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■ はじめに:「そのマンション、管理は大丈夫ですか?」
マンションを売却したい、あるいは買いたい──そうした時、
売買契約の陰で重要な役割を果たしている一枚の資料があることをご存じでしょうか。
それが「重要事項調査報告書(略称:重調・じゅうちょう)」です。
この書類、実はマンションの“管理レベル”を丸裸にするものです。
そして内容次第では、価格が数百万円変わるケースすらあります。
■ 重要事項調査報告書とは?(定義)
重要事項調査報告書とは、
中古マンションの売買時において、管理会社が作成する書類であり、
宅地建物取引業者(不動産仲介会社)が、売買契約前に買主へ説明すべき「重要事項」の一部を補完するための資料です。
この報告書は、管理会社が発行するもので、内容はそのマンションの管理状態を明らかにする情報の集約です。
■ 何が書かれているのか?(主な記載項目)
項目分類 | 内容例 |
---|---|
【管理費・修繕積立金】 | 月額・未納額・滞納状況・改定予定 |
【管理の方式】 | 自主管理 or 管理会社委託、その委託契約内容 |
【修繕履歴と今後の予定】 | 長期修繕計画の有無・過去実施工事・実施予定工事 |
【総会関連】 | 管理規約の有無、総会・理事会の開催履歴 |
【管理組合の財務状態】 | 積立金残高・借入金の有無 |
【その他】 | 予定される管理費変更、耐震診断の有無、ペット可否など |
■ 誰が作るの?どこに請求する?
通常は管理会社が作成します。
自主管理の場合は、理事長などが手作業で作成するケースもあります。
売却を依頼された仲介会社(不動産業者)が、売主の依頼を受けて管理会社へ依頼し、1〜2週間程度で取得するのが一般的です。
■ なぜそんなに重要なのか?(価格・融資への影響)
買主や金融機関は、この報告書を見て次のような判断をします:
- 積立金が少ない → 将来的に大規模修繕できない → 資産価値が下がる
- 滞納が多い → 管理不全のリスク → 評価額が下がる
- 修繕履歴がない → 設備が劣化している可能性あり → 安心できない
- 管理規約が古い or ない → 法令違反・トラブルリスクあり
結果として、「マンションそのものは悪くないのに、管理が原因で売れにくい・価格が下がる」という現象が起きます。
■ トラブル事例:「知らずに売って、後から訴えられる!?」
ある売主は、報告書の記載を十分に確認せずに売却。
実は重大な修繕工事が予定されており、買主が引渡し後すぐに高額な一時金を請求されることに。
結果、訴訟へと発展しました。
→ つまり、売主・買主双方にとって「事前確認」が必須なのです。
■ 管理組合としての責任と意識
管理会社が報告書を作成するとはいえ、
実態を作っているのは管理組合=理事長や役員たちです。
- 滞納を放置していないか?
- 修繕履歴・計画を明確にしているか?
- 総会が形骸化していないか?
これらが整っていないと、「たった一枚の書類」でマンションの信用が地に落ちるのです。
■ コストは?料金相場
区分所有1戸分の発行費用
管理会社によって異なるが、10,000円〜20,000円前後が相場です。
なお、管理会社によっては
「質問表(別書式)」と分かれていることもあるため、実務上は両方取得が必要です。
■ 最後に:管理の良し悪しは“書類”に現れる
マンションの価値は「立地」や「築年数」だけでは決まりません。
“どのように管理されているか”が、書類一つで見抜かれる時代です。
理事長の皆様、管理組合の皆様、
いざというときの売買トラブルを避け、資産価値を守るために、
日頃から“出せる状態”を保ちましょう。