務:受付、点検立会い、報告連絡など
  • 清掃業務:日常清掃、定期清掃の範囲と頻度
  • 建物・設備管理業務:エレベーター、消防設備などの保守点検

内訳が不明な「一式」見積もりは避け、サービス内容と費用が適正かを見極めることが重要です。

Step 5: 候補会社のプレゼンテーションと理事会での内定

書類選考を通過した2〜3社に理事会でプレゼンテーションを依頼します。ここでは、見積金額の根拠だけでなく、担当者の人柄や専門知識、災害時の対応体制などを直接確認します。プレゼンを経て、理事会として1社に内定します。

Step 6: 総会での決議 —【普通決議の要件と注意点】

管理会社の変更は、管理組合の総会で決議する必要があります。

  • 決議の種類:管理会社の変更(管理委託契約の締結・解約)は、普通決議で決定するのが一般的です。
  • 法的根拠:建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)では、普通決議は「区分所有者及び議決権の各過半数」で決すると定められています(区分所有法 第39条第1項)。
  • 標準管理規約:国土交通省の「マンション標準管理規約(単棟型)」では、より現実的な要件として「出席組合員の議決権の過半数」で決するとされています(第47条第1項)。

重要:ご自身のマンションの管理規約に、決議要件について別段の定めがないか、必ず事前に確認してください。規約に特別な定めがある場合、そちらが優先されます。

【法改正に関する注意】 2025年5月に区分所有法の大改正が成立し、2026年4月1日に施行される予定です。施行後は総会の決議要件などが変更される可能性があるため、手続きを進める際は必ず最新の法令をご確認ください。

Step 7: 現管理会社への解約通知と新会社との契約締結

総会で承認決議が得られたら、現行の管理会社へ解約を通知し、新しい管理会社と管理委託契約を締結します。

解約通知のタイミングは、現在の管理委託契約書で定められているのが通常です。国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」をモデルにしている場合、**「3ヶ月前までに書面で解約を申し入れる」**と定められていることが多く、この条項を確認することが不可欠です(標準管理委託契約書 第17条)。

Step 8: スムーズな業務引継ぎのポイント

解約通知から新会社への業務開始までの3ヶ月間が引継ぎ期間となります。この期間に、管理組合の会計資料、図面、鍵、備品などが新旧の管理会社間で引き継がれます。

マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)により、管理業者は業務の引継ぎにおいて協力する義務があります(同法 第88条)。理事会は引継ぎが滞りなく進んでいるか、両社に進捗報告を求め、管理組合の財産が適切に移行されるかを確認する役割を担います。

目次

東京エリアで失敗しない管理会社の選び方と比較ポイント

数多くの管理会社が存在する東京で、ご自身のマンションに最適な一社を見つけるには、地域特性を踏まえた視点が必要です。

「大手(全国展開型)」と「地域密着型」のメリット・デメリット

管理会社は、その規模によって大きく2つのタイプに分けられます。どちらが良い・悪いではなく、マンションの規模や組合が何を重視するかによって最適な選択は異なります。

比較項目大手(全国展開型)地域密着型
スケールメリット◎ 購買力によるコスト削減
◎ 豊富な実績データ
対応の柔軟性・迅速性△ 担当者変更が多い傾向
△ 決裁に時間がかかる傾向
◎ 社長が直接対応することも
◎ 小回りが利く
災害時の対応体制◎ 広域での応援体制
◎ BCP(事業継続計画)策定
△〜◎(会社による差が大きい)
独自サービス・IT化◎ 専用アプリ、オンライン総会支援など△ 導入は限定的
担当者の専門性○ 研修制度が充実◎ 経験豊富なベテランが多い傾向
【img2】大手vs地域密着型管理会社の比較表

【最重要】首都直下地震への備えは万全か?災害時の対応体制

東京でマンション管理を考える上で、**災害時の対応力**は最も重要な比較ポイントの一つです。特に首都直下地震のような大規模災害を想定した体制が整っているかを確認しましょう。

  • BCP(事業継続計画)の有無:災害時でも管理業務を継続するための計画が策定されているか。
  • 安否確認の方法:災害発生時の居住者の安否確認フローが確立されているか。
  • 備蓄品管理の提案力:防災備蓄庫の設置や備蓄品リストの更新など、具体的な提案が可能か。

大手は広域での応援体制に強みがありますが、地域密着型でも独自のネットワークで迅速な対応を可能にしている会社もあります。プレゼンテーションの際に、具体的な災害対応シナリオについて質問することが不可欠です。

注意点:「管理計画認定制度」は管理“会社”の評価制度ではない

近年、「管理計画認定制度」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体(市区町村など)が認定を与える制度です。

  • 定義:評価の対象はあくまで**「マンションの管理計画(=管理組合の運営状況)」**です。
  • 区別:この制度は、管理“会社”そのものの優劣を評価したり、格付けしたりするものではありません。
  • メリット:認定取得をサポートできる管理会社は、管理組合の運営支援に関するノウハウが豊富であると評価できます。

「認定取得をサポートできるか」は管理会社選びの一つの指標になりますが、制度の目的を正しく理解し、管理会社の評価と混同しないように注意しましょう。

管理会社変更のメリット・デメリットを冷静に整理

管理会社の変更は、組合にとって大きな決断です。メリットだけでなく、デメリットも理解した上で、冷静に判断することが重要です。

メリット:管理コストの削減とサービスの質的向上

  • 管理委託費の適正化:相見積もりを取ることで、現在の委託費が適正かを見直すきっかけになります。不要なサービスを削り、必要なサービスを充実させることで、コストパフォーマンスの向上が期待できます。
  • サービス品質の向上:新しい管理会社からの競争力のある提案により、清掃の質が上がったり、フロント担当者の対応が改善されたりするケースが多く見られます。
  • 組合運営の活性化:変更プロセスを通じて、理事や組合員がマンション管理への関心を高め、主体的な運営意識が醸成されるという副次的な効果もあります。

デメリット:一時的な手間と組合内の混乱リスク

  • 理事会の業務負荷:本記事で解説した通り、変更手続きには多くの時間と労力がかかります。理事の負担は一時的に増加します。
  • 組合内の合意形成の難しさ:すべての組合員が変更に賛成するとは限りません。現状維持を望む意見や、変更への不安の声に対して、丁寧に説明し、合意を形成していく必要があります。
  • 引継ぎ期間中の混乱:新旧管理会社間の引継ぎがスムーズにいかない場合、一時的に連絡の遅延や対応漏れが発生するリスクもゼロではありません。

よくある質問(FAQ)

Q1: 管理会社の変更には、どれくらいの期間がかかりますか?

A1: 理事会での検討開始から新しい管理会社の業務開始まで、一般的に半年から1年程度かかります。総会の開催時期や候補会社選定の進捗によって変動します。

Q2: 管理会社を変更するのに、管理組合が支払う費用はありますか?

A2: 管理会社に直接支払う手数料のようなものは基本的にありません。ただし、臨時総会を開催する場合の会場費や資料印刷費などの実費は、管理組合の費用から支出されます。

Q3: 現在の管理会社との関係が悪化しませんか?

A3: 手続きを誠実かつ契約に則って行えば、過度に心配する必要はありません。マンション管理適正化法では、管理業者に引継ぎへの協力義務が課せられています。感情的にならず、あくまで契約に基づき、淡々と手続きを進めることが大切です。

まとめ|管理会社変更は組合運営を見直す絶好の機会

東京都内でマンション管理会社を変更するプロセスは、決して簡単なものではありません。しかし、現状の問題点を洗い出し、法的な根拠に基づいた正しい手順を踏むことで、管理組合の資産価値と居住満足度を向上させる大きなチャンスとなります。

  • 手順の遵守:本記事で紹介した8つのステップに沿って、計画的に進めましょう。
  • 合意形成:手続きの各段階で、理事会内、そして組合員全体での丁寧な合意形成が成功の鍵です。
  • 東京の視点:コストやサービスに加え、特に災害時の対応力を重要な選定基準としましょう。

管理会社の変更は、単に業者を入れ替えるだけでなく、**自分たちのマンションの管理のあり方を組合員全員で見直す絶好の機会**です。特に2026年4月施行予定の法改正も見据え、管理規約のあり方を再検討する好機ともいえるでしょう。この記事が、より良いマンションライフを実現するための一助となれば幸いです。


免責事項
本記事は、2025年10月17日時点の情報に基づき、分譲マンションの管理会社変更に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の案件に対する法的な助言を行うものではありません。**特に、2026年4月1日施行予定の改正区分所有法の内容は反映されておらず、本記事は施行前の現行法を前提としています。**個別の契約内容や管理規約、最新の法令改正が最優先されます。具体的な手続きを進める際は、必要に応じて弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。


参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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