【はじめに】気になる「修繕積立金」の差…その理由を知っていますか?
「築15年・50戸くらいのマンションなのに、隣の物件はうちの倍近い修繕積立金を取っているらしい…」
分譲マンションの管理組合から、こんな声を耳にすることがあります。
修繕積立金は、将来の大規模修繕に備えて毎月コツコツと積み立てる“マンションのための貯金”です。ところが、マンションごとに金額が大きく異なるのが実態で、場合によっては将来的に資金が大幅に不足するリスクを抱えているケースもあります。
このコラムでは、
- 修繕積立金とはそもそも何か?
- 金額はどうやって決めているのか?
- 国のガイドラインに照らして自分のマンションは妥当か?
- 管理組合として取るべき対応は?
などについて、分かりやすくご紹介します。
修繕積立金とは? ─「将来のための投資」
マンションの建物や設備は、時の経過とともに必ず劣化します。
外壁のひび割れ、屋上の防水劣化、給水ポンプやエレベーターの故障…。これらを一定周期(約12~15年)で更新・補修する大規模修繕を、計画的に実施するために必要なのが「修繕積立金」です。
💬【ポイント】
管理費が“日常の運営費”であるのに対し、修繕積立金は“未来への投資”です。
修繕積立金はどう決めているのか?
修繕積立金の金額は、管理組合が作成(または委託)する長期修繕計画をもとに決定します。
この計画では、通常30年以上の期間を想定して、各修繕工事のタイミングと概算費用を見積もり、それを年間・月間に割り戻して積立額を算出します。
国交省のガイドラインにおける「適正額」
令和3年に改訂された国土交通省のガイドラインでは、実際のマンションデータをもとに修繕積立金の平均額の目安が示されています(機械式駐車場を除く)。
以下は、建物の延床面積・階数に応じた1㎡あたり月額の平均値です。
建物規模 | 平均単価(円/㎡・月) | 70㎡の月額換算(円) |
---|---|---|
5,000㎡未満 | 335円 | 23,450円 |
5,000~10,000㎡未満 | 252円 | 17,640円 |
10,000~20,000㎡未満 | 271円 | 18,970円 |
20,000㎡以上 | 255円 | 17,850円 |
20階以上 | 338円 | 23,660円 |
🏢【参考:70㎡の専有面積で計算すると】
- 252円 × 70㎡ = 17,640円/月(平均的な中規模マンション)
- 335円 × 70㎡ = 23,450円/月(小規模マンションの場合)
👉月額1.7万〜2.3万円前後が適正水準と言えます。
なぜ、こんなに金額差が出るのか?
マンションごとに修繕積立金の金額が大きく異なる背景には、以下のような理由があります:
✅1. 分譲当初の積立額が低すぎた
販売時に「毎月5,000円」など、実際の将来コストを無視して低額に設定されたケースが少なくありません。
✅2. 長期修繕計画の未整備・未更新
築20年を超えていても、長期修繕計画が未作成・未見直しというマンションもまだ多く存在します。
✅3. 段階増額方式が途中で止まっている
当初「5年ごとに増額」と決めていても、実際には増額できず同額据え置きとなり、計画と実態が乖離するパターンです。
✅4. 設備仕様・戸数・立地の違い
同じ規模でも、エレベーターの台数、機械式駐車場、豪華な外構などがあると、当然必要な修繕費は高くなります。
修繕積立金が足りないとどうなる?
⚠️ 修繕の延期・品質劣化
積立金が不足すると、本来必要な修繕が先延ばしされ、外壁の劣化や防水不良などが放置されがちになります。
⚠️ 一時金の徴収が必要になる
予定外の費用を補填するために、各所有者から突然50万円・100万円の徴収が必要になることも。
⚠️ 売却価値・資産価値の低下
適正な修繕が行われていないマンションは、買い手が付きづらくなり、資産価値も低下します。
積立方式には2つのパターンがある
✅ 均等積立方式(推奨)
修繕計画全体で必要な金額を見積もり、毎月一定額を積み立てていく方式。将来にわたって安定した運用が可能です。
⚠️ 段階増額方式(導入が多いがリスクも)
初期の負担を抑えるために、少額スタート→段階的に増額する方式。現実には住民の合意が取れず、途中で止まるリスクが高いです。
💬国交省は「初期額を平均の60%以上に、最終額を110%以内に」収めるよう促しています。
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管理組合がやるべき対応とは?
📌 ① 長期修繕計画の定期見直し(5年ごと)
- 実際の修繕履歴・物価・資材費などを反映して再試算
- 機械式駐車場の撤去や構造変更があれば柔軟に対応
📌 ② 現行の積立額が妥当かチェック
- 他マンションと比較
- 国交省ガイドラインとの比較
- 専門家の診断も活用(管理会社・設計事務所など)
📌 ③ 増額の合意形成を進める工夫
- 説明資料・比較表の提示
- 将来の資金不足リスクの“見える化”
- 第三者管理者や外部理事の活用も有効
【まとめ】修繕積立金の見直しは、未来の安心につながる
項目 | ポイント |
---|---|
修繕積立金の役割 | 将来の大規模修繕に備える共同の基金 |
適正額の目安 | 平均252~338円/㎡・月(70㎡あたり約1.7~2.3万円/月) |
積立方式 | 均等方式が安定、段階増額方式は要注意 |
定期的な見直し | 5年に一度の修繕計画再評価が理想 |
管理組合の責務 | 適正額への見直しと住民の合意形成 |
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